表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
天上天下・美猴王伝説!
372/424

鬼人?

美猴王の葛藤・・・


それは初めて抱く感情だった。


俺様は美猴王だ…


俺様は横になりながら昨日の事を思い出していた。


蓮華…


俺様は仲間達を捨てて蓮華を選ぶのか?


蓮華と共に穏やかな生活も悪くないと思う気持ちと、今まで共に戦って来た仲間達を放り捨ててしまう罪悪感とで迷っていた。


「寝られないの?」



その声は蓮華だった。

蓮華は裸で俺様の腕を枕にして眠っていた。


「何でもない」


「本当に?」


「俺様は悩むキャラじゃない!」


「そりゃそうだ…」



俺様は蓮華の頬を引っ張り睨む。



「何だと~??」



そして顔を見合わせて笑いあった。

蓮華は起き上がると衣を着て料理を始める。

料理の作る包丁の音が心地よい。

同じ刃物でも今までは剣がぶつかり合う音や、敵を斬る感触に心踊らせていた俺様からは信じられない。こんな小さな幸せもあるんだなぁ…と、感じた。



蓮華を外の世界に連れ出す約束。


そういえば、蓮華から夜中に聞いた話を思い出した。


蓮華は家族と共に旅をしていた。

父親は人間の武術家で、一人の弟子を付き従えていた。

その弟子は蓮華が兄と慕っていたそうだ。

そして母親と弟の五人の旅だった。


だが、旅の途中で黄風魔王の配下に襲われ、この村に連れて来られたのだ。


そこで兄と慕う父親の弟子は妖怪に殺され、同じく母親も殺された。頼みの父親は蓮華と息子を救うために黄風魔王の配下である錬体魔王と約束をし、錬体魔王の実験に身体を捧げる約束をして連れて行かれたのだ。

それから蓮華は弟と一緒に生活を送っていたが、その弟も妖血病を発症し錬体魔王に連れて行かれたのだと言っていた。



「魔王は私達人間を毎月、一人贄として要求するんだ…私の父も弟も連れて行かれた…もし、叶うなら…まだ生きていてくれたなら…一緒に助けてくれないか?」


「一人も二人も同じだ!だが、俺様が出来るのは邪魔をする敵の連中をぶっ倒す事ぐらいだぜ?」


「それで構わない」


「で、親父さんと弟の名前は何て言うのだ?」


孟風モンフォン玉風ユーフォンよ」



孟風に玉風か…


覚えておくか…



そんな話を思い出して悩む俺様の頭に皿が置かれる。



「あっちぃ~!剥げるだろ!」


「何を暗い顔をしているのさ?」


「暗かねぇや!」



そして俺様は蓮華と朝飯を済ませた後、一緒に村を歩いた。

気付くと俺様と蓮華はどっちからという事もなく手を繋いでいた。


こんな姿は仲間達には見せられねぇよな?


今日は少しいつもと違う道を歩いていた。

すると村人達が騒がしく集まっていたのだ。

そこで俺様は嫌な気を感じた。

俺様は気配を消して村人達の中に紛れる。



「あれは?」


「錬体魔王が仲間を連れて妖血病の薬を村人達に配っているんだよ」


「じゃあ、あいつが錬体魔王って奴か?」



錬体魔王は人間達に直接薬を配っていた。

人間達は錬体魔王を拝むように頭を下げて薬を頂戴している。


まるで救世主様だな?


俺様は違和感を感じた。

人間達を実験台に使っているのに人間を救う薬を配るなんて矛盾していないか?


それに錬体魔王のあの目は救済する者の目じゃねぇよ?


あれは獲物を物色する目だ!


すると蓮華が錬体魔王から薬を手渡されていた。

と、その時?錬体魔王が蓮華の腕を掴もうとしたのだ。


(何か、ヤベェ!)



