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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
天上天下・美猴王伝説!
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黄風魔王の正体!?

美猴王は敵である黄風魔王から蓮華の匂いを感じ取った。


黄風魔王の正体とは?


俺様は美猴王。


俺様の前に現れた黄風魔王から、俺様は蓮華と同じ臭いを感じたのだ。


そして、間違いない!


黄風魔王の正体は…


人間?



「おぃ?お前が黄風魔王なのか?どういう事だ?お前は純粋な妖怪じゃないな!」


「なぁ?美猴王?それはどういう意味だ?黄風魔王が純粋な妖怪じゃないだと?」


「怪力。間違いないぜ。あの野郎は人間が妖怪に転じた半妖だ!」




黄風魔王は俺様の言葉を黙って聞いていた。



「黙っていないで何とか言いやがれ!それにどうしてお前から…」


『蓮華の臭いがするんだよぉー!』




その時、俺様に無関心だった黄風魔王に変化があった。

浮遊する黄風魔王は息子を抱きかかえたまま、その掌を俺様に向ける。



「お前…何故、妖怪のお前が蓮華の事を知っている?」


「俺様の問いが先だ!答えろ!!」



が、凄まじい覇気が俺様を押し潰し、



「答えよ!どうしてお前が蓮華を知っているのだ?」



黄風魔王の表情は怒りに満ちていた。

このままでは埒が明かないと思った俺様は、止む無く答えてやったのだ。



「蓮華は死んだ!俺様の目の前で!」


「!!」


「下劣な妖怪め!お前達はいつもそうだ…私から全てを奪い、唯一残された希望すら…奪いさる!」



すると黄風魔王の身体から発する気流が荒々しくなり、その疾風の刃が俺様と怪力魔王目掛けて放たれる。


「うぉおおお!」


直後、怪力魔王が俺様を庇うよう前に出て盾となったのだ。

疾風の刃を受けた怪力魔王は身体中から血が噴き出して倒れる。


「怪力ぃー!!」



怪力魔王は倒れながら俺様「大丈夫だ!」と言ったが、かなりの深手だった。

俺様は黄風魔王を見上げ睨み付ける。



「てめぇ?よくも俺様の仲間をやってくれたな」



俺様は妖気を身体中に纏わせると、黄風魔王に向かって飛び上がったのだ。

黄風魔王を庇うように虎先鋒が前に出ようとするが、



虎先鋒よ。お前は控えていろ?ここは私に任せよ!」




黄風魔王の指示に従い虎先鋒は退いた。

そして黄風魔王が掌を翳すと、俺様の特攻を邪魔する突風が襲う。



「この美猴王様を侮るんじゃねぇー!!」



俺様の妖気が膨れ上がり突風の壁を突き破る。



「私の風の防壁を突き破るか?ならば、これならばどうだ?」



黄風魔王は両手を左右に合わせると、風の防壁を幾重にも造り上げて俺様の周りを囲み出す。


「これは?」



囲んだ風の防壁が俺様の上下、左右前後の道を塞ぎながら俺様を押し潰して来た。


「ぐぅうう…」



一度は潰される俺様だったが風の防壁を押し返していく。

そして妖気を放ち防壁を打ち砕いたのだ。

俺様は上昇しながら覇気を黄風魔王目掛けて放つ。

俺様の覇気は黄風魔王の覇気とぶつかり合い、それは天井をもぶち破った。




「この世界に蔓延る妖怪は全てこの私が消し去る。一匹足りとも残さずにな!」


「俺様はお前に聞きたい事があるんだよ!」



黄風魔王の魂を籠めた掌打と俺様の魂を籠めた拳が衝突した。

この時、黄風魔王から放たれる掌打から感じられる殺気には怒り、絶望、そして悲しみが伝わって来た。そして、


「!?」


何だ??突如、俺様の中に何かが流れ混んで来たのだ。

これは記憶?黄風魔王の記憶なのか?


俺様は浮遊したような感覚の中で、記憶を覗き見ていた。


そこには…


蓮華の父親は流れ落ちる滝に打たれていた。

滝から出て来た父親の顔は見間違う事なく俺様が戦っている黄風魔王だった。

そこに呼ぶ女の声がする。

聞き覚えのある声だった。


蓮華だった。



「父さん?魚焼けたよ?」


「あぁ」


いや?それだけじゃない…


男の隣には若い青年が同じく滝に打たれていた。

あれは虎先鋒?



