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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
天上天下・美猴王伝説!
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牛角パニック?猿はお前を信じるぞ!

牛角魔王と蚩尤の前を塞ぐのは、怪力魔王すら恐れる剛力魔王だった。


俺は牛角魔王!


俺と弟の蚩尤は先を急いでいたのだが、

向かって来る敵兵を薙ぎ倒し、眼力魔王の城塞の真下まで来た所で、俺達は動きを止められていた。何故なら既に先に着いていた仲間達の屍の山、その中心に俺より大柄な鎧を纏った者が立ちはだかっていたのだ。

俺と蚩尤はその者を前にして不用意に動けずにいた。



「蚩尤!油断するなよ?おそらくは奴が五魔王の一人!剛力魔王だぞ!」


「ぁあ!兄者よ!解っているぜ!」




俺と蚩尤は同時に駆けだすと剛力魔王に向かって斬り掛かる。刀が直撃する寸前、剛力魔王が振り払った大型斧の風圧だけで俺と蚩尤は弾き飛ばされたのだ。


「うぐぅわああ」


蚩尤は吹き飛ばされながらも、体勢を立て直し再び向かって行く。



「ぐぅ!この野郎!このぉ!このぉ!」



蚩尤は剛力魔王に幾度となく刀で斬りかかるが、その鎧に傷一つ付ける事が出来なかった。

そこに、


「躱せ!蚩尤!」



剛力魔王が両手を組み蚩尤に向かって大型斧を振り下ろす。

蚩尤は俺の声に反応し刀で大斧を受け止めたのだが、蚩尤の刀はいとも簡単に木っ端微塵に粉砕し、蚩尤は地面に埋もれるように叩き付けられたのだ。


「蚩尤ぅー!」



蚩尤は俺に大丈夫だと合図するが、身体中血だらけでズタボロになっていた。


本当に大丈夫なのか?


実際、両腕の骨だけでなく受け止めて踏ん張った両足の骨まで折れていた。



(いでぇええ!あ…飴?飴?死んじまう!)



蚩尤は懐から飴をつまみ口に含ませる。


くそがぁ!


俺は仲間達だけでなく弟の蚩尤までやられて頭に血が上る。



「キサマァ!俺と一対一の勝負をしろ!」



俺は剛力魔王に向かって突進して行く。

その両手には二刀の長剣を構えながら大技を繰り出す。


二刀返三角刑(にとうへんさんかっけい!』



俺の放った斬激が剛力魔王に炸裂した。

その目にも留まらぬ猛撃は剛力魔王の鎧に亀裂を作り、木っ端微塵に粉砕したのだ。


「思ったより呆気なかったな?」



が、勝ち誇る俺に向かって蚩尤が叫ぶ。


「兄者ぁ!上!上だぁ!」


何?上だと?


見上げると、剛力魔王の粉砕した鎧から人影が飛び出し、上空から大斧を振り下ろして来たのだ。俺は咄嗟に右手に持った刀を振り上げ、敵の大斧を受け止める。


「クッ!」



その衝撃は俺の踏ん張る足を地面に沈ませるほどであった。

そしてそいつは、俺の前に真の姿を現したのだ。



「まさか!?」



その姿は身長が160ちょいくらいか?


体重も軽そうにみえる細身の娘の姿だったのだ!!



「お前が剛力魔王の正体だと?女だったのか?」


「………」


「なるほどな。見た目に騙されるほど俺は甘くないぞ?確かにお前は剛力魔王のようだ。お前から強い力を感じるぞ」


「…………」


「それに凄まじい力だった。たとえ力が並外れて強くとも、所詮は娘の放つ力!鍛えぬかれた男の力には勝てまい?」




が、そこに蚩尤が俺に向かってまた叫んでいた。



「あっ~兄者ァ!上!上!う~え!」


「はっ?上がどうしたって?」



何が上?


上と言っても剛力魔王の攻撃を受けた俺の右腕があがっているだけ?


腕?腕!うっ……


でぇ~~!!


