浦島の葛藤?見付けられない・・・
突如の襲撃!
その首謀者は、
浦島がよく知る相手だった。
俺は…浦島…
乙姫様の城を襲い、俺が空けた城を落としたのは?
四海龍王の玄龍…
いや…そいつは俺が昔助け、しかも乙姫様の従者であった亀老人だった。
「あはは…玄龍が亀老人…あんただってのはマジにびっくりしたさ…でもよ?違うよな?あんたが乙姫様の城と俺の城を襲った張本人じゃないんだろ?あんたは、駆け付けただけなんだろ?」
俺の質問に亀老人は平然と答えた。
「己の目で見た現実を受け入れられないようだな。浦島よ」
「冗談だよな?あはは…違うんだろ?」
「愚か者!ならば今一度その寝惚けた目で現実を見るが良い!」
「えっ?」
すると、玄龍の身体から龍気が高まっていく。
何をするつもりなんだ?
玄龍の高まった竜気は握られた大型の剣・亀甲剣に集約されると、その剣を俺の城に向けて放ったのだ。一瞬の間の後、光と轟音が城を覆い、消し飛んだ。
「馬鹿な…あの城にはまだ逃げ遅れた仲間がいたはずだろ?」
「これでもまだ信じられぬか?ならば今度は主の身体に教えてやろう!」
「あっ!!」
玄龍の亀甲剣が俺の眼前に降り下ろされたが、咄嗟に俺は槍で受け止める。
「どうして、あんたがこんな事をすんだよ!」
対峙した俺に玄龍は剣に力を籠めて言った。
「儂が龍神界を滅ぼす!そこに理由はあらん!」
そう言って、俺を力付くで弾き飛ばした。
「うぐぅわああ!」
これが亀老人の本当の力?
以前、乙姫様が言ってた…
亀老人は若い頃は大海を荒らし回っていた名のある武神だったのだと…
しかも龍族に匹敵する玄武神族で、今は龍族との和平のために仕えていると聞いた。その時は信じられないと笑って聞いていたが、四海龍王に昇格し、受けてみて解る実力に身をもって納得した。マジに強いわ・・・
「理由は解らないが、あんたがその気なら俺が止めてみせるからな?」
「止めるだと?まだそのような甘い事を?本当にマヌケな小僧よの?浦島よ!」
「何と言われようが俺にはアンタと戦う理由が見つからねぇ…確かに城を壊され、乙姫様に酷い事をしたのは腹が立つけどよ?」
が、その後に玄龍の言葉に俺は自分の耳を疑った…
「お前のカカァを手にかけた張本人を前にしてまだそんな事を言ってられるのか?」
えっ?
なっ…何を言って?
カカァは病気で死んだんだぞ?
いや、だが内心俺の力が原因だったのではないかと思っていたくらいだ。
俺の再生の力は相手を治す力があると同時に、使いすぎると逆に死なす恐ろしい力であった。
使い方を誤れば…
昔の俺は無意識に力を使っていたから、もしかしてカカァは俺の力で死なせてしまったのではないかと思っていたのだ。
確かにあの日…
前触れなく俺が留守にして戻って来た直ぐに苦しみ出して死んだ…
あれ?
「お前が小屋を出たあの間に、儂が邪魔したのだよ?そして…」
「止めろ!それ以上言うなよ!」
俺は玄龍の言葉を遮り止めた。
「薬を飲ませて殺したのだ!」
時が一瞬、止まった。
何か…
思い当たる節があった。
俺が戻って来た時に、小屋の中から生臭い生き物の気配を感じたのだ。そしてカカァが何かに怯えるように死んだから…
「何のために…」
俺は怒る理性を押し込めて考える。
「乙姫様を助けるために…俺を龍宮城に連れて行かせるため…なのか?」
「………」
「カカァがいたら俺が竜宮城に行けないと思っての苦肉の策…なのか?」
もし、そうなら…
俺は怒る心を無理してでも押し留めてやる!
