指名する?まさかの意外な助っ人!
金角と銀角の持つ神具・魔法の瓢箪に三蔵と孫悟空が吸い込まれてしまったのだ。
残されたのは八戒と沙悟浄は二人を助けられるのか?
は~い!沙悟浄です!
私達!とんでもない大ピンチなんですよ~!
金角に名前を呼ばれて返事をしてしまった三蔵様と孫悟空兄貴は、持っていた不可思議な瓢箪の中に吸い込まれてしまったのです。
「お前達!三蔵様と孫悟空兄貴をどうしたのですか!?」
「ふふふ。この瓢箪の中だよ!」
金角は私達の前で瓢箪を振って見せたのです。
「瓢箪って?そんな馬鹿な?有り得ません!」
「この瓢箪はな!名前を呼ばれ返事をした者を吸い込み、酒に変えてしまう瓢箪なんだぜ!」
「しかも霊力の強い人間を吸い込めば、それは超神酒となるのだ!」
そう言うと金閣は瓢箪に口を付け中の酒を飲み始めると、身体が光り輝き妖気が膨れ上がったのす。
「さてと…次は雑魚掃除を始めるとするかな~!」
そう言いながら銀角は私達が雑魚だと見下すと、その姿が再び人の姿へと戻っていく。
「おおっ!?」
「きゃあ!」
八戒兄貴も私も、恐怖に抱き合っていました。
「兄じゃよ?こいつ達の始末は俺に任せろよ!」
「まぁ、良いだろう!あんまり時間かけるなよ?」
「分かってるさ!ちょっとしたお遊びさ!」
金角は冷気で氷の岩を作るとそれに座り込み、銀角は氷の鎌を振り回しながら私達に近付いて来たのでした。まさに大ピンチの私達!その頃、瓢箪の中に吸い込まれた三蔵様と孫悟空兄貴は本当にお酒に変えられてしまったのでしょうか?
ここは瓢箪の中・・・
吸い込まれる直前に孫悟空兄貴が呼び出した金斗雲の上で無事にいたのです。
しかし三蔵様と孫悟空兄貴は瓢箪の中でも喧嘩を続けていたのでした。
「この馬鹿猿が!」
「だってぇ~」
「だってぇ~!じゃねぇぞ!」
「突然、思い出しちまったんだから仕方ないだろ?」
「キサマ!わざとじゃないだろうなぁ?何故あのタイミングで思い出すのだ?どう考えても変だろ!」
「そんな事言ったって…俺様も一緒だから寂しくないだろ?」
三蔵様は孫悟空兄貴の頬を掴み引っ張り上げたのです。
「イテテ!ごめんなさい!って、何度も謝っているだろ!それにしても、ここは何処なんだよ?」
「多分、瓢箪の中だろうな。何らかの呪法で造られた神具であろう」
「神具?」
神具とは武器や道具に特別な術法で特別な能力を与えられた道具・武器の事です。
「それにしても真っ暗だな~周りが何も見えねぇぜ!」
「猿!四方八方に気を飛ばしてみろ!」
「気か?おっしゃあ!」
孫悟空兄貴は気を集中させ四方八方に飛ばしたのです。
しかし暫くするとそれは闇の中に消えて行ったのでした。
三蔵様は孫悟空兄貴の放った妖気弾の光りで、この空間の広さを見極めると、
「くそっ!底無しか!」
脱出手段がなく手も足も出ない状態だったのです。
再び場所変わって、
私達のいる外世界では?
「ガッハハハ!弱い弱い!」
私達は銀角に襲われていたのでした。
吹き飛ばされる私達!
「ふひゃあ!三蔵様と兄貴が戻って来るまで耐えないと!ですよね?八戒兄貴!って、あれ?八戒兄貴は?」
辺りを見回すが、何処にも八戒兄貴がいなかったのです…?
気付くとファンさんもいない?
まさかと思いますが…
いつもの、あれかぁー!!
「あ~の!糞豚兄貴~!また先に一人で逃げやがったぁ~!」
その頃八戒兄貴はファンさんを抱え、黒い雲に乗って飛んで逃げていたのでした。
「こりゃ~ヤバいらぁ!三蔵はんも猿も死んじまったら~!これじゃ義理も友情もあったもんじゃないらよ!多分死んじまったらな…死んだら…オラの出番はないらな。無理はよくないら。無理は身体に悪いらよ~」
と、自分自身に言い訳をしながら納得する最低最悪の八戒兄貴に対して、
「豚様?本当に逃げて宜しいのですか?」
「大丈夫ら!多分オラには何も出来ないだろうし!それにファンちゃんを安全な場所に避難させないといけないらよ。言い訳じゃないらよ?」
ファンさんは冷めた目で八戒兄貴を見つめたのです。
「あっ…その冷やかな目は止して欲しいら…」
再び、場所変わって取り残された私は?
