桃源郷の太白金星仙人登場!?
孫悟空の転生変化にて強敵鉄扇を倒し、三蔵を救出した孫悟空達。
だが、彼らの旅はまだまだ続くのだ。
「うっ…あっ…産まれるぅ~!」
今、孫悟空兄貴は産みの苦しみを味わっているのでした。
ん?兄貴は男ですよね?
どうも、こんにちは!
私、沙悟浄です!
突然何かと思われたでしょう?
実はこの間、こんな事があったのですよ~
話は少し遡りますこと、鉄扇さんとの戦いの後の話へと戻らせていただきますね?
私達は再び旅を続けて、険しい山道を歩いてたのでした。
「でっ?鉄扇は何故お前を食べなかったらか?」
私は八戒兄貴と鉄扇さんに捕われていた時の話をしていたのです。
妖怪風邪に苦しむ鉄扇さんに、私は自分自身を食べる様に訴えたのでした。
「あんた!自分が何を言ってるか解ってるわけ?」
私は目を綴じて覚悟したのです。
「私のちっぽけな命で、三蔵様と鉄扇さんが助かるのなら…」
「あ…あんた…馬鹿なの?本当の本当に…馬鹿なの?良いわ!そんなに死にたいなら…」
鉄扇さんは牙を向き私の喉元に向かって来たのでした。
うっ…痛い…痛い…
とてつもない痛みが…
頭の皿に?
「いったぁ~い~!」
私は頭を抱えて疼くまったのでした。
あれ?
鉄扇さんは私の頭のお皿にチョップをしただけだったのです。
「てっ…鉄扇様?」
鉄扇さんは私を食べなかった?何故?
「別にアンタの命が惜しいから食べない訳じゃないんだからね!河童ちゃんなんか食べて私の美貌が損ねたら嫌だからよ…」
「それじゃあ…?」
鉄扇さんはその後、自分のベッドに入り込み再び苦しみ出し意識を失うように眠りについてしまったのです。そこで私は聞いたのです!
鉄扇さんが魘されながら言った寝言を?
「私は…死ねない…死んでたまるか!絶対に…生きて…復讐を果たすまで…アイツを殺すまで…」
復讐?誰を殺すのですか?
鉄扇さんは誰かに復讐をしようとしているのでしょうか?
いやいや!
今は、そんな事を考えている場合じゃないですよ~
私は直ぐさま鉄扇様に付きっきりで治癒術を施しつつ、
同時に三蔵様に頼まれていた『解除札』を作り始めたのでした。
そして、
私の手厚い看病で、鉄扇さんは命を取り留めたのです。
「じゃあ、あの女は病み上がりだったらか?」
「は…はい…」
「お前はオラ達が戦っている間、何をしていたらか?」
「ぶっ倒れていました!てか、看病に体力使い果たして霊力がゼロってましたから…」
「じゃあ、オラ達何のために戦ったらか?」
「鉄扇さんが言うには、女妖怪のボスの誇りにかけて、男に売られた喧嘩にのっただけらしいです」
「マジらか?」
「そもそも鉄扇様は先程の復讐相手の手掛かりを探るために、そいつの部下である女副の所に潜入していたらしいのですよ。その途中で病にかかり、そこに私達が入り込んだ訳なのですよ」
「この話…三蔵はんには聞かせられないらな…」
「はい…とばっちり一番受けましたからね。三蔵様もですが、孫悟空兄貴にしたって相当大怪我しましたし。想像したただけでも怖いですよ~」
八つ当たりが・・・
と、私と八戒兄貴は先に歩いている三蔵様と孫悟空兄貴に聞かれないように話をしていたのでした。
あっ!
そう言えば孫悟空兄貴なのですが、
ずっとイライラしているのです。
「ウッキ~!ウキウキ!ウッキ~!」
「黙れ猿!」
「また猿が狂ったらよ!」
「ウッキィ!」
全身を掻いたり、むしったり、叫んだり。
「孫悟空の兄貴どうしたのでしょうか?」
「あん?」
ヒィイイ~!
尋ねただけなのに~
ガン飛ばさないでくださいよ~
そんな意味不明の孫悟空兄貴を見つめる三蔵様には心当たりがあったのです。
「…………」
(転生変化の副作用か?鉄扇との戦いで見せた孫悟空の変化。やはりあれが孫悟空に強烈なストレスを与えている理由かもしれんな)
私は、ここ最近の旅を思い出す。
それは深夜遅くの出来事
寝ている三蔵様のもとに、孫悟空兄貴が起き出して来たのです。
どうしたのでしょうか?
