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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
天上天下・美猴王伝説!
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雲に負けたら猿が廃るってもんだぜ!

須菩提仙人の修行の最中、美猴が雲にも乗れず、五行の力もない事が解った。


落ち込む美猴は・・・


俺様は…


ちっぽけな猿です。


飛べない猿です。


ダメダメな猿です。



俺様は空飛ぶ雲にも乗れず五行の力も使えない本当に使えない猿なんです。


落ち込む俺様を横目に須菩提爺ちゃんもまた悩んでいた。


(驚いた…美猴の奴)



爺ちゃんは思い出していた。


(美猴の中[魂]に取り込まれたはずの精霊達が、その魂の大きさに行き場を見失い、己の存在が維持出来ぬ状態で魂の中で迷子になっておった…)



爺ちゃんの視線の先には虫のように小さな精霊達が怯えて震えていたのだ。


(こりゃあ…再び精霊と契約するのは無理のようじゃな…)


「仕方あるまい」



爺ちゃんは半ベソかいている俺様に近寄り、新たな策を与えてくれたのだ。

爺ちゃんは俺様を連れ、住んでいた仙山から離れた天上界にある贅沢な屋敷へとやって来た。


「ここが天界か?」


「うむ」


そこは天界の住人の屋敷であった。中から出て来た屋敷の主が奇妙な宝玉を爺ちゃんに手渡すと、俺様と爺ちゃんは庭を借りて外に出たのだ。



「さてと…」


「今から何をするか教えろよ~」



すると爺ちゃんはとんでもない事を抜かしたのだ。



「今からお前にはお化け退治をしてもらうぞよ~」



はっ?お化け退治だと?


爺ちゃんは先程貰った宝玉を地面に叩き付けたのだ。

割れた宝玉は粉々になり、そこから煙りが噴き出して来る。



「何だよ?これは!」



宝玉から噴き出して来た煙りは、例の飛行気雲の形となった。


しかも金色の!?


爺ちゃんはすかさず縄を投げ付けると、それは金色の雲に絡み付く。


「ほれ?」


爺ちゃんは縄の先を俺様に手渡すと、急いで岩陰に隠れたのだ…えっ?何?


あっ!


その直後だった。

突然縄が引っ張られて、俺様は油断して顔から地面に引きずられたのだ。


「うががががが!」



そして引きずられたまま、俺様は屋敷の柱に頭から激突してしまった。



「コラァ!糞じじぃ!説明しやがれぇーー!」



隠れていた爺ちゃんは顔を出して説明する。



「絶対に縄を離すなよ!そいつは少々特別な雲でな?とんだ暴れ馬なんじゃ!そいつを上手く手なずけられれば、お前の雲になるかもしれんぞ?」


「なに?マジか!」


『そういう事なら話は早いぜぇ!』



俺様は縄を掴み暴れ回る雲に飛び付き、しがみついた。



「お前は俺様の所有物にしてやるぞ~!だから大人しく言う事を…フギャ!」



暴れ雲は意思を持っているかのように俺様を振りほどこうと急降下して、地面に叩き付けたのだ。



(その雲は主を失った飛行気雲…通常、主を失った[死]雲は同時に力の供給を出来ずに消滅するのじゃが…その主は死に際に己の魂の全ての力を、共に戦い傷付き消えかけていた自分の雲に籠めたのじゃ…正直、特例中の特例…そのような事したとて、籠めた力が尽きれば消えてしまうと言うのに。


そこで不敏に思った亡くなった者の親族が代わりに雲と契約を結ぼうとしたが、雲は頑なに拒否し…己の主の帰りを待っているかのように誰とも契約を結ぼうとはしなかったのじゃ…まだ主は生きていると信じて疑わないのじゃろう。


じゃが、それも長くはもたぬ…そこで儂が依頼を受けて、新たな主に成りうる者が現れるまで宝玉に封じておったのじゃが…美猴よ!お前にその雲を救う事が出来るかの?)



『うりゃああああ!』



俺様は飛び回る雲にしがみつきながら振り回されていた。壁にたたき付けられ、地面を引きずられ、空中を何度も回転して目を回され大木に衝突する。


そこで俺様は目を回し気絶した。


仕方なく、その日は断念し明日に再び挑戦する事にしたのだ。


その手には縄を持ち続けながら・・・


爺ちゃんが言うには、今掴んでいる手綱[縄]を一度でも離せば、二度と手に入らないと言うのだ。因みに雲は俺様に体当たりしたり煩いので、柱に縛り付けてやった。


で、俺様は片手で飯を食いながら須菩提爺ちゃんからこの暴れ雲についての詳しい話を聞いた。




なるほどね~


ヘヘヘ!


明朝から俺様は雲に振り回されていた。

俺様の握る手から血が垂れる。

既に握力なんか残ってはいねぇが、意地だけで掴んでいるのだ。


数時間が経ち、須菩提爺ちゃんが飯から戻って来た。


って、おぃ!


俺様が大変苦労している時に、何を一人で優雅にお茶しとんのじゃあ!



「どれどれ?どんな様子かのぉ?」



そこで爺ちゃんが目の当たりにしたのは…


『!!』



猛スピードで飛び回る金の雲の上に立ちながら、自在に操る俺様の姿だった。



「あやつ…マジに手付手なずけおったわ!?」




大空を宙返りして、とんぼ返り!


まさに手足のように扱う様は、何年も乗りこなしていたプロの乗り手のようだ。


だが、正直…


ついさっきまでは、本当に大変だったんだぜ?


暴れ狂うように俺様を振り落とそうとする雲に、俺様は次第に怒りを感じ始めて来たのだ…


だって、そうだろ?


猿が雲に負けるなんて有り得ないじゃねぇか?


俺様が猿である以上…


雲に負けたら猿が廃るってもんだ!


俺様は手綱を握っていた右手を離し、雲目掛けて殴り付けたのだ。

雲は俺様ごと落下し地面にたたき付けられた。

俺様は咄嗟に雲が落下した方向を見ると、雲は威嚇するかのように俺様に敵意を剥き出しに抵抗していた。


俺様は…


「おぃ?お前!俺様の雲になれ!聞いたぞ?お前は新しい主がいなきゃ消えて無くなってしまうのだろ?そんなの勿体ないじゃないか?だったら俺様の所に来い!」



雲は俺様の周りを飛び回りながら逃げ出そうとしていたが、縛り付けた縄が邪魔してそれ以上は飛んで行けなかった。


そして俺様は…


その手綱を通じて、この雲の心が伝わって来ていた。



《消えたい…主の元に逝きたい…》



そんな声が聞こえて来たのだ。


俺様は…


『甘ったれるなぁー!!』



再び拳で雲を殴り付けたのだ。


《!!》


「てめぇの昔の主はてめぇを大事にしてたんだろ?普通有り得ないよな?自分の雲に自分の魂を分け与えてまで生かして残そうとするなんてよ!そもそも雲なんて乗り物だろ?馬鹿みたいな話だよな?モノにそこまで愛着持つなんてよ?周りの連中も馬鹿だと抜かしていたぜ!」



俺様の言葉に雲は更に怒りを感じたのか、俺様に向かって突っ込んで来たのだ。


俺様は躱す事なく受け止め言葉を続けた…



「だけど…俺様は好きだぜ?そんな馬鹿な奴が!お前をモノとしてでなく本当のパートナーとして見ていたんだな?お前の主…カッコイイじゃねぇか?自分の信念を貫く馬鹿な奴は俺様は好きだ!」


《!!》


「だけどよ?お前が無駄死にしたら、その主の気持ちを台無しにしてしまうんだぜ?主はお前を生かしたかったんだろ?だったら生きろよ!生きて生きて主の分まで生き抜いて男を見せやがれってんだ!」


《……………》



これも全て縄から伝わって来た雲の記憶なのだ。



「俺様が見届けてやるよ!お前の生き様!だから…俺様と来いよ?相棒!」


《!!》



そんな会話のやり取りがあっての事か、俺様は初めての相棒を手に入れたのだ。

俺様が雲に乗って飛び回り、遊んでいる姿を見ていた爺ちゃんは…



「まさか本当にあの雲の魂を鎮めるとはのぉ…どうじゃ?これでお前も成仏出来そうかの?」



爺ちゃんの背後には透明の姿の武神が立っていた。


それは霊と呼ばれる。


霊は須菩提爺ちゃんと空を飛ぶ俺様に一礼した後、雲に別れを告げ…


消えて逝った。



「心残りが無くなり良かったのぉ…」




まぁ、そんな事はどうでもよいが、俺様はめでたく!


飛べる猿になったのだった!


めでたしめでたし?



次回予告


須菩提仙人への悪戯がさらに過激化し、ついに来る時が来た!


爺と猿!どっちが強い?


次話!それがついに判明する!?

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