因縁の戦い!蛟魔王の真実?
四竜姫を倒した蛟魔王。
そして、遂に万聖魔王を前にしたのだ。
因縁!!
この戦いは運命?
この死闘は決意と決別。
蛟魔王と万聖龍王はその想いを胸に、互いを倒すためにその力をぶつけ合う。
「浦島!強くなったな?隙が全くないよ!」
「暫く会わない間にお喋りになったな?あんまり口を開いていると下を噛むぞ」
蛟魔王は龍鞭を振り回す。
その速度は音速を越えて音だけが響いた。
万聖龍王は万聖の槍と呼ばれる重量級の槍を軽々と振り回し、突いてくる。
「んっ!!」
蛟魔王の鞭の先端が塵と化して消えた。それは万聖龍王の再生負荷の力が万聖の槍を通して消し去ったのだ。 すかさず距離を取り、札を投げ捨てる。
「クッ!」
蛟魔王は札に念を籠めると札が一枚一枚万聖龍王を囲み爆発する。
よろめく足下には、いつの間にか貼られた爆札があり、辛うじて踏まぬように躱す。
「相変わらず器用だな?空間移動だけでなくあらゆる術札を使いこなし、自信の戦いの有利に誘導する。戦略家ときたもんだ…」
「互いに手の内を知っているとやりにくいな?」
万聖龍王は飛び散った術札を、龍気を雷に変えて一瞬にして貫き燃やした。
「俺はお前をずっと見ていたからな?お前の事は手に取るように解る!だが、お前はどうだ?俺の事を知っていると言えるか?」
万聖龍王は万聖の槍を掲げると、その先端から白い雷が飛び散り蛟魔王を襲う。
再生負荷の力を雷に変換して攻撃しているのか?
「くっ…うわぁあああ!」
降り注ぐ雷は鎧を消し去り、蛟魔王をあられもない姿にした。
「どうした?今ので殺れたのではないか?何故手を抜いた?」
「ふん!今の俺がどれだけ腕を上げたかを見せ付けてやったんだ。だからお前も手を抜かず本気でやりあえ!」
「ふぅ…」
蛟魔王は立ち上がると龍気が立ち込める。
その力は今までとは桁違いだった。
「ならば見せてやるよ?私の本気を!」
『竜神変化唯我独尊・蛟』
蛟魔王の身体から龍神・蛟が抜け出したかと思えば、再び蛟魔王の身体へと吸い込まれていく。同時に強烈な力が解放されたのだ。
それは龍神変化。獣妖怪の究極変化である獣神変化に匹敵する龍神族最強の変化だった。
蛟魔王の姿は龍神・蛟の鎧を纏い、凛々しく立つ。その腕には龍神族から奪われし三種の神具の一つ、蛟の盾を装着していた。
そしてその姿は過去に龍神界から逃亡する際に見せた、あの恐ろしき力だった。
「ならば俺も本気を見せてやろう!」
万聖竜王は万聖の槍を前方に構えると、
『龍神変化唯我独尊!』
同じく龍神変化を唱えたのだ。
その力は蛟魔王と拮抗していた。
互いに力の差は感じられなかったのだ。
「本当に強くなったよ…お前」
「それもこれもお前を倒すためだ!龍神界を裏切り、否!この俺を裏切ったお前に制裁を与えるためだ!」
「何も返す言葉はないよ」
蛟魔王は掌を蛟の盾に翳すと、盾が光り輝き剣が出現した。
「命乞いはさせん。今こそお前との因縁に決着をつけてやろう!」
万聖龍王の槍と蛟魔王の剣が激しくぶつかり合う。その衝撃に耐えられずに城が崩れ落ちる中、二人は戦場を場外に移した。
「融合浮遊雲」
蛟魔王の浮遊雲が飛んで来て蛟魔王の身体に吸い込まれると、その身体が浮遊する。これは雲との融合術であり、自在に飛行出来る術だった。
「融合浮遊雲」
万聖竜王もまた浮遊雲と融合し、術を行う。
二人は上空まで飛び上がると、雲を突き抜け再び武器を交える。
空中戦で武器と武器が弾かれる衝撃、躱し躱され、拮抗する力。
互いに一切の隙はなかった。
一瞬の隙が死を招く。
が、次第に蛟魔王が防戦状態になり始める。
「どうした?これまでか?」
蛟魔王は万聖竜王の使う『再生の負荷』の攻撃に受け身になっていた。たとえ蛟の盾で受けられようとも、他の箇所に少しでも触れれば致命的なのだから。
「俺がお前を…」
万聖龍王の身体が突然強烈に発光したかと思えば、渦を巻くように槍先に集中していく。
『竜巻螺旋突』
万聖龍王の突き出した槍が蛟魔王の肩を貫く。
「うっ?」
それは蛟魔王さえ回避不可能の超神速の突きだった。
だが、それは…
再生負荷の力と組み合わせる事で確実に相手を仕留める最終奥義!
