柱に願いを?怒れる魔王達と空気を読まない猿?
東西南北にいる魔王に喧嘩?
呼びかけをした美猿王・・・
はてさて?
俺、独角鬼王っす…
た…助けてぇ~
俺と六耳、三匹の猿達。
そして全ての元凶である美猴王様は四方八方を怒り狂う四魔王の軍勢に城を囲まれてしまっているんっす。
あの柱の件より、三日目の朝でした。
けたましい騒音と騒ぐ奇声や吠え騒ぐ者達。
地震の如く大地が揺れて俺達は目覚め、外を見渡すとそこには…
あの…あの四魔王の軍勢が揃い踏みしていた~。
「お…俺は!逃げも隠れも…出来んぞ!」
と、青ざめる俺とは別にテンション上げて今の状況を楽しんでいる猿達と美猴王様。
「ほぉ~?これは絶景かなぁ~!」
「何を楽しんでいらっしゃるのですかい??この状況解ってらっしゃるんですかい?」
「当然よ!見ろよ?あれを!」
美猴王様の視線の先には四魔王の率いる軍勢が逃げ場を塞いでいたのです。
そりゃあそうですよ…
だって美猴王様の挑発に怒り狂う魔王達は軍勢を率いて出向いて来たものの、
しかし直ぐに攻め込んで来ないのには理由があった。
何故なら発端であり目的の美猴王様意外に他国の魔王達が軍勢率いて目の前に現れたのだから!
何故?他の魔王がここに?
まさか謀られたのか?
美猴王と呼ばれる新たな魔王は、他の魔王と共謀して自分を狙っているのか?
と、お互い他の魔王の動きを警戒して動けないでいたのです。
「まさか…この状況を見越して?」
「まぁな…」
魔王達は臨戦状態のまま、
「キサマ達?俺の命を狙い、他の魔王と手を組んだのか?この恥知らずがぁ!」
鵬獄魔王が愚弄すると、
「フン!馬鹿言うのはよしな?あんたなんか他の魔王と手を組む必要なく、私一人で簡単に始末出来るさ!それより引きこもりの牛角魔王?お前も外に出て来たみたいね?」
蛟魔王が牛角魔王を小馬鹿にする。
「黙れ!胸糞悪い女だ!ベラベラ無駄話をしたいなら、帰ってからご近所さんとするんだな?」
「なぁ?なぁ?お前達強いのか?俺俺と喧嘩しよう!ガチでやり合おうぜ!俺俺と最強かけて勝負だ!」
と、獅駝王が割り込み、口喧嘩の真っ只中…
「何か…俺様無視されてない?無視されてるよね?変だよね?あいつ達を呼んだのは俺様なのに?」
「しかし…このまま奴達が争ってくれたら、こちらには無駄な火種が飛んで来なくて良いじゃないですか?まさに美猴王様の計算通りですよ!」
計算通り?
あっ?あっ!あぁーーーーーーっ!!
その直後でした。
『俺も混ぜろぉー!!』
美猴王様は何をとち狂ったのか?四魔王の臨戦状態をぶち壊すかのように、四魔王のいる中心へと飛び出して行ったのです。
て、無視されてる事に嫉妬して、計画台無しにしてまで目立ちたくて?姿を現しちゃったぁんですかいー?
「俺様を無視して話を進めるんじゃねぇーよ!俺様をカマッテやれよ!てめぇ~達!」
魔王達は唖然と突然現れた猿の妖怪を見ていた。
更には己の城へと投げ込まれた柱の事を思い返す。
『聖天大聖・美猴王様参上だぜぇ!文句があるなら、かかって来いや~』
更に鵬獄魔王に投げ込まれた柱には、個人宛に別のメッセージが刻まれていたんす。
『お前立派な城に住んでるよな?でも所詮は篭の中の鳥みたいだ!お前は大切な事を知らない!それは城の中でお前みたいに燃えてると焦げて食えなくなるんだぞ?良いくらいに焼けてないと美味い焼鳥になれないぞ?美味しくなれたら俺様のいる地に来い!そしたら少し食べさせろよな?不死なら死なないだろ?』
「下等にてゲスな猿が!俺をナメた罪は殺すだけでは許さんぞ!」
怒りの形相の鵬獄魔王。
蛟魔王には?
『一番綺麗で強いのが誰だって?教えてやるよ!それは猿だろ?やっぱし?全くいつまでも若作りしたい気持ち解るけど歳を考えろよな?おばあちゃん!ちゃんと見せられる顔なら俺様のいる地まですっぴんでおいでね~』
「うふふ…あたい相手に喧嘩売るなんて面白い事するわ…」
その顔は引き攣っていた。
獅駝王には投げた柱が頭に直撃したはずなのだが…
獅駝王は平然と立ち上がり、柱に刻まれた文字を部下達に読ませていた。
「何か頭に当たったぞ?」
「大丈夫ですかぁ!獅駝王様?頭直撃して馬鹿になってませんか!?」
「安心しろ!獅駝王様は頑丈であられる!こんなのは平気だ!しかもこれ以上馬鹿にはならんよ!」
「ん?そうかぁ?俺俺をあんまり褒めるなよ~」
「そんな事より獅駝王様!何か文字が書かれてますよ?」
柱にはやはり文字が…
『最強が獅子だって?馬鹿言うなよ!最強は猿だろ?猿!百獣の王は昔から猿と決まっているんだぞ?ちなみに最強は俺様だから勝手に最強ぶるんじゃねーよ!解ったら俺様に何か捧げ物をよこしに来い!』
「猿が最強?最強は俺俺だぁぞ??よし!猿を倒して俺俺が最強だと教えてやるぞ!ガァーアァア!」
牛角魔王には?
