表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
唯我蓮華~破壊神と呼ばれた少年~
311/424

幼少・二郎真君!友との別れ・・・

物語は遮那の話から英雄神の二郎真君の物語へと


英雄とよばれた二郎真君の出生秘話!


顕聖二郎真君…


玉皇大帝の甥。


最高神である玉帝の妹と、人間である男との間に産まれた半神。

玉帝の甥と言う事もあり、生まれながらに周りから重宝され敬われる存在であったが、純潔の神からは半神である二郎神君は差別の的であった。


さらに…


幼い頃の彼は真君と呼ばれ、戦う事を嫌い、花と戯れ動物と遊ぶ事を好む少年であった。

周りの目からは親の七光りの軟弱な王子様と写っても当然であった。


「さぁ!皆~おいで!」


真君が大声をあげると、所々から動物達が集まって来る。

真君は度々近くの森に行っては、

動物達に屋敷からこっそり持って来た食べ物を分け与えていた。


「さぁ、皆お食べ」


真君にとって、この一時が一番の楽しみであった。

この頃の真君は武術、学問、何をとっても同い年の少年神以下であった。

周りからも、この歳で出来そこないのレッテルを貼られていた。

そんな真君を面白く思わなかったのは父親である玉皇大帝も同じであった。

自分の血統からこのような脆弱な者がいる事が許せなかったのである。

そこで玉皇大帝は真君に命を与えたのだ。



『我が甥真君よ!お前に命ずる!最強の聖獣を手に入れるのだ!』


「そ…そんな…聖獣だなんて…!!」



聖獣…精獣とも言う。

最高神の誰もが精霊である獣の王と契約し、

力を借りる事で計り知れない神力を手に入れるのだ。

しかし聖獣を手に入れるためには、

その聖獣に認められ使役する強さと魂がなくてはならなかった。

幼少である真君はもちろん、大人の神でも手に入れる事は困難極まりない事であり、そのために命を落とす者もいるくらいなのだから。


さらに玉皇大帝は命ずる。


『近々行われる聖獣祭にてお前の強さを我に示せ!』




それは近々行われる聖獣を持つ者達の祭典。

つまり聖獣を手に入れた武神通しが力比べをする聖獣武闘祭に、真君も出ろと言う事。


(僕はただ…自由に生きていたいだけなのに…父神様は…僕がいらないのだ…僕は…不必要な子供なの…)


「わ…私には無理です!」


『これは王命だ!解ったな?』



真君は小さな声で…


(それに……僕はもう聖獣は欲しくない…)


泣き出しそうな真君に対して玉皇大帝は言った。



『お前がかつて我が一族に長きにわたり契約していた《聖なる鷹》を守りきれずに死なせてしまった事は知っている。しかし、いつまでも後悔を引きずり現実から目を背け!今のように堕落していてどうするか?』


