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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
天上天下・美猴王伝説!
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聖天大聖の譲渡?それは猿に小判?

若き独角鬼が仇である霊感大王の屋敷に忍び込んでいる時に出会ったのは、


天界の討伐者である聖天大聖・捲簾であった。


どーも!独角鬼王ッス!

特殊な能力[他者から霊力を奪う]を持った霊感大王は凄まじい怒りの形相で俺達を見下ろしていた。いや?その対象に俺は眼中になく、視線の先には天界から霊感大王を討伐に来た聖天大聖・捲簾に向けられていたのだ。


あいつ…

ヘナチョコな奴かと思っていたが、とんでもねぇや…

俺でも解るくらい凄まじい神気を感じるぜぇ!

実力を隠していやがったのか?


すると霊感大王が捲簾目掛けて空中から降りて来たのだ。


「どうやら天界からの討伐者のようですね?でももう少し待っていてくれませんか?明日には私は魔王に昇格します。魔王になれば天界も手出ししないのが掟。ですよね?」


「確かにそうです。しかし貴方を放って置いたら私も上司から大目玉くらってしまうのですよ~!で・す・か・ら~討伐されてくれませんか?」


「交渉決裂のようですね?」


「やだなぁ~そもそも交渉する気ないくせに~」



直後、霊感大王の十本の指先から霊気の弾丸が放たれたのだ。

捲簾はその攻撃を華麗に難無く躱していく。


「!!」


が、その攻撃は囮であった。

霊感大王は捲簾の懐まで接近して来て、その掌を捲簾に突き出したのだ。


「あの掌に触られたら危険だぁ!」



俺は見たのだ。図体のデカイ妖怪が、あの掌に触れられた途端に霊気を吸い取られて枯木のようになって死んだ現場を…

霊感大王は触れた相手の霊気を根こそぎ奪う能力者なのだ。



「捲簾!危ない!」


(ありがとうございます。でも、解っていますよ)



捲簾は霊感大王の突き出された掌を躱して、素早く後方に移動する。



「チッ!上手く躱したようですね?でも一度でも掴まえてしまえば…」



すると霊感大王は横目で俺を見たのだ。



「どうやらあの角のある妖怪とお仲間みたいですね?」


「!?」


霊感大王は再び十本の指先から霊気の弾丸を放ったのだ。

しかも、その標的は俺に向かってだった。


「うわぁあああ!」



死を覚悟した。


呆気ね~


俺は何をしに来たのだ?


無駄死にかよ…



「大丈夫ですよ?」


えっ?


見ると霊感大王から放たれた霊気弾の全てを、捲簾が俺を庇うように盾となって受け止めていたのだ。


「あんた…何で?」


捲簾は両掌から光の盾を構成し、俺を守りながら微笑み言った。



「何か貴方とは縁を感じるのですよね。直接ではないにしろ、私が貴方と出会った事には意味がある。そう思えたので死なせる訳にはいかないのですよ~」



何を意味解らない事を?


そこに、


『掴まえたぁ!』



霊気弾を受け止め動けなかった状態の捲簾の腕を、いつの間にか背後から近付いた霊感大王の接近を許し掴まれたのだ。馬鹿な?霊感大王は霊気弾を放っているはず?


そこには霊感大王の姿はなかった。

捲簾は窮地なのに感心した風に質問する。



「分身に霊気弾を放たせ、本体は私に近付く機会を窺がっていたのですね?」


「正解です。ご褒美に私の手で殺して差し上げましょう?」



捲簾の身体から神気が霊感大王へと流れ込み吸い取られて行く。



「おぉ!凄まじい霊気!いや?神気ですね~!力が漲るのが解る!私は霊気だけでなく妖気も神気も変わりなく奪えるのですよよよよ!」



お…俺を庇ったばっかりに…

捲簾が…くそぉ!



『大丈夫だと言ったじゃないですか?』


えっ?


見ると、捲簾の気を吸い取っていた霊感大王の方が苦しんでいたのだ。

一体どうなっているのだ?


『!!』


その時、俺も気付いたのだ。

捲簾の身体を覆っている異色の気に。

それは七色に輝く神気?

神気とも妖気とも違う未知なる力に思えた。



「フフッ…私が霊感大王!貴方の討伐に私が選ばれたのには意味があります。何故なら私には、この聖天の力!救世主の力があるから!」



捲簾の七色の後光が五枚の翼となり、さらに輝きを増していく。その異色の気を吸収していた霊感大王の両腕の血流が早まり、異常に筋肉が膨張していき、


「うがぁあああ!私の腕がぁああああ!」



そして破裂したのだ!!