俺の右腕が肘からぶら下がるように折れていたのだ。


マジか?


痺れていて気付かなかった。


完全に折れとる?

さっきの受け止めた一撃で折れたのか?


俺の腕ぇえええ~!



そこに剛力魔王がゆっくりと向かって来た。

その両手には重々しい大型斧を二本、軽々と持ち構えていたのだ。


そして振り上げ…って、



「待ったぁ!待ったぁ!待ったぁ!待ったぁ!」



俺は退き、折れた腕を抑えながら慌てふためいた。

俺は襲い掛かる剛力魔王から繰り出される大型斧を躱しながら逃げ惑っていた。


「兄者…」



蚩尤はまだ動けないでいた。

が、何やら口の中に入れていた。


(あらかじめ口の中に邪魂の飴を入れといて助かったぜ!危なく死ぬ所だった。それにしても兄者の腕はヤバいぞ!あのままでは流石の兄者でも…せめて兄者に俺の飴を渡せたら…)



が、蚩尤は考え直す。


(プライド高い兄者は受け取らないだろうな。下手をしたら取り上げられるかもしれん。どうする?)



俺は剛力魔王の攻撃を躱しながら分析していた。


直ぐに解った。


一撃喰らえばオダブツだ…


スピード、破壊力、どれを取っても一級品!


しかも…


俺は剛力魔王の姿を再び見て分析を始める。


細身に見えるが、あの細い腕には想像を超える程の筋繊維が詰まっている。

それが、あの馬鹿げた力を生み出しているのか?


女でありながら全く信じられん!


確か魔王の位も十桁台だったよな?


しかも、あの澄ましたような顔付き!


俺を見下しているつもりか?


この牛角魔王を!


何かムカついて来たぜ!


女に負けるなんて男のプライドが!俺のプライドが許さん!


俺は剛力魔王の振り下す大斧の攻撃を左手に握り直した刀で受け流し、身体を翻しながら横一閃で刀を振り払う。だが、剛力魔王は俺の反撃に顔色を変えずに飛び上がり躱した。


「クッ!」


力だけじゃねぇ…


動きや反射神経も並みじゃねぇぞ?


「それより…」


俺が一番、気になるのは剛力魔王の無表情だった。


キャラか?キャラなのか?


腹で何を考えてるか解らないのは余計に腹が立つぞ!


俺は見た目からパワーファイターだと思われがちだが、実は緻密なる計算の上から相手の事を分析して戦うのが本来のスタイルなのだ。表情だけではない。相手の妖気や微妙な空気の変化で力量を読み、身体の肉付きや武器等から次の動きを察知する。他にも分析材料はあるのだが説明したらキリがない。それらを瞬時に分析し先手を取る。まさに計算された戦方だ。


剛力魔王から解るのは細身の身体からは信じられないが、実は均整の取れた優れた筋質の持ち主であり、そこから繰り出されるパワーやスピードは尋常じゃない事だけ…


分析材料には会話からも相手を知る事が出来る。


思考や目的、本人が知らない癖や弱点まで…


が、無表情に無口。


何を考えとるのか全然解らん!



コミュニケーションが必要なのか?お茶飲むか?お茶は何が好きなのだ?いや、そんな事より酒だ!酒が良い!相手を知る上で酒が一番だぁー!



と、俺はテンパっていた。



「剛力魔王!さ…」



戦いの最中に酒を飲もうと言いかけた時、眼前にまで剛力魔王の斧が迫って来ていた。


「のぅわぁああ」



俺は情けなく頭を抱えてしゃがみ込むと、見上げた先で剛力魔王が俺を見下ろしていた。


目茶苦茶格好悪い…


情けない…


恥ずかしい。


穴があったら潜り込みたい。


せめて折れた腕が治ればと思ったが、言い訳だ。


言い訳は見苦しいよな?


勝てない理由については、実は最初から解っているのだ。


俺はただ…



女相手に本気になれないだけなのだぁ!


アハハハハハハ!