「!!」




それは今から十年程前の話である。

真君が産まれたと同時に玉皇大帝の一族が先祖代々宝にしていた聖獣の卵が光り輝き、中から《聖なる鷹》と呼ばれる聖獣の子供が孵化したのだ。

そしてその場から飛び出したかと思うと、産まれて間もない真君の前に降り立ったのだと言う。

それを知った玉皇大帝は驚き、真君こそが新たな一族の英雄になると確信したのだ。


だが、悲劇は起きる。


幼少期の真君は鷹の聖獣を《宝天》と名付け、いつも一緒にいた。

真君にとって宝天は唯一の友達であり、兄弟と言って良かった。


その日は玉皇大帝の支配する地にて、聖獣を持つ神々が力を競い合う祭『聖獣武闘祭』が開かれており、数々の名のある武神と聖獣が集まっていた。


そして…


その祭を耳にした良からぬ者達までもが…


その者達は《聖獣狩り》と呼ばれる盗賊達で、他の者の聖獣を不思議な宝具にて奪う悪党達であった。その日も…


聖獣を持った武神が数人の男達に囲まれ、人目のない場所へと連れて行かれる。


「貴様達!私に何のようだ!?」



すると男達はニヤニヤしながら叫んだのだ。


『吸い込め!獣奪縄!』

※ジュウダジョウ



盗賊の一人が武神に対して光る縄を投げつけると絡み付き、武神の身体から何かを引っ張り出したのだ。それは暴れる虎獣?聖なる獣・聖獣であった。

盗賊により聖獣を捕縛され奪われた武神は、信じられない様子で見ていたが、直ぐに我に返り叫んだのだ。


「私の聖獣を返せぇー!!」


が、その後…

盗賊の男が手にした縄を自分の腕に絡めると、捕縛した武神の聖獣が盗賊の男の中[魂]に従うように入って行く。


「馬鹿な!!私の聖獣を自分の物(契約)としたと言うのか?」



盗賊の男から再び現れた聖獣が、元の主人であった武神に襲い掛かったのだ。

武神の断末魔が響き渡る中、数人の盗賊の男達は…



「この宝具・獣奪縄は、聖獣と契約した者から強制的に聖獣を奪い、己がモノにする事が出来るんだぜ?」


「おぃ!次の目当てはあれだろ?玉皇大帝一族が持つ聖なる鷹って奴?」


「あぁ!あれは最上級の聖獣だと聞く!必ず手に入れるぜ」



盗賊達の狙いは真君と共にいる聖獣である宝天であった。


その夜、盗賊達は玉皇大帝の城に忍び込み、財宝を盗んだ後、聖なる鷹《宝天》を奪ったのだ。

盗賊達は人目の付かない城から離れた森の中にある小屋に身を潜めていた。


「で、なんだ?そのガキは?」



そこには宝天と一緒に、縄に縛られた幼い少年…つまり真君まで拐われて来ていた。


「いや、聖獣からどうしても離れないし、時間もなかったから面倒になって一緒に連れて来ちまったんだよ~」


「しょうがねぇな~?だが、俺達の素顔を見られたからには生かしてはおけねぇな」


「覚悟良いよな?なぁ?お坊ちゃんよ?」



真君はその盗賊達の顔に見覚えがあった。



「どうして…お前達が?お前達が盗賊なのか?」



その盗賊達は父親である玉皇大帝の配下であった武神達。

当然、真君も見覚えがあった。


「顔を見られたからには悪いが死んでもらうよ?お坊ちゃん!悪く思うなよ?」



盗賊の一人がゆっくりと刀を鞘から抜き、真君に近づいて来た。

真君はただ震え、自分の命がもう終わりだと確信したその時だった。

突如、二人の間に何かが割って入って来たのだ。


「宝天!」


それは聖なる鷹・宝天であった。

宝天は強烈な光を小屋一体に放ち盗賊達の目が眩んだ後、真君の縄を切って外へと導いた。

真君もまた視力を奪われていたが、不思議と宝天に導かれるがまま脱出に成功したのだ。

その後、視力を取り戻した真君と宝天は右も左も解らない暗闇の森の中を盗賊達から逃げ回っていく…


(宝天だけなら逃げ切れる…)



真君は岩の陰に身を潜みつつ、宝天に言った。


「宝天!君だけでも森から抜けるんだ!そして城から助けを呼んで来ておくれ?」



だが宝天は首を振り、真君の傍から離れようとしなかった。

宝天は気付いていたのだ。

もし真君を一人にしたら二度と会えない事に。

あの盗賊達が顔を見られた真君を見逃すはずがない。

きっと見つかれば真君は殺されてしまうのだと…


だが、そこに現れたのだ。


『ようやく見付けたぜ?』



盗賊達であった。

しかも盗賊達は奪った聖獣を使役し、臭いを追って真君達を追って来ていた。


(逃げられるはずない…今度こそ終わりだ…だけど宝天だけは逃がさないと!)



「宝天!僕は君との契約を破棄する!よって僕と君を縛るものはない!君は自由だ!だから、この場から飛び立ち消えてしまえ!」



真君は叫ぶ。


当然、本意ではない…

宝天を助けたいがための契約の解除…

すると宝天は空高く飛び立ったのだ。



(これで良い…さようなら…宝天…)



が、宝天は戻って来た。

急降下して来た宝天は盗賊達に向かって突進して行く。

盗賊達を錯乱しつつ、その翼が盗賊のリーダーの顔を傷付けたのだ。



「きぃさまぁー!もう怒った!何が聖なる鷹だ!!関係ねぇ!殺してやる!」



怒り心頭の盗賊長は部下達に命令をし、

宝天と真君を囲むと次第に崖っぷちにまで追い詰めて行く。

盗賊達は奪った聖獣を召喚し、真君と宝天は完全に逃げ場を失ったのだ。



「もう終わりだ…宝天?ごめんね…僕に力があれば君を助けられたのに…」



その時、宝天は何を思ったのか?真君に体当たりをして崖下に落としたのだ。

そして自分の羽根を真君に飛ばすと真君の胸に貼り付いた。

真君はそのまま暗闇の崖底へと落下して行ったのだ。



『ほうてーーん!』



落下して行く真君。


真君が目覚めると崖から落下したにも拘わらず、自分自身の身体に傷一つない事に気付く。


記憶を辿る。

真君は落下の途中、手にした宝天の羽が光り輝いたかと思うと、その身を包み込みゆっくりと崖下へと降ろしたのだ。


(僕は宝天に救われたのか?)



「ハッ!そうだ宝天!」


(宝天は今、盗賊達が使役する十体の聖獣に襲われているはずだ!)



真君は登った…


暗闇の中、自分が落下して来た崖を!!


幼い手足で…


爪が剥がれ皮がめくれようとも、その指を血だらけにしながら…


ひたすら上へ上へと!


気付くと空から水が落ちて来た…いや雨か?


濡れて滑りやすい岩に指を押し込み、落ちないように身体を支える。


痛み?真君は解っていた。


自分の身体に感じる痛みなんて些細なものだと…


今、まさに失うかもしれない友達との死別と言う恐怖に比べたら、

心に味わうであろう痛みに比べれば…


こんな痛みなんか大したことはない!


自分が行った所で何も出来やしないだろう…


しかし行かなきゃ!


友のいる場所へ…宝天のいる場所へと…


そして息を切らし、身体中傷付きながら崖を登りきり、そこで真君が目にしたものは?



「あっ…あぁぁ…」



雨に打たれ…


羽根があちらこちらに飛散した…


宝天の悲惨な姿だった。




真君の悲痛の叫びが闇の中に響く。


その涙は大粒の涙となって雨と重なり合った。


次回予告


唯一の友であった宝天を失った真君


だが、彼に再び・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