再生と再生負荷?そして破滅の日?
浦島の覚醒した力とは?
浦島の大出世が始まる。
俺は浦島…
俺は今、乙姫様直属の将軍になっていた。
えっ?突然の大出世?
そうなんだよ。俺は例の闘技場での戦いで、自らの秘められた才能?
そんなんで覚醒したんだ!
あの後は青龍王が乱入し戦いを納めた事で、死傷者は出なかった。
もし俺が相手を殺していたら、今頃檻の中だっだもんな~
けど、龍神界てのは力さえあれば出世出来る。あの日、俺が目覚めた後に何かしらお咎めがあると覚悟していたが、代わりに龍神界での確かな地位と称号を与えられたのだよ…
俺の称号は「守護龍」と呼ばれる、乙姫様直属の正式な守護者になったのだ。
「乙姫様?やはり次は囲みを使いますか?」
「そうだな」
囲みとは罠にかけた敵を誘き寄せ、後方から仲間が囲むように逃げ場を塞ぐ戦術です。
そして俺達が今戦っている相手とは、神…そう天界の神の軍なのだ。
まさか神様を敵に回すとは思わなかった…
けど、立場上俺も龍神族として戦わないわけにいかないし、俺には守りたい方がいるのだ…
乙姫様…
俺が貴女を守ります!
「しかしお前が私と共に戦場に出る事になるとはな。考えてもみなかったよ」
「俺もですよ?実際、戦わないで乙姫様を柱の影からストーカーしていたいですから。マジに」
「変わらないな。お前は」
「変わる?俺は変わりませんよ?いつまでも乙姫様の傍で貴女を守りますから!」
「恥ずかし気もなくよく言えるな」
「あはは」
戦場は龍神軍の優勢だった。
神軍は龍神軍に囲まれて士気が低下していた。
「後は俺が行きますね」
そう言って俺は神軍達の前に飛び降りたのだ。
神軍は俺を見た途端にざわめき始める。
「あいつはまさか?」
俺は既に有名になっていた。
戦場に現れた龍神軍の化け物。
俺が触れた者は塵となって消えていく。
付けられた異名は消滅の死龍!
向かって来た神兵達は俺に攻撃を仕掛けるなり、塵と化して一瞬にして消える。
再生の力は破壊の力…
極度の再生力は肉体に異常な負荷を与え、逆に滅ぼす力となるのだ。
それが俺の持つ力!
俺はこの力でのし上がる事を、いつしか考えるようになっていた。
別に悪い事を考えてる訳じゃないぞ?
俺はただ…
乙姫様を守る俺から、乙姫様に相応しい俺になりたいと欲が出てきたのだ。
無理じゃない…
この力があれば出来る!
はのし上がるんだ!
そして、乙姫様とあんな事やこんな事をして、もう~ブチュとなんかしたりして、お~何か意欲わいてきたぁ~!!
俺はそれからも龍神軍のために働いた。
過酷な進軍に自ら出願し成果をあげていく。
そして俺は新たな称号を与えられたのだ。
それは今まで空席だった四海龍王の座。
ついに俺は…乙姫様と同列の地位まで昇りつめた。
四海龍王は今、青龍様と乙姫様に、更に歴戦の猛者である玄竜だった。
「そういえば玄竜とは顔を一度と合わせた事がないな~?どのような者だろう?まぁ、俺は乙姫様だけ見てれば良いのだけどよ」
俺達四海龍王は定期的に中央竜宮殿に呼ばれる。そこには八大龍王に、我ら龍神達を率いる応龍様がおられる。そして更に龍神の神の王・最高君主黄龍様が君臨しているのだ。
あはは…
「浦島。お前、礼儀は忘れるなよ?」
「作法とか苦手なんですよね?俺は底辺出身の成り上がりですからね」
「はぁ~全く、何故にお前が私と同じ四海龍王になれたのか未だに不思議だよ」
「それは俺が頑張ったからですよ?乙姫様に相応しい男になるために!」
「おまっ?」
「俺は乙姫様に恋してますから!」
俺は照れ真面目に言った。
「本当に馬鹿だね?だけど私は安くないよ?簡単に靡くと思うな?」
「乙姫様は俺にとってのマドンナ!だけど俺は馬鹿だから、追い掛けて、追い掛けて、いつか隣に歩ける男になってみせ…」
言い終える前に、俺は言葉が発せられなくなった。
あれ?
何がどうなって?
俺の口は塞がれていた。
乙姫様の柔らかな唇で?
