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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
唯我蓮華~破壊神と呼ばれた少年~
330/424

黒歴史!破壊神と呼ばれた少年!

遮那と捲簾の戦いの末に何が待つのか?


更に天界で起きた大事件!


運命の歯車が動き出し、そして・・・



遮那と捲簾の戦いは壮絶さを増していた。



『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!』



遮那の動きが更に速く、そして鋭くなっていく。

怒り狂う破壊神と化した遮那は捲簾の放つ豪雨のように降り注ぐ神速の刃を、己の闘気で出現させた八本の黒鞭で次々と弾き返していた。



『シャナァー!』


『ケンレーン!』



白と黒の覇気が激しくぶつかり合う中、遮那の身に新たな異変が起きていた。

その瞳の色が深紅から金色の魔眼へと変色していく。


否!!


『金色の魔眼』が『銀色の魔眼』へと濁り変わって行こうとしていた。


それは神を殺す魔眼…


その変化にいち早く気付いたのは四天王達であった。




『金色の魔眼転じて神殺しの魔眼【倶利伽羅】となる。まさに伝承通りだ』


『このままでは、あの者が世界を混沌に導く破壊神となりましょう』


『それだけはならん!あってはならん!早速、例の宝貝を使うぞ』


『だが、どうする?この特別な宝貝には贄が必要なのだろ?』


『贄か…贄なら我々の目の前にあるではないか?』




彼等の視線の先には遮那と捲簾の戦いを離れて囲み、

待機していた数百万の武神達の姿があった。



『フッ!我達が誇る勇ましき武神達なら、この天界の窮地に喜んでその身を捧げてくれようぞ』




四天王達は揃い、手にした宝貝兵器を起動させ始める。


その最中、遮那と捲簾の激闘は続いていた。

神速の閃光の刃が舞い散り遮那の命を刈ろうと襲い掛かる中、遮那は全ての攻撃を躱しつつ見切り始めていた。



《コロシテヤルラ!捲簾!オラを騙し苦しめた男!アイツの言葉に惑わされ…アイツのせいでオラは…これほどの痛みを味わったんらぁー!!」



《全てはアイツに言われたから…》



なのか?



「イヤ!惑わされない…もう惑わされたれたりはしない!惑わされてたまるらかぁー!」



《オラは…オラは…お前を!!》



『!!』



捲簾の神速で放たれた千手の刃を全て躱した遮那は、

捲簾の最後に繰り出した両腕を見切り、間合いに入り込むと、

その手刀の手首を掴み止めたのだ。


(グッ!動かない!)



遮那の両手は捲簾の両腕を完全にロックしていた。

そして力任せに捲簾の腕を少しずつ移動させていく。


『!!』


だが、捲簾は己の腕を持って行かれた位置に驚きを隠せないでいた。

遮那が捲簾の腕を移動させた場所が、遮那の喉元だったから?

それはまるで捲簾の手が遮那の首を絞める形となる。


『お前…何を!?』



遮那は驚く捲簾に答える。

驚く事に先程まで輝いていたその瞳は金色でも銀色でもなくなっていた。

そして、その瞳からは涙がこぼれ落ちた。



「オラ…気付いたらよ…オラが今まで我慢し、苦しみ、傷付いていたのは、捲簾!お前に言われていたからじゃなかったんら…お前はオラに教えてくれたらけ…キッカケをくれたらけなんら。オラは!オラは自分の心に従って…正しいと思った事をしていたらけなんら…だからこそ今まで傷付き葛藤しながらも我慢出来たんらよ?オラが今まで苦しかったのは…ただ、オラが力不足で…救えた者達を見殺しにしてしまった罪悪感…オラ自身の無力感かららったんら…」