俺様は人間達をかき分けて蓮華の腕を掴み、引っ張る。

蓮華は俺様に抱きよせられ、そのまま強引にその場から離れさせたのだ。



「突然、何すんのよ?」


「わりぃ?ちょっとお前にムラムラしただけだ」



俺様は殴られた。



「人目を気にしなさい!」


「って、人目を気にしたら良いのか?」



俺様は再び殴られた。


プンプンしながら怒る蓮華は何か楽しそうだった。


そんな蓮華を見る俺様も何か…こちょばゆい感じがしていた。


と、麗華が真面目な顔をして俺様を見つめる。



「気付いた?」



俺様は頷いた。

麗華は俺様を買い物に付き合わせるフリをして、村を案内していたのだ。



「村の至る所に妖怪を封じる結解石が幾つも埋めらた柱があったな。あの石のせいで俺様の妖気が封じられているってわけか?」


「で、何とかなりそうなの?」


「まぁな?」



麗華は俺様に協力してくれているのだ。


本人曰く…



「村から出るため!そのために私は美猴に協力するわ!」



つまり俺様に交渉条件を突きつけて来たのだ。


正直、助かる。


だが、妖気が戻らなければ俺様も無力だし、情報がなければこの崖下の村から脱出する事も出来ないのだからな…


この村から出るためには村の北側にあった建物。

つまり人間達が逃げ出さないように監視する妖怪城からしか出られないようだ。

そのためには先ずは結解石を全て破壊し妖力を取り戻す。

その後は妖怪の城に殴りこむ。

因みに城には黄風魔王直属の配下の魔王がいるらしい。

それがさっきの錬体魔王って奴だろうな。


やはり結解石を壊すのが先決だな。


なら、いつ決行するか?


俺様は傷口を手に触る。


麗華のお陰で大分良くなったようだな?


なら、今晩辺りに…


俺様も早く仲間と合流しなきゃいけないから、モタモタ出来ないしな。


「!!」


仲間と合流?


俺様は仲間と合流して、麗華を連れていけるのだろうか?


まだ答えが出ていなかった。


俺様はどうしたいのだ?


解らねぇよ・・・


その夜は麗華の作った贅沢な飯を食った。

村を出るのに残していても仕方ないからと、材料を全部使い腕を降るったらしい。


モグモグ…美味い。


そして深夜に俺様は動いた。

本来なら分身を飛ばして結界石を破壊するのだが、妖力のない今のままではそれも出来ない。

俺様は真っ黒なマントを頭から被り、闇に紛れ人目に付かないように駆ける。


一つ。二つ。


結界石を破壊した。


すると僅かだが妖力が漲ってきた。

直ぐ様俺様は印を結ぶと、俺様の身体から分身達が抜け出し飛び去って行く。



「後の結界石は分身達に任せるぜ!」



分身達が手筈通りに一つ一つ結界石を壊していく。


「ん!?」


すると分身の一体が何者かによって消されたのだ?


何があった?


分身の記憶を探るが、背後から串刺しにされて消されたようだ。


まさか俺様の行動が筒抜けだったのか?


俺様は分身が消えた場所へと移動した。


現地に着くと身を潜めて用心深く辺りを探る。


妖気は感じない…


敵はいないようだぞ?


じゃあ、分身は誰にやられたのだ?


直後、俺様の背後から嫌な感じがして本能的に躱したのだ。


俺様は背後を振り返ると、そこには人影が現れた。


気配は勿論、妖気も感じなかったぞ?


だが、俺様は直ぐにその相手に対して気付いたのだ。



「人間か!?」


それは人間の男だった。

酔っ払いか?

その男はふらふらと俺様に向かって近付いて来る。

無防備?何を考えてる?



「お前、何者だ!俺様の邪魔をするんじゃねぇぞ?」



すると、俺様に向かって突然襲い掛かって来たのだ。

しかも何て跳躍力だ!本当に人間なのか?

まるで妖怪並みじゃないか?


人間の男は俺様の真上から襲い掛かる。

俺様は男の突き出した腕を掴み受け止め顔を見る。


そこで、


「何だ?お前!」


こいつ焦点が合っていない?


