天界武闘祭!?
二郎神君と楊善は天界で行われる天界武闘祭に出場する事になった。
そこには捲簾の姿と・・謎の男が?
天界武闘祭
最高神達が見守る中、選ばれし優秀な次期武神候補生達が磨きあげた腕を競い合う祭典である。
その中でも優秀だと見込まれし者は、武官や将軍職といったエリートコースへの近道。
よって、観戦している候補生達からも憧れと敬意の対象であった。
今年選ばれし者は十二名。
その中に若き二郎真君と揚善の姿もあった。
当然、その勇姿を玉皇大帝も観戦しに来ているため、二郎真君も意気込みが違っていた。
「揚善!お前とて容赦しないからな?」
「お手柔らかにね?真君~」
二人は同じ地のもう一人の訓練生[捲簾]と同じ部屋にいた。
武神訓練所は中央神殿から四方に分かれて東西南北四ヶ所にある。
その代表三名が他の地の代表者達と競い合うのだ。
「今回の大会はどんなルールなんですかね?」
と、言うのも…
毎回開催される事にルールが違うのだ。
トーナメントだったり、サバイバルバトルであったり、タッグバトルであったり…
「俺はトーナメントが解りやすい!最後に残っていた者が勝者だからな?」
「あ、今大会のルールが発表されたみたいですよ!」
発表されたのは、東西南北で選ばれた三名がチームになり、
バトルロワイヤルを行うと言うのだ。
「なに?それでは俺は揚善と…」
「もう一人は…」
二人が見た先には捲簾がお茶を飲んでいた。
「やれやれ…あいつと仲間か…」
そして、神々が見守る中、天界武闘祭の幕が切って落とされたのだ。
東西南と代表者が呼ばれた後、北の門より二郎真君、揚善、捲簾の名前が呼ばれ登場する。
闘技場を埋め尽くす程の観客の中、試合は開始した。
「揚善?解っているな?」
「大丈夫!大丈夫!任せておいて~」
二人には策があった。
策?
この闘技祭ではどれだけアピール出来るかも大切なのだ。
よって、二人の策とは?
一人で各ブロックの三人を相手するとんでもない策だったのだ。
二人は余裕の物腰で刀をゆっくりと抜き、左右に分かれ飛び出していた。
二郎真君は西門より現れた代表者三人に向かって行く。突然の襲撃にも拘わらず、西門の三人は武器を構え応戦する。その連携された動きには目を見張るものがあったのだが…
二郎真君の凄まじい勢いに圧され、いとも容易く薙ぎ倒されたのだ。
同時に揚善は東門より現れた代表者三人に向かっていた。
彼は懐から術札を取り出すと念を籠める。
相手の闘技者達も応戦するが、揚善の札から放たれる術に翻弄され、東門の三人は身動きを奪われたまま敗北を余儀なくされた。
二人の圧倒的な強さに、残された北門の三人は微動だに出来ないでいた………いや?
足元に強力な結解が張られて動けなかったのだ?
そして崩れ落ちるように眠ってしまったのである。
「…あいつか?」
それは捲簾の仕業であった。
北門の三人は何も出来ぬまま敗北した。
三人の強さは他の代表者達と桁違いな差があったのだ。
三人のみを残し、他の闘技者はノックアウト。
その光景を見ていた観客達は口を開けたまま時が止まったようにしていたが、やがて一人一人声をあげての大歓声が巻き起こったのだ。
「さてと…」
「真君の作戦通りの先制襲撃…上手くいきましたね?勝つ事は勿論、僕達の力を存分にアピール出来ました。で、次はどうします?」
「フッ…このまま武闘祭が終わったら、せっかく遠くより観戦に来ている来場者様に悪いだろ?もう少し楽しませないとな?う~ん…お前との決着は最後に残して…先ずは!」
「りょ~かい!」
二人は目配せで合図すると捲簾に向かって襲い掛かったのだ。
「ちょっ!ちょっ!私達は仲間でしょう?ちょっと待ってぇ~!!」
慌てふためく捲簾にお構いなく、二人は攻撃を仕掛けた。
半分冗談、半分本気だった二人だったが、二郎真君の繰り出す槍の連撃を捲簾は全て躱す。
「こいつ…やはりくせ者だ!なら、本気を出させて貰うぞ?」
次第にその斬撃の速度が上がり、鋭くなっていく。
が、しかし…
「まっ!待って!あわわ~!あんまりセッカチですと…」
その瞬間、二郎真君の目の前から捲簾の姿が消え…
「下か!?」
…たかと思うと、足元を刈られるように蹴られたのだ。
二郎真君が体勢を崩したと同時に…
「真君!躱して!」
揚善が術札に念を籠め、捲簾目掛けて投げつける。
咄嗟に二郎真君は躱しながら刀を構え直していた。
「油断はしてなかった…あの男!想像以上に出来るぞ!」
揚善の放った術札は鋭利な刃と化して、躱しながら逃げる捲簾を追って行く。
「あら~?追尾型ですか?私の気を感知しているのですかね?」
「ふふふ。どうします?」
すると捲簾は立ち止まり掌に神気を籠めて宙に文字を記したのである。
『無効化の盾』
捲簾の掌から現れた七色の光が盾となって、揚善の術札が命中する前に消える。
「あの光の盾?僕の術札に籠めた神気を中和させて消した?面白い術だな~うん!」
二郎真君と揚善は捲簾の力を認め、ついに本気になった。
「面白くなって来たぞ!まさか揚善以外に俺をワクワクさせる奴がいたなんてな?あいつは正しく天才だよ!」
「僕もワクワクして来たよ!楽しめそうです」
二人は並び立ち、ゆっくりと捲簾に向かって行く。
「やれやれ~どうやら本気モードですね?仕方ありませんね~では私も本気見せちゃいましょうか?」
が、その時、突然、二郎真君の足が何者かに掴まれたのだ?