「あ…あの…三蔵?えっと…あの、俺様…あの日みたいなんだ…今日も良いかな?」
孫悟空兄貴は恥じらいながら、三蔵様に媚びる様な目で見つめていたのです。
「仕方ない…こっちへ来い!今楽にしてやる…」
「う…うん…」
三蔵様は近付いて来た孫悟空兄貴の衣服を一枚一枚脱がせ始めていく・・・
「…あ……あん……くすぐったいよ…さ…さ・ん・ぞ・う」
「あんまり声を出すな!もう少しだ!もう少しで!」
なっ?何を?ナニを?
「何をしてるんですかぁーーー!?」
流石に寝ているふりも出来ずに私が飛び出したのでした。
「ん?」
「なんだ?」
「えっ?」
よく見ると三蔵様は孫悟空兄貴の背中に術札を貼付けていたのです。
「あの~何をしているのですか?」
「ああ?これか?」
三蔵様が説明してくださったのです。
孫悟空兄貴が鉄扇さんとの戦いの後から、いや…転生変化の後らしいのですが、身体の奥から異様な邪気が暴走するようになったのだと。その邪気を抑えるために、三蔵様が特別な術札で邪気を封じ込めているのだとか。
しかし…孫悟空兄貴?喘ぐのは、
絶対ワザとですね?
そんなかんなで私達は旅を続けていたのでした。
その途中、私達一行は少々道を迂回して険しい山道を歩く事にしたのです。
理由は私達の行く手に沢山の妖怪達の妖気を感じたから。
私達が妖怪達に狙われる原因であった霊感大王を倒したのは良かったのですが、私達を倒したら妖怪のリーダーになれるみたいな妖怪達が勝手に決めた条約は残っているみたいなんですよ。
わざわざそんな連中の相手をするのも面倒なので、妖怪達が立ち寄れない山道を選んだのです。
そこで私は三蔵様を呼び止めたのです。
「あの…三蔵様!待ってください!ここから先が桃源郷ですよ!」
「桃源郷?」
「ええ!仙人様が修行する山、桃源郷!」
八戒兄貴も知っているらしく説明を加えてくれたのです。
「確か不老不死の仙桃や霊力のある桃の実があるんらよな?」
「と、言っても最近はぐっと減っているみたいですよ?今もあるのですかね?昔は沢山いらした仙人様方も今はいないらしいですし」
つまり今は空き家?空き桃源郷なのです。
「つまり…何もない山なら、ただのつまらん山と同じだろ?」
「身も蓋も無いですね…桃源郷だった山と言うのが正しいかもしれませんね…」
私達はそのつまらない桃源郷に入ったのでした。
人間でも稀に迷い込み足を踏み入れる事もあるらしいです。
つまり霊力のある者が近付くと桃源郷は簡単にその入り口を開くのです。
逆に霊力が弱い者には、その姿さえ見る事すら叶わない山。
桃の匂い漂う仙人の住まう山…
『桃源郷』
私達三蔵一行が桃源郷に入り、少し経った時の事でした。
私達は自分達の身体異変に気がついたのです。
「お前達大丈夫か?」
「ヤベェナ…」
見ると孫悟空兄貴と八戒兄貴が、知らぬ知らぬのうちに妖力を失いかけていたのです。
何故に今まで気付かなかったのでしょうか?
そう…本人達に気付かないほどに、少しずつ削られていたのです。
この山漂う霧に吸い取られるかのように。
そう、この神聖なる場所では妖気を奪われていくのです。
えっ?私ですか?
ん~?どうやら半人半妖の私は平気みたいですね?
てか、天界にも住んでいたし免疫みたいですね!
えへん!
「三蔵…今誰かに狙われたらヤバイぞ?」
「これが、この山の持つ自然現象なら問題ないなかろう!万が一に妖怪が襲って来ようにも、相手も力を失っているだろうからな?」
すると物陰から何者かの気配に気付いた三蔵様が、私達に目配せしたのです。
誰かいるのでしょうか?
