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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
天上天下・美猴王伝説!
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麗華!俺様がお前を・・・

村には鬼人と化した人間に襲われ、美猴王がいない間に蓮華が消えていた。


麗華は無事なのか?



俺様は美猴王。


俺様は現れた鬼人達に襲われ、それでも回避しながら麗華の部屋に辿り着いたのだ。



「麗華ぁー!」



だが、麗華はそこにはいなかった。

部屋は荒らされ、壁に幾つもの爪痕が残っていた。

恐らく鬼人に襲われたのだろう…


これでは麗華はもう?


俺様は部屋から出ると外には鬼人達がウヨウヨしていた。



「あの中に麗華は…いないようだな…」


少し安堵した。


もし麗華が鬼人になっていたと考えると…


俺様は拳を強く握りしめる。

そこで俺様は我に返った。


何故、妖怪である俺様が人間の麗華の安否を気にしているんだ?


たかが人間の女…


だが、俺様は恐怖していたのだ。


麗華を失う恐怖に身が引き裂かれそうな感情に。


失いたくない!!



俺様は足早に移動する。

麗華には妖怪のような妖気もなければ、何処にいるか解るほど人間の気は強いわけでもないから居場所を探れない。

だけど俺様は麗華のいる場所に向かって走っていた。


それは麗華の…


臭い!!


あいつの臭いは覚えてる。


犬みたいで嫌だが、俺様の嗅覚なら麗華の臭いを突き止められるはずだ!



「やはり、ここか…」



俺様が辿り着いた場所は村の北方にある錬体魔王の城の前だった。


俺様は壁から柱に飛び付き天井にしがみつく。

そして奥へと進んだ。

下には鬼人が意思を持たずに、ただうろうろしていた。


気付かれたら襲って来る。

面倒はごめんだ。


俺様は天井を伝って奥へと進み、そして変な部屋を見付けて入った。


そこには…



「これは…マジかよ?」



俺様の目の前には変な透明の箱に人間が入れられていた。

一つ、二つ…何十とあった。人間?いや、化け物なのか?

人間と化け物が混ざりあったような融合生命体?

その額には角があった。


これが鬼人実験なんだ…


他人の事だから言えるが腹が立った。


俺様も猿を使って同じような実験をした事があるが…

もはや同属嫌悪に等しいかもしれんが、麗華という人間と接して少し考え方が変わった。


人間は物じゃないと!


とにかく胸くそ悪いぜ!


俺様は人間の入った箱を壊していく。

だが、最後の箱を前にして俺様は手を止めたのだ…


「まさか…」



俺様の身体は震えていた・・・


最後の箱の中には、


れ…麗華が入っていたのだ!!



俺様は震える手で箱を割って、中から麗華を出して抱き起こした。


全身に寒気が走った。



「麗華ァ!麗華!起きろ!」



だが、麗華は動かなかった。


動かなかったのだ…


う・・・嘘だよな?


嘘と言ってくれよ?


いつものように、俺様をどついてみろよ?


俺様に、お前の笑う顔を見せてくれよ?


なあ?



「麗華ァーー!!」




そこに、何者かが部屋に入って来た。



「おやおや?騒がしいと思って見に来たら、私の実験室を散らかしたのはお前か?」



そいつは白い衣を纏った男だった。



「私の部屋に入り込んだのが水廉洞闘賊団の大ボス・美猴王だったとはな」



俺様を知っているソイツは間違いない…

村で出会った黄風魔王の配下の錬体魔王だ。


強力な妖気を感じる…だが、



「てめぇが麗華をやったのか?」


「はて?麗華?それは君が持っている人間の雌の話かな?」


「どうだって聞いてるんだ!!」



怒る俺様を不思議そうに目の前の魔王は言った。



「その実験体の事か?あはは!何を怒っているかと思えば、お前の餌を私が先に手を付けた事に逆上するとはケチな妖怪だな?あはは…」



直後、俺様の拳が錬体魔王の顔面をとらえ、そのままぶっ飛ばしていた。

壁に直撃し顔から血を流す魔王は、今度は逆上し叫ぶ。



「たかが餌を取られたくらいで、この錬体魔王様に手をあげるなんて…許さん!」



餌だと?


俺様は麗華を見て…



「麗華は餌じゃねぇ!俺様の…俺様の…」



俺様は言い終えるが前に錬体魔王に向かって飛び掛かっていた。

俺様が錬体魔王に迫った直後、錬体魔王の背後から現れた別の者に顔面を掴まれ、そのまま強い力で投げ返されたのだ。


「うぐぇお!」


俺様は飛ばされながらも身体を回転させて着地する。


何だ?まだ敵がいたのか?


そこには角を生やしたゴツい鬼人が立っていた。



「ふふん?お前なんか私が出る幕もありません。そこで私の出来立ての実験体が相手をしてやりましょう?」


「ザケンナ!お前が相手しろー!」


「私は黄風魔王様に命じられ、人間を鬼人にする実験を行っているのだよ。人間が鬼人となって我々の使い捨ての兵になれば地上界の覇権戦争で有利になるからな?それに人間は腐るほどいるから困らない。無駄な生き物に使い道を与える素晴らしい道具だよ!あはははは!」



人間が道具か…


少し前の俺様なら何も感じなかったが、俺様は麗華と出会って、人間にも心があると知った。

生きるために誇りを持った俺様達妖怪と同じ生き物だと知った。

だから、俺様は人間に少しながら同情しているんだ!