「ぐぅわああ!」
蛟魔王の右肩が貫かれ塵と化して腕が消滅した。
肩から血が噴き出しよろける蛟魔王は失った付け根に術札を貼り付け止血する。
「咄嗟の判断だな?だが、次はないぞ!」
再び奥義を繰り出そうとする万聖龍王に、蛟魔王はなすすべがなかった。
「はぁ…はぁ…」
万聖龍王は蛟魔王の消耗に手加減は一切なかった。
乱れ突く奥義の前に蛟魔王は防戦一方で、身体中に無数の傷を負う。
『竜巻螺旋突!』
傷から血が噴き出し崩れ落ちる蛟魔王。
蛟魔王は血だらけで動けぬまま地上に落下した。
辛うじて着地した蛟魔王は傷痕を見つめ、
「再生負荷を使ってない?ただの連続の突きだと?」
「命拾いしたと思ったか?」
「お前にいたぶる趣味があったとはな?悪趣味だな…」
万聖龍王がゆっくりと降りて来る。
が、その時!
「うぐぅわぁ!」
蛟魔王が苦しみ始めたのだ。
身体中から血が水蒸気のように蒸発し始める。
その苦しみ方は尋常じゃなかった。
何が起きたのか?異変?
「しまっ…た…血を流し…過ぎた…制御…がぁあぁあぁあ…」
蛟魔王は自制するも叶わずに、その場でうずくまる。
「…ようやくこの時が来た。長かった…俺はこの日が来るのをどれだけ待った事か…」
万聖龍王は拳を握り締め長き思いの達成に、わき出す感情を抑えこみ震えるように歓喜した。
その時…
万聖竜王は背中から流れる冷や汗を感じ身体が震えた。
それは無意識の防衛本能。
だが、万聖龍王はこの理由を知っていたかのように蛟魔王の異変を見ていた。
蛟魔王の身体から血が水蒸気のように噴き出し、身体を覆っていく?
そして血が蛟魔王の身体が鮮血に染めた時、蛟魔王は顔を上げた。
「!!」
その瞳は銀色に光り輝き、流れる血が生き物のように蛟魔王の周りを動いていた。
「その力を待っていた…これで全ての謎が解かれた。その力こそ…」
『竜神族が長きに渡り隠し封じていた三種の神器の闇!』
三種の神器の闇とは?
それは龍神族の王族にのみ口伝のみて伝わる極秘事項だった。
天界をも怯えさせる竜神族が守ってきた三種の神器…いや、その中の他の二つすらも最後の神器を抑え込むための拘束神器だと言うのだ。
その忌まわしき神器の正体は魔眼…
神を喰らう魔眼なのだと。
それは神喰の魔眼と呼ばれ、発動するとその血が神を喰らい消滅させる忌まわしき力を持つと言う。神を殺す血…だが、その力は発動者自身をも殺す呪われた力。
かつてそれは神族が厳重に補完していたが、所持出来る者が現れなかった。実験的にその力を発動させた補完者達は自我を失い、手当たり次第に神族を消し去ったのだ。
その補完者の事は『忌眼体蝕者』と呼ばれた。
その魔眼が天界より消える事件が起きた。
初代・忌眼体蝕者は妲姫と呼ばれる狐の獣神であったが、その者は神々を巻き込む最悪の大戦を引き起こしたのだ。
かつての大戦である封神大戦だった。
大戦の後、妲姫は神々により討伐された。
その魔眼もまた失われたと思われていたが……まさか竜神族が隠し持っていたとは?
