激突!孫悟空と鉄扇!
孫悟空と八戒より先に鉄扇の城に侵入していた沙悟浄
しかし沙悟浄は鉄扇の執事として働いていた。
その上、沙悟浄は病に倒れた鉄扇の命を救うべく、その身を鉄扇に捧げたのだった。
空に浮かぶ天空城
そこは雷雲に覆われた難攻不落の城塞であった。
その城には今・・・
「あ~良く寝たぁ~」
鉄扇は清々しい陽射しの下、目を覚ました。
「あ~気持ち良いわぁ~!やっぱし健康が一番だよね!」
鉄扇はベッドから降りると、今まで病気だったのが嘘だったかのように元気になっていた。
「これも全部…河童ちゃんのお陰ね。それに、今日が約束の一週間目」
鉄扇は三蔵のいる広間へ向かって行くと、吊されている檻を見つめて妖しい笑みを浮かべた。
それと同時に!
城の壁に亀裂が入り、同時にけたましい爆音で城全体が揺れ、崩れ落ちる瓦礫と一緒に二つの影が落下して来たのだ。
「いててら…」
「思ったより時間くったけど、何とか着いたようだぜ!」
「それにしても、雷雲で前が見えないからって、やみくもに突進するなんて馬鹿らか?お前は!」
「結果的に良かっただろ?」
そこに現れたのは間違いなく!
そうだよ?俺様!
孫悟空様だぜ!
・・・と、八戒だ。
俺様は城内の中を見回しながら咄嗟に状況を読む。
天井には鳥かごの様な檻がぶら下がっていた。
間違いない!
あそこから三蔵の気を感じるぞ!
三蔵!あそこにいるのか?
「おい女妖怪!俺様から直々にやって来てやったんだ!三蔵を返せ!」
「もう~!私のお部屋を目茶苦茶にして言う事はそれだけ?それに私は何度も言うようだけど、ちゃんとした名前があるのよ!」
鉄扇は懐から紅色の鉄の扇を取り出すと、ポーズを決めて、
「女妖怪最強の力と美貌を兼ね備えた大妖怪のボス!私の名前は鉄扇よ!」
『鉄扇ちゃんと呼んでね!』
「ふっ…ふざけるんじゃねぇー!豚!行くぞぉー!」
「仕方ねぇらな!」
俺様と八戒は鉄扇に向かって同時に仕掛けた。
鉄扇は懐から二つの鉄の扇を取り出すと、扇は見る見る大きくなり人型サイズになる。
「舞え、鉄扇!」
鉄扇の奴は大扇を手に舞い始めたのである。
何のつもりだ?
すると大扇の先端から無数の札が舞い散り、その札から紅色の鉄板が出現して宙に浮いたまま止まる。
「気をつけるらよ!」
「分かってるぜ!」
鉄扇は出現した鉄板を鉄扇は意のままに動かし始める。
すると鉄板は鉄扇の周りを回り始めたのだ。
「さぁ、潰れちまいな!下等雄妖怪!オホホホ!」
回転していた鉄板が凄まじい勢いで俺様達目掛けて飛んで来たのだ!
「うぐわあああ!」
俺様と八戒は飛んで来た鉄板によって弾き飛ばされたのだ。
「うふふ…私を甘く見てたら怪我するわよ?チュッ!」
『!?』
すると弾き飛ばした方向から、凄まじい妖気が立ち込め始める。
それは俺様と八戒の妖気だった!
「妖力全開大奮発だぁー!」
「こなくそらぁー!やってやるらよ!」
俺様と八戒の妖気が気柱となって城内を揺らし、更に高まっていく。
「あらら?凄い凄い!アハハ!でも、ダメなんだよね?その程度じゃさ」
余裕を見せる鉄扇に俺様と八戒は武器を手に向かって行く。
再び俺様達に向かって飛んでくる無数の鉄板!