あっ…


剛力魔王の蹴りが俺の顎に直撃し、俺は蹴り飛ばされた。



「うううっ…」



俺は顎を押えながら立ち上がると、剛力魔王は俺に向かって初めて声を発した。


「……ヨワ」



えっ?今、何と言った?


あろうことか、俺が…俺が弱いだと~!?


俺の事か?本当に俺の事なのか?



「うんなろぉ!」



俺は左手で刀を構え、マジに…とうとうマジになったのだ。

だから、今まではマジじゃない!マジに今マジになったのだぞ?激マジになったのだ!


俺は左手の刀を力任せに振り払って攻撃を仕掛けたが、剛力魔王は斧を振り上げて軽々と受け止める。俺の刀を持った左腕は弾かれ、その隙を狙って剛力魔王の逆手の斧が俺の眼前へと迫る。


マズすぎ!右腕は折れたままだぞ!受け止められん!どうする?


迫る斧に俺は狙いを定めて伸ばしたのだ。


俺の頭上にある二本の角を!


「!!」


頭上の二本角は伸びて大型斧を握る剛力魔王の手首をかすめ、

剛力魔王は咄嗟に斧を手離し後方へと飛び退く。


やむなく不意打ちとは…


だが、俺も男だ!


女に負けるくらいなら俺はプライドも意地も捨て去るのだ。



「…………」


蚩尤の俺を見る目が冷たかった。

が、それ所じゃなかった。

突如、剛力魔王の様子がおかしく震え出すと、その身体が黒く染まっていく。


あれは、まさか!?



『獣王変化かぁ!?』



見た目は完全体の獣化こそしていないが、半獣化といったところか?

肌が黒く変色し、所々に黒い毛が見える。


やべぇぞ!


だが、見た目なんかより今まで以上の凄まじい妖気が剛力魔王から感じられる。


と、そこに!



『その戦闘ちょっと待ったぁーーー!』




声のした方向に振り向くと、そこには美猴王が…


「ナヌ?」


傷付いた怪力魔王を背負ってやって来たのだ。



「戦闘を待てとはどういう意味だ?それに敵である怪力魔王を何故お前が背負っている?」




すると美猴王の背から降りた怪力魔王が答えた。



「剛力魔王は俺の姉様だ!姉様は眼力魔王の洗脳にて操られているのだ!今も、あんたとの戦いに眼力魔王の野郎が痺れを切らし、姉様に無理矢理変化をさせたに違いない!」


「なのだ!」


…美猴王、お前は説明していないだろ?



「で、洗脳を解けば無理な争いはしなくて良いと言うのか?そもそも洗脳を解く手段があるのか?」


「俺はこの美猴王によって、頭部に強烈な衝撃を受けて洗脳から解放された。だから姉様にも!」


「なのだ!」



…美猴王、お前は説明していないよな?



「しかし、あの剛力魔王にそんな攻撃を与えるのは楽じゃないぞ?」


「安心してくれ!お前達の助けは借りん!それに姉様に傷を負わせたくないからな…。これから先は俺の命にかえても…」




すると怪力魔王は変化した剛力魔王に向かって捨て身の特攻を仕掛けたのだ。

で、ぶちのめされて踏み潰されてしまった。


「ふにゃあ~」



俺と美猴王は…



「呆気なかったな…」


「…だな。で、どうするよ?」



敵を殺さずに頭に強い衝撃か…


やむを得ん!


とうとう封じていた取って置きのあの技を使う時が来たようだな。



俺は意を決すると…



「俺に策がある!だが、美猴王よ?頼みがある!」


「何だよ?」


「今から取って置きの大技を出すのだが…」


「取って置きの大技?」


「そう。だが今から使う技を誰にも話すなよ?良いな?」


「はっ?どうして?」


「どうしてもだ!」


「わ…解った…」




俺は美猴王に口止めした後、剛力魔王に向かって行く。


次回予告


次話!牛角魔王の取って置きの必殺技が炸裂する!!

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