頑張れ蚩尤!目指すは玉面魔王のお部屋?
新たな戦力強化のために仲間に玉面魔王を迎え入れに来た。
だが、しかしそこには?
俺は蚩尤
俺は玉面魔王の配下の亜蜘蛛に襲われた。
俺達は何とか逃げる事に成功するも、仲間達は皆バラバラになってしまった。
残ったのは俺と氷狼、炎狼の兄弟のみ。
「どうしますよ?このままじゃ全滅ですぜ?」
「やはり一端退いて本隊を呼んだ方が?」
「無理だな…」
「何故ですか?」
「城に強力な結解が張られてる。俺達はもう城から出る事が出来ない」
「何ですと??」
慌てる二人に、俺は冷静に答える。
「直に兄者が来るはずだ!それまでの辛抱だ!」
「マジに来ますかね?もしかしてあの蟻地獄から抜け出させない…」
俺は氷狼の胸ぐらを掴むと、氷狼を黙り混ませた。
「さて、こうなると俺の活躍が期待されますな?」
「はっ?」
「奴達、昆虫妖怪の弱点は炎なんすよ?」
「何を言っているんだ?お前の炎はあの蜘蛛女の糸で消されただろ?」
「ふふふ…それは奴が蜘蛛の糸に妖気を染み込ませているからですぜ。ただの炎は妖気を籠めた奴の糸では無力だった。しかし!」
「しかし?」
「俺は実験的に炎に妖気を籠めた炎と籠めない炎を分けて噛ましたんだ。計算通り妖気を籠めた炎は蜘蛛女の糸を焦がしていたぜ」
「つまりお前の炎ならあの蜘蛛女を倒せる訳だな?」
「その通りっす!」
「なら、何故さっき殺らなかった?」
「それは実験に夢中になっていたからに決まっているじゃないですか?」
炎狼の頭を殴ってやった。
「とにかく勝機は見えた!」
俺は氷狼と炎狼を連れて再び城の中を捜索する。
途中、化けナメクジやら化けムカデに襲われたが何とか倒した。
「あの亜蜘蛛って女妖怪以外は雑魚のようだな」
昆虫妖怪は妖怪が昆虫に妖気を籠め、自我をもたせた人工妖怪が主であり、妖怪達の使いとして使われるのだ。
「だが、あの亜蜘蛛って奴は長く生きた蜘蛛が妖気を得て進化した生粋の妖怪のようだ」
妖怪にはこのように長寿を得て妖怪化した者が存在するとは別に、人間が仙術を学び妖怪と転じる者、悪意を持った障気が意思を持って妖怪となる者、妖怪が妖怪を産み誕生した妖怪。更には神が神堕ちして妖怪と転じる者が存在するのだ。
「さぁ~これからが俺達の逆襲だ!」
「おぉおお!」
俺達は隠れていた部屋から出ると、城の頂上に向かって螺旋階段を昇る。
すると声が響いた。
「逃がしたりしないわ!男を逃がしたら女の恥…あら?私は何を言っているの?言っちゃったの?」
間違いなく亜蜘蛛の声だった。
しかしこの女は馬鹿なのか?
「私を裏切り捨てた鬼畜な男を私は許せない!私から逃げた男は許せない!許せないたら、許せない!逃げる、去る、いなくなるの男は全員チョンギってやるわ!おほほほほ!」
「この亜蜘蛛って女はイタイぞ?てか恐いぞ?逆恨み通り過ぎて変態だ!!」
「何ですって~!?」
しまった…
本音を声に出してしまったようだ…
亜蜘蛛は指から糸を張り巡らせると一帯が蜘蛛の巣と化した。
「逃がさない…お前達を捕まえて、私の思い通りにしてあげるわ」
「お前の好きにはさせん!俺は兄者のもんだ!」
「!!」
「俺の命は兄者に捧げたのだからな!」
「お前…ブラコンの変態ね!」
「お前に変態言われたくないわ!」
俺は剣を構えて妖気を籠める。
すると剣が白く輝き出す。
「鬼妖剣!」
俺の剣は亜蜘蛛の伸ばして来た糸を切断する。
「私の糸を切るなんて…私の赤い糸を断ち切るなんて!何て最低のゲス野郎なの?」
もう、亜蜘蛛の言っている意味が解らなかった。
亜蜘蛛は指から糸を出すと、鋭利な刃のように壁を切断し俺に迫る。
「うぉりゃー!」
亜蜘蛛の糸を剣で受け止めるが、糸は剣に巻き付きながら俺の身体に巻き付いたのだ。
「うっ?動けねぇぞ??」
「ふふふ…一匹捕まえたわ!ん?あれ?」
亜蜘蛛は辺りを見回すが、そこに俺と一緒にいた氷狼と炎狼の姿がない事に気付いた。
「逃げたのね?逃げたのね!私から逃げたなぁあ!」
鬼の形相の亜蜘蛛に俺は冷や汗をかきつつも、俺は笑みを見せたのだ。
「あんた?気でもふれたの?」
すると寒気を感じ始める。
「あら?急に何か寒くなったわね?どうしたのかしら?」
その時、亜蜘蛛は自分の巻いた蜘蛛の巣が凍り付いている事に気付いたのだ。
「な…何??」
そして俺に巻き付いた糸も凍り付き、簡単に割れていく。
「何がどうなって?あっ?あぁあああ!!」
亜蜘蛛が気付いた先で氷狼が亜蜘蛛の糸に冷気を流し込んでいたのだ。糸は凍り付き、広がっていく。そして全ての糸が凍った時、音を立てて砕け散った。
「俺の凍気はどうだい?亜蜘蛛ちゃんよ!」
「私にちゃん付けするなんて…貴方は彼氏のつもり??…じゃなくて、私の糸に何をしてくれちゃったのよ!」
つまり、こうだ…
俺が亜蜘蛛の気を引いてるうちに氷狼が厄介な糸を全て凍らせる準備をしていた。
「そんなんで私のハートを奪ったなんて思わないでよね?直ぐに新しい糸を……」
が、寒さで震えて糸が出せないでいた。
そこに、
「蜘蛛の弱点教えてやろうか?」
「えっ?」
すると俺は両手を広げて掌を叩いた。
『パチーーン!』
「ヒャッ!」
亜蜘蛛は俺の叩いた音に驚き、掴まっていた壁を手離してしまったのだ。
「きゃあああああ!」
落下する亜蜘蛛は直ぐに壁に手をやろうとするが、追い討ちをかけるように!