「…………」


「もし捲簾がそんなオラを裁くと言うなら裁いて欲しい…オラは…全てを受け入れるらよ…」


『良いらよ…お前になら殺されても…』




遮那は脱力するようにぐったりと力を抜くと、捲簾の遮那の首を絞める手に力が入る。


が、捲簾もまた涙を流していた。


そして、捲簾の瞳も遮那と同じく金色に輝き出したのだ。

それに同調するかのように、再び遮那の瞳も金色に輝く。


『金色の魔眼』




捲簾と遮那の瞳から放たれた金色のオーラが二人の身体を包みこむと、捲簾は遮那の首を絞める手を離して自分の額を抑え苦しみ始めたのだ。


「け…捲簾?」



そして遮那の目の前で捲簾の身体から怪しい影が抜け出し、二人の金色のオーラから弾き飛ばされるかのように善見城へと消えて行った。


「しゃ…しゃな…」


「け…捲簾?」



遮那の目に映る今の捲簾は紛れも無く自分が良く知る優しい捲簾の姿だった。



「…強くなりましたね?遮那?」



遮那は感激のあまり、言葉が出せなかった。


無理も無かろう…


遮那が求めていた捲簾が目の前にいるのだから。

遮那は溢れ出す思いを胸に、捲簾に向かって抱き着こうと飛び出した時…

突然、凄まじい力が善見城から感じられた。



『!!』



その悪夢は突然起きた。

遮那と捲簾の戦いを見守る武神達が突然苦しみ出し、肉体から魂が引き抜かれ善見城へと飛んで行ったのだ。残された武神達の肉体は一人一人空中から落下して光が飛散しながら消えて逝く。

それは無造作に吸い込むかのように次々と武神達の魂を吸収して、ついには空をうめつくしていた数百万の武神達が瞬く間に消えていったのだ。

まさに一瞬の悪夢。否!本当の悪夢はそのすぐ後に起きた。

凄まじい破壊光線が善見城から放たれたのだ!!



『破壊宝貝・突漸気飛躍砲門』

※トツゼンキヒャクホウモン



それは光輝く砲門であった。

数百万の武神達の魂を強引に抜き出し吸収し、

その魂エネルギーを破壊光線として放つ禁断の宝貝。

一直線に駆け抜けた閃光が通り過ぎた後の空は空間を歪ませ渦を巻き、運良く生き残った武神達をも飲み込んでいった。


そしてその放たれた先には遮那と捲簾が的となっていた。


一瞬だった。


閃光は二人をも飲み込み消し去ったのだ。


一瞬の悪夢。



僅かに生き残ったのは現場から離れた地で後から追い付き待機し、この異常な状況を素早く察知して即座に退避命令を下した二郎真君とナタクの部隊だけであったと言う。


この日、数千万の武神達が戦場の地で命を落とした。


後にこの出来事は全て異界から来た破壊神の仕業と語り継がれる。


破壊神の少年遮那は、その破壊衝動に乱心し天界を滅ぼそうと虐殺を繰り返し、それを食い止めていた観世音菩薩がその命と道連れに滅ぼしたのだと…


そこにいた全ての者がこの日の惨劇を心の奥へと封じ込めた。




陰謀渦巻く黒い歴史の一ページの中へと…


そして、この物語は幕を閉じたのだ。






いや!


終わらない物語…


あの日、あの瞬間…



破壊の閃光が遮那と捲簾を飲み込む瞬間へと遡る。

その瞬間、時が止まり世界は白く染まった。


音も光も闇も消え失せた時の中で遮那は戸惑っていた。



「な…なんら!?うわぁあああ!」



破壊光が迫るほんの一瞬、攻撃が止まった。

それは捲簾が身を挺して七色に輝く五枚の光の翼を楯にしたから。

捲簾は破壊砲を受けながら真面目な顔で遮那に告げたのだ。



「遮那…貴方には今から私の手で死んでもらいます」


「なぁ?何を?元に戻ったんじゃないらか?捲簾!」




すると捲簾は両掌に力を籠めると印を結び、遮那に向かって何かの術を繰り出した。

捲簾の印より八つの光が飛び出して、遮那な身体の中へと入って行ったのだ。


「うぎゃああ!」



八つの光は遮那の魂に絡み付き、締め付ける。



「耐えてください…貴方の死。それは、ほんのひと時の間…今から私が全ての力を使って貴方の魂を封じこめます!」


「捲簾?な…何を言ってるらかわからねぇーらよ!」



『貴方はまだここで死んではいけない…これから出会う…運命に導かれし友のために…

そして、本当に守るべきあの方のために…貴方は再び転生するのです』




涙が零れる。


これから何が起きるか解っている事が一つだけあった。


それは…


捲簾との永遠の別れ!