「謎が全てが繋がった…」
万聖龍王は知っていた?
だが、その目的は?
あの日、蛟魔王が三種の神具を奪い去った時、龍神界に天界の襲撃が合った。
天界の侵入者達は音も気配もなく、目的の場所に向かって入り込む。
そこは三種の神具の宝物庫だった。
玄龍の反乱により八大龍王が留守の龍神殿は正に好機だった。侵入者達は宝物庫の前に来て、扉を開けた。いや?玄龍もまた、この者達により使われていたのだ。
「!!」
だが、侵入者達は驚きを隠せないでいた。宝物庫の中に何者かの気配を感じたから?その者は自分達の侵入を知って先回りしていたのだ。
「呼ばれてもいない客神のようだが、どうだ?私が相手をしてやろう?」
その者は蛟魔王だった。
侵入者達は蛟魔王に襲い掛かった。
侵入者達もまた天界の隠密集団。
その実力は計り知れなかった。
「くぅ…」
流石の蛟魔王も侵入者達に苦戦した。
「強いな…」
すると侵入者が合図と同時に一人の侵入者が三種の神器に向かって駆け出す。
「させるかぁ!」
蛟魔王の隙をついて向かった侵入者は、別の者の覇気により床に潰されたのだ。
その者は老人であったが、侵入者達が怯む程の攻撃的な覇気を放っていた。
その者とは…
龍神界を統べる長・応竜!
「儂の目が黒い内は天界の者共に好き勝手にはさせんぞ?」
応龍の登場に侵入者達も動けずにいた。
だが、目合わせすると応龍に向かって侵入者の二人が駆け出す。
しかも二人の神気は異常な高まりを見せていた。
「まさか?」
応龍に接近の直後、二人の侵入者は目の前で自爆したのだ!!
「応竜様ぁあ!」
爆風の中、膝を付く応龍に別の侵入者達が刃を振り上げていた。
「自爆とは…油断したわ…」
応龍は向かって来た侵入者に向かって覇気を放とうとするが、足下に魔方陣が出現する。
侵入者達は用意周到であった。自らの命を顧みないで任務を達成するため。
「う…動けぬ…」
それはかつて聖獣の王すら封じた竜神専用の封陣結界だった。
結界は蛟魔王にも及んでいた。
四人の侵入者が結界を張るために力を注ぎ、動けぬ応龍と蛟魔王の間を侵入者のリーダーがゆっくりと三種の神器に向かって歩いて行く。
三種の神器が封じられている結界に侵入者が手をやると、結界に穴が開いて腕が入っていく。
「ヌゥ?結界を破るではなくどうやって?」
「あれは空間移動術です!空間移動術に結界は無力。中にある神器を取るのは容易い事です」
「だが…」
三種の神器に触れた途端、侵入者が結界から弾かれたのだ。
それは神器が侵入者を持ち主と認めずに拒んだため。
だが、その神器の力は結界をも破壊した。
「ならば…私の空間転移で神器を天界に飛ばしてしまえば良い事!」
侵入者が神器に空間転移を行おうとした時、応龍が動いた。
「やむを得ない…」
「何を?」
「儂が結界を破る。その間にお前が神器を守るのじゃ?」
「しかし無理に結界を破れば?」
「任せるぞ」
応龍が力を解放させた。
それは神龍変化。
応竜は自らの身体が巨大な龍へと姿を変えたのだ。
同時に結解が耐えられずに中から壊れていく。
だが、それは強引な手段であるために内部から爆発を起こしたのだ。
それは応龍もろとも結解を張っていた侵入者をも巻き込んだ。