「師匠?私も宜しいのですか?」


「当たり前だ。お前は私達の家族のようなものだからな」


「そうよ?先鋒兄さん!」



蓮華達は母親の用意した食事を済ませる。

そこには黄風魔王の所で助けたガキもいた。

やはり、間違いなかった。


俺様は薄々感じていた。

蓮華の生き別れになった家族こそ黄風魔王と例のガキなのだと!

そして虎先鋒もまた関係者だったとは?


確か名前は・・・


孟風モンフォンに、玉風ユーフォン



家族は仲慎ましく暮らしていた。

父親の孟風は格闘家らしく人間でありながら、威厳がある隙のない男だった。

親子は旅の途中で滝のある滝にて修行していたのだ。



「これより先には妖怪の領域だ…だが、ここさえ抜ければ安全区域に入れる。だからもう少しの辛抱だぞ?お前達?」



家族は頷いた。

見ると蓮華達の家族の他にも沢山の人間の家族がその周辺にテントを張っていた。

人間達は妖怪の脅威に怯え、生きるために村から村へと生活の出来る安心な地を求めて渡っている事はよくある事だった。蓮華の家族もその中の一家だった。


人間達の集団は行列を作り妖怪の住まう領域を越えていく。

そして抜けるその時に惨劇は始まった。


人間達の行く手は妖怪の集団に道を塞がれたのだ。

妖怪達は人間達が領地を通る事を知っていた。

だからこそ抜け出る間際に安堵させ、人間達に絶望を与え捕らえようと試みたのだ。


「人間達を一人残さず捕らえよ!」



人間達は翼を生やした妖怪達に身体を掴まれ、宙吊りにされた状態で妖怪の居城へと連れ去られていく。


「くっ!」


蓮華の父親は向かって来る妖怪に飛び上がり蹴りをくらわす。

並の人間の蹴りは到底妖怪には及ばないが、この男は仙術の気を使う武術を体得していたため妖怪にも対抗出来たのだ。

それを見た妖怪の主格たる者が配下に指図をし、仙術を使う男を優先して捕らえるように命じたのだ。妖怪達は孟風を囲む。



「師匠!私も助太刀します!」



男の背で構える先鋒もまた仙術の武術を学んでいた。

二人は他の人間達を庇うように自分達を囮にして妖怪達を引き付ける。



「ここは私に任せよ!お前は皆の所に」


「しかし…」


「私に構うな!」



虎先鋒は孟風を残して駆け出し蓮華の元へと向かう。


孟風は一人戦っていた。


暫くした後、突然静かになった。


「!!」


妖怪達は逃げる人間達の中から、蓮華と母親、それに玉風を捕まえ、孟風の前に晒す。


「くぅ…」



更に、血だらけになって動かない虎先鋒を宙吊りにして父親の前に晒したのだ。


「先鋒!」


(私が一人で向かわせたばかりに…)



すると妖怪の主格であった錬体魔王が孟風に条件を言う。



「無駄な抵抗はよしなさい。人間よ!お前が私の実験台になってくれるなら、この場にいる人間達には危害を与えない!それだけではないぞ?保護をしてやろう!悪い条件ではあるまい?」



条件?


人間達の保護?


妖怪なんかを信じられるのか?だが、選択肢はなかった。

他に助かる手段もなく、皆殺しされるなら、自らが犠牲になる事で僅かな希望があればと…


孟風は抵抗を止めた。


だが、錬体魔王は約束通りに捕まった人間達に隠れ里を与え、住まわせたのだ。



「どうです?約束は果たしましたよ。私の名前は錬体魔王。私は無駄な殺生は好みません。しかし貴方は別ですよ?」


「私は何をすれば良い?何が望みだ!」



錬体魔王は言った。


「貴方は私の黄風魔王様に、その肉体を器として捧げるのです」



肉体を器として捧げる?