私達は気配のする方向に意識し集中させたのです。
「そこだ!」
いち早く居場所に気付いた孫悟空兄貴が落ちていた石を拾い、隠れている何者かに向かって投たのです。
「!?」
しかし孫悟空兄貴が投げた石は空中で止まり、そのまま粉々に砕け散ったのでした。
「フォッフォッフォッ」
すると物陰から何者かの笑い声が辺り一帯に響き渡ったのです。
その声の主はゆっくりと私達の前に姿を現したのでした。
「!!」
その者は仙衣を纏う杖をついた老人でした。
直ぐさま孫悟空兄貴は現れた老人に向かって飛び出したのです!
「待て猿!何者かも解らない相手に、むやみやたらに飛び掛かるな!って…ん?」
「ジッチャ~ン!」
孫悟空兄貴は三蔵様の予想を裏切り、その老人に抱き着いたのです。
「孫悟空の知り合いなのか?」
しかし、その次の二人の行動に私達は目を丸くしたのでした。
老人は抱き着いて来た孫悟空兄貴に対して、背後から腋下に頭を入れ両腕で胴に腕を回し、自ら後方に反り返り倒れながら?
そのまま・・・
バックドロップをしたのだから~
「ウギャア~!」
強烈な音がしました。
孫悟空兄貴は見事に地面に後頭部を直撃したのです。
一体全体どうなっているのでしょうか?
「あいたた…」
起き上がった孫悟空兄貴は頭を抱えながら老人に叫んだのです!
「半分死ぬかと思ったぞ!何すんだよ!爺ちゃん!」
老人は一呼吸した後、孫悟空兄貴に対して逆に怒鳴り返す。
「この悪ガキ猿がぁ!何がぁ~爺ちゃんじゃ!馴れ馴れしい!」
老人は孫悟空兄貴の顎を持ち上げ、更に怒り罵声する。
「おのれは3百年前!儂との修行中に突然いなくなったと思えば、魔王等とぬかして地上界・天界界を騒がし暴れまわったと言うじゃないか?儂は仙人界で肩身の狭い事、狭い事…」
「アハハ!過去の話じゃねぇか?もう歳なんだから昔の事なんか忘れろよ~」
あっけらかんと言い返す孫悟空兄貴の言葉に老人の何かがキレて弾けたのでした。
老人は孫悟空兄貴の胸倉を掴みあげ、もう片方の掌でピンタ!ピンタ!ピンタ!ピンタ!× 沢山!
たまらず孫悟空兄貴は老人の腹を蹴り倒し抜け出したのでした。
「ぐおっほっ!」
咳込む老人は苦しみながら涙目になっていました。
「孫悟空兄貴!お年寄りに対して酷いですよ!」
「そうら!老い先短い老人に何て…」
鈍い音が響くと、
「ぶひぃ!」
言い終わる前に老人は八戒兄貴を杖で殴ったのでした。
「失礼な!誰が老い先短い老人じゃ!」
「この糞爺!オラが引導与えてやるら!」
八戒兄貴まで老人に対して突っ掛かり出したのでした。
「落ち着いてくださいよ~!」
頭を殴られ怒る八戒兄貴を、私が止めに入ったのでした。
それから落ち着くまで一時。
「猿よ?この老人はいったい何者だ?」
「おぅ!この爺ちゃんは俺様が昔まだ有名になる前、いろいろ変な事を教えてくれ…」
「何が変な事じゃ!儂はオヌシを我が子のように育ててやったのに!」
「覗きや盗っ人もか?」
「馬鹿者!ありゃ…あれじゃ!…オヌシに早く立派な大人にだな…だから…つまり…」
「爺ちゃん…諦めろ…ボロが出るぞ?」
「………」
二人のやり取りに呆れている私達に、老人は気を取り直し自己紹介を始めたのでした。
「儂の名は、太白金星と申します。ただの仙人じゃよ」
次回予告
太白金星「ふお?いよいよ儂の登場じゃな?ここだけの話じゃが、この転生記の記念すべき一話は儂が語りをしておったのじゃぞ。どれだけの読者が気付いたものかの?」
孫悟空「はあ?俺様と三蔵の話をストーカーしてたんか?」
八戒「心配する事はないらよ?」
孫悟空「して、その心は?」
八戒「・・・読んどる読者がいるかも分からないからら」
孫悟空「ノオーーー!テンションダダ下がるわ!」
太白金星「身も蓋もないのお~」




