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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
天上天下・美猴王伝説!
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夢の中でみた孤高[猴]の王?

ぶっちゃけの美猴王だったが、


その行動は矛盾していた。


だが、それには理由があったのだ。


俺様は美猴王…


俺様は今、身ぐるみを剥がされ、手足を拘束され、敵軍に囲まれ、処刑場広場の中央に突き刺された一本の柱に縛られていた。


目の前には拷問道具[金属バットに幾つも釘を刺した物]を手にした数人の拷問者が下品な笑みを見せては、幾度となく俺様の身体をこん棒で殴り付ける。

しかし先に悲鳴をあげたのは拷問者達であった??



「うごぉお!殴り付けたバットがへし折れたぁ~」



そいつ達は逆に痛めた手首を抑えながら、不思議そうな顔付きで俺様を睨みつけていた。

すると一人の雑兵が何やら気付き叫び出す。



「今、こいつ!直撃する寸前に身体を石化させていましたぜぇー!!」



チッ!気付かれたか…


拷問をやり過ごすつもりだったのに…


すると俺様の周りに十人の妖仙が囲み念を唱えだす。

見る見る俺様を縛りつけていた拘束具の呪印が光りだし、俺様の妖気を吸い出し始めたのだ。


「うぐぅ~」


力が出ねえ…


その直後、


「こいつ!ナメ腐りやがってぇ!」



怒った拷問者が俺様の頭に強烈な一撃をくらわしたのだ。

俺様は流石に叫び声をあげた。

額から血が流れ落ちて意識が飛びかける。

更に追い打ちをかけるように、他の拷問者達も俺様の身体を殴り付ける。


クソッタレ…


コイツ達、絶対ぶっ殺してやる!



俺様は怒りで今にも暴れ回ろうとしたが、考え直し、その怒りを鎮めた。

そもそも自分一人逃げるくらいなら出来ない訳じゃなかったのだ。


だが、今は出来ない。


俺様は視線を上げると、その先には目隠しをされて拘束され、横一列に列ばされている仲間達がいた。万が一にも俺様が暴れ逃げたりすれば、すかさず奴らの首を切り落とすつもりなのだ。




はぁ~


そもそも何故俺様は此処へ来たのだ?


仲間の救出のため?


いやいや!ないない!

全く全然これっぽっちも考えてないから!


部下や仲間なんて駒と一緒。

その考えに一切の訂正なんかないからな~


じゃあ…本当に何故此処へ来たんだ俺様は?


そうだよ…


全てはあの作戦会議の場を出て、一人ぶっちゃけ話をした後に見た、あの忌ま忌ましい夢のせいなんだ。俺様は今まで隠していた本音を打ち噛まし、スッキリした気持ちで自分専用の部屋に戻り眠ろうと…したその時だった。




『呆れるくらい見下げた奴だな?』



と、何者かが俺様に向けて言い放ったのだ。

俺様は謎の声に反応し飛び起きると、部屋を警戒しながら辺りを見回す。


誰だ!?気配がしなかったぞ?

そもそも、この部屋には俺様しかいないのだぞ?


幻聴か?

いや?間違いなく俺様に対して声が聞こえたのだ!



「何処のどいつだ!隠れてないで出て来やがれぇ!」



すると、再び声が返って来る。



『何処を探している?俺は此処だぞ?』


何??


俺様が見たのは鏡だった。

そこには俺様以外他には誰も写ってはいなかった。

が、その写った俺様の表情が変わる??



『ようやく俺の声が届いたようだな?不便だからお前にはコッチに来て貰うぞ?』


「エッ?」


その瞬間、俺様の身体が突然光りだしたかと思うと、白いモヤのような何かが抜け出したのだ。同時に俺様の身体は無造作にその場に崩れ落ちたのだった。




次に俺様が目覚めたのは闇に包まれた暗い世界だった。


夜?イヤ…違うな?


異空間か何かに閉じ込められたのか?

俺様は直ぐさま冷静に状況の分析を始めた。

すると再び例の声の主が俺様に向けて語りかけて来たのだ。



『ようやく目覚めたようだな?その様子だと状況が解らぬといった所か?パニックを起こさぬ所は流石だな』



そこには声の主らしき男が俺様の直ぐ傍に立っていた。


コイツが元凶か?


俺様は立ち上がり男に飛びかかるように掴み掛かったのだが、俺様の手は男を掴む事なく空をきったのである。




『無駄だ!今のお前は魂の状態だからな?ついでに言うと俺もだが…』


「何?魂だと?俺様はいつの間にか死んじまったのか??」


「死んではいないぞ!だが肉体とは切り離された精神世界にお前はいる」




精神世界だとぉーー??


何かの術か?

術にかけられたのか?

いつ、かけられた?


その後、俺様はこの世界から抜け出す手段をあの手この手と試みたが、全く無駄に終わり、観念し諦めた。仕方なく目の前で俺様をニヤニヤ見ている謎の男の話を聞く事にしたのだ。



「あんまり手こずらせるなよ?俺もそんなに長くこの世界にいられないのだからな」


……?


よく見ると男の姿は俺様達が纏う衣とは全く違う異文化の衣を纏っていた。

半裸に布を巻いたような…確か昔読んだ書物で西洋に住む奴達の衣に似ていた。


しかも、コイツから感じられる気は間違いない…


人間!?


低種族の人間のくせに妖怪様の俺様に指図か?