父親の目の前には年老いた妖怪が眠っていた。



「君の肉体は黄風魔王様の器となり、永遠の命を得るのだよ」


「永遠だと?」


「ただし、貴方の意識は完全に消えますけどね?ふふふ…」


「私の事は良い!妻や子供達、それに人間達には手を出さないと約束しろ?」


「お約束致しましょう」



孟風は眠らされ水晶の中に入れられる。

そして蔓のような物が伸びて、そこから異質な液体が注入された。

水晶の中で苦しみもがく男は充血した目を見開き、口を蔓が塞ぎ強引に液体が飲み込まれた。



「黄風魔王様の器になるために、その液体はお前の身体を強靭化させるのです」



孟風の身体の血管が浮き出て血流が速まる。

すると身体が黒く変色していく。



「見事な適応力ですね?その液体の不適合者は身体が溶けて腐ってしまいます。正に私の見立て通りの適合者だったというわけだ」



そして、眠ってい老いた本家黄風魔王に近付く錬体魔王。



「ようやく…儂の…不老不死の…願いが叶うのだな?」


「はい。今から黄風魔王様は新たな肉体を手に入れられます。お喜びください?しかし…私の操り人形としてですがね」


「な…何だと?お前…それは?」



真の黄風魔王は騙されたと思い抵抗しようとするが、既に錬体魔王によって施された肉体縛りの呪法で動けなかった。


「今より貴方は最強の操り人形になるのです。この私の!」



錬体魔王は黄風魔王の額の角に指を置くと、何やら呟きながら術を施す。すると足掻く黄風魔王の身体が自らの角に吸い込まれるように圧縮されたのだ。

錬体魔王は黄風魔王だった角を手にすると、今度は水晶の中にいる孟風の額に突き刺した。

孟風の額に埋められた角は侵食するように肉体を支配していく。

孟風の頭の中に黄風魔王の計り知れない量の記憶や情報が流れ込んで来たのだ。

黄風魔王の意識が孟風の意識を蝕み、そしてその魂を捉えた時、孟風は覚悟をした。


(これで良いんだ…)



だが、走馬灯のように流れる自らの記憶に家族の顔が浮かんだ。


「!!」


「私は死ねない!消えてたまるかぁー!私は愛する家族を…忘れてたまるものかぁ…私が守るのだぁー!」



孟風の意識は黄風魔王の意識に逆らい互いに乗っ取りあいを始めた。

そしてついに黄風魔王の意識を逆に抑え込み、そして奪ったのだ。

これには錬体魔王も予想だにしなかった。

まさか人間が黄風魔王の意識を乗っ取るなんて。


孟風は黄風魔王として起き上がると、錬体魔王は喜びながら黄風魔王である自分に命令してくる。錬体魔王も気付いていなかった。



「黄風魔王様?貴方は私の命令に従わなければ、その額に埋め込んだ角がお前の肉体を腐らすのです。良いですね?貴方はもう私の手駒なのですよ」


「あぁ…」


「やけに素直ですね?黄風魔王様。宜しいです。せっかく若返った命も私の意思一つで失われてしまうのですからね。でも安心してください?私の命令がない時は貴方は自由に考え行動出来るのですから」


