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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
天上天下・美猴王伝説!
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竜宮城脱出!生と死の選択?

冴えない青年、浦島は亀に連れられて来た場所は?


海底の竜宮城であった。


そこで浦島は乙姫と出会った。


浦島は乙姫の身体を治した。


乙姫の身体は毒絶魔王の毒に侵され肉体も衰えていた。

そのため治癒能力を持つ人間の男、浦島は残って乙姫の治療の続きをしていた。



「乙姫さん?大丈夫ですか?痛みはないですか?」


「大丈夫だ…けど、お前?」


「はい?何でしょうか?」


「治療中はいつもスケベな顔をしているな」


「そっ!それは乙姫様があまりにも美しいからですよ!俺は貴女ほど美しい女性を知りません!まさに目の保養~一生分の幸せを私は感じているのです!」


「お前、変な奴だな」



と、浦島は調子の良さで乙姫にも好まれ、それなりの待遇で城に滞在した。



「ほぇ~まるで貴族様にでもなったみたいだ~」



浦島の目の前では鯛や鮃の美女の舞いが行われ、美しい音楽が奏でられ、食べた事のない御馳走が並んでいた。


「俺ぇ~こんな御馳走初めてだ~初めてづくしだぁ~」


美しい美女達が浦島を囲み酌をする。

酒なんて、近所の誰かの婚姻の際に飲ませて貰ったきりの贅沢な飲み物だった。



「ありがて~美女に囲まれるなんて~夢のようだ~でも、魚人なんだよな?でも俺は女は見た目で決めるタイプだから気にしないぞ。どんどんチヤホヤしてください」



調子に乗りながら浦島は幸せな時間を過ごした。

そして浦島が来てから二週間近く経って、乙姫も動けるようになるほど回復をした。

自分の役目が終えたと実感した浦島は安心して呟いた。



「もう…十分楽しんだ…夢の時間も終わりだな」



浦島は帰る気だった。

貰った荷物をまとめ、世話になった魚人達に挨拶して回った。



「土産も沢山貰ったなぁ…これだけあれば帰ったら金持ち三昧じゃないか?俺…いつからこんなに幸せになったんだろ?よし!帰ったら直ぐに若くて美人な働き者の嫁さんを貰うぞ~」



…浦島は嘘が付けない奴だった。


そんな時、背後に亀老人が現れたのだ。



「あっ?亀老人?貴方にも挨拶するつもりだったんだ!俺よ?今日、帰るよ」


「………」


「乙姫様もすっかり元気になったし、俺の役目もないしな?あんまりこっちにいたら俺…ダメ人間になりそうで~そろそろ働かないとバチが当たるよ~あはは」



…浦島は意外と真面目な奴だった。


が、亀老人は浦島に残酷な現実を告げたのだ。



「残念じゃが、浦島よ。お前はもう人間世界には戻れないんじゃよ…」


「じゃあ!乙姫様に挨拶をしてから帰……えっ?」



浦島は自分の耳を疑った。

そして亀老人は浦島にこの竜宮城の秘密を教えたのだ。


そもそもの始まりは四海龍王同士の乙姫と毒絶竜王の戦いが始まりだった。

乙姫は当時四海竜王のリーダーであった最強の毒絶竜王の討伐に志願し、その任を任された。

毒絶龍王は触れる者全てを自らの毒で侵して、その力を奪う力を持ち、既に四海竜王の黒雷龍王を殺めていた。


乙姫は仲間の龍神兵を指揮し、その策を練って毒絶龍王を罠にかけ、激しい戦いを繰り返した後に毒絶龍王を滅したのだ。

だが、乙姫は勝利に油断した時、毒絶龍王が死に際に放った呪毒によって身体を蝕まれたのだ。


しかもその毒は感染し仲間の竜神族をも死に陥らせる。


いつその命が消えるか解らない乙姫を哀れに思った龍神の王は乙姫を封印の城・龍宮城に慰み者として僅かな配下を与え監禁を命じたのだ。


この竜宮城の中にいる者は既に感染しているのだ。



「たまげた…なら俺が他の連中も治してやれば良いんだな?」


「それは確かに助かります。しかしそれだけではないのです。浦島殿…」


「?」



この竜宮城は四角い箱のような結解にて外界から閉ざされ、一度入った者は二度と出る事が叶わないのだ。



「儂と初めて出会った時の事を覚えておりますか?」


「あぁ…怪我を負っていたよな?」


「あれは外界に無理に出たためだったのです」



亀老人は竜宮城にて乙姫を治す手段を調べていた。

そこで外界を見る事が出来る水晶にて完全回復力を持つ能力者である浦島を見付けたのだ。

亀老人は竜宮城でもかなりの力を持っていた。

その亀老人は頼みの綱である浦島を手に入れるために結解から強引に抜け出したのだ。

だが、その身体は結解の力によって剥がれ、満身創痍の状態で浜辺に流れ着いたのだ。



「そこで俺と出会ったんだな?」


「貴方は間違いなく能力者でした。そして儂は貴方を連れて竜宮城に戻る事にしたのです。竜宮城から出るのは困難でも入るのは用意ですから…」


「じゃあよ?俺…もう出られないのか?地上によ?困るよ~」


「………」


「俺…かかぁの墓も立ててやってないし」




…困った所でどうしようもなかった。


乙姫にも、地上に戻らずに竜宮城に一生住む事を望まれた。浦島は地上に戻れないと知って放心状態になったが、次の日には浦島は乙姫だけでなく竜宮城の感染した全ての者を一人一人治していった。 そして、最後の一人を治し終えた時…



