愛は巻き起こる。それは近寄れない戦い??
ボロボロの美猴王。しばし牛角魔王に軍を任せるつもりだったのだが、
仲間が集まると問題も増えるのだった。
俺様は美猴王。
俺様は後方にて軍の指揮していた。
まぁ、作戦なんか難しい事は他の連中に任せて俺様は仲間達をなだめていた。
って、おぃ!はっきり言って皆、我が儘!統率力ない!
直ぐに喧嘩初めて、しょっちゅう揉めては問題行動ばかり…
頼りの牛角の奴は面倒から避けるように見て見ぬふりをしているし…
本来なら俺様が皆に迷惑をかけなきゃいけないのに調子狂うぜ!
そんな訳で、戦場に再び復帰する事になったのだ。
とほほ・・・
俺様達は金剛魔王の本拠地へと進行していた。
金剛魔王…
かつて七十二魔王のナンバー1で、実力ともに頂点に君臨していた。
…らしい。
それが、ほんの数年前に一桁ナンバーの入れ換えにてナンバー2に格下げされたのだそうだ。
…らしい。
一時は素直にナンバー2に甘んじていた金剛魔王だったのだが、俺様が全魔王の反逆、戦争を始めた事で金剛魔王もまたナンバー1に返り咲こうと国取りをおっ始めたのだ。
しつこい奴だな?
未練がましい奴だぜ!
本来なら金剛魔王と同盟組むか、現第一魔王とぶつけた後に漁夫の利を得る手段もあったが、俺様は個人的に黄風魔王の件があった。
蓮華との最後の約束守れなかった…
俺様は黄風魔王を倒す気はあったが、殺す気はなかった。
俺様が毒手をくらい鵬魔王がトドメを刺した事は知っている。
が、そこに出しゃばったのが金剛魔王の手先だとか…
しかも金剛魔王が黄風魔王を先に狙ったのが、どうも同盟を組もうと持ち掛けたのを黄風魔王が拒んだからだと知った。
これは玉面魔王からの情報だぞ。
しかも弱った所を配下に任せて始末させたのだ。
こういう奴は同盟を組んでもゼッテェ~裏切る!
まぁ、実際は八つ当たりなのだが…
どのみち俺様の邪魔するなら潰すまでなのだが、どんな強敵であろうと俺様が天下を取る事に障害物になるのなら、全て蹴散らし、押し通る!
金剛魔王の配下の妖怪は無生物妖怪の軍。
つまり俺様達のような獣妖怪や生身妖怪とは違う無生物妖怪・岩や石、そういった物に妖気が魂を宿して妖怪化した連中なのだ。
無生物妖怪の厄介な所は痛みを感じない、恐怖を感じない。
命じられた事を全うするのだ。
だから俺様達が圧倒しようとも何度でも攻めて来るから厄介だ。
恐怖や圧倒的な戦力は相手を怯ませ精神面で有利に持っていけるのだ。
そういえば、気になる事もあった。
黄風魔王を襲った奴は生身の妖怪だったと六耳が言っていた。
額に石が埋め込まれた生身の妖怪だそうだ。
だが、やはり感情はなさそうだとも言っていた。
何者なんだ?
いずれ攻め混んでいる間に相まみえるだろうな。
不死のゴーレム軍を玉面魔王の活躍で一掃した後は思ったより楽に進軍出来た。
玉面魔王は妖気の籠った水術でゴーレムの身体を鈍らせ、動けなくさせた後に無機物を動かす魂入石を消滅させて地に返す。
流石、蛟魔王が見込んだ一桁ナンバーだ。
計り知れねぇな?
が、ここに来て新たな問題が発生していた。
竜巻…
俺様達の進軍を妨げるような天にまで達する竜巻が道を塞いでいたのだ。
俺様は牛角と凄まじい勢いの竜巻を見上げながら、
「何なんだよ?この竜巻は?いつ止むんだ?」
「恐らく何者かによる結解のようなもんだろうな?微かに妖気を感じる…それに、竜巻の中央から感じないか?」
「ん?」
俺様は竜巻の中に向かって意識を集中させてみた。
「!!」
解った。
竜巻の中心にとてつもない妖気を感じた。
しかも…
間違いなく一桁ナンバー!
そこに俺様達の会話を聞いていた玉面魔王が口をはさんで来た。
「あそこから感じる妖気は砂塵魔王だな」
「砂塵魔王?」
「一桁の一角。虚飾の砂塵魔王!金剛魔王に仕える面倒な奴よ」
「面倒だと?」
「そもそも砂塵の奴は地上の中央に聳える搭の守護者。それが没落した金剛魔王側に付き従ったのだが、その能力は強力な結解。まぁ、見ての通りさ」
そして牛角魔王が玉面魔王に対策を尋ねる。
「確かに強力な結解だな。何とかならんか?」
「結解に関しては少々厄介でね?あれは一桁ナンバー三人がかりで何とかなる品物だわ」
「一桁が三人だと?」
「じゃあ、俺様達が補えば良いんじゃねぇか?」
「簡単に言うな!美猴王。お前は戦力外だろ?」
「なっ?牛角、俺様はピンピンだぞ」
「無理するな?お前は身体を安静にしてろ?あの結解は俺達が何とかしてやる!」
すると牛角は周りを見回して名を呼んだ。
「玉面!剛力!俺と共に結解を破るぞ」
「嫌じゃ!」
「イヤ、」
「よし!早速取り掛かろ……ヘッ?」
まさかの却下に牛角魔王は思考が回らないでいた。
「妾は牛角様との共同なら構わんが、そちらの雑魚とは手を組みたくはない」
「私、嫌、そいつ嫌い!」
玉面魔王と剛力魔王が一触即発になり、すかさず状況を見ていた蚩尤と怪力魔王が止めに入ったが…返り討ちにあった。
「ダメダメじゃね?このメンバー?」
「………」
しかしなぁ?他に一桁ナンバー並に働ける奴は?