「逃げた…あの豚逃げやがった!使えねぇ~あの糞豚!」
それにしても、マジにどうしましょう私?
金角と銀角は憐れな私を見て、大笑いをしていたのでした。
「懸命なる判断だ!だが、お前は逃がさないぜ?」
「くそ…ここで逃げたら河童じゃない!」
私は覚悟を決めて勇敢にも金角と銀角の前に立ちはだかったのでした。
「俺達とやるつもりか?雑魚の分際で?嘆かわしくも愚かな馬鹿だぜ!」
(あの馬鹿…)
「えっと~」
私はテコテコと金角と銀角に向かって近付いて行く。
そして二人の目の前に立ち止まった私は、
「秘技!河童ブーメラン!」
私の頭の皿から強烈な閃光が放たれたかと思うと、無数の皿が飛び散り金角と銀角を襲ったのです。
が、当然何のダメージも与えられない?
当たった輝く皿は割れて消えていく。
ハイ!
ただの目くらましの技ですから!
だけど、これで良いのです!
私の目的は!
私は突然の閃光に目を眩ませた金角に!
いえ!金角の持っている瓢箪に向かって飛び付いたのでした。
あの瓢箪さえ奪えば、三蔵様と孫悟空兄貴を元に戻せるに違いない!
私の伸ばした手が金角の持つ瓢箪に触れる。
瓢箪さえ奪えば、後は猛ダッシュで逃げるだけです!
が、私が伸ばした腕は金角に掴まれて、計画は阻止されたのでした。
金角と銀角は更に大笑いをしながら、私をつまみ上げたのです。
「こんな奴、酒にする価値もない!」
金角は私を蹴り飛ばすと、吹っ飛んだ私を更に銀角が蹴り返したのです。
それはまるで、いたぶり遊んでいるかのようでした。
(あの…馬鹿…直ぐに逃げないから…)
ついに金角と銀角が私にトドメを刺そうとした時!
(くそ!くそぉ!仕方ねーら!)
二人の上空に影が過ぎったのです?
すると何者かが上空から巨大な塊を持って、飛び降りて来たのでした!
あれは?
「ウゥラアーーーー!」
それは戻って来てくれた八戒兄貴だったのです。
「裏技奥義!巨大糞殺牙死!」
※キョダイフンコロガシ
八戒兄貴は、巨大な糞の塊を金角と銀角に向けて落下させたのです。
「何て事をしやがるんだ!あの豚野郎!」
銀角は氷の鎌を振り投げて巨大糞を斬り裂き、同時に上空の八戒兄貴をも斬り裂いたのです。
が、その八戒兄貴は粉々に砕け散ったのです。
分身?
「今らよ!」
八戒兄貴は傷ついた私を抱えて、建物の影に隠れたのでした。
「大丈夫らか?」
「はっ…八戒兄貴?戻って来てくれたのですね?た、助けてくれたんですね?ありがと~う!ありがと~う!」
「泣いてる暇はないらよ?このまま逃げるら!」
「それは出来ないですよ!三蔵様と孫悟空の兄貴を助けなきゃ!」
「そんな事言ったってなぁ~オラ達だけでどうするらよ?」
そこに!
「くそっ!ふざけやがって!汚いまねを!頭に来たぞ!グルル!」
怒り心頭の銀角が私達のいる方向に向かって来たのです。
「俺の嗅覚を甘くみるなよ?お前達の居場所が解るぜ!」
「こなくそ!秘技・鼻超沈!」
※ハナチョウチン
八戒兄貴は鼻から大量の粘液を出したのです。
「ぐおっ?なんじゃこりゃ~」
足元がネバネバして身動き取れなくなった銀角から逃げる私達だったのですが、
「えっ?」
その逃げ場を塞ぐように金角が私達に向かって氷柱を投げ逃げ道を塞いだのです。
「どうするら!」
「万事休すですよ~」
私達は完全に追い詰められたのです。
「お前達…散々虚仮にしてくれたな?殺す!引き裂き殺してやるぞぉー!」
銀角が鎌を振り回すと上空に巨大な氷柱が現れたのでした!
それは幾つもの氷の刃となって、私達に向かって落下して来たのです。
「うわぁ~」
「うぐわ~」
砂埃と粉塵が舞う中、
「あああ…」
「オラ達死んだらか?」
「多分、切り刻まれ、木っ端みじんですよ…」
「オラ、痛いのはいやら…」
「私もですよ!」
あれ?あれれ?
『痛くない?』
私と八戒兄貴は恐る恐る顔を見上げると?