「やはり俺…地上に戻るわ!」


浦島には考えがあった。

浦島は自らの腕に貝の刃で傷を付ける。

すると血が流れ落ちるが直ぐに傷が塞がり消えていった。



「ちょっと痛くて苦しいかもしれないが、結解って奴から抜け出して怪我しても、俺…死なないかもしれねぇぞ」



そして、浦島は竜宮城から脱け出す事を決意した。

この事は乙姫にも伝えなかった。止められる事が解っていたから。


「さてと…」


浦島は竜宮城の端にある海との境界線にまで来ると、息を吸い込んで飛び降りたのだ。



「ウグゥオ!」



浦島は勢いよく流れるように竜宮城の外にまで出され、海中に放り出された。



「息はまだ大丈夫…」



浦島は海面に向かって泳ぐ。

すると、巨大な光る縄があった。

それは竜宮城を囲むように覆われていた。

間違いない…



「これが結解って奴じゃねぇかな」



浦島は意を決して縄から外に出たが、その瞬間電撃みたいな衝撃が全身を襲った。


痛みか?熱い?苦しい?


それは人間が耐えられるものではなかった。


身体中が朽ちてはボロボロと剥がれていく…



「うぎゃああああ」



が、剥がれると同時に傷が塞がって…また剥がれる。

それは永久拷問のようだった。


意識が…消え…浦島は死を覚悟した。


竜宮城にて一生分の贅沢をし、幸せだった。

普通に生きていたら二度と味わう事の出来ない幸福だった。


身分不相応な幸福…


思い残す事なんかなかった……なかっ…



「俺…まだ、結婚してねぇーーよ!」



思い残す事があった。

浦島はがむしゃらに腕をばたつかせ、伸ばしたのだ。

すると伸ばした先に光る赤い紐があった。

既に意識はない状態でその赤い紐を引っ張った瞬間……

紐がほどけると同時に竜宮城を囲んでいた光る縄がほどけ、囲んでいた結解が硝子のように割れたのだ。まさに何億分の一の確率。

浦島は結解を解く事が出来る唯一の呪術式の結び目を掴んだのだ。



「うっ・・息が、もう・・」



が、その後は結解が消えた衝撃で濁流に飲まれて海流に流されて行った。


…どれくらい経っただろうか?


浦島は目を覚ました。



「あはは…身体いてぇ~…けど、計算通り…俺は、死ななかったぞぉ…」



後は傷が塞がるのを待つだけだった。

数分経ち、数時間経ち、夜になった。


「あ…あれ?」


浦島の身体は回復するどころか、動く事も出来なかったのだ。

そう…浦島にはもう再生の力を全て使い果たしてしまっていたのだ。

それに気付いた時、浦島は涙した。




「なぁ…なぁんで?なぁんで?こうなった?地上に戻ろうと考えたから?あのまま竜宮城に居座れば良かったのか?俺は…」



すると海水が浦島の背中に濡れるのを感じた。



「まさか…海水がここまで上がって来たのか?



突然の波に浦島は流されて、うつ伏せになった。砂が口に入り咳をしながら、そこで初めて浦島は自分の姿を目にしたのだ。



「これが…俺か?」



浦島の髪は真っ白になり身体の肉は無くなり、ガリガリの痩せ細った姿だった。



「あはは…これが身分不相応の結末か…」



浦島は再び波に打たれて転げながら砂浜に倒れた。

動く事も助けを求める事も出来ない状態で、後は死を待つしかなかった。



「少し遅くなったけど…カカァ…今から追いかけるからな。カカァ…」



諦めた浦島がぼんやりと人影が見えた。


それは、乙姫の姿だった。




「死に際に乙姫様の姿を見れるなんて夢のようだ…いや?夢なのか?夢だな…うん」



再び目を綴じようとすると、


「浦島…本当に馬鹿な男だよ」



その声は間違いなく乙姫本人だった。



「へっ?本物の乙姫様ですか?」


「そうだよ」


「あはは…俺…馬鹿ですから、この有り様ですわ…あはは…最期に乙姫様の美しい姿を見れて…俺、最後の最期に幸せですよ…」




すると乙姫は言った。



「生きたいか?まだ生きたいか?もしお前が望むなら、私はお前に新たな命を与えよう…」



すると乙姫は自らの腕に傷を付け、そこから血が垂れる。


「…何を?」


「生きたければ私の血を飲め?私を助けたお前へに出来る私相応の礼のつもりだ…ただし」






『生きるためにお前は人として死を迎える…そして生まれ変わるのだよ。新たな生として!』




浦島に迷いはなかった。

浦島はすがるように乙姫の手首から流れ落ちる血を飲み、生に執着した。

その直後、浦島の身体に異変が起きたのだ。


朽ちた身体から剥がれ落ちる皮膚の下から鱗が見えて、新たな肉体が露わになった。

激痛の中から浦島は再生した。

次回予告


浦島の新たな人生が始まった。


それは、浦島伝説の始まりだった。

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