両腕を失い痛みで苦しみながらもがき叫ぶ霊感大王はもう満身創痍だった。



「終わりのようですね?」



が、霊感大王はまだ諦めてはいなかった。



「何なんだ!?何なんですかぁ!この不可解な力は??何?何?何?私が吸収出来ない力があるなんて…ウググ…グゥ…ぐぉおおおお!だが、私は負けない!負けてたまるかぁ!まだ私には奥の手があるのだからなぁ!!」



霊感大王は口を広げると、足掻くように地面に向かって吸い込み始めたのだ。


「あいつ何を!?」


「まさか!!」



その時、地面が揺らぎ始めた。

このタイミングで地震か??



「霊感大王は大地の竜脈の気を吸い出しているのです!馬鹿な真似を!」


「えっ?」


さらに地面が揺れて大地が割れ、その隙間から凄まじい勢いで大地の気が霊感大王を巻き込みながら空高くまで噴き出していく。

噴き出した大地からの気は次第に形を成していく。

それはまるで気の竜神のようだった。

だが、格となった霊感大王は既に意識が無くなっていたのだ。



「膨大な竜脈の気に意識が保てなかったようですね…」



すると捲簾は五枚の翼を広げ羽ばたかせ、竜脈の渦の中へと飛び込んだのだ。



『聖天の力よ!我が力を極限にまで高まれ!』



捲簾の瞳は金色に輝いていた。

瞳に触発されるかのように、七色の後光の翼は更に光を強め大きく広がっていき、とうとう霊感大王を巻き込んだ竜脈の竜をも覆い隠していく。


俺は茫然とその状況を見ていた。


あ、腰を抜かしながら…


やがて辺り一帯を照らしていた光は小さくなり、その中心から捲簾の姿が見えた。

捲簾は空中からゆっくりと降りてくると、俺の目の前にやって来たのだ。



「あの…それは?」



捲簾の掌の中には小さな光が入っていた。


「これは霊感大王の魂です」


「死んだのか?」



捲簾は首を振ると、



「私は無駄な殺生は好みません…」



すると捲簾の掌に小さな光が形を変えていく。


「それは!?」


霊感大王の魂であった光は、小さな金魚の姿へと変わっていたのだ。



「霊感大王は転生し新たな生を送るのですよ」


「そんな事…」



転生術?

そんな事出来るのは最高神?

或は菩薩と呼ばれる者にしか?と言いかけたが、俺には関係ない事だから口に出すのを止した。

後、復讐の相手も倒され、俺も目的を失ってしまった。



「さてと俺の敵討ちも終わったし、帰るか…」


「あ、待ってください?独角鬼さん!」


「何だよ?」


「いやね~貴方に差し上げなきゃいけない物があるのですよ~」


「はっ?」



俺は捲簾の口から出た次の言葉に唖然とした。



「貴方には私の称号である聖天大聖を譲渡しなければいけません!だって貴方は私を一度倒してしまいましたからね~」


「はっ?はっ?はぁー??って、おぃ!確かに俺は此処に来る前にお前の頭を殴り気を失わせたが、あんなのはただのツッコミだぁ!それにマジに戦って勝てる訳ねぇし!」




すると捲簾は笑みを見せて言ったのだ。



「貴方には縁があるみたいです。いや?貴方に出会った事と言うのですかね?直接にないにしろ間接的に貴方は私の探している未来と交わる運命にあるみたいです。だから貴方には私と出会った証拠を残しておきたいのかもしれません」


「いやいや!意味解らねぇ~それに俺はそんな器じゃねぇよ!」




捲簾は最後に言った。



『だったら努力して、貴方が自分を認める器に近付いていけば良いじゃないですか?』と…



俺は言葉を詰まらせた。


俺は天界へ帰って行く捲簾を見送り決意をした。


俺が認める自分になると!


その後、俺は死に物狂いで力を付けて、魔王へと昇格した。

自分が自分を認める器になるために…




だけど、俺はダメだった。


俺は突然やって来た猿の妖怪である美猴王様に敗れ、子分となる。


しかし後悔はしていない。

俺には器がなかったが、この美猴王様には器がある。




だから…


だから俺の分も…






そして、再び時が流れる。



ん?どうやら俺は夢を見ていたようだな?

俺達は眼力魔王の軍勢に奇襲をかけて、捕われていた仲間や美猴王様の救出に成功した。

そんな中、敵の一人が美猴王様に向けて禁具である矢を射ったのだ。

矢は美猴王様に向かって飛んでいく…


誰も気付いていない?


美猴王様でさえも…


ただ一人、俺以外は…


俺は美猴王様に向かって一心不乱で駆け出していた。


そして…


「グゥゥ…」


寸前の所で美猴王様の前に飛び出した俺の胸に、禁断の矢が突き刺さった。



良かった…


美猴王様は無事の…よう…です…ね…



…あ、あれ?



俺は大量の血を流していた。


意識が朦朧とする中、ゆっくりと倒れていく。


次回予告


美猴王を庇い独角鬼王の胸に突き刺さった禁断の矢


そんな独角鬼王を目の前にして、美猴王は?

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