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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
唯我蓮華~破壊神と呼ばれた少年~
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捲簾と謎の声?決着!開明獣!!

武闘祭に現れたのは死んだはずの開明であった。


開明は自らをタリムアの薬を使い、開明獣と化して二郎神君と楊善に恨みを晴らしに来たのだ。



天界武闘祭に突如現れたかつて倒したはずの宿敵の盗賊長・開明。


開明は『タリムア』と呼ばれる禁薬を武闘祭に来客していた者達に密かに飲ませていた。タリムアなる薬を飲んだ来客は化け物と化して暴れだし、会場は荒れに荒れ始めたのだ。


そこには武闘祭に出場していた若き二郎真君や揚善もいた。



「くそ!どうします?会場の化け物達も気になりますが、先ずは目の前の敵ですね!」


「いや、お前は客席にいらっしゃる玉皇大帝様の防衛に向かうのだ!こいつは俺一人で倒す!」


「しかし!!」



揚善は躊躇した。

目の前の化け物と化した開明の力は数十倍にも膨れ上がっていたから。

二人掛かりならまだしも、一人で倒すには無理だと感じたのだ。



「俺を信じろ!行けぇー!揚善!」



揚善は頷き振り向き様『死なないで…』と言い残し、観客席へと駆けて行く。



「当然だ!お前も死ぬなよ?揚善!」



二郎真君は落ちていた刀を構え盗賊長に立ち向かう。





その頃、捲簾は一人会場から抜け出し外にいた。


「あの二人には興味ありましたが、私はまだ死ぬ訳にはいきません。残念ですがお別れです…

そう、私には使命があるから…かつて私と共に戦場を駆け抜けた…あの魂の誓いを結んだ仲間達に出会うためにも。それに…

私の魔眼に見えた未来では、あの場[闘技場]にいる者達は一人残らず生きていられない……

合理的に考え、早々に離れるのが一番の策なのですから…」



捲簾のその瞳は金色に輝いていた。



「私の金色の魔眼[先読みの魔眼]が見せる未来に…間違いはない」



捲簾が再び足を歩もうとした時、


《貴方は本当にそれで良いのですか?》


『!!』


捲簾の足が止まり、自分の胸を抑える。


「…今のは?まさか『君』の魂か!?」



すると捲簾の声に答えるかのよう返事をする。



《はい…貴方の見た未来に間違いはないです。けれど…》


「けれど?」


《私と二人なら…その未来を変えられる。いえ!変えましょう?変えられると信じて!》



捲簾は自らの中の声との対話をしているのか?



「君と一緒なら未来をも変えられると?そんな事が本当に出来るとでも?ふっ、いや…そうでしたね?」


《…………》


『私もまた死ぬはずだったあの日、君が私の未来を変えた。君が生かせてくれた。君と仲間達が私に魂を分け与えて、私の未来を変えてくれたのだから』


《未来は変えられる》



捲簾は空を眺めると、その瞳から涙を流していた。






一方、闘技場では?


襲い掛かる化け物に逃げ場を失い、傷付く玉皇大帝を同じく傷付きながらも勇ましく剣を振い、化け物を寄せ付けないで庇い戦う揚善。


「揚善…」



客席に暴れる化け物に応戦する武神達だったが、相手は化け物でもかつては仲間であり、肉親や愛する者達。むやみに倒す事を躊躇していた。いや?それだけでなかった。

化け物の身体には神具は勿論、神気が通用しなかったのだ?


「神の力が通用しない化け物なんて…」



だが、その場にいた玉皇大帝だけは、その力に感ずるものがあった。



「まさか…あの忌まわしき力なのか?」


「?」



玉皇大帝はこの状況に何か心当たりがあるのだろうか?

そして、二郎真君もまた苦戦中であった。

神力も神具も通用しない化け物と化した開明獣を相手に手も足も出ずに身体を掴まれ、身動き出来ないまま吊るし上げられていたのだ。



「クッ!奴等に触れただけでも…力を奪われる…ってのか?」



体力を奪われて手にした剣を握る握力すら失い、二郎神君は剣を落とす。



『愚かなガキだ!今、お前との因縁に終止符を付けてやろう!』


「万事休すか…」



このまま全滅なのか?


神の力が通用しない化け物にどう立ち向かえば良いのだろうか?


誰もが諦めたその時であった。



「あ…あれは!?」



それは闘技場の上空からであった。

神々しいまでの光が辺り一帯を覆い隠したのだ!?

一体、何事が起きたと言うのか?


その光の中心に見えたその者の姿は七色の五光を背負った捲簾の姿だった。

その瞳は金色に輝き、この状況全てを見通していた。



「神を化け物に強制転生させる禁薬タリムア!一度口にしたら二度とは戻る事は出来ない…」



(確か会場に入る際に配られていた神酒があったけれど、その中に仕込まれていたみたいですね?)



