猿のトラウマ?眼力魔王の最期!!
眼力魔王の魔眼の能力に手も足も出ない美猴王達、
そして眼力魔王は勝利を確信した。
それは、過去…
そこは龍神族が住まう精獣界。
蛟魔王はその中心にある竜神城の中を走っていた。
蛟魔王は竜神族の追っ手に追われていたのだ。
理由は蛟魔王が竜神城に奉られていた三種の神器の一つを強奪したからだと言うのだが、あの蛟魔王が何故そんな事を?
蛟魔王は迫る追っ手を返り討ちにしながら、地上界へと逃げ延びた。
だが、地上界へと逃げ延びた後も、竜神族からの追っ手は幾度と現れた。
やがて蛟魔王は人目を避け、闇に身を潜ませるように逃亡生活を続けたのだ。
一体、蛟魔王は竜神界から何を強奪したのか?
それは誰にも解らない。
竜神族の最高責任者達と当事者である蛟魔王にしか…
ただ噂されている事は世界を手に入れる神具とも、滅ぼす神具とも言われていた。そのため竜神族だけでなく、天界の神族や地上界の妖怪達も入り乱れ、激しい争奪戦が始まったのだ。
だが、蛟魔王は向かって来る者達を全て撃退…
血祭りにした!
その残虐さは蛟魔王の名を地上界全土へと広めた。
今まで身を潜めていた事と一転し、己の名を広めるために蛟魔王は目立つ行いを始める。
「これはもう発想の転換だな…」
やがて天上界の神々も蛟魔王の存在を放って置けなくなる。
そんな時、蛟魔王は地上界を牛耳る魔王制度に目を付けたのだ。
現在の魔王を倒せば新たな魔王になる。
しかも天界は魔王には手を出す事を禁じる掟がある。
直ちに蛟魔王は近場の魔王の所へ向かい…ぶった押した。
相手は当時、十三番の魔王玉を持った強者であったが、蛟魔王は難無く倒したのだ。
やがて蛟魔王の隠れ家に天上界から使者が現れ、
地上界を支配する七十二魔王の一人と任命され、魔王の称号を得た事により天界の神族も地上界の妖怪達は蛟魔王に手出し出来なくなった。
が、竜神族はどちらの勢力とも絡まぬため、魔王となった後も蛟魔王の命を狙いに来た。
竜神族の追っ手はよりすぐりの精鋭!
それが朝昼休む事なく蛟魔王を襲うのである。
「退け!さもなくばお前達の命は保障しないよ」
だが、竜神族は命を省みずに襲って来た。
竜神族は誇り高き一族なのだ。
蛟魔王も承知の上、向かい来る竜神族を手にかけていく。
一人、一人と…
中には見知った者達もいた。
だが、躊躇したら死ぬのは自分の方であり、情けは己の死を招く。
心を閉ざし、ただ向かって来る者は全て殺す!
冷酷かつ残虐に…
脅えて逃げるなら良し。
そうでなければ容赦はしない。
降り懸かる火の粉は全て消し去る。
その数は数知れない…
血に染まりし手は同族の血、引き裂いた肉は同族の肉であり、砕きしは同族の骨。
数消した光は同族の命の灯…
やがて蛟魔王は同族殺しの殺戮女帝とまで呼ばれた。
引き返せぬ運命…
蛟魔王は鮮血に染まった身体を、己の城の浴場にて洗い流していた。
「!!」
気付くと浴場は鮮血に染まり広がり、蛟魔王を覆っていった。
すると血に染まった浴場から竜神の鎧を纏った髑髏が何体も出現し、蛟魔王の身体に絡み付いて来たのだ。
気付くと蛟魔王の姿は幼き少女の姿となっていた。
その時、抑えていた感情が込み上げて来たのだ。
(もう嫌だ…後、何人殺せば許してくれるの?
嫌ッ!嫌…嫌!嫌!殺したくない!もう私は誰も殺したくないんだぁー!!)
ここは眼力魔王の城塞。
「私は…もう…」
現実世界の蛟魔王は動かなくなったまま、涙を溢れ出しながら疼くまっていた。
普段の冷静な蛟魔王からは信じられぬ状態で、両手で顔を覆い、泣き崩したのだ。
その状況は牛角魔王もまた…
それは過去の記憶。
牛角魔王は父である神農と一騎打ちをしていた。
牛角魔王は二本の刀を手に電光石火の連撃を繰り出していたが、その全ての攻撃は神農には届かなかった。父である神農はかつて地上界を支配していた最高三神の一人であり、その実力は今の天界の神々ですら恐れるほどであったと言う。
その父である神農に反旗を翻し、牛角魔王は挑んでいるのだ。
弟である蚩尤を暗殺しようとした父神に、怒りをぶつけるために!
