表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
転生記~始まりの伝説編~
38/424

金角・銀角襲来!恐るべき神具・瓢箪の罠?

幼き姉弟を襲った金角・銀角と名乗る凶暴な一本角の妖怪


頼みの大僧正も不思議な瓢箪に飲み込まれ、逃げる姉弟の運命は?


ハァ!ハァ!ハァ!

私は寺院を襲った妖怪達[金角と銀角]から逃げるために、弟の手を取り無我夢中で走ったのです。

既に辺りは真っ暗闇で、私達姉弟は山道を転げるように階段を駆け降りました。



ただやみくもに…

身体中傷だらけになりながら…


どれくらい経ったのか分からなかった。

日は既に明るくなり、

それでも私は命からがら自分の住んでいる村にまで辿り着く事が出来たのです。


村は賑わっていました。

誰もまだ知らない…

寺院で起きた惨劇なんて…


村人達は傷付きボロボロになった私の姿を見て、目を見開いていました。

それは私の姿があまりにも酷い有り様だったから。

髪は乱れ、衣は破け、泥にまみれ、ズタボロな有様

破けた衣の見える腕や足からは、衣服を出血で滲ませていたから。

それは、ただ事じゃない事が起きたと知らせるにはじゅうぶんでした。



「あ…あああ…ああ…」


私は声の出ない叫びを発しました。

が、周りの人達は関わる事を怖れて近付こうとはしてくれませんでした。


お願い…誰か助けて…助け…


そこで私は力尽き、崩れるように倒れたのでした。

その時?

私は誰かに抱き抱えられたのです。


一体、誰が?

解らない…だけど、


「お願い…弟を、た…助けて…」


そのまま私は意識を失ってしまったのでした。


「うっ…う~ん」


ここは?


日は眩しく鳥の囀りまで聞こえて来る。

私は見知らぬ部屋のベッドの上で目が覚めたのです。


そう…

すべてが悪夢だったのじゃないかと思えるくらいの爽やかな目覚めでした。

私は冷静になって自分に起きた事を振り返り、手当てされた身体を見て自分が何故眠っていたかを思い出したのです。そして私は辺りを何度も見回す。

傍らにはいつもいるはずの、フォンがいない?


「ハッ!」


私は飛び起きると、自分達姉弟に起きた事を思い出したの。



寺院から逃げる際に弟と逸れてしまった事を・・・



私達が寺院の階段を駆け降りていると、突然地響きが鳴り、足元の階段が崩れたのです。

私は平衡感覚を失い、そのまま崩れる階段から落下してしまったのでした。


身体中が痛い…

怪我した?

そんな事はどうでも良いわ!

私は弟を探しましたが何処にもいない?



右も左も分からない。その上、辺りは暗闇。

私は弟を見付ける事が出来ずに、そのまま一人村までたどり着いたのでした。



助けを…助けを呼ばないと…


「あっ!」


私は助けを求めるために立ち上がろうとして、ベッドから転げ落ちてしまったのです。

私は這いずる様に出口へと向かう。


早く早く…早く行かないと…フォンが…

身体が重い…力が出ない…

フォン…お願い!生きていて!


でも、考えれば考えるほど最悪のケースが頭を過る。

掛けがえのない弟を見殺しにしてしまった自分の無力さに泣き出しそうになった。


そんな私に、



「そんな身体で何処へ行くつもりだ?」


えっ?

背後から私に向かって声をかけて来た人物がいたのです。



「お前死にたいのか?だったら止めはしないが、そうでなければもう少し寝ているのだな?」


そこには、いつからいたのか?

御坊様の姿をした男の人が椅子に座って私を見ていたのです。

私は飛び付くように、その男の人に助けを求めたのでした。



「お願いします!助けてください!弟が!弟が!」


しかし…


「悪いが、俺は旅の途中で先を急いでいる。残念だが暇じゃないんだ。それに、別件でやらなきゃならない事もあるしな」



私は愕然としました。

いえ、こんな事は当たり前。


私は諦め、


「そうですか…分りました。貴方が私をここに運んでくれたのですか?助けて戴いた事は感謝します」


私は礼を言って出口に向かったのでした。

無理に決まっている

見ず知らずの私なんかのために他人が何をしてくれるというの?