すると背後から鬼人達が集まって来ていた。

前方にはデカイ鬼人が雄叫びをあげて突っ込んで来る。


「仕方ねぇ…」



俺様は何処かで錬体魔王の実験で鬼人にされた人間に対し同情していた。

戦わずに済ませようとも思っていた。

だが、俺様の邪魔をするなら…



「俺様が残虐非道の美猴王様である事を教えてやろう」



背後から迫る鬼人の腕を掴み、目の前に迫るデカイ鬼人にぶつけると、俺様は飛び上がり印を結ぶ。


「火流手」

※カルタ!


俺様の拳が発火し燃え盛る。

その拳でデカイ鬼人の後頭部を殴り倒したのだ。

そして襲い掛かる鬼人達を、その手で…一体、一体、殴り、燃やしていく。



「せめて、化け物としてではなく人間として火葬してやるよ…」


「美猴王…やはり鬼人では簡単に始末出来ないか?」



と錬体魔王が合図をすると、左右の壁が砕け落ちて、そこから部屋を覆う大きさの鬼人が…いや?数体の人間と獣を混ぜ合わせた化け物が現れたのだ。



「私の最高傑作!虎、牛、熊、鳥に数体の人間の身体を持った融合体。それが魔人・鬼目羅だぁ!」


「馬鹿な!?」



鬼目羅は俺様に襲い掛かる。

その動きは野生の動き。躱した俺様を軽々と掴まえて、床に叩き付け、

立ち上がろうとする俺様の身体を踏み潰したのだ。


「うぎゃあ!」



力も速さも並の妖怪以上だった。

だが、所詮は動く肉の塊!怖くない!

俺様は鬼目羅の足元から抜け出し、その身体目掛けて気功弾を放つ。

一発で仕留めてやる!楽に終わらせてやるからな?


「!!」


だが、俺様の気功弾は鬼目羅の身体から発生した妖気によって打ち消されたのだ。


馬鹿な…人造の化け物に妖気だと??


妖気とは体内の魂より放たれる力なのだ。人間で言えば霊気とも言うが、つまり気なのだ!よって生者でない鬼目羅から妖気は出ないはずなのだ?何故?



「不思議な顔だな?鬼目羅に妖気を感じて驚いたか?無理もあるまい!だが、鬼目羅の身体から発せられる力は妖気ではないのだよ?」


「何だと!?」


「冥土の土産に教えてやろう。鬼目羅の身体から発している力は呪いだよ!死ぬ間際に発する負の力を体内に貯蔵し力としているのだ!」


「呪いだと?」


「何故、人間を素材にしたか解るか?獣より肉体的にも劣る人間には唯一特化した力があった。それが魂の力なのだ!人間は生への執着、死への恐怖から素晴らしい魂の力を発揮した。その力をエネルギーと変換し、獣の肉体を融合させ造り上げたのが魔人・鬼目羅なのだよ!」


「恐怖を力にだと?無理矢理人間を連れて来て殺し、死んでもまだ使われていると言うのか?」


「所詮は虫けら同然の人間だろ?この私が使い道を作ってやったのだ!感謝して貰いたいものだな?あはははは!」




あ~何もかもが虫酸が走る!苛立つ!腹が立つ!



「錬体魔王!お前?俺様を怒らせた事を後悔させてやるぜ!」



俺様に襲い掛かる鬼目羅の拳が、俺様の妖気の防御を破りダメージを与える。俺様は弾き飛ばされながらも印を結ぶが、既に鬼目羅の追撃が迫る。


「印も結ぶ暇もねぇ…」



俺様は迫る鬼目羅の顎を蹴り、そのまま着地して今度は俺様が鬼目羅に攻撃を仕掛ける。



「火流手!」



俺様の燃え盛る拳が鬼目羅の身体を抉るように貫いた。

しかし鬼目羅は痛みを感じずに俺様の身体を怪力で抑え込んだのだ。



「くぅ…動けない…くそ!うぉおおおお!」



俺様は身体を抑えられたまま鬼目羅に突き刺した腕から立て続けに妖気を連発した。



「体内から木っ端微塵にしてやる!」


が、


「!!」



俺様の中に何かが流れ込んで来たのだ。

これは思念?鬼目羅の身体に取り込まれた人間達の魂なのか?



「イタイ…コワイ…タスケテ…カラダ…トケル…ウデガ…オカアサン…コワイ…タスケテ…シニタクナイ…」



恐怖、怒り、悲しみ、寂しさ、痛み、懇願、そう言った感情が渦巻いている。


俺様は…


人間もまた生きているんだ…


俺様妖怪と同じように感情を持ち、様々な想いを持ち、尊い魂を持っていると知った。



「救ってやるよ…」



俺様の身体から更に高まる力を感じる。

俺様の感情が魂へと共鳴し、更なる力を引き出したのだ。


魂の力は心に左右される。


それは無意識なる力だった。


俺様の身体が金色に輝いていたのだ?




