蛟の盾の力!恩と仇?決意の浦島!
玄竜を倒したのも束の間、新たに事件が起きたのだ?
しかも、その首謀者が乙姫??
何がどうなって?
龍神殿を襲った者が乙姫様だって?
俺、浦島は八大竜王と共に竜神殿に急ぎ戻った。
「そんな馬鹿な…乙姫様に限って…」
俺は聞いてもまだ信じられないでいた。
あの乙姫様が反逆しただって?
乙姫様は八大龍王[難陀、跋難陀、沙伽羅、和修行吉、特叉迦、阿那婆達多、摩那斯、優鉢羅]が留守になった所で、乙姫様ががら空きになった龍神殿に忍び込み、奉られた三種の神器から二種を奪ったとの事なのだ。
「そもそも三種の神器とは何なんです?沙伽羅さん」
「それは…」
龍神族が太古より守りし三種の神器がある。
天界の神との大戦の切り札であり、究極兵器。
だが、その三種の神器は全て神殿の封じられし間に固く閉ざされ、龍神族の長である黄龍王にのみ使用を許されていた。この三種の神器の存在が天界も手を出せずに抑止力になっていたのだ。この三種の神器を失えば天界との力の均衡が崩れる。
そうなれば龍神界は天界に滅ぼされかねん。
「それなのに乙姫様は何故?」
「浦島!」
跋難陀殿に名を呼ばれ反応する。
「えっ?はい?」
「お前はこの度の件は本当に知らなかったのであろうな?」
跋難陀が俺を疑っていた。
俺と玄竜との戦いが八大龍王を神殿から離すために全て仕組まれていたなら、その当事者である俺にも共謀していると考えたのだろう。
「あら?浦島を疑っているの?安心しなよ?」
「こいつは嘘が付けるほど利口ではないからな」
沙伽羅さんと和修行吉が俺を庇う。
「なら、良かろう!だが、乙姫に関しては重い重罰を与えねばなるまいな」
「ちょっ?ちょっとお待ちください!乙姫様には何か理由があるはず!俺が乙姫様を説得致します!だから俺に乙姫様をお任せください!」
「もし乙姫が本当に龍神族を裏切ったのならお前が乙姫を始末するのだ。良いな?」
「!!」
俺が乙姫様を始末するって?
俺と八大龍王が龍神殿に着くと、既に神殿は崩壊していた。そして乙姫様は龍神界から地上界へと逃亡するために空間移動装置のある西の森の祭壇へと向かったのだと情報が入る。
龍神界から逃がすわけにはいかない…
八大龍王は龍神の軍隊を率いて乙姫様の向かった西の森に急いだ。
逃亡中の乙姫様には既に追手が足止めしている。
急げば地上界に出る前に取り抑えられるに違いない。
西の森の祭壇
その森には湖があり、湖の上には巨大な鏡が浮いていた。
その鏡から外界へと移動出来るのだ。
ここに来るまでに傷付いた龍神兵が何人も倒れていた。
これも全て乙姫様が?
その時、闘気のぶつかり合う気を感じた。
これは数人の龍神兵達と乙姫様が戦っているのか?
俺と八大龍王達は感じた方向に急いだ。
既に戦っていた龍神兵の気は消えていた。
俺達が駆け付けると、そこには倒れた龍神兵が見えた。
そして、上空に浮いた転送の鏡を背に、乙姫様が!
「急いだつもりだったが、もう追い付いて来たようだな」
声…オーラ?
それは正しく乙姫様本人だった。
「乙姫様ぁああ!どうしてこんな事を?どうして…どうしてぇええ!?」
俺の叫び声に気付いた乙姫様は、
「浦島か?よく玄竜を倒せたな?」
「そんな事よりも何故?乙姫様が反逆を?もう止めましょう?今なら俺から頼んで許して貰えます…そりゃ…何か罰があるかもしれませんけど、誠心誠意謝罪すれば…きっと許して貰えますからぁ!」
乙姫様は無言だった。
理由も返答もなかった…
そんな俺の肩をを押し戻すように払い除け、八大龍王達が前に出る。
難陀殿は乙姫様に宣告する。
「四海龍王・乙姫!お前の無謀は許し難い。数多くの龍神族の戦士の命を奪い三種の神器を略奪した事はこの場にて我らの手で極刑とする!」
「待っ…」
俺が止めるから待ってくれ・・・
だが、八大龍王達は一斉に乙姫様に向かって飛び上がり襲い掛かったのだ。
「光栄だな?私一人相手に八大龍王が総力を持って向かって来るとは!ならば私も反則技を使うとしようか?」
乙姫様は既に腕に装着していた盾を天に掲げ、己の龍気を注ぎこんだのだ。
あの盾は間違いなかった。
龍神族が守りし三種の神器の一つ。
「蛟の盾」
乙姫様の龍気が注ぎ込まれた蛟の盾は神々しく光輝き、一帯に閃光を放った。
「まさか?神器に認められたと言うのか?」