無償で何かをしてくれる人なんているはずないのだから…


だけど、この人…

お坊さんなのに…

人でなし!

多分、見た感じガラが悪いから偽物に違いないわ!

私は心の中で悪態をついたのでした。


そんな事より探さないと!

大僧正様が最後におっしゃっていた…


『三蔵法師様』を探さないと!


きっと、その方が何とかしてくれるに違いない事より。

私達を救ってくださるに違いないのだから!


私は痛む身体に耐えながらも外に出ると、顔に何かが降って来たのです。


これは雪?

嘘…今は夏のはず?

何故雪が?

私は目を疑いました。

村全体が凍てつく氷に覆われ、先程まで何事もなく生活をしていた村人達が凍り付き死んでいたから。


「う…嘘?」


そこに、あの二人の妖怪が現れたのです。


「おい!いたぜ兄じゃよ?あの娘だぜぇ!」


「ああ…ここまでいたぶりながら逃がして来たが、ようやく狩りも終わりのようだな!」



私の身体が震える。

寒さからじゃない。

これは恐怖から!


「ああ…あああ…!」


私を追いかけて来たの?

私はこの村の人達をまきぞえにしてしまったの?

私は諦め、その場に座り込んでしまったのです。


ごめんなさい…

大僧正様…

ごめんなさい…

フォン!

私、何も出来ないまま…ごめんなさい。




観念した私を見て銀角が私に近付いて来る。

私は目を綴じました。

私も…死ぬんだ…

あれ?

気付くと、銀角が私の前で立ち止まったまま動かないでいたのです?

どうして?


「何だ貴様?まだ生き残ってる人間がいたのか?」


えっ?


私が顔を上げると、目の前には先程私を助けてくださった例の無慈悲な御坊様が立っていたのです。

そして私に言ったのです。


「娘よ?助けてやったのに何の見返りも無しなのか?せめて、酒の酌でもして欲しいものだな」


「えっ…」


この人は何を言ってるの?

目の前には凶悪な妖怪がいると言うのに!

馬鹿なの?

私は叫んだのでした。


「逃げてください!早く!」


「逃がしゃしねぇよ!その男も俺達の餌にしてやるよ!」


銀角が目の前のお坊さんの胸元に手を伸ばしたのです。


もう、ダメ!


えっ?


その瞬間、私は自分の目の前で起きた事に、ただ目を丸くするしか出来なかったのです。

だって!

銀角が伸ばした手を払った御坊様が、その拳で銀角の顔面を殴り飛ばしたのだから。


「汚い手で俺に触るんじゃねぇ!」



殴り飛ばされた銀角を横目に、金角がお坊さんに向かって叫ぶ。


「お前は、何者だぁ?」


「俺か?俺は通りすがりの僧侶だよ」



御坊様は不敵に笑みを浮かべ、妖怪二人を相手に怯まずに仁王立ちしていたのです。



「ふざけるなぁ!貴様俺の顔面を殴っておいて、ただで済むと思うなよ!」


怒り狂い立ち上がった銀角は手に冷気を込めると、それは巨大な氷の鎌となり、御坊様に向かって投げつけて来たのです。

が、御坊様は手に持っていた錫杖で鎌を受け流し、銀角に対して錫杖を突き出したのでした。


「なぁ??」


銀角は寸前で錫杖を躱すが、頬に傷を受けて血が流れていたの。


妖怪相手に、この人は一体何者?