「なら、時間はまだそれ程経ってはいないはずですね?そうでしょ?」


《ハイ!私に意識を渡して貰えますか?》



捲簾が一端瞳を綴じると、その瞳が再び強烈に光り輝き、捲簾の緑髪の色が金髪へと変わっていく。その変化した捲簾は化け物の姿を見透かしていた…



『この薬はまだ完成されていないですね…大丈夫!まだ戻せます!』



その声もまた変わっていた?本当に捲簾なのだろうか?すると捲簾は指先から無数の光の糸を散らばし伸ばすと、それは暴れる化け物達へと向かって絡まっていく。


『薬除け治療術!』



光の糸は伸びて行くと、化け物の体内に入り込んで再び枝分かれしていく。

その光りの糸はさらに細かく細胞レベルにまで達する。


そして一気に糸を引き上げると、光に包まれながら化け物達は呻き苦しみ倒れていく。

傷付いた武神達は恐る恐るその化け物を見ると、

その姿が元の家族や仲間の姿へと戻っていたのだ。


その状況に生き残った武神達から感激と驚きの歓声が湧いた。


窮地だった玉皇大帝と揚善も驚きながらも奇跡の状況を見ていた。




そんな中、捕われた二郎真君もその状況を驚きつつ…



(捲簾か?捲簾の仕業なのか?あいつ本当に何者なのだ!?)


「だが、今は俺の仕事をするだけだ!」



二郎真君の身体から白き聖犬獣である哮天犬が現れ、二郎真君はその背に背負った三尖槍を掴みとり両手を前に構える!


『聖獣変化唯我独尊!哮天!』



その姿が光り輝き、再び現れたのは哮天の鎧を纏いし二郎真君。


その眼前には!



『…馬鹿な!俺の能力まで抜けていくだと?一体、何が起きたのだ!?タリムアの効果を消し去るなんて有り得ん…あってたまるかぁーー!!』



驚愕する開明獣の前には既に二郎真君が迫っていたのである。



『こんな事で俺の目的が途絶えてたまるものかぁああああ!』



開明獣の頭部が九つに分かれて、向かって来る二郎真君に襲いかかる。



「今度は二度と蘇る事なく消し去ってやるぞ!」


『滅っせよ!!』」



二郎真君は次々と開明獣の九つの首を斬り落とし、最後に放たれた渾身の一撃は開明獣の身体を貫き、過去の因縁共々体内から消滅させたのだ。



「今度こそ終わりだ…」




が、盗賊長は消滅する直前で言い残す。



『ぐふふ…まぁ良い…俺の犠牲はあの方への忠義…俺は死すとも、あの方がこの誤った世界を消し去ってくれるはずだ…!ふふふ…お前もいずれ…今、生き残った事を後悔するだろうて!やがて世界が終わりを…迎え……よう……』



そこで開明獣は完全に消滅したのだ。



「あの方?世界の終わりだと?どういう意味だ?だが、そうはさせん!俺が必ず世界の終わりから世界を守ってみせるぞ!!」




一方、この危機から救った当事者である捲簾は元の捲簾に戻っていた。



「どうやら君の医の知識が役に立ったようですね?」


《良かった…本当に…》


「本当に貴方は私の見た未来を変えてしまいましたね?」


《未来は自らの手でつかみ取る!それが私達でしたから…》


「…もう消えてしまうのですか?もう会えないのですか?」


《大丈夫です…いずれ私と貴方は再び出会える。私が転生するまで待っていてくださいね…?》


「えぇ…待っています!待っていますから…だから再び今世で会いましょう!我が邂逅の友よ!」



捲簾の身体から光が消えて、元の自然体へと戻る。


突然起きた絶体絶命の危機から、最悪の結末を免れた二郎真君と揚善。


武闘祭は終わりを告げた。


武闘祭の後、その戦いぶりを神々達にも認められ、その才能が将来有望だと称号と職務を与えられる。命懸けで玉皇大帝を最後まで護り通した揚善には、本人の希望により神具開発顧問へと。また、今回の事件を起こした当事者である盗賊長を倒した二郎真君は、邪悪な妖怪を相手にする討伐隊の将に任命されたのである。


その後、二郎神君と楊善は数々の武勇伝を残す事になる。


後に彼等はこれから始まる大戦にて英雄神と称される事となるのだが…

それは封神大戦と呼ばれる玄術を持つ人間や多数の仙神が参加した戦争。


元始天尊の弟子であり、後に太公望と呼ばれる最高大仙である姜子牙を中心に、その波乱の戦争に巻き込まれていく。


だが、この話はまだ語るには先の話…


そうそう!



また、更に不思議な力と謎に包まれし今回の一番の功労者である捲簾に関しては武闘祭に観戦に来ていた観世音菩薩に見込まれ、その功績から遊軍[依頼された討伐の中から好きに戦場を選ぶ事が出来る将軍の地位]を与えられた。


後の『捲簾大将』の称号の始まりであった。


これが二郎真君と揚善、それに捲簾の出会い…


この件から、彼等は交流を結ぶようになる。


正直、捲簾に関しては未だに謎が多いのだが、二郎真君も揚善も特別追求する事なく『友人』として認め合ったのだった。


捲簾もまた、不思議と彼等には心を開くようになる。




「ふぅ~」



捲簾は椅子に座り一人書物を読んでいた。



『本当、不思議な縁ですよね~それも、彼が私の背中を押してくれたから…』



捲簾は自分の胸に手をやり、瞳を綴じる。



『君にはまだ出会えてないですが、誓いの友には既に一人出会えたのですよ?そう!君が良く知る彼です!』


そこに…



「捲簾~!今帰ったら~!腹が減ったらよ~!直ぐに飯作るらよ~!」




捲簾はクスッと笑い立ち上がると、



『ハイ!ハイ!今、行きますよ~!』



自分を呼ぶ騒がしい声の主を出迎えたのだった。

次回予告


開明獣の最期の言葉の意味とは?


捲簾の中にいる謎の声の主とは?


謎は謎のまま、物語は新たな物語へと・・・



第三章


唯我蓮華~悲しみの闘子~ 前後編 開幕!

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