それに獣のように牙をはやし、涎をたらし本能だけで襲って来たのだ。


力が…化け物並みだ…


俺様は飛び上がると同時に男の顎を膝で蹴り上げる。



「あ…やっちまったか?」



男は首が伸びたように後ろに垂れたまま動かなくなった。


人間相手に本気になってしまったようだ…


それだけ嫌な感じがしたのだ。


俺様は動かなくなった男から背を向ける。



「!!」


その直後、再び男は動き出して、俺様に襲い掛かって来たのだ。


今ので死んでないのか?


本気で蹴ったんだぞ?


だが、それだけではなかったのだ。


目の前の男から妖気を感じる?


人間じゃなかったのか?


男の身体から妖気が立ち込め、その額が裂けて、角が生えて来たのだ。


鬼?


いや?変だ…確かにこいつは人間だったはず?

人間が妖怪に変化したと言うのか?


鬼人??


驚く暇なく、背後から音がした。

そして俺様は気付いたのだ。

俺様は囲まれていると。

周りには目の前の鬼人と同じ角の生えた人間が何人も現れたのである。



「どうやら簡単には俺様を帰してくれないようだな?」



俺様は拳に妖気を籠めると石化していく。

そして一斉に襲い掛かる鬼人達に迎えうったのだ。

俺様の拳が炸裂すると鬼人の身体に風穴が空いた。



「死にたい奴からかかって来やがれ!」



が、鬼人達は返答もなく、まるで屍のような形相で、しかも獣の如き動きで俺様に向かって来る。恐怖がないのか?思考がないのか?

俺様は素早い動きで駆けると、そいつ達は同じく素早い動きで追ってて来た。

俺様は建物の屋根に飛び上がると同じく追って来た鬼人に向かって…



「ハァアアア!」


気孔の玉を放った。


消滅する鬼人、だがまだまだいやがる?


しかし何処から沸いて出て来たのだ?


昼間にはいなかったぞ?



「きゃああああ!」



その時、ガキの悲鳴が聞こえた。


何処から?この建物の下か?俺様は屋根をぶち破り建物の中に飛び込む。

そこには、村のガキが鬼人に襲われようとしていたのだ。

俺様は鬼人を蹴り飛ばしガキを救い、倒れた鬼人に対して攻撃を仕掛ける……が、助けたガキに止められたのだ。



「お母さんなの…お母さんが変になっちゃったの!」


「何だと?」



見ると、目の前の鬼人は村の女のようであったが、外にいた連中と同じく鬼人と化していた。



「お母さん病気で…薬飲んだの…薬飲んだら、元気になったの…でも、突然苦しみ出して…」



薬だと?


意味が解らないぞ?


薬飲んだら、化け物になったのか?


が、その時、ガキの俺様を掴む力が異常に強くなる。



「おぃ?」



見ると、ガキの身体が痙攣を起こしていたのだ。

ガキの腕には母親の鬼人に付けられたと思われる爪の傷があった。


「なっ??」


ガキの額から角がはえだし、妖気が立ち込める?

そして、俺様の腕に噛み付いて来たのだ。

まさか?噛み付かれたり傷を付けられたらヤバいのか?

咄嗟に俺様は腕を石化させて、ガキを突き飛ばした。


感染??


何者かが人間を化け物に変えている実験をしたのか?


思い当たる奴がいた。


錬体魔王の野郎か!


今朝、配っていた薬が原因か?


俺様にも経験があったから直感的に解った。

恐らく薬に何らかの作用があって、それが人間の身体を浸食すると角が生えて化け物と化すのか?同時に外から人間達の悲鳴が至るところから聞こえ、俺様は建物から出たのだ。

外には鬼人と化した人間が俺様を獲物と判断し近付いて来た。


やべぇ…


だが、その時俺様の脳裏に麗華の顔が過る。


「麗華…」



あいつは無事か?


何かいてもたってもいられなくなった。


そして、行く手を遮る鬼人達を払いのけながら麗華の元へと駆け出したのだ。




「麗華ぁー!今行くからな!だから絶対に無事で…無事でいてくれぇー!」


次回予告


美猴王は駆ける!


麗華は無事なのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