「くそぉ!何なんだコイツは!やけに強いぞ!」


頬の血を拭い、まさかの反撃に驚く銀角に対して、


「お前は大した事ないな?妖怪の癖に!」


人間に侮辱された銀角は頭に来て、御坊様に向かって再び襲い掛かる。


「ナメるなよー!人間風情がぁ!」


二人の攻撃は何度もぶつかり合いました。

鎌を振り回し、投げ付ける銀角に対し、御坊様は錫杖を振り回しながら弾き返す。

そんな戦いに痺れを切らした金角が叫んだのです。



「銀角よ!人間相手に何をしているのだ!もう良い!本気を出すのだぁ!」


「クッ!仕方ねぇ…人間なんか相手に…くそぉ!」



銀角は御坊様に距離をとると、身体中から異様な妖気が立ち込め始める。


『獣王変化・唯我独尊』



銀角の姿が獣へと変わっていく。

二メートル近くあった銀色の身体は筋肉が盛り上がり、衣を引き裂き、銀の毛が逆立つ。

その顔は野生の狼へと変貌したのです。

銀角は額に銀の角の生えた人狼の姿に変化したのです。



「コイツはたまげた…犬コロだったのか?」



銀角の変化に驚くどころか平然と微動だにしない御坊様に、更に怒りを見せる銀角。



「マジに生意気な奴だ…グルル…兄じゃ!コイツは俺様を見て、少しもビビってないぜ?」


「心配するな!ただのイカレタ人間だ!ただ、殺すなよ?この人間は美味しそうな力を持っているようだからな!」


「そうだな!だが、手足の二、三本はオシャカにしても構わないよな?」


「構わん!生かしておげば良い!」



更に力を得て、狼の顔をした銀角が御坊様に飛び掛かる。



「ならば俺も本気を出さねばな!」



すると御坊様が印を結び、真言を唱えたのです。



『ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!』



御坊様の手にしていた錫杖が燃え盛り、それは炎を灯した剣へと変わる!?

そして振り払った炎は向かって来た銀角を覆い、追い撃ちをかけるように炎の剣で斬りかかる。

油断した銀角を一刀両断にしようとした直後、


「させるかぁ!」


金角が氷の剣で炎の剣を受け止めたのです。

御坊様と金角はお互いの剣を弾き合い、その反動で距離をとる。


「お前!名前を何と言う?」



すると御坊様は…


「あん?人に名前を聞く時は自分から名乗るのが礼儀だろ?」


「ふふふ…それもそうだな?俺の名前は金角!」

「俺は銀角だ!」


そして御坊様もまた名乗ったのです。



「金と銀か…なるほど、ならば俺も名乗ろう!俺は旅の修行僧…三蔵だ!」



三蔵…様?

えっ?もしかして!あの?

あの方が大僧正様がおっしゃっていた、あの三蔵法師様なの?



「貴方は!本当に三蔵法師様なのでしょうか?」


「ああ…間違いなく三蔵法師の三蔵だ!」


「やはり貴方が!お願いがあります!」


「悪いが俺は忙しいのだ…」



そうだった…

先にも断られたんだ。



「フォンに頼まれ、あの糞妖怪二匹を退治しないといけないのでな!」



えっ?

今、何て?

フォン?

今、フォンって?


すると私達の会話を聞いていた金角が笑いだしたのです。



「ふふふ…あはは!お前?今、名前を言ったな?」


「ん?」


「おぃ?三蔵!」


金角は瓢箪の蓋を開き、三蔵様の名前を呼んだのです。



はっ!そうだ!

返事をしたらいけない!

大僧正様も名前を呼ばれて返事をしたら、あの奇妙な瓢箪の中に吸い込まれてしまった。


「ダメ!返事をしたら瓢箪の中に!」


「何だ?」


あ~うそ~もう、手遅れ??


けれど?

吸い込まれない?

何もおこらない?


「ん?どうなってるんだ?兄じゃ?」

「俺にもわからん?」


困惑する金角と銀角。


「おーい!三蔵!」


そこに、空中から三蔵様の名前を呼ぶ声が聞こえたと思うと、飛んできた雲の上から三匹の妖怪が飛び降りての来たのです。


えっ?妖怪?



「大丈夫か三蔵!?」

「一人で先に行くなんて水臭いらよ!」

「いてもたってもいられなかったんだよな?」


「黙れ!」


「三蔵様、優しいですから~!」

「三蔵~優しい~」



「貴様達!先に退治されたいか?」



黙り込む妖怪三匹。

けれど、どうやら三蔵様の従者のようでした。

あの三匹の妖怪は三蔵様のお供なのでしょうか?