獅駝王もまだ目覚めないし、やはり俺様がやるしかないんじゃないか?
そこに、
「僕を忘れないで欲しいな。僕はそこの煩い女なんかより使えますよ?美猴王」
今度は玉面魔王と剛力魔王が鵬魔王に向かって眼を飛ばし睨み合う。
三つ巴になった…
ダメダメじゃね?状況悪くなってないか?
あっ…
殴りあい始まった。
醜い戦いだなぁ~
それにしても今日は良い天気じゃね?
と、現実逃避しようとした時、ついに…
『ブチィ!』
牛角魔王がキレた。
『お前らぁああ!いい加減にせんかぁあああ!!』
牛角魔王から放たれた覇気が喧嘩している連中を黙らせたのだ。
結局、最初の提案に沿って牛角魔王と玉面魔王、剛力魔王が結解を破った所に、俺様と怪力魔王、鵬魔王に刀剣魔王が軍を率いて中央で結解を張っている張本人の砂塵魔王をぶっ倒す事に決定した。
でっ?
牛角魔王と玉面魔王、剛力魔王が妖気を高めている。
牛角魔王と剛力魔王は解っていたが、一桁ナンバーであって玉面魔王の妖気は半端じゃなかった。妖気量だけなら完全に二人を上回っていたのだ。
「フン!」
鵬魔王もその妖気を感じて拗ねていた。
三人の妖気が極限に絡み合い高まる中、膨れ上がる妖気が牛角魔王の剣に集中していく。
「グゥゥ…」
三人分の妖気を一身に受け、その重圧に踏ん張る足下が沈み混む。
だが、牛角魔王の集中力は二本の剣に籠められていた。
「行くぞぉお!嵐気流奥義・斬処三舞猛刺挙牙流!」
※ザンショミマイモウシアゲル
三人分の魔王の力を上乗せした牛角魔王から放たれた斬撃は、俺様達の道を塞ぐ砂塵魔王の竜巻と拮抗する竜巻を巻き起こしたのだ。
相互の竜巻は幾度とぶつかり合う。
なんか喧嘩独楽見てるようだ。
そして更に荒れ狂う嵐気流となって俺様達は立っていられなくなる。
「うぎゃあああ!皆ぁああ?吹き飛ばされるなよぉおおお?」
怪力魔王に縄をかけて、皆でしがみついた。
「姉様!頑張って!」
当の剛力魔王は?
(あの、女…これだけ、妖気解放、させて、平気な顔?私、負けん!)
剛力魔王は既に限界に近かったが、玉面魔王への対抗意識から負けじと妖気を高めた。
(あの小娘思ったより踏ん張るのぉ?しかし牛角様…何と勇ましいのじゃ…流石は妾の見込んだ愛しい男!)
玉面魔王もまた妖気を牛角魔王に向けて送る。
二人からの猛烈アタックを受けた牛角魔王は?
「オッ?また妖気が!?ふふふ…どんどん来い!お前達の[戦いへの意地]その思い!俺が全て受け止めてやるぞぉおおお!」
何と?
牛角…お前、そんな事を言って大丈夫なのか?
それを聞いた剛力魔王は目をハートにして、
「ついに、祝言?私、はゎわわ!」
剛力魔王の妖気が更に膨れ上がり牛角へ?
玉面魔王も胸を抑え、
「妾の全てを受け止めてくれると言うのか?ズッキーンじゃああ!」
同じく膨れ上がった妖気を牛角へ…
二人の勘違いの思いを乗せた重い…実に重い思いを受け止めた牛角魔王は…
『乱気流奥義・猛烈完千牙合!』
※モウレツカンチガイ
牛角魔王の放った二激目の斬撃は更に巨大な竜巻を巻き起こし、拮抗していた相互の竜巻をも飲み込み消し去ったのだ。
気付くと目の前は静まり返り、竜巻によって閉ざされていた道が開いていた。
「やったな?牛角!」
牛角魔王は力尽きて座り込んでいた。
そこに玉面魔王と剛力魔王が身体を擦り寄せベタベタしている。
「ん?何だ?」
牛角魔王は相変わらず状況を解っていないし、玉面魔王と剛力魔王は互いに牛角魔王を引っ張り合った。
「ちょっ?ちょっ?何だ?俺はもうクタクタで動けんのだぁああ?」
「大丈夫、私、夜、頑張る!体力、自信有る!」
「妾はお前とならどんな激しいのも耐えてみせようぞ?」
「へっ?」
俺様は思った。
あんまりこの三角関係に首を突っ込まないようにしようと…
次回予告
竜巻の結解を撃破したのも束の間、
目の前に現れたのは!?