「あっ!」
「あいつは!」
銀角の放った氷柱が直撃する寸前に、私達を守るように赤い鉄板が突き刺さり、それが防御壁となって私達を守ってくれたのです。
赤い鉄板?
私達には見覚えがありました。
すると鉄板の上で何者かが座り、私達を見下ろしていたのです。
「おっほほほほ!大丈夫?河童ちゃん!」
「貴女はやっぱり!」
その方は紅色の衣を纏い、黒髪の美しき美少女。
しかも彼女の持つ妖力は間違いなく最高級!
彼女は間違いなく私達の知る方!
「鉄扇様ぁ!」
「お久しぶり~河童ちゃん!ふふふ。良かったら私を指名する?しない?」
ハイ!速答します!
「是非とも指名させてください!」
彼女の名前は『鉄扇』
以前、私達三蔵一行を襲った女妖怪なのでした。
「女、何者だ!?」
「邪魔するとお前も容赦しねぇぞ?」
金角と銀角も突然現れた鉄扇さんを警戒していました。
「ふふふ。私を知らない訳?教えてあげるわ!私は女妖怪のボス!美しき狩人!鉄扇ちゃんよ!おっほほほほ!あんた達?私に狩られてみる?」
鉄扇さんは私達のいる場所に飛び降りると、
「鉄扇様!」
「コラ!河童ちゃん!鉄扇ちゃんと呼んでくれなきゃ嫌!それにしても怪我なかった?」
「オラ達を助けてくれたらか?」
「黙れ、糞豚!てめぇには聞いてねぇよ!てか、死ねよ!」
八戒兄貴に対しては目がヤンキーみたいに怖いです。
「鉄扇ちゃん!女の子がそんな顔しちゃ、めーですよ!」
「だってぇ~!コイツ、キモいんだもん!ぶぅ~!鉄扇ちゃんちょっと低反発!」
何か・・・キャラ変わりました?
「オラだってぇ~オラだってぇ!頑張ったら!一生懸命だったら!」
鉄扇ちゃんに全否定されメソメソ泣き出す八戒兄貴でした。
「それにしても厄介な奴達に目をつけられているわね?」
すると鉄扇ちゃんの瞳が真面目な顔付きになっていたのです。
「やはりあの二人はそれだけヤバい相手なんですね?」
「知ってるらか?」
「あん?豚!誰に聞いてんだよ?」
「ああ~!知っているんですか?」
「うん。あいつ達は妖怪盗賊よ!金色の髪の奴が金角!銀色が銀角よ!」
「金角に銀角…」
「強いらか?」
「あん?誰に聞いてるんだ?表出ろや!豚ぁ?」
「もう嫌!」
「有名なんですか?」
「有名よ!超有名!噂で聞いた話だけど、天界から落ちてきた最高神の子供を食べた事で、その力を自分のモノにしたと聞いてるわ。しかも難攻不落で有名な天界の宝物庫に忍び込み、五つの神具を盗み出した厄介な奴達よ!」
「鉄扇ちゃんよりも強いのですか?」
「正直、二人相手だと厄介よね。まぁ、ここから河童ちゃん一人逃がす事は可能よ!」
(オラは?)
「それは出来ません。三蔵様と孫悟空兄貴があいつ達の持っている瓢箪に閉じ込められているのです!何とかして助けなきゃです!」
「まだそんな事言ってるらか?」
「そう…分かったわ!私も手伝ってあげるわ!」
「本当ですか?ありがとうです!鉄扇ちゃん!でも、どうして?」
「私は受けた借りは必ず返すのが流儀なの!」
私と鉄扇ちゃんは手を握り合ったのでした。
「もう勝手にするらよ…」
私達にあの鉄扇ちゃんが味方になってくれたのです。
こんなに心強い助っ人はいませんよ!はい!
これで三蔵様と孫悟空兄貴を助けられるかもしれないです。
私達が鉄扇ちゃん登場に感激していると、私達を守るように壁になっていた鉄板が砕け散ったのです。
「お遊びはおしまいだ!」
「早く殺しちゃおうぜ?兄じゃ!」
金角と銀角が揃って現れたのです。
「そうはいかないわよ!」
金角が氷の剣を振り払うと、鉄扇ちゃんも鉄の扇を振り払い激突する。
「ほぉ~?俺の神気を融合させた氷の剣を受け止めるとは、お前も神気使いか?」
「だったら何よ?」
「今の妖怪世界では、神気を習得してこそ真の強者と言えよう!だが、お前の付け焼き刃の神気がいつまで俺にもつかな?」
「!!」
神気とは?