すると中の頭に皿を乗せた妖怪が私に近付いて来たのです。



「あっ、ファンさんですよね?フォン君は無事ですよ!」


「えっ?フォン?フォンは無事なんですか?」


「ええ!フォン君は無事です!話は全部フォン君から聞きましたよ!」


「よ…良かった…フォンは生きていたんですね!」


「はい!」



フォンは私とはぐれた後、気絶している所を運良く寺院に向かっていた三蔵様一行に助けられていたのです。



遡るは数時間前



「三蔵様!子供が怪我をしています!」

「こんな山の中で居眠りか?」

「夢遊病らよ!」

「違いますよ!きっと寺院で何かあったのですよ!」


そこで目覚めたフォンに三蔵様達は成り行きを聞き、私を探してくださっていたのでした。


「三蔵?そうか…おい!三蔵!」


すると金角が再び三蔵様の名を呼んだのです。


「あん?」


「・・・・・・」


やっぱり何も起きない?


「やはり何も起こらないぜ?壊れたのか?」


流石に名前を何度も呼ばれて三蔵様も苛立っていました。


「さっきから貴様達は何を言っているんだ?人の名前を何度も何度もしつこいぞ!」


すると今度は金角がお猿様に話しかけたのです。


「おいキサマ!」


「なんだ?」


「そこの坊主の名前は何て言うのだ?」


「何を言ってるんだお前達?三蔵は三蔵だぞ?」


「そうか?なら、良い・・・」


金角は瓢箪の吸い込み口に指を入れたり、覗いていました。


はっきり言って・・・今は何の時間なのでしょうか?


「あれ?ん?」


すると、猿の妖怪さんは突然悩み出したのです。


「どうやら、理由は分からないが、名前を知られてはいけないようだな」


三蔵様も金角の目的に気付いてくれたのです。

これで安心ですね。

そしたら突然、お猿様が呟いたのです。


「ボソッ…ミクラゲンゾウ…」


「なっ?猿!何故、俺の名前を!」


「いや、何か突然出会った時に聞いた名前が頭を過ったんだよ?まずかったか?」


「どうやらお前は空気を読めない馬鹿なのだな?」


「名前が何なんだよ?それより、お前達!三蔵だけでなく俺様の名前も覚えやがぁれ!」


今、空気を読めない人がそこにいます。

空気読めないと全て台無しにします。

そんな人って身近にいませんか?


ちなみに私の前にいるのは猿ですが・・・


「あっ、いけません!お猿様!」


「俺様の名前は孫悟空だ!よく覚えやがれ!」


すると金角はニヤリと笑ったのです。


「そうか!ミクラゲンゾウに孫悟空か?よく覚えたぞ!」


「それで良い!」


いや、だから良くないですってぇ~!!

自慢げにしているお猿様に、三蔵様が頭をぐりぐりして喧嘩を始めてしまったのです。

この人達、状況分かっているの?



でも、何故か安心出来る。

この方達には安心させられる何か不思議な力を感じるのです。


「猿!何故名前を教える?」

「だって仲間外れみたいだったし、俺様も会話に入りたかったから~」

「なら何故俺の名前まで教えるのだ?」

「ふと、思い出しただけだよ~!そんなに怒るなよ!」

「やはりお前の方から先に調教してやろう!」



ついに二人は取っ組み合いを初めてしまったのです。


そこに、金角が大声で叫んだのです。


「聞け!ミクラゲンゾウに孫悟空!」


「何だ!いい加減にうるさいぞ!黙っとれ!」



二人は振り向き様に勢いで返事をしてしまったのでした。



「あっ…」


その瞬間でした。

瓢箪から無数の影の手が現れ、三蔵様と猿様の身体を掴むと、


「なっ!何だこれは!?」

「気持ち悪いぞ!くそ!離れないぞ?この影?あわわ??」



そのまま二人は引きずられるように瓢箪の中へと吸い込まれてしまったのでした。



えっ?えええ?


えーーーーーーーー!


私の安心は脆くも一瞬で消えたのでした。


次回予告


孫悟空「飲まれたな?」


三蔵「誰のせいだと思っている?この馬鹿猿が!」


八戒「二人がいなかったら、誰があの怖い金角・銀角の相手をするらよ?オラは無理らよ!オラは腹と胃の調子が悪いらからな!」


沙悟浄「そ!それでは、私が頑張って、御二人を助け出してみます!」




あっ・・・オワタ・・・この物語

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