「くぅ…」
蛟魔王は爆発寸前に崩壊した結解を飛び出して、神器に近付いていた侵入者に向かった。
蛟魔王は袖に仕込んだ術札に竜気を籠めると、蛟魔王は瞬間移動して侵入者より先に神器の一つを手に取り奪ったのだ。
「まさか?お前も空間転移術を!?」
「そうさ!」
だが、蛟魔王が三種の神器に触れた途端、異変が起きたのだ。
蛟魔王が触れた神器は……蛟魔王を拒み、掴んだ手に強烈な刺激を与えつい手放してしまった。
神器は宙に飛ばされた。
「しまった!」
「馬鹿め!」
侵入者は転送の術の印を結ぶと、神器に向かって術を放っていた。
それは対象を別の場所へと飛ばす術。
「させるかぁー!」
蛟魔王は一度弾かれた腕を再び神器に向かって伸ばす。
指先が神器に触れ、再び強烈な刺激が蛟魔王を拒んだ。
だが、
「奪われるくらいなら…私が!!」
麻痺した指で掴んだ神器を自らの顔に押し合てたのだ。
「まさか?あの呪われた神器を使うと言うのか?」
「うっ…うぎゃああああああ!」
乙姫の悲鳴が響き渡る。
神器が乙姫の目に侵食するかのように吸い込まれていき顔から大量の血が流れる。
「馬鹿な奴め…その神器は呪われた魔眼…使用者を狂わせ死に追いやる」
だが、乙姫は突然動きを止めると、先程までの忌々しい力が押さえ込まれ立ち尽くす。
「馬鹿な?その力を制御したというのか?」
だが、乙姫は尋常じゃない変貌を遂げていた。
乱れた髪の下から見える瞳は銀色に光り輝き、血管が浮き出し全身の肌が真っ赤な血のように変色していた。
「ウキヒャアアアヒャア!」
乙姫は奇声をあげた。
まさに狂神!乙姫の身体から流れる血が生き物のように動いて侵入者に向かって伸びていく!
「くぅ…この化け物がぁ!」
が、その後は狂った乙姫が残った侵入達を惨殺した。
しかもその後、倒れている応龍にまでその手が迫るほどの暴走。
「乙姫…魔眼の力に魂を喰われおったか?」
乙姫が応龍に向かって牙を向けたその時、応龍はもう一つの神器で受け止めとめていた。
それは蛟の盾だった。
「蛟の盾は唯一その魔眼を抑える結解の役目を持つのじゃ!」
応龍は自らを守る蛟の盾を乙姫に向かって投げ付けると、盾は乙姫の左腕に装着され、染み付いた血がみるみる浄化されていく。
「はぁ…はぁ…」
乙姫を覆っていた血が全て蒸発した後、乙姫が気を取り戻していた。
そこに倒れた応竜が言った。
「乙姫?気を取り戻しおったか?」
「応竜様!いえ、お父様」
「その蛟の盾を持って龍神界を去るが良い!」
「………」
「お主が背負った力はやがてこの龍神界だけでなく世界をも終わらす力となろう…お主には重い運命を背負わせてしまったようじゃ…」
「私はどうしたら?」
「今は去るが良い!いずれその力を制御する手段を見付けるまで…」
乙姫は頷くと、
「私は…去ろう。私はこの龍神界を愛しているからな…」
それが、あの日に起きた真実…
それが蛟魔王の背負った地獄の始まりだった。
だが、真実を唯一知る応龍もその日を境に意識が戻らず、真実が闇に葬られ、蛟魔王が反逆者として竜神界からの討伐が命じられたのだ。
次回予告
凶神と化した蛟魔王
だが、全てを確信した万聖竜王が挑む。




