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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
天上天下・美猴王伝説!
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それは、ある男の物語?

蛟魔王と万聖竜王との過去に何があったのか?


これは、あの物語の真相なのかもしれないのかもしれないのかな?


昔、男がいた。

男は病弱の母親と二人で暮らしていた。


男は海に出て漁をする。

朝から晩まで漁に出て働き、帰っては病弱な母親の看病をする優しい青年であった。



「かかぁ?魚を取ってくるからよ~。出掛けてくるよ?」



その日も男は漁に出た。

そこで仲間の漁師が話しているのを耳にする。



「なぁ?知ってるか?亀は万年生きるだろ?その心臓を煮込んで食わせれば、どんな病気も治るんだとよ?」



それは単なる噂。理屈も根拠もない与太話。

それでも人間達はすがるように亀を捕らえては食らった。


それは流行の捕食。



「亀を食わせればカカァも治る?そんなんは迷信だ…」



そんなある日、男は海岸の麓にて傷付いて瀕死状態の大亀を見付けたのだ。



「お前、人間達にやられたのか?痛かっただろ?」



男は傷付いた大亀の身体を擦った。男にはそれしか出来なかった。薬もなければ治すための知識もなかった。その時、男は仲間の漁師達の噂話を思い出す。



「なぁ?知ってるか?亀は万年生きるだろ?その心臓を煮込んで食わせれば、どんな病気も治るんだとよ?」



男には病気の母親がいた。だからこそ、すがる思いはあったが、男は自制した。




「俺に無駄な殺生する権利はない…」



漁は生きるため、生活のためだった。

しかし目の前の傷付いた亀を殺す事に理由がない。



「誰かを殺す理由には意味が必要なんだ…俺にはお前を殺す理由が見付からない。だからお前は殺せない。だから安心しろ?」



そう言って海に逃がしてやったのだ。


その夜、男の母親が亡くなった。


男は悲しみに嘆き、深夜に舟を出して漁に出たのだ。

悲しみを紛らわすために、真っ暗な夜の海を男は一人で泣いていた。



「何をやってるんだ…俺は…こんな事をしてもカカァは戻って来ないと言うのに…」




男は涙を流しながら海を見たのだ。


「!!」


その時、何かが海中で動く影を見た。


魚?


「魚にしてはデケェぞ?俺の舟の何倍もあったぞ?」



男は震えながら舟にしがみつき、再び海の中を恐る恐る覗きこむ。


その時、目が合った。

海の中から巨大な目が自分を見ていたのだ!


「あっ?」



男の舟の下には巨大な影が止まっていた。

既に男には逃げ場はなく、腰から舟にへたりこむ。



「オカァ…俺も直ぐにオカァのいる所に逝く事になりそうだぞ…あはは…一度で良いから嫁を貰いたかったなぁ…」



その直後、舟が大きく揺れた。

男の舟は脆く壊れ、男は渦に飲み込まれてしまったのだ。



「あぁ…ぁ…」




気付くと、男は見知らぬ部屋で眠っていた。


「俺…生きてるのか?」



男は周りを見回す。

部屋は男が見た事がないような贅沢な世界だった。

男はまだ夢の中にいるのだと思った。

男は部屋から出て、探索しはじめたのだ。


男がいた場所は城だった。

装飾された壁や廊下に、高い天井。

不思議な球体から光が放たれ明るさを保っている。


たまげた夢だなぁ…


夢に違いなかった。


だって男がいる城は…


海底にあったのだから!?



「ここは天国なんかな?それとも…」



男は右も左も解らないまま城の中を歩き回る。

すると、まるで引き寄せられるかのように、城の中にある部屋の扉の前にいた。



「はて?扉の前に来てしまったぞ?中から音がするが、この扉の先に何かあるのだろうか?」



男は恐る恐る扉を開けた。

そこには、男の前には美しい天女達が舞を踊り、歌声や楽器が聞こえる。



「ここは天国…」


かと思いきや、中にいた者達は男の姿を見るなり、その姿が変わっていく??

その姿は人間の身体に、頭が魚面なのだ!!



「地獄だったようだ…」



男は震え驚きへたり込む。

そして男を囲むように魚人達が集まって来たのだ。



「勘弁してくれ…食べないでくれ…俺が漁師だからか?今まで食った魚達の怨念なんだろ?勘弁してくれ~」



男はもう泣きながら懇願した。

すると、魚人達の間を割って一人の老人が現れる。

老人は人間の男の前で立ち止まると、



「頭をお上げなさい?」


男は恐る恐る顔を上げると、魚人達の中にいる老人の足下にすがり付き助けを求める。



「良かった…俺の他にも人間がいたのか…老人!助けてください…」




老人は男を起き上がらせると、魚人達の間を割って別の部屋へと歩いて行く。

男は意味も解らずに老人に着いて行った。


この老人は何者なのだろうか?