「!?」
それは先程二郎真君が気絶させた西門の代表だった。
「目覚めたか?だが、もう少し眠っていて貰おうか?」
が、二郎真君は信じ難いモノを目にしたのだ。
自分の足を掴んでいる男の顔がぼやけ出し、その顔が別の男の顔へと変わったのだ。
しかも、その顔には心当たりがあった!
「キサマは!!」
その男は正しく…
かつて二郎真君が倒したはずだったあの宿敵である盗賊の長・開明だった。
「お前は確かに俺が始末したはず!」
『グフフッ!お前に再び会えるのを楽しみにしていたぞ?お前は俺の手で始末してやりたかったからなぁ!』
開明は二郎真君の足を掴みながら、その姿が再び異変を起こしたのだ。その身体が盛り上がり、胸から獣の顔が浮き出して来た。それはまるで体内から抜け出そうかとするように…
開明は激痛を感じ、二郎真君の掴んでいた足を放してふらつき始める。
『どうやら薬の効き目が切れかけて来たようだ…』
すると、懐から何やら瓶を取り出して飲み干す。
「その薬は!」
それはかつて、神兵を実験体にしていた薬だった。
神を魔物へと強制的に神堕ちさせる悪魔の霊薬!
『俺はお前に消される寸前にこの薬を飲み!お前への無念を糧に俺は魔物として蘇ったのだぁーー!』
その姿は完全に半神半獣の化け物へと変わっていた。
「馬鹿な!?ありえん!だが、キサマは俺にとっても仇だ!再び冥土へと送ってやるぞ!」
あれから二郎真君の実力は格段と上がっていた。
手にした刀から繰り出される一降りは、金剛石をも真っ二つにするほど…
にも拘わらず、二郎真君の刀は化け物と化した盗賊長の身体に傷一つつけられなかった。
痺れる手を抑えつつ、二郎真君の傍には揚善が、
「真君!大丈夫?これは一体?」
「どうやら化けて出たようだぞ?」
二郎真君と揚善は構え直し、化け物と対峙する。
『俺が飲んだ薬は霊薬タリムア!神を化け物へと転身させ、その力を元の数倍以上にさせるのだ!そこのガキ[揚善]にも見覚えがあるぞ?二人まとめて食い殺してやろう!』
が、揚善は余裕を見せつつ言い返す。
「終わりなのはお前の方だ!この闘技場には神兵だけでなく、観客にも名のある武神が数多く来ている!お前はまさに袋の鼠だよ?」
だが、
『グフフ…ガハハ…グゥハッハッハハハ!袋の鼠はお前達の方だぁー!』
開明獣が両手を広げると闘技上観客の方から異変が起き始めた。
「何が!?」
「あれを見て!」
観客席が騒ぎ出し、次第に悲鳴まで聞こえて来たのである。
それは…つい今の今まで隣にいた者達が突然苦しみ出し、突如化け物へと転身して手当たり次第に襲い始めたのだ。
(…まさか?奴の仲間か?いや、違う!)
化け物へと転身したのは襲われた者の家族であったり、友人だったからだ。
化け物へと転身した途端、見境なく暴れ出し、まさに闘技場全体が地獄絵図と化して行く。
それを見ていた玉皇大帝も驚きを隠せないでいた。
襲い掛かる化け物に応戦しながらも、
「謀反?違う!」
この場にいた神々が強制的に化け物に転身させられ、
意識を消され、完全な化け物へと化したのだ。
『この祭には名のある神々や英雄とされる武神が数多く来ているはずだ!そいつ達が化け物と化して暴れれば、正気のある奴達とてただでは済まないはず!全ては目論み通り!』
開明獣の目的は、この闘技場に観戦に来ている全ての名高い神々の抹殺だったのだ。
「キサマの好きにはさせん!」
「お前の陰謀は僕達が止める!」
突然の事態にも勇敢に挑む二人の若い武神!
そして、その頃?
「……………」
君子危うきに近寄らず・・・
いつの間にか一人、闘技場から離脱していた捲簾であった。
次回予告
執念深い開明の登場に二郎神君と楊善は?
そして、捲簾は?