「うむ」



孟風は錬体魔王に従うふりをして、この黄風魔王の居城を手に入れたのだ。

その後、孟風は新たな黄風魔王としての独裁政治を始めた。


次々と妖怪だある配下を粛正していく。

しかも悪質で人間を餌にする者ばかりを。

次第に反逆心を持つ者達も現れたが、それもまた始末する口実のように処刑する。

更に錬体魔王に隠れ、死んだ自らの弟子である先鋒を使い、自らと同じ禁断の呪法を使ったのだ。


「先鋒よ?お前なら出来るはずた!妖怪に意識を奪われずに自我を保てる事が!信じているぞ」



そして先鋒もまた自我を保ちながら妖怪と転じて生まれ変わったのだ。

その姿は虎と人間の融合した半妖だった。



「私は死んだはず?しかも何故妖怪の姿に?」


「お前を醜い妖怪として甦らせた事はスマヌと思っている。しかし私には信頼出来る同志が必要だった」


「し、師匠なのですか?」


「私と共に来てはくれないか?」



虎先鋒は頭を下げて忠誠を誓ったのだ。



「私も貴方と共に!貴方の願いは我が願い!」


「先鋒。今日よりお前は虎先鋒と名乗るが良い」


「ハッ!」



そして虎先鋒は黄風魔王の隠密として従う。

これは錬体魔王にも気付かれてはいなかった。



「私は手に入れたこの忌まわしき力を持って、この世界中の妖怪を一匹足りとも残さず根絶やしにする事!!」



それから新たな黄風魔王となった孟風は行動に移った。

現在、美猴王率いる水廉洞闘賊団が近辺の魔王城を潰して行く。

既に難攻不落の眼力魔王の居城をも落としたと。



「どうやら風が私に吹いてきたようだな」



黄風魔王もまた元黄風魔王に忠実に従いし魔王に指示し、近隣の魔王の城を落とし始めたのだ。そして逆らう者は容赦なく始末した。

仲間の妖怪が戦死していく事は構わず、むしろ同士討ちを望むかのような作戦を立てていた。


黄風魔王の行動に不信を抱き、錬体魔王は村に残した黄風魔王の息子を拉致を試み村人達を人質に使おうと考えたのだ。



「驚きだ…まさか私を欺いていたとはな?だがお前は私に逆らえない!人間達やお前のガキは私の手中にあるのだからな?」


「………」


「お前の頭の中には私の意思一つで消滅させる毒薬が仕込まれているのだ!あはははは!でも安心するが良い?お前は今まで通りに私の命令に従って黄風魔王を演じていれば良いのだよ!あはははは!」



黄風魔王は抗うすべはなかったが、既に手は打っていたのだ。

虎先鋒が村の人間達を救うべく単身動いていたのだ。

だが、そこで虎先鋒は知ったのだ。

村人達は既に錬体魔王の鬼人実験に使われていた事を!


「許さん…ハッ!」



虎先鋒は黄風魔王の娘である蓮華を探し回った。

その僅かな香りから、虎先鋒は地中に埋葬された蓮華を見付けた。


「誰が蓮華の埋葬を?だが、憎むべくは錬体魔王!」



戻った虎先鋒は唯一生き残り救いだした玉風を錬体魔王の目に付かない場所に移した。

その時、城は水廉胴闘賊団により攻め込まれていた。

逃げる錬体魔王はそこで命じたのだ。


黄風魔王に俺様を始末するようにと…



「さぁ?向かうが良い?さっさと行け!」



が、黄風魔王は黙したまま、動かなかった。


「良いのか?お前の頭の中には私の意思一つで死ぬのだぞ?」


「構わん!」


「何だと??」


「それよりもお前は村の者達に何をした?」


「へっ?な…何って?」


「何をしたかと聞いているのだ!」



怒りの覇気が錬体魔王を押し潰さんとする。



「ヒィィ!この出来損ないがぁ!お前なんか殺してやるぞ?殺してやるからなぁ!」



錬体魔王が黄風魔王に仕込んだ呪薬を使おうとした時、背後から接近する者がいた。

それは虎先鋒だった。


「だ…誰だ?お前は!?」



瞬間、錬体魔王の背中が虎先鋒の爪により裂かれた。

悲鳴をあげて仰け反ろうとした時、その胸が黄風魔王によって貫かれたのだ。


「こんな…事…」



そして、錬体魔王の身体は圧縮されて玉のようになったのだ。


ハッ!


そこで俺様は我に返った。



(俺様は夢を見ていたのか?)



特に時間は経っていなかった。

数秒?足らずか?

今のは何なのだ?

何故、黄風魔王の記憶が見えたのだ?


僅かな一瞬の出来事?


すると、黄風魔王が俺様に向かって言ったのだ。



「どうやら蓮華を弔ってくれたのはお前だったようだな?娘が世話になった」



どうやら黄風魔王もまた俺様と同じく、俺様の記憶を見ていたのだ。


「あぁ…」



何か戦う理由が見付からなくなってきた。

俺様は拳を引くと、再び黄風魔王は言った。




「だが、私は全ての妖怪をこの世界より一掃する!例外はない。お前もまた私の手で終わらせてやろう」



やはり戦わなきゃ…いけないのか?


麗華の父親と・・・

次回予告


美猴王と黄風魔王との一騎打ち!


だが、連戦続きの美猴王は・・・

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