金角が氷の剣に神気を融合させているのに対し、鉄扇ちゃんも扇に風の神気を融合させていたのです。
神気を融合させた力は殺傷能力や破壊力が普段の数十倍にも膨れ上がるのです。
しかし二人の間には決定的な差があったのです。
鉄扇ちゃんは神気を修行で手にいれた事に対し、金角と銀角は天界の神を喰らった事で神気を手に入れたのです。つまり使える容量に差があるのです。
「ふん!あんまり私を甘くみない事ね?」
『奥義・鉄扇攻守!』
鉄扇ちゃんの持っていた札から、無数の鉄板が出現して宙に浮く。
ちなみに鉄扇攻守とは、紅色の鉄板を攻撃と防御の陣形が蓮華の花のように形どり、自由自在に操りながら攻守を兼ねる鉄扇ちゃんの必殺奥義なのです!
鉄扇ちゃんの出現させた鉄板が金角・銀角に向かって飛んで行く。
銀角は金角の前に出て、氷の鎌を振り回しながら飛んで来た鉄板を全て払い落とし、そのまま鉄扇ちゃんに向けて氷の鎌を投げ付ける!
「俺も混ぜろやぁーー!」
鉄扇ちゃんは向かって来た鎌を飛び上がり躱し、背中に背負っていた大型の鉄の扇を投げ付け、その上に飛び乗り銀角に向かって行く。更に鉄扇ちゃんは懐から新たな鉄の扇を抜くと、銀角の振るう鎌と激しくぶつかり合ったのです。
凄まじい衝撃が大地を震わせる中で、私と八戒兄貴は鉄扇ちゃんとの会話を思い出していたのです。
「私も長くはもたないわ!だから、私が隙を作っている間に何とかしてあいつらの持っている瓢箪を奪うのよ!」
瓢箪ですね!
三蔵様と孫悟空兄貴が封じられている瓢箪さえ手に入れれば、何とかなるかもしれない。
既に私達は鉄扇ちゃんに尻に敷かれていたのでした。
「唸れ!抜傷扇!」
鉄扇ちゃんの扇から放たれた真空の刃が銀角でなく、観戦して見ていた金角に放たれたのです。
金角は油断して持っていた瓢箪を落としたのでした。
「今のうちですよ!」
私と八戒兄貴はほふく前進しながら瓢箪へと少しずつ近付き、
「今らぁ~!」
チャンスとばかりに、金角の落とした瓢箪に手を伸ばし飛び付いたのでした。
が、私達は見えない壁に邪魔されて衝突してしまったのでした。
この壁は氷の壁?
そこに鉄扇ちゃんとバトルしていたはずの銀角が目の前に現れて道を塞いだのです!
「何だぁ~?人様の物を…いや?盗賊から物を盗もうなんてあめーよ!」
私達は寸前で銀角に吹き飛ばされたのでした。
「ぐゎあ~!」
「河童ちゃん!」
すると、いつの間にか金角が鉄扇ちゃんにも迫っていて、
「何処を見ているのかな?よそ見なんかしていると首を落とすぞ!女!」
「はっ!」
鉄扇ちゃんが防御を固める前に、金角が鉄扇ちゃんに氷の剣を振り落ろしたのです。
鉄扇ちゃんは咄嗟に扇で防御しましたが、勢いに弾き飛ばされたのでした。
「きゃぁー!」
金角と銀角の前に倒れる私達。
すると金角は拾い上げた瓢箪の中の酒を飲むと、その体力が戻っていき妖力が更に増していったのです。
あれじゃあ、どんなに戦っても勝てないじゃないですかぁ?
反則ですよ~
「女!なかなかの使い手だが、よそ見をしながら俺に勝てると思うなよ?」
多分、私の見る限り金角と鉄扇ちゃんの力は同格くらいでしょう。
なのに、私達に気をとられたばかりに!
そこに、
「兄じゃ!俺にも酒を分けてくれよ?」
「ああ!」
金角が銀角に瓢箪を手渡すと、銀角が瓢箪に口をつけたのでした。
その時です!
「うぎゃあ~!」
突如、瓢箪を口にした銀角が口を押さえ、もがき始めたのです??
「どうしたのだ?銀角!」
「うぎゃああ!熱い!熱い!口の中が焼けるようだぁー!」
銀角に何が?
次話に続く!!
次回予告
孫悟空「また俺様がチョイ役・・・見せ場ない・・・おかしいだろ?これじゃあ!主人公としての尊厳なんてあったもんじゃないぜ!」
三蔵「いったい誰のせいだろうな?」
孫悟空「すみません・・・」
三蔵「だが、気を落とすことはない!次話は思い十分暴れて良いぞ?いい加減俺もフラストレーションが溜まり限界が来てるのだ!ふふふ・・・」
孫悟空「三蔵・・・こえ~よ」




