友との誓い!猿覚醒??
美猴王から戦いを任されたのは、六耳だった。
俺ッチは六耳!
俺ッチは美猴王様に願い出て、独角鬼王の仇である首狩魔王と一騎打ちを申し出たんだ。
美猴王様はそんな俺ッチの思いを信じて任せてくれたのだけど、
負けちゃいました。
「馬鹿な奴!これが雑魚と俺達魔王との差ってもんだ!この身の程知らずが死んで詫びろ!」
と、そんな絶体絶命的状況の中、俺ッチの前に現れたのは俺ッチと同じく猿体実験にて生み出された三猿の水猿、岩猿、気火猿だった。
「後は任せろウキィ!」
「俺達がぶっ倒すウキィ!」
「いくぞ!お前達!必殺奥義だぁウキィ!」
水猿は瞳を綴じると妖気が膨れ上がる。また、気火猿も自分の耳を塞ぐと、同じく妖気が膨れ上がったのだ。彼等は己の五感の一つを綴じる事で潜在能力を引き出す事が出来るのだ。
岩猿も同じく口を閉じると同じく妖気が膨れ上がった。
五感関係ない?いや!良く言うだろ?口より先に手を動かせと!
無駄口を無くせば岩猿は出来る奴なのだ。
パワーアップした三猿は首狩魔王に向かって行く。
「ん?」
その時、俺ッチは嫌な気配を感じた。
(…何か聞こえる?)
その直後!
「うきゃああああ!」
俺ッチの目の前で三猿達が悲鳴をあげて、見る見るうちに身体中傷だらけになっていく。
て、瞬殺ですかぁー??
ゆっくりと三猿達は血だらけになって倒れたのだ。
一体、何が起きたんだ?
目の前で何か攻撃されたようには見えなかった。
首狩魔王も何もしてなかった…はず?
「あっ?あっ!あぁああ!!」
そこで俺ッチは首狩魔王の持っていたはずの二つの大鎌が消えている事に気付いた。
何処に?消えた??
すると、三猿達の真上に突然首狩魔王の鎌が出現すると、三猿達に向かって急降下する。
「あぶなぁーーぃ!」
俺ッチは飛び出し、三猿達を抱き起こしながら助け出したのだ。
直後、鎌が突き刺さり大地を抉った。
「危なかったぁ~!」
「てめぇ~邪魔すんじゃねぇよ!でも、良く気付いたな?運の良い奴だぜ!」
俺ッチは痛む身体を引きずりながらも再び首狩魔王に挑むしかない。
岩猿、水猿は申し訳なさそうに弱り切っていた。
「すまなぃ…役に立てなくて六耳…」
「それにしても、奴の鎌に良く気付いたな?俺達は全く気付かなかったよ…」
「俺ッチもたまたまだよ!見えなか…」
…った。
アレ?見えなかったのに何故気付けた?
が、そんな事を考えてる暇はなかった。
首狩魔王が少しずつ俺ッチに近付いて来ていたから。
が、そこに遅れて来た水簾洞闘賊団の仲間達が集まって来ていた。
「皆さん!大丈夫ですかぁ!?くそぉ!全員一斉にかかるぞぉ!」
『おぉおおお!』
仲間達が武器を手に首狩魔王に向かって行く。
「待てぇ!迂闊に近付いたら…アッ!」
首狩魔王達にかかって行った八人の仲間達がゆっくりと倒れていく。
しかも、その首は無惨にも胴体と切り離され転がったのだ。
「そんな…」
誰にも訳が解らなかった。
何が起きたのかも?
首狩魔王に近付いた途端に死んでいった仲間達。
意味が分からない。
「アハハハハ!お前達全員首を狩り落としてやるぜぇ~」
余裕こく首狩魔王に対してなすすべがない俺ッチ達…
やみくもに向かって行っても、死んだ仲間達と同じ結末が待つだけ。
なら近付いてダメなら遠距離から攻撃を仕掛けたら!?
「皆!遠距離攻撃だぁ!近付いたら危険だ!」
俺ッチの合図で無事だった仲間達が矢を射り、術を使える奴達は離れた場所から炎弾や水流弾を放ったが、その攻撃は首狩魔王に当たる前に消え去る。
どうして?
その時、気付いたのだ。
また首狩魔王の持っていたはずの鎌が消えてる事に。
あんなデカイ大鎌が何処へ消えたのだ?
違う!見えないだけなんだ!
首狩魔王は二つの大鎌を目にも留まらぬ速さで振り回し、自分の射程に入って来た攻撃を切り裂き、さっきも向かって来た仲間達の首を落としたのだ。
見えない攻撃なんかどうしたら良いんだよ~!