「なっ?何だ?その不可思議な力は?」


「爆発しろ!俺様の魂の力よ!!」




その瞬間、俺様の魂の力が強烈な覇気を放ち、鬼目羅の身体から噴き出したのだ。

そして、その身体が崩れるように形を失っていく。



「馬鹿な…私の鬼目羅が?そんな馬鹿な…」




錬体魔王は未知なる力を見せた俺様に恐怖を感じる。

俺様の目の前には錬体魔王のみが残されたのだ。



「さぁ?残すはお前だけだぜ?覚悟しろ!」


「あはは…まさか…こんな馬鹿な…事が?」



俺様は錬体魔王に拳を振り上げた。


これで終わりだ…


「!!」



が、その腕は背後から現れた鬼人によって掴まれ押さえられたのだ。



「よ…よし!そいつを掴んで離すなよ?」



そう言うと、錬体魔王は慌てて逃げ出していた。

しかし俺様は逃げる錬体魔王を追う事が出来なかったのだ。


何故なら、俺様の腕を掴んでいる鬼人は…



「れ…麗華?」



目の前に立っている鬼人は間違いなく麗華だった。


姿は醜く変わり果てたが、間違いなく麗華なんだ!


麗華は俺様の腕を掴み、噛み付いた。


俺様の腕から血が流れ落ちる。



麗華…


俺様は麗華を優しく抱きしめる。


すると麗華の記憶が流れ込んで来たのだ。








麗華は俺様が出て行った後の話だ。


扉をノックする音がして麗華は駆け寄る。



「どうしたの?美猴?忘れ物?」



だが、扉を開けた先にいたのは錬体魔王だった。


「!!」



その場で麗華は錬体魔王によって殺され、城に連れていかれ鬼人の実験に使われたのだ。





「麗華…すまねぇ…お前を救う事が出来なかった…」




すると麗華の声が聞こえて来たのだ。



「美猴…ゴメンね?私、ヘマをしたようだよ…で、頼みがあるんだ…」



それは幻聴?いや?麗華の魂の声なのか?



「麗華?麗華なのか?何だよ?言ってみろよ?」


「私を殺して?私は人間として…死にたい。化け物になんかなりたくない…人間としての誇りを捨てたくない…人間として終わりたいから…」


「人間としてのプライドか…」


「人間はね?強いんだ!だから、その誇りを捨てられない…人として誇りを捨てたら、もう人間じゃない…私は人間として…死にたいんだよ!だから、せめて美猴の手で私を葬ってくれないか?」


「解ったよ…麗華は強いな?いや、人間ってのは強いな?」


「頼み…聞いてくれるかい?」


「安心しろ?俺様は残虐非情の大妖怪の美猴王様だからな」





俺様の頬に流れ落ちたのは冷たい液体。


俺様は鬼人と化した蓮華の身体を強く抱き締めると鈍い音が響いた。


そして倒れて動かなくなった身体を寝かすように置いた。


俺様は麗華の心臓を貫きその魂を解き放ったのだ。




俺様が追いかけようとした時、俺様の行く手を塞ぐのは残っていた鬼人達であった。

背後の入り口からも外にいた鬼人達が群がるように集まって来ていた。



「お前達も俺様が冥土に送ってやる…」



このまま化け物として魂を拘束されるより、その方が良いんだよな?


俺様は一体、一体倒していく。


倒す度に鬼人達の魂が心が俺様の中に入って来た。


涙で手元を狂わせないように正確に仕留める事に専念した。



「うぉおおおお!」



それらの生きた思いを感情を全て受け止めながら・・・






麗華の記憶には続きがあった。


あの日、


俺様が崖から落ちて気を失っている所を発見した麗華は…



「何て綺麗なの…」



麗華は倒れていた俺様に魅取れてしまい、妖怪である事を知っていたにも拘わらずに部屋に運び治療してくれたのだ。


麗華の魂が消える間際、笑みを見せて俺様に言った言葉がある。



「初めてお前を見た時に…感じたんだよ?私は美猴に出会うために今まで生きていたんだと…。きっと私達の出会った事には意味があったんだ。妖怪に捕らわれ、道具として使われるしか選ぶ運命がないと信じていた私の前に現れた生きる意味…それが、あんただったんだよ?」



俺様にそんな価値があるものか…


最後に、口には出さなかったが、その言葉にしない感情は俺様に伝わっていた。


その感情は重く、未練と悲しみが俺様を心を強く締め付けた。




「私は、あんたと・・美猴といつまでも一緒に生きたかった!」




俺様もだ・・・


麗華の魂と、人間達の魂の光が消えて逝く中で・・・


俺様の涙は返り血に染まり、その怒りと悲しみの咆哮が錬体魔王の城に響いたのだった。


次回予告


物語は美猴王が離脱した後へと・・・


そこには六耳達が美猴王の帰還を待ちながら戦っていた。

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