俺様と八戒は飛んで来た鉄板を砕きながら、鉄扇をめざす。
「あらら?やるじゃない!頑張るわねぇ~でも、まだまだダ~メ!」
「秘技・鉄扇攻守!」
すると宙に浮かぶ鉄板が鉄扇の周りに集まっていき、陣形を作り始めていく?
その陣形は紅色をした蓮の花のような美しさがあった。
俺様は構わずに鉄板を一枚一枚ぶち壊して鉄扇へと近付いて行き、ありったけの力で如意棒を突き付けたのだ。が、それは鉄扇の前に出現した鉄の扇によって止められる。
その鉄の扇は鉄板が何枚も重なった強固な防御型の盾。
どんなに攻撃を仕掛けても、無数の鉄板が飛んで来ては邪魔をして道を塞ぎ、盾となり、鉄扇には届かない。少しでも油断すると、別の鉄板が攻撃に転じて襲って来るのだ!
「うぐわあああ~!」
俺様の身体に飛んで来た鉄板が直撃する。
これが鉄扇の奥義!
『鉄扇攻守』なのか?
『攻』と『守』の完全同時攻防奥義。
「ふふふ…弱い弱いわぁ~!全然相手にならないじゃない?暇つぶしにもならないわよ!」
だが、鉄扇は先程までいたはずの八戒の姿が見当たらない事に気付く。
「そういえば…あれ?もう一匹いたようだけど…」
鉄扇は辺りを見回したが何処にも八戒がいない?
また逃げた?
と、思った瞬間だった。
鉄扇の真上から、八戒が落下して来たのだ!
「男の強さ!良く見るらよ!」
すると八戒は気合いを高め一気に放ったのだ!
あの禁断の技を!?
豚が放ったのは・・・
巨大な・・・べっとりとしたウンチだった。
て、またかよぉー!!
つうか~汚ね~だろ!?
「うぎゃああ~!マジ、サイテー!」
流石の鉄扇も涙目で悲鳴をあげる。
まぁ、当然のリアクションだ・・・
鉄扇は鉄の扇を何度も振り払り、巻き起こる突風によって全てのウンチを飛ばし返したのだった。
「ぜぇぜぇぜぇ…!」
飛び散ったウンチが至るところにへばりつくと、鉄扇は顔を青くして涙を流す。
「いやぁああああ!私の城がウンチまみれぇええええ!」
無理もあるまい・・・
ほんの少し鉄扇に同情しちまった。
「どうらか?参ったらか?降参したら良いらよ?」
八戒の自信満々な台詞に対して、顔を上げた鉄扇は怒りの形相であった・・・
「こ…恐い」
八戒は顔を青ざめていた。
頬に冷たい汗が垂れる。
その後、怒り形相の鉄扇に追いかけ回されたのだ。
「死ね!死ね!死ね!このサイテー馬鹿豚!」
鉄扇は持っていた鉄の扇で八戒のケツを叩きまくった。
「うぎゃああ~!ごめんなさいら~!」
最後に八戒は大振りの鉄の扇で叩き飛ばされ、頭から壁に埋め込んだのである。
「でも…癖になりそ…」
「クソ死ねぇ!」
八戒・・・
お前の骨は拾ってやるからな・・・
八戒の奴は目を回して戦闘不能になった。
俺様は再び如意棒を構えなおす。
「くそ!」
「糞の話はもう止しなさいよ!」
「違うわ!」
ツッコミ入れる俺様!
てか、紛らわしい技を使った八戒のせいだな!
俺様も一発殴っておこうかな?
冗談はさておき、
俺様は指を幾度と交差させて呪文を唱える。
「毛根分身!」
※モウコンブンシン
俺様の毛が散らばり無数の分身した俺様が現れる。
が、それは一瞬にして飛んで来た無数の鉄板に押し潰されたのだ。
俺様本体を残して消えていく分身達!
わざと本体残して分身全てを消し去るなんてナメてるのか?
余裕ってやつか?
いつでも殺せるって事か?