「貴方には礼があります。そして再び貴方に頼みたい事があるのです」


「えっと?俺が貴方に何かしました?」


「儂をお忘れですか?」


「へっ?」



男はそこで目の前に立つ老人の姿が異形へと変わっている事に気付き目を丸くする。老人は甲羅を背負う亀の姿だったのだ。



「あわわ?あんたも亀の化け物だったんだ??」



が、男は気付いた。

亀の姿をした老人の甲羅や身体には多数の傷があったのだ。



「あんた?もしかして?」


「その通りじゃ…儂はお主に助けられた亀じゃよ?」


「おぉおおおお??何だってええええ??」



男はたまげて亀の老人の身体を触りまくり、涙目で言った。


「良かっ…た…」


「良かったとは?」


「いやな?お前が無事で良かったと思ってな?海に帰したは良いが、ろくな治療も出来ないまま放置した形になって…ずっと心配していたんだ…俺」


「ホッホッホッ」



すると亀の老人は男自身が知らなかった事実を告げたのだ。


「えっ?」



それは男の秘められた力の事だった。

男には不思議な力があったのだ。

特異体質?

人間には稀に不可思議な力を持つ者が存在する。


この男にもあったのだ。

男には超回復の能力を持っていたのだ。

言われて思い当たる節があった。

男は一度足りとも病気になった事もなく、漁で大きな怪我を負っても次の日には動けるようになって漁に出ていた。


ちょっと頑丈?

その程度としか考えていなかった。


男は天然だった。



「儂はお主と出会った時に、怪我した身体を回復するため、お主の生気を吸い出していたのじゃよ?」


「はへっ?」


「じゃが、お主は平然としておった。本来なら意識を失うくらい当然だったのじゃがな」


「こわっ!俺、お前に殺されちまうところだったのか?」


「ホッホッホッ」


「笑い事じゃないですよ…」



男の再生力は亀老人が回復する生気量を補うだけでなく、他者に再生の力を分け与える能力もあったのだ。それがとうに死に至るほどの母親の病から今まで命を永らえさせていたのだ。



「俺に?そんな力が?でも、カカァは死んじまったぞ?」


「それは…」


「?」



亀老人はそれについてはそれ以上何も言わなかった。

そして老人は男に願いがあると申し出たのだ。


この城には主君がいる。

その主君は龍神族の四海を支配する王の一人。


四海竜王・乙姫


その乙姫が戦場にて負傷し寝込んでいるのだ。

男は亀老人に連れられて乙姫の眠る部屋に入る。




「何か…ドキドキするなぁ…俺、女の部屋に入るの初めてだぞ」


「………」


「でもよ?俺に本当に出来るのか?」




亀老人が言うには男に乙姫の怪我を何とかして欲しいと言うのだ。

そして亀老人が立ち止まる先に、乙姫の眠るベッドがあった。



「俺…何か…夜這い気分だ…何か興奮して来た…」


「一つ忠告しとくが、乙姫様を怒らせたら塵も残らずに消されるぞ?」


「黙ります。俺…」



そしてベッドを覆うカーテンを開くと、そこには美しい女が眠っていたのだ。



「めちゃくちゃ綺麗なオナゴだぁ…まるで天女様みたいだ…」



すると眠っていた女が目を覚まし、身体を起こす。


「何だ?お前は?」



男は乙姫の美しさに硬直していた。


身体の上も下も…



「こんな美しい女を拝見出来て…俺は…もう死んでも良いやぁ…」



が、男は乙姫に顔面を殴られて、座り込む。



「何だ?この人間の男は?私への供物か?」


「あへ?供物?」



乙姫は口を広げて男に顔を近付けて来る。



「お待ちください!乙姫様ぁ!」


亀老人が慌てて乙姫を止めると、



「その者が、私が話した人間でございます!」


「ほぉ?」



だが、乙姫の身体に負った傷は想像以上に酷かった。乙姫は竜神界を裏切った同じ四海龍王である毒絶竜王の討伐にて、その背に猛毒の刃を負ったのだ。


「私とした事が不甲斐ない…」


「いや!乙姫様はあの同族千人殺しの毒絶竜王を討伐したのですよ?これ以上の名誉はありません」


「が、それで死に至る怪我を負っていたら世話ないだろ?」


「そのために用意したのです。この者を」



突然、話題の人物になった男は戸惑っていた。



「へっ?俺ですか?」


乙姫もまた半信半疑でいた。



「ふ~ん…この人間がか?」


「儂の目に狂いはありませぬ。どうか儂を信じてくださいませ」


「お前がそこまで言うのであれば、騙されたと思い乗ってやろう」


「有り難き幸せでございます」




亀老人は男を乙姫に近付くように命じると、男は恐る恐る生々しい傷が残る乙姫の背中に手を置いた。



「でもよ?どうやってやるのか解らないぞ?」


「お主はそのまま目を綴じて、イメージするが良い?水が身体を廻る感覚を?」


「全く意味解らないですが、俺は綺麗な姉さんの生肌に触れられただけで幸せです」




そう言って男は目を綴じる。


水が身体を廻る感覚?


気付くと、自分の掌が熱くなっている事に気付いた。

男は薄目で見ると、自分の掌が発光していたのだ。


「おわっ?」


「止めるでない!そのまま集中するのじゃ!」


「えっ?あっ、はい!」



男の掌から放たれた光は乙姫の背中の傷に吸い込まれていく。すると見る見る傷が塞がっていくではないか?そして傷痕が完全に消えた時、乙姫が言った。




「お前は私の恩人だよ?人間の男よ。お前の名を何て申す?私に教えよ!」


「えっ?俺の名前ですか?俺の名は…」






男の名前は…


浦島太郎と言った。

次回予告


心優しい青年、浦島は竜宮城にて乙姫と出会い、


その運命が変わって行く・・・

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