俺ッチにも術が使えたら…
そうなんだ。
俺ッチは他の三猿達と違い術や得意な攻撃技がなかったのだ。
同じ猿体実験で生まれたのに…劣等感。
羨ましい
そんな時、美猴王様の言葉を思い出す。
『絶対に生きて俺様に武勇伝を聞かせろ!』
武勇伝かぁ…
美猴王様には沢山の武勇伝があるのに…
そういえば、美猴王様ならどう戦うのだろうか?
美猴王様も考えて見たら術をあんまし持っていなかったよな?
分身や変化に体術に幻術?
俺ッチは出来て分身と体術くらいか?
後は…
そこで、再び思い出したのだ。
死んだ独角鬼王が最期に俺ッチに残した言葉を…
『六耳…ワリィなぁ…俺はもうダメだ…俺も生きて…美猴王様と一緒に行きたかった…』
『馬鹿言うな!死ぬな!独角ぅー!』
『お前に頼みたい事がある…お前にしか頼めねぇ…俺の代わりに美猴王様を…頼む!お前にしか頼めねぇんだよ。自信を持て!俺が美猴王様の次に友だと思ってたお前にしか頼めない…お前なら…やれるはずだから…』
『!!』
友だって?
そして再び思い出した。
俺ッチが独角鬼王と張り合って、修業に明け暮れていた時の話だ。
「ハッ?得意技が欲しい?」
「だってよ~俺ッチは他の三猿兄貴達と違って術もないし、せめて得意技なんか欲しいとか…いや!お前にこんな話するなんてどうかしてるぜ!俺ッチ!」
すると独角鬼王は俺ッチを指差して言ったのだ。
『お前のそれは飾りか?』
それは俺ッチの六つの耳だった。
耳??
いや?確かに六つもあれば少し他の連中より耳は良いとは思うけど、それが何か役に立つのか?
ハッ!
今頃気付いた。
周りの連中は見えない攻撃になすすべがないのに、俺ッチだけが鎌の位置を把握し、さっきも三猿達を救えた事について。
見えていた訳じゃない!
直感的に?いや!聞こえていたのだ。
向かって来る鎌の音が!
しかも位置を把握出来るくらいに正確に?
俺ッチは意を決して、ゆっくりと首狩魔王に向かっていく。
俺ッチは目を綴じていた。
集中しろ!
意識を耳に!!
俺ッチの六つの耳に!!
「はぁ~?お前何やってるの?目なんか綴じてよ?覚悟決めた?怖じけづいた?恐くて目を開けていられないてか?アハハハハ!」
余計な言葉は聞くな…
聞くのは鎌の音のみ!
研ぎ澄ませ!研ぎ澄ませ!!研ぎ澄ませぇー!!
「シカトこいてるんじゃねぇよ!だったら一生口を聞けなくしてやるよ!」
首狩魔王の二つの鎌が俺ッチに向かって飛んで来る。
当然見えてはいない…だが、解る!
俺ッチは素早い動きで飛んで来た鎌を左方向に躱した。
同時に耳に痺れが走った。
嫌な痺れじゃない…
集中力を極限にまで高めた事で、俺ッチに隠れていた新たな力まで引き出されたのだ。
それは雷の力!
雷の力は強化の力であり、その力は己の身体能力を高める。
身体中を流れる雷気は耳に集中し、その聴力が高まっていく。
更に雷気は足にも集まっていたのだ。
その雷気は俺ッチの脚力を限界にまで引き上げていた。
鎌の動きを聴力で察し、素早さを上げた脚力で躱す。
俺ッチの動きは雷鳴の如し!
俺ッチは今覚醒したのだ!
見えないはずの二つの鎌が四方八方から迫るが、俺ッチは紙一重で躱せる。
全ての攻撃を全て躱され驚き慌てる首狩魔王は焦っていた。
「馬鹿な?ありえねぇー?雑魚が!雑魚が!雑魚がぁー!」
雑魚だと?
そうやって独角鬼王も殺したのか?
独角鬼王の仇…
取らせて貰うぞぉ!
俺ッチの掌に雷気が集中していく。
その爪は雷を帯びて雷爪と変化していた。
『耳尾引闘加・雷爪』
※ジビイントウカ・ライソウ
「あ…あれ?」
俺ッチは首狩魔王の視界から消えると、次に現れたのは後方だった。
同時に俺ッチの雷爪は首狩魔王の首を裂き、胴体から切り落としていた。
そして俺ッチは右手を挙げて、仲間達に勝ちを示したのだった。
仲間達の歓声の聞こえる中、俺ッチは…
美猴王様!
取って置きの武勇伝をお聞かせしますよ…
そして、独角よ…
この勝利は俺ッチとお前との友情の勝利だ!
だからお前の分も…
俺ッチが美猴王様を守り抜くと誓うから…
お前は安心して、安らかに眠ってくれ?
友よ…
俺ッチはそこで力尽き倒れた。
三猿兄弟と仲間達が俺ッチに向かって駆け寄るのが解った。
次回予告
まさかの覚醒の六耳、
そして、こいつも戦っていた。