唇が離れた時、乙姫様は顔を背けながら言った。
「少なくともお前は私の隣に既に歩いているよ?今のはお前の努力に対しての滞貨だ」
「あ…ありとう…ございます」
その後、嬉しくて嬉しくて駆け回って、太陽に向かって叫んだんだった。
あはは…
それからの俺は四海龍王としての務めに励んだ。
「なぁ?浦島?お前の戦い方は力に頼り過ぎてるぞ?気をつけなよ?」
「は…はぁ~」
それは八大龍王の一人、紅一点娑伽羅さんだった。
新人の俺は八大龍王の方々と同行する事があった。
娑伽羅さんとは既に顔馴染みになっていた。
俺は娑伽羅様とお茶を飲みながら話をする。
「で?どうなのよ?乙姫ちゃんとはさ?」
「乙姫様ですか?」
「忙しいのは解るけど、たまには一緒の時間を過ごさないとダメよ?」
「そうですよね…」
因みに娑伽羅様は子持ちのお姉さんなんで、しょっちゅう俺に恋愛のイロハを教えてくれる。半ぶんは楽しんでいるだけみたいな?
そこに別の八大龍王様がやって来た。その方々は俺の師匠の和修吉様と徳叉迦様。和修吉様は俺の剣術や格闘を教えてくれて、徳叉迦様は俺の再生の力の使い方を教えてくれた。それも徳叉迦様も俺に似た破壊の力を持っていらっしゃるのだ。
和修吉様の剣が俺の逃げ場を奪っていく。
俺は剣を弾かれて座り込む。
「終わりか?」
「完敗です…はぁ~」
すると和修吉様は俺に向かって立派な槍を目の前に突き刺す。
「これは?」
「お前には剣より槍のが向いてると思ってな?特注品だ!お前にやろう!」
「俺にですか?ありがとうございます!」
俺は頂いた槍を手にすると、馴染むように振り回した。
「まるで身体の一部のようだ?」
「そりゃそうだ?それはお前の身体の一部から造ったのだからな?」
へっ?
それは初めて和修吉様と剣術の修行をした時に、勢い余って俺の右腕を斬り落とされてしまったのだ。俺は直ぐに再生を試みて何とか出血多量で死ぬ間際で、ギリギリ辛うじて助かったのを思い出した。
そして和修吉様が余った俺の斬り落とされた右腕を手にして言ったのだ。
「これはいらないのか?」
「えっ?あ、はい!捨てちゃってくださいよ?そんなキショイもん!」
「なら俺が頂くとしよう」
「あの~?」
「何だ?」
「もしかして食べるのですか?」
「食べるかぁ!バカモン!」
和修吉様はあの時の俺の右腕を使って、この槍を造ってくれたのか?
何か複雑な気分だなぁ~
でも、強くなるためなら俺は頑張ります!
「俺…!もっと力を付けて、必ず乙姫様と祝宴致します!」
俺は殴られた。
「龍神界のためだろが?」
「は…はい…」
そんな訳で、俺は人間止めた後は順風満帆に生きていた。
あの出来事が起きるまでは…
あの日、俺の領地である城に乙姫様からの使いの者が現れたのだ。
乙姫様が危機だと!?
乙姫様の城が天界の神軍に囲まれていると言うのだ!
俺は自軍を率いて乙姫様の城に向かった。
俺が着いた時、そこでは乙姫様が神軍に捕らえられていた。
まさか?
乙姫様もまた、屈強の戦士!
実は未だに俺は乙姫様に勝てた事がなかった。
そんな乙姫様が何故?
そこにまた信じがたい電報が入った。
それは俺の守護を任されている龍王城が、俺が出兵した後に神軍に占拠されたとの通達だった。
「どういう事だ?」
だが、馬鹿な俺に考える事が出来るのは、乙姫様を救う事だけだった。
俺は飛び出して、乙姫様を救うべく神軍に向かって突入したのだ。
流石に無謀だった。
俺は傷付き、体力が限界の中で乙姫様を救いだした。
はぁ…はぁ…
俺は満身創痍だった。
その時、乙姫様が言った。
「裏切られた」
えっ?誰に?
俺は理由を話さず黙る乙姫様を残し、再び自分の城に戻った。
だが、俺の城は既に全滅していた。
しかも俺の城に攻め混んだ軍は神軍ではなく、同じ龍神軍によってだった。
「何がどうなって?」
すると、俺の前に敵軍の将が姿を現したのだ。
そいつは玄竜だった…
四海龍王の玄竜が裏切ったのだ!!
だが、俺は…
更なる真実に気付いてしまったのだ。
乙姫様の城が攻めこまれ、俺が飛び出して城を空ける事を知る者…
そして何より乙姫様のあの動揺…
俺は玄竜に向かって叫んだのだ!
「あんた?もしかしたら…いや?絶対にそうだ!あんたは亀老人なんだろー!?」
すると玄竜は静かに俺に言った。
「いつかこんな日が来ると思っていたぞ?浦島殿!」
次回予告
まさか四海竜王・玄竜の裏切り?
しかもその正体は昔助けた乙姫の側近の亀老人だった。
浦島の取る行動は?