三種の神器は持ち主を選ぶと言われていた。そもそもそんな最終兵器があったにもかかわらず、今まで使用しなかった理由はそこにあったのだ。
乙姫様は、その神器の一つである「蛟の盾」の所有者として神器に認められた。
蛟の盾から異常なまでの龍気が立ち込めると、乙姫様の背後に巨大な龍が現れたのだ。
それは翼のある龍の姿…
蛟と呼ばれるその竜は乙姫様の身体の中へと救出されていく。
八大龍王達は怯んでいた。
蛟の力を手に入れた乙姫様の力は、三種の神器その者と言って良かったからだ。
「死にたいか?この力を前にして向かって来るのなら、等しく死を与えよう。だが見逃せてくれるなら私はお前達に手を出さずに立ち去ろう!」
乙姫はそう言って転送の鏡に手をやる。
「たとえ蛟の力を得ようとも、我ら八大龍王がみすみす反逆者を逃すと思うか!」
八大龍王達は転送の鏡を中心に、乙姫様を囲む。
「馬鹿者達だ…」
直後、乙姫様の覇気が八大竜王達を弾き飛ばしたのだ。
が、八大竜王達もまた凄まじい覇気を放ち堪えると、自らの持つ力を持って立ち向かう。
「はっ!!」
俺は我に返った。
上空では乙姫様と八大龍王達が激しい戦いを繰り広げていた。
俺に出来る事…
俺がやらねばならない事…
俺は拳を握り締め立ち上がった。
そして決意を胸に、乙姫様と八大竜王達の戦場へと向かったのだ。
駆け付けた俺に、沙伽羅様と師匠の和修行吉様、特叉迦様が救援に喜ぶ。
「少しでも戦力が欲しかったのよ?どう?戦える?」
「お前は俺と一緒に先陣にて追い込むぞ!」
「何としても外界に行かせる事は阻止せねばならん!」
俺はそのまま飛び出し、乙姫様に向かって突っ込む。
「馬鹿者?何を!?」
俺は乙姫様の前まで行って振り返ると、
「すんませんです。やっぱし俺、見付かりませんでした!たとえ反逆者になろうとも、乙姫様に刃を向ける理由が見付からなかったんです!」
「あんた…」
「恩義ある皆さんには裏切る形で悪いと思いますが…そんな訳で俺は乙姫様と一緒に反逆しますんで、皆さんもその気でお願い致します」
俺は槍を構えて、背中にいる乙姫様に言った。
「ここは俺が食い止めますんで、乙姫様は先に向かってください?俺も直ぐに追い掛けますんで?さぁ!」
俺は乙姫様を押すと、その勢いで乙姫様は転送の鏡に入って行く。
「そうはいかせん!」
八大龍王が向かって来る中、俺は単独で迎えたつ。
「俺の再生の力は半端ないっすよ!」
消えて行く乙姫様を見届け、俺は覚醒した力で八大龍王に反旗を翻した。
屈強な八大龍王の猛攻…
「馬鹿な子!」
沙伽羅様は悲しげに俺に刃で斬りかかる。
師匠である和修行吉様は俺に手加減なく剣を降り下ろす。
恩を仇で返しながらも俺は後悔しなかった。
そこに、特叉迦殿が力を発揮させた。
「反逆した者に情けはない!」
特叉迦様は塞がれた瞳を開き破壊の力を放ったのだ。
あの力は見た者全てを塵とかす魔眼…
その力の秘密は細胞の活動を止める力なのだ。
なら、俺も手加減しませんよ?
俺の再生の力と魔眼の力がぶつかり合い、閃光が放たれ、その閃光に全てが飲まれた。
八大龍王達は光の中を俺に構わず乙姫様を追おうとする。
「乙姫様を追いたいなら俺を倒してからにしないと駄目だと思うぞ!!」
俺は覇気の壁を作り、八大龍王の行く手を阻んだ。
「とことん邪魔するなら覚悟するのだな」
摩那斯と優鉢羅の躱しきれない斬撃が俺を斬り裂いた。血が噴き出し意識が飛びそうになったが、直ぐに掌を胸に押し合て再生の力を使う。
血まみれで再生するが、追い討ちをかけるように難陀と跋難陀が俺の背中を斬りつけた。
「うぐぅわああ!」
「お前に時間を費やす暇はない…惜しいが消えて貰うぞ」
特叉迦が再び俺に向かって破壊の魔眼を使った。
俺の身体が粉々に塵と化していくのが解る…
「時間稼ぎも出来ない俺に…乙姫様を守る資格を見付けられない…」
俺は最期の力を振り絞り、ありったけの再生の力を自らの身体の中で凝縮させ…
暴発させた!
「まさか…自爆だと?」
「あんたって…」
全てが光に飲み込まれていく…
乙姫様を送り出した転送の鏡も光に飲まれて消滅していった…
これで追う事は出来ない…かと思う。
俺は、乙姫様の…
手助け、出来たですか?
乙姫様…
必ず、俺が迎えに…
だが、俺もまた光に飲み込まれて塵と化して消えたのだった。
次回予告
塵と化した浦島は生きていた。
だが、再び目覚めた時、物語は反転する。