だが、今は様子を見るか…


俺様はこの男を睨めつけながら話を聞く事にした。



『観念したようだな?』


「ふん!俺様に何か用があるんだろ?あるならさっさと言って、俺様を早く解放しやがれってんだ!」



すると男は俺様を指差して言ったのだ。



『お前にとって王とは何だ?』


と…


王とは何だだと?

何を唐突に意味不明な事を?

王って俺様だよな?


俺様は自信を持って答えた。



「王とは上に立つ者!王の上には何者もあらず!王のために下はあり、下の奴らは王のために命をも差し出し全てを捧げるのが道理!そして王はその糧を踏み台にし、世界の頂点に立つ者!あははははは!」



俺様は胸を張り、いかにも大層に言い切ったのだ。


すると男は言った。



『お前には王たる資質も器もあろう!間違いなくお前は王になれよう』


ヘッ?何だコイツ?

意外と話の解る奴なのか?


そして…



『だが、お前がこの先、真に王を目差すなら覚悟するが良い。お前は王になりて、この世の全ての富も名誉も手に入れるであろう!ただし、お前が自分の命よりも大切なモノを失う事と引き換えにして。そして王たるお前が行き着く先にあるのは孤高なる死だ!』



なっ?何だって??


『お前にその覚悟があるか?それを免れるには王である事を捨てる事のみ』


「しゃらくせぇ!覚悟?そんなの当たり前だろ?何だよ!自分の命よりも大切なモノってよ?それに王になるのは俺様の夢だ!夢よりも大切な者などあるかぁ!」




男は黙った後、再び言った。


『夢もまた欲望…』


「欲望か?アハハ!何せ俺様は強欲かつ野心の塊だからな!当たり前だ!そもそも王とは孤高な者なのだ!」



男は俺様を見て言い放つ。



『お前は本当の孤独を知らぬ!本当に大切なモノを失う恐怖を知らぬ!覚悟を知らぬ!何も知らぬウツケ者ダァ!』



すると男の指が光だし、その指を俺様の額に当てたのだ。


なぁ?何だぁ??


突然目が眩み、俺様の脳にビジョンが流れ込んで来たのだ?




それは遥か昔の物語


かつて恐怖と力で民と兵士を支配した凶悪かつ強欲な王がいた。

その王は配下を道具のように使い、情の一欠けらもなかったのだ。


それを頷ける話がある。

その時代、王率いる軍は他国との交戦状態にあった。


軍は足止めされていた。

敵軍が用いた罠が張り巡らされた一帯におびき寄せられ身動き取れないでいた。

その王率いる軍はその場より先に進む事も出来ずに立ち往生をやむなくされた。


そこで王は命じたのだ。


『見習い兵を集めよ!』



意味が解らぬも軍隊の将軍はまだ見習いながら戦場に出兵していた者達を急ぎ集める。そして集まった見習い兵を見た王は命令したのだ。


罠のある範囲全てを見習い兵達に歩かせよと…


将軍も他の兵も唾を飲み込んだ。

それが何を意味しているか理解したからだ。

恐怖し逃げる事も出来ぬ。

懇願し背中を向けようなら反逆罪として仲間に殺される。

見習い兵は脅え涙し、命令を遂行した。


数時間後、


『さぁ!道が出来たぞ!』



それは罠により命を失った見習い兵達の屍の道。

王は屍の上を踏み台にし、兵達に歩かせ先に進めと命じた。


見習いを使ったのは即戦力に使えないから…

人道に外れた行為。

だが、王は満足げであった。

使えぬ者にも頭を使えば使い道が出来たと…


王の進行は飛ぶ鳥を落とす勢いで敵軍を蹴散らしていく。

数千数万の仲間達の犠牲の下に…

だが、そんな恐怖体制の王にも天罰が下る。


敵軍の王と一騎打ちを挑まれ、勝ち気な王もまた勝負を受けたのだ。


一騎打ちの末、王は敗北した。

両足を砕かれ、身動きが出来ぬまま地べたに倒れた。

王の敗北に仲間の軍は統率を失い王を見捨てて逃げ出した。


誰も王に見向きもせずに…


地面を這いずり、叫び、仲間達に助けを請う王はその時気付いたのである。


己を見下ろす仲間の兵達の冷たい視線を…


誰も自分を王として見てはいなかった。


恐怖より仕方なく従っていただけ…


王を讃えるどころか、邪魔物?いや…憎悪の対象だったのだと…


王は一人取り残され、死を覚悟した。


思う事は怒りや恨みではなく、後悔のみ。


涙を流し、讒言しようと、誰も聞く者すらいない。


せめて…


『すまなかった』と、『俺が馬鹿だった』


と、罵倒されても構わない。

恨み怒りをぶつけられても構わない。

聞いてくれる者が一人でもいてくれれば、どでだけ救われたか…


だが、現実は孤独。


誰にも知れずに消えて行く己自身の姿はゴミ屑以下の存在…


王を目指した先の結末…


その憐れな王の姿は?


まさしく…


今、俺様[美猴王]の前にいる男の顔であった…ん?



「いや…あれは俺様じゃないかぁ!?」




そこで俺様は悪夢から覚めるように目覚めた。

そこにはあの声の野郎の姿も気配もなかった。


その後、俺様は夢遊病の如く一人自軍を抜け出し、

気付いたら敵軍の中に身を投じていたのだ。


次回予告


美猴王を襲う拷問、このまま美猴王も孤高な最期を?

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