だが、現実は身の程知らず?力及ばず?
その力の差は歴然としていた。
牛角魔王は神農の覇気に押し潰され、幾度と壁にたたき付けられ、崩れ落ちる瓦礫に埋もれるように横たわっていた。
そんな中、牛角魔王は己の力の無さを実感したのだ。
『我が息子よ!せめて父である儂の手で始末してくれよう!』
「!!」
(俺は死にたくない!)
それは牛角魔王の本能とも言うべき生への執着心であった。
その後、何が起きたのか?
唯一、その現場に駆け付けて全てを見ていた蚩尤のみが知る空白の時間があった。
だが、それは語られる事はない。
牛角魔王もまた、その記憶を失い、忘却の時へと消し去った忌まわしき過去。
そこには、神農が変わり果てた無惨な屍と化し、傍には神農の血に全身を染めた変わり果てた牛角魔王の姿があった。
(ウグッ…グググ…)
「アガァアア!」
再び眼力魔王の城塞の中、
牛角魔王もまた思い出したくないトラウマに身体中を震わせ疼くまる。
俺様は美猴王…
突然、意味も解らないまま蛟魔王と牛角魔王の様子がおかしくなり、疼くまって震えながら怯える様子に俺様は状況が掴めないでいたのだ。
一体、何が??
すると、眼力魔王は言った。
「アハハ!苦しめ!苦しめ!お前達は自らの闇に心を砕かれ、そのまま精神を崩壊させるが良い!精神を砕かれ躯となった後、私のために戦う兵士として作りあげてやるからな」
「!?」
「私はお前達のように汚らしく汗をかき、やれ努力だと肉体を鍛え自慢する筋肉馬鹿とは違うのだ!私の魔眼さえあれば、無駄な戦いはしなくても簡単に勝てるのさ!アハハハハ!」
「?」
眼力魔王は茫然と自分を見ている俺様の様子にようやく気付いたのだ。
「お前…何ともないのか?」
「えっ?何がだ?」
「……………」
「……………」
「はぁ??」
直後、俺様は眼力魔王の顔面を殴り飛ばしてやった。
眼力魔王は壁にまで吹っ飛び直撃し、崩れる瓦礫に埋もれたのだ。
あれ?やったか?
「うがぁああああ!馬鹿な!馬鹿なぁー?」
眼力魔王は崩れた瓦礫を払いのけ起き上がって来ると、再び俺様に向かって魔眼を発動させる。
眼力魔王の魔眼の光は俺様の目の中へと入って来て、俺様は一瞬、硬直した。
「トラウマがない者など存在はしない!誰しもが持つ心の闇!お前の闇を見つけ出して、その闇に身も心も押し潰させ崩壊させてやるぞ!」
眼力魔王は魔眼を通して、奴の精神が俺様の中へと入って来る。
眼力魔王は俺様の記憶を探っていたのだ!
それは脳?
いや!魂の中の記憶を…
(コイツの…トラウマは何処だ?)
俺様の記憶を探る眼力魔王が見ているのは、独角鬼王の死、
だが、まだ弱い…もっと!もっと!
眼力魔王は気付いていたのだ。
俺様の魂に隠されている闇の気配に…
闇と言うトラウマ…
しかし、俺様にそんな過去あったか?
生まれて直ぐ仙人の爺ちゃん達の所で修業をし、毎日毎日悪戯三昧で、その後は山を飛び出して魔王を目差したのだから、トラウマなんてないだろ?
が、眼力魔王は見付けた。
俺様の魂に潜む闇を!
(見付けたぞ!)
それは俺様の魂の奥底に封じられていたのだ。
魂に刻まれた記憶?
俺様すら知らぬ隠された記憶の扉。
眼力魔王は俺様の中にある扉をこじ開ける。
だが?