乙姫様を案じて…
手段は許せずとも、玄龍もやむ無くの事だったに違いない…
俺が我慢さえすれば…
玄龍は言った。
「儂が再び龍神界に戻るためじゃよ?そのためには乙姫の身体が良くならんといけないからな」
えっ…
「そして再び儂は権力を手に入れた!儂には今や龍神界に不満を抱く一万の兵がおる。これにて儂は龍神族に反旗を翻そうぞ!」
言葉を整理する前に何かが頭の中で弾けた感じがして、気付くと俺の身体は動いていた。
俺は一直線に玄龍の喉元目掛けて槍を突き付けたのだ。激しい衝撃が俺の槍を弾いた。俺の槍は玄龍の盾によって弾かれたのだ。
「儂の防御力は竜神界一じゃぞ?」
「そんなもの!」
再び俺が玄龍に突きかかると、今度は何処からか飛んで来た足下に刺さった矢によって止められたのだ。
「今度は何だよ?」
すると俺は囲まれていたのだ。
そいつらは龍神族の兵士であった。
「先程言ったであろう?儂には儂に従う直属の兵士一万がおるのじゃ!」
「!!」
その者達は玄龍自ら育て上げた龍神兵だった。その者達は皆、竜と別の異種が混ざった融合種の集まりであった。彼等を従える玄龍もまた龍と亀の血を持つ融合種なのだ。
「つまり融合種が生粋の龍神族に反旗を翻したんだって話か?そうか…」
なら…
「同じく人間と龍族の融合種である俺が責任持ってお前達に天誅をくだしてやるよ」
「!!」
「と、言っても俺は龍神族とか…融合種とか…そんなものに興味も劣等感も感じたりはしない…。俺は何せ龍神の中でも高貴な乙姫様の血を受け継いだ特別な男なんだからな!」
俺に向かって刃を持った兵士達が襲い掛かって来た。
「あはは…俺は今、とても気が荒れているんだ…手加減は勿論…あ、いや…もう解んないや…」
『死ぬぞ?』
俺の中で何かが吹っ切れた。
俺に接近した兵士達が、一瞬にして消滅した。
「俺の再生負荷の力は塵も残らないからよ!」
だが、龍神兵達は構わず向かって来る。剣を突き付け、降り下ろし、龍気を放って来た。俺は飛び上がりると向かって来た兵士達に再生の光を放つ。
光を浴びた兵士達は言葉もないまま消滅する。
「乙姫様を泣かす者には生かす理由が見つからない!」
一万の龍神兵達が一斉に襲い掛かって来た。
「これ程とは…」
俺は血にまみれて立ち尽くしていた。
塵が風に舞い、命が消えた。
そして俺の姿は命を喰らい万の血を浴びて龍神化していたのだ。
「力がみなぎる…龍の血を大量に浴びて龍神変化したのか?」
俺は獲物を狙うように玄龍に向かって槍を突き刺した。
玄龍は背負っていた甲羅を眼前に向けて大盾として受け止める。
「乙姫を守ると言うお前の覚悟を見せてみよ!」
それは四海龍王同士の戦いだった。
互いの覇気が大地と空を震撼させた。
その戦いは
龍神殿を守護する八大竜王の耳にも入った。
水晶から映し出される俺と玄龍の戦いを見て、
「何を馬鹿な争いを!」
「天界との戦時下で仲間割れとは…しかも四海竜王である二人が戦うとはもってのほかだ!」
「直ぐに二人を止めねばならん!」
八大龍王が揃い踏みし神殿から出兵したのだ。
八大龍王が出兵する事事態、異例であった。
それだけ状況が最悪なのだ。
四海龍王が仕切る四つの城のうち、玄龍は城を放棄した挙げ句に反乱。乙姫様と俺の城も崩壊寸前。残るは青龍が守る城だけだった。
この状況を鎮めるにはもう八大龍王が出陣するしかないと思われたのだ。
そして、
「うぉおおお!」
俺は覇気を籠めた槍を突き、玄龍は盾で弾き、その盾を武器に振り回し俺を攻撃する。
そこで俺は拳に再生負荷の力を籠めて盾を殴りつけた。
が、びくともしない?
「俺の再生の力まで効かない盾なのか!」
「さぁ?もう少し足掻いてみよ?もう少しなのだ!もう少し…」
「もう少し?何がだ?」
「…何でもない。少し口が滑ったようじゃ!」
玄龍の盾が俺に直撃し俺は弾き飛ばされた。
俺の鎧が砕けて、胸に深い傷を作った。
痛い…
その痛みは傷ではなかった。今まで世話になっていた亀老人をカカァの仇として戦っている事。さらに長きに使えて来た乙姫様を裏切った事で、乙姫様がどれだけ胸を痛めているかと思ったら…
「俺は…玄龍、いや?亀老人!あんたを俺の手で殺さねばならねぇ!」
その時、上空から幾つもの強烈な力を感じた。
その力の正体は間違いようもなかった。
八大龍王!!
すると玄龍は空を見上げて僅かに笑みを見せて言った。
「ようやく来おったか…」
玄龍の言葉の意図が解らなかった。
しかし八大龍王が到着したら、玄龍は彼等の手で始末されてしまうに違いない…
そんなんは駄目だ!!
「俺の手で玄龍を殺さねばならないんだぁ!!」
俺の再生の力が槍に籠められていく。
すると再生の力が流れるように槍先に集中していた。
考えてみたら再生の力を武器に籠めた事がなかったし、考えてもみなかった。
が、まるで自分の身体のように力が通っていた。
あっ…この槍は俺の腕から造られたんだった?
「あはは…何か使い方が解って来たぞ」
そして、玄龍に叫んだ。
「次の一撃で仕留める!覚悟しろよ」
「来るか」
俺は一直線に玄龍に向かって突っ込んだ。
槍の先に再生負荷の力が集約し、白く輝く!
「儂の盾でその槍をへし折ってやろう!」
再生負荷の力を籠めた槍が玄竜の槍に触れた時…
その盾は槍先から散るように形を消えていく…
「まさか!?」
そして玄龍の盾を消し去った槍は、玄龍の身体を貫いたのだった。
同時に駆け付けた八大龍王達が、その現場を目撃した。
裏切り者の玄龍を俺が討ち取ったのだ。
槍に貫かれた玄龍の身体が少しずつ消えていく…
すると玄龍は言った。
「全ては計画通り…これで儂の役目は…終っ…た」
その言葉を最期に跡形もなく消滅したのだった。
何が計画通りだ?
その時、到着した八大龍王達が騒ぎ始めたのだ。
それは緊急の伝令…
龍神殿を八大龍王が空けたその隙を狙い、龍神殿が襲われたのだと?
まさか他にも共謀者が?
玄龍は八大龍王を誘き寄せるための囮だったと言うのか?
そして、伝令から龍神殿を襲撃した者の名前が告げられた。
襲撃者の名は…
四海龍王の乙姫様だと…
次回予告
何が起きた?何が起きた?
乙姫の反逆?
その時、浦島は?