『後ろの正面だぁ~れ?牛か?ウッシシ!お前は親子喧嘩した挙げ句に引きこもりなんだって?そんなんだから牛丼より豚丼のが安いのに味が負けてると言われるんだよ!てな訳で味比べするから牛丼と豚丼の出前持って俺様のいる地に持って来~い!』
「牛丼が豚丼に負けてるだと?許さん…許さんぞ!」
と、怒る場所そこですかい?
そんな挑発を受けて、最強最悪の四魔王が美猴王様の前に現れたのだ。
(コイツがこの度の元凶のバカタレか?)
と、感じたに違いない。
「お前が美猴王なる馬鹿者か?新たに魔王になって調子をこいたか?俺を倒すために他の魔王達と手を組んだようだな?」
「お前、竜神族が長寿だと知らないのかい?アタイはまだまだ若いんだよ!」
「そんな事より俺俺と最強かけて喧嘩だぁぞー!」
「どういう理由か知らないが、落とし前つけさせて貰うぞ!」
余計に空気が重くなる中、魔王達の部下達が殺気立ち騒ぎ始める。
『殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!』
そんな状況を遠く離れハラハラと見ている俺と猿達。
「美猴王様大丈夫なのかぁ??」
「心配すんじゃねぇよ!美猴王兄貴に出来ない事はないのだからな?俺っち達は兄貴を信じて待ってれば良いのだ!」
「その割には奮えてないか?六耳?」
「うるせー!」
無理はないだろう…
それだけ先程から四魔王達から放たれている威嚇的殺気が、重くこの地一帯を覆っていたのだから。元だが、同じ魔王であった俺が震えて足がすくむ。
まるで桁違いの迫力だ!
くわばらくわばら…
そんな空気を壊したのが美猴王様でした。
「お前達!俺様の呼びかけに良く来てくれたな?各地の魔王達よ!俺様が噂の聖天大聖・美猴王様だぁ!」
この敵意剥き出しの魔王達に囲まれながら、この妖怪は何をふざけた事を!?
空気読めないのか?馬鹿なのか?猿なのか?
と、魔王達は今にもキレかけているに違いないです。
もうダメ!怖い怖い!
最初に動いたのは鵬獄魔王であった。
己の部下達に合図をすると、中から二匹の鳥妖怪が美猴王様に向かって襲い掛かったのです。
「その馬鹿者に命をもって償わさせ!だが、決して殺すな?トドメは俺が直接いたぶり始末するからな!」
「何?俺様のサイン欲しいわけ?」
襲い掛かる二匹の鳥妖怪に慌てる事なく、美猴王様は一匹の突き出した爪を片手で掴み受め、振り回しながらもう一匹にぶつけたのだ。
血を吐き意識を失い倒れ落ちる妖怪を見下ろす美猴王様。
「つまらねぇ…」
その一部始終を見ていた妖怪達が奇声をあげて騒ぎ出す。
それはこの地一帯を揺るがさんばかりに!
次は俺があの馬鹿者を始末してやると言わんばかりに!
「雑魚がうるせ~」
直後、美猴王様が目を見開き騒ぎ出す妖怪達に向かって覇気を放ったのだ。
美猴王様の覇気は一瞬でこの地を静まり返らせた。
騒いでいた妖怪達も美猴王様の計り知れない力に黙り、
力無い者達は意識を吹っ飛ばされ崩れ落ちていく。
それを見た魔王達は…
「どうやら喧嘩を売るくらいの力はあるようだな」
と、戦闘モードに入たのです。
腰の鞘から燃え盛る剣を抜く鵬獄魔王。
「こしゃくな猿がぁ!」
笑みを見せる蛟魔王。
「ふふ…せっかく来たのだから、少しは楽しませな」
肩をグルグルと回す獅駝王。
「よっしゃ!俺俺が相手だぞ!」
拳を鳴らす牛角魔王。
「面白い!」
四魔王が美猴王様に向かってゆっくりと近付いて来たのです。
近付く四魔王達に怯む事なく、これから始まる状況にワクワクする美猴王様は?
「さ~て!見定めますかぁ~!」
見定める?
何を?
あんた、今、めちゃくちゃ大ピンチなんですけど~!
次回予告
牛角魔王、鵬獄魔王、蛟魔王に獅駝王を相手に、一人で相手する美猴王。
それって大丈夫なの?