胸糞わりぃ女だ!
「調子にのるんじゃねぇーー!!」
俺様は策もなく飛び出していた。
「もう飽きちゃたわ!そろそろ終わりにしよっか?」
鉄扇が妖しい笑みを浮かべると、手にした鉄の扇に妖気を流しこむ。
その妖気には何かが違う気を混ぜながら?
俺様は気付かずに鉄扇の正面にまで飛び出した瞬間、
鉄扇の振り払った扇から巻き起こった突風で動きを一瞬止められたのだ。
「こ…こなくそ!」
だが、顔を上げた俺様の眼前には・・・
鉄の扇を振り上げ、笑みを浮かべた鉄扇が間合いに入っていた。
何?いつの間に!?
「死になさい!必殺・抜傷扇!」
※バッショウセン
鉄扇が両手に持った二つの大扇をクロスさせた途端、それは真空の刃となって俺様の身体を斬り裂いたのだ!
「うぎゃあーー!」
俺様は咄嗟に傷口を塞ごうと再生力を強めた。
俺様達妖怪は傷口に妖気を集中する事で、再生力を早め治癒力を上げられるはずなのに?
なのだが、一向に塞がらねぇ??
傷口が塞がらないぞ?
傷口が深いだけじゃねぇ!
この鉄扇の技・・・
抜傷扇って技のせいかぁー!?
ヤバい…このままじゃ、傷が!!
ダメだ!
もう再生が間に合わない!
俺様の胸が斬り裂かれ、大量の血が噴き出したのだ。
「うぎゃあああああああああ!」
俺様は傷口を手で抑えつけ少しでも出血を止めようとする。
「ふふふ…致命傷よね?私の抜傷扇はね!神気と妖気を混ぜてるの!だから容易には再生出来ないのよ?」
「んだと?…神気?何だそりゃ!」
「まったく下等妖怪はこれだから~困っちゃう!説明も馬鹿馬鹿しいから、もう死んじゃってよ!」
鉄扇は俺様に向けて鉄の扇を下げると、
クッ!?
真上から鉄の板が急降下して来て、俺様の身体を潰したのだ!
「アガガガ…!!うぎゃあああああああああ!」
俺様は瓦礫の下敷きになってしまった。
しかも、ヤベェ…
右腕、両足が潰されちまった!
もう身動き出来ない?
「さぁ~どうする?手詰まりじゃない?そろそろ念仏唱えて覚悟しなさい!」
「ナメるなよ!俺様を誰だと思ってやがる?お前なんか…左手一本あれば…」
俺様の啖呵の途中、
あっ!?
「うぎゃああああ!」
更に真上から新たな鉄板が落下して来て、俺様の残された左腕をも潰したのだ。
「あらら?左手もオシャカなんて、お釈迦様もびっくり~!なんて…アハハ!やっぱし終わりみたいね?」
ふ…ふざけ…やがって…
「後は、その減らず口だけかな?もう一本いっちゃう?次で頭を潰すわよ?」
「やれるもんならやってみやがぁれ!首が撥ねられたら、そのまま貴様の首を噛みちぎってやるからなぁ!」
「本当に怖い怖い~!女の子に酷くない?あんた、モテないわよ?」
「ヘェン!お前みたいなブスにモテても嬉しくないわ!」
「誰がブスですって?」
激怒した鉄扇が右手を振り下ろすと、新たな鉄板が俺様目掛けて落下して来たのだ。
万事休すかぁ!?
俺様は一瞬覚悟した。
が、ああ…ん?
生きてるだと?
「何を諦めてるらか!」
そこには、俺様を庇う様に八戒が水の防御壁を作り守ってくれたのだ!
「お前?」
「大丈夫らか?じゃなさそうらな?ここは一度逃げて立て直すらよ!」
「バカやろう!逃げてたまるかぁ!」
「馬鹿はお前ら!そんな身体でどうするらよ!」
八戒の邪魔で俺様を仕留められなかった事に鉄