眼力魔王は俺様の記憶に映るその場景に、言葉を発する事が出来ないで止まっていた。
「ここは何処だ?何なんだ?この記憶は?何処なのだ?この場所は?」
眼力魔王は宙に浮かびながら、この見知らぬ世界を見ていた。
そこは、この世界とは異なる地にて、数千数万の人間達が戦争していたのだ。
見慣れね鎧を纏い、武器を持ち、その中に人力戦車の上に乗りながら兵を指揮している五人の若者達がいた。
(声がする?)
「敵兵はあらかた片付けましたね~!では、あの丘を越えた先から敵陣に入りますよ~皆さん気を引き締めましょう!貴方も腕を振るってくださいね?」
その者は惚けた喋り方をした軍師だった。
また、話し掛けられた若者は逞しい肉体に美しい容貌の戦士だった。
「あぁ!任せろ!ようやく俺の力をふるう時が来たな!」
「兄さん!僕も兄さんに負けないようにがんばります!」
隣で先程の戦士を兄と呼ぶ優しげな若者。
すると一人、重い表情だが決意に満ちた眼差しで丘の先を見詰める若者がいた。
「姫…必ず僕が君を救い出してみせる!だから僕を信じて待っていて…」
するとリーダーらしき者が若者の肩に手を置いた。
「心配するな?俺がお前を導いてやる!俺が必ず姫をお前のもとに…」
『!!』
直後、そのリーダーらしき若者は異質な気配に気付き、気配の先に向けて睨みつけたのだ。
『何者だぁ!!』
すると男の目は金色に輝き、自分達を覗き見ていた存在に対し威圧した。
『うぎゃあああああ!』
若者から放たれた金色の覇気は気配の主を捕らえると、その場から弾き消したのだ。
悲鳴をあげて苦しむ気配の主とは間違いなく眼力魔王だった。
「どうしたのですか?」
「いや、どうやら魔物の類いであろう。だが安心しろ?身の程を知らぬ輩を少々懲らしめてやった」
「?」
その男はまさしく俺様が以前夢の中で見たあの意味不明な男だった。
そして再び現実世界。
俺様の前には悲鳴を上げて現実へと強引に引き戻された眼力魔王がいた。
しかもその魔眼は…血を流し、潰れていた。
「馬鹿なぁー!熱い熱い熱い熱い!目が熱くて見えない!何がどうなったのだぁー?」
(まさか!あの男か?ありえない…記憶の中の映像が私を攻撃したとでも言うのか?そんな馬鹿な事が??ありえない!しかも奴の瞳は間違いなく魔眼だった!しかも、ただの魔眼じゃない…あれは!!)
『金色の魔眼!!』
自身の魔眼を失い、苦しみもがく眼力魔王を俺様は見下ろしていた。
その左右には牛角魔王と蛟魔王が眼力魔王の魔眼の呪縛より解き放たれて立っている。
頼みの魔眼を失った今、眼力魔王は小物と同じ弱小妖怪レベルになっていた。
先程までの妖気が完全に失っていたのである。
「魔眼に頼りきったツケだな?」
「ムカつく奴だが、こうなっては憐れな野郎だ」
「情けは無用だよ!殺すか?」
その時だ。
眼力魔王の城塞が揺れ動き崩れ始める。
その隙をつき、眼力魔王は残りの力を振り絞り立ち上がると…
「私をナメるなぁー!憐れむな!コケにしやがって!私は絶対にお前達には殺されんぞ?私は必ずお前達を許さぬ…例えこの身が失っても、私はお前達が生きている限り呪い殺してやる!あぁあ!そうさ!復讐してやるぞぉー!!」
眼力魔王は絶叫の如く恨み叫びながら砕けた壁から外に飛び降りたのだ。
眼力魔王は崩れ落ちる城塞から身を投じたのだった。
これが眼力魔王の最期…か?
「城が崩れ落ちるぞ!脱出するんだぁ!」
俺様達は崩れ落ちる城塞から命からがら抜け出した後、城塞の前に集まっていた。
そして仲間達に向けて腕を掲げて叫んだのだ。
『俺様達の勝利ダァーッ!』
仲間達の歓声の中、結局…どうやって俺様達は眼力魔王に勝てたのかは、俺様は勿論、牛角達も解らなかった。解らなかったが…
まぁ~終わり良ければ全て良しとするかぁ~オゥ!
次回予告
眼力魔王に勝利した美猴王達、水簾洞闘賊団!
勝利に宴と盛り上がる。
しかし、その時?