「無進刑出五炎!」
※ムシンケイデゴエン
炎狼の放った五つの炎が亜蜘蛛の身体に命中し、そのまま燃えて落下する。
「私は…ただ…焼けるような恋がしたかった…あれ?もしかしてこれがソレ?」
火だるまになって落ちていく亜蜘蛛を見て、何か…
もう二度と会いたくないとか思ったのだった。
「やれやれ…どうやら倒したようだな?」
「兄貴~見てください}
「どうした?」
氷狼の奴が亜蜘蛛に捕らわれていた仲間達を見つけたのだ。
糸で縛られ、眠らされていたのだ。
「お前達!起きろぉおお!」
飛び起きるように目を覚ます仲間達を引き連れ、俺達は先を急ぐ。
「この先はどうするだよ?」
「当然、この城の魔王に直談判する!仲間になれとな!」
「頼んでるようには見えないよな?」
俺達は階段を登る。
長い階段だ…
ん?すると足下がぐらつき始めた。
「まさか?」
足下が動き出したかと思うと、それは化けムカデとなっていたのだ。俺達は化けムカデの上を歩いていた。一人一人化けムカデから落下していく。
「うぉおおお!」
俺は化けムカデの背中に掴みながら堪える。
「氷狼!何とかしろぉー!!」
「えっ?俺?」
氷狼は凍気を籠めると、
「凍結造形階段!」
氷狼の凍気が凍り付きながら天井までの階段を造り上げていく。
そこに俺は着地し、
「ありがてー!足場があるなら、こっちのもんだ!」
俺は剣を上段に持ち構えると、化けムカデに向かって氷の階段を滑り降りながら、
「うおりゃああ!」
俺は落下しながら化けムカデを一刀両断にしたのだ。
そんなこんなで化け昆虫退治をしながら、ついに俺達は魔王がいる部屋の扉の前まで着いた。
「ようやく着きましたぜ?」
「先ずは脅してでも仲間にしてやるぞ!」
扉がゆっくりと開かれる。
中には噂名高い魔王がいるのだ。
色欲の妖魔王・玉面魔王!
俺達は扉を開けて中に入るなり警戒しながら見回してみた。
中には確かにいた…
カーテン越しで姿は見えないが、部屋の奥に魔王らしき女妖怪がいる。
扉を開けた瞬間、緊張が走った。
足が震え、冷や汗が流れ落ちる。
「これが一桁クラスの魔王様ってわけか…」
俺以外の連中は脅えて動けないでいた。
「ほぉ~?妾を前にして動けるとはな?」
俺は奥歯を噛み締める。
俺はかつて、父神様と兄者の戦いを目の当たりにした。
だから恐怖に対しての免疫があるんだ。
「お前達が侵入して来ていたのは知っておったぞ?余興で見ておったが笑えたぞ?これはその礼ぞえ~」
カーテン越しの玉面魔王の放った覇気に俺はその場から弾き飛ばされるが、
「こなくそ!」
俺は剣を床に突き刺し堪えたのだ。
玉面魔王は掌を上げるとその上に水玉が浮かび上がる。
一つ二つ、玉面魔王の周りに水玉が幾つも出現した。
「ふるえ~ゆらゆらゆらゆらと~」
その瞬間、弾けるように水玉が放たれ、俺達に向かって飛んで来たのだ。
俺達は剣で水玉を打ち落とすが、貫かれた者達は一瞬にして消滅した。
妖気を高濃縮させた水弾か?
「マジかよ?」
「死ぬ~死んじゃう~マジにコェ~!」
「馬鹿やろー!怯むな!!」
俺は一人水玉が向かって来る中を、玉面魔王に向かって駆け出す。
俺は剣を振り払い玉面魔王を隠していた布のカーテンを斬り裂くと、中にいる玉面魔王に剣を突き出して……
「えっ!?」
俺が躊躇したその直後、足下から水の縄が伸びて来て俺の身体を縛り上げたのだ。見ると床には水たまりが出来ていて、そこから水が縄のように伸び、生き残った仲間達は全員拘束され動けなくなっていた。
俺達の進撃はここまでだった。
次回予告
蚩尤と捕らわれてしまった仲間達、
本当に玉面魔王を仲間に入れる事は出来るのか?