『私はこの身を挺して貴方を守る。逆転生変化・八戒魂封!』




八つの光が遮那の身体から魂を拘束した。



「やめるら捲簾!お前はオラが死なせねぇら!」


が、力が出ない。

遮那の周りを八つの玉が回り出す。

次第に遮那の身体を包み込む丸い光の球体へとなっていく。

遮那は力任せに球体を叩くがびくともしなかった。




『捲簾!捲簾!捲簾!オラ!まだお前と話したい事沢山あるらよ!まら一緒にいたいらよ!まら!まら…謝ってねぇらよ…ほんの一瞬でも…捲簾…オメーを… 信じられなかった事を!』




同時に破壊の光が捲簾の翼を破り、捲簾の姿を飲み込んでいくさなか、捲簾は遮那に向けて精一杯の優しい笑顔で微笑んだのだ。




(貴方と一緒にいた時間。


それは、私にとって…今まで生きたどの時よりも幸せでしたよ…


ありがとう…永遠の友よ…)




捲簾の姿が遮那の目の前から少しずつ消えていく…


差し出した手は宙を切り…


叫ぶ声は轟音に消し去られ…


唯一目に映る捲簾の姿は…


完全に消え去って逝く。








時が動く。


轟音と地響きが鳴り響きそこにあった全てが消滅していた。


残されたのは静寂のみ…


闇に沈み落ちていく揚善もまた…




「あ…ああああ…私は…何てを愚かなのだ!私が造った物が…私の…私の大切な友を…友の命を奪う事になるなんて!ぅわぁああああああ!」



闇の中で一人泣き叫んでいた。


また、二郎真君とナタクも、この状況になすすべなくしていた。



「馬鹿な…こんな事になってしまうなんて…捲簾…遮那君…」




二郎真君は目の前で消えた捲簾と遮那の最期に、拳を握り締め涙を流していた。

そしてナタクは砲撃のあった忉利天の中心にある善見城を見た。


(まさか…今のは父上の?)



全ては後の祭り。


その一連の全てを善見城の屋根上で、座りながら見ている者がいた。



《観音菩薩…僕の支配の魔眼の呪縛から逃れた事には驚かされたけど、これで魔眼所有者が二人始末出来たようだね…フフッ…》



それは金色の髪をなびかせた西洋の衣を纏った少年であった。


彼は一体、何者なのか?


全ては黒歴史の中へと消えていく…






消えていく…


消えて…


消え…




(どこら…ここ…?眩しいら…


オラ…何か大切な事忘れてないらか?


《け…ん…れ…ん…》



けんれん?


なんら?それ?


おもいらせないら…


何も…何も…何もかも…


忘却の彼方に消えていく…


ああ…オラはだれら?)






『ブビィ!ブビィ!』



ここは人間達が住まう地上界。


そこに黒い豚が一匹、


泣いていた…


産まれたばかりのその黒ブタは、ヨチヨチと外へ出て空に向かって叫ぶように泣いていた。


何故、泣いているのか解らない。


ただ悲しくて…苦しくて…


涙が止まらなくて、ひたすら泣いていた。






転生記零 二章


唯我蓮華~破壊神と呼ばれた少年~


黒い天蓬元帥と捲簾大将



~完~


次回予告


唯我蓮華~破壊神と呼ばれた少年~


完結


この続編は第一章の「転生記」へと続かれる。


第一章 転生記

第二章 神を導きし救世主!

第三章 唯我蓮華~破壊神と呼ばれた少年~


そして、更なる物語が幕を開ける!



第四章 天上天下・美猴王伝説!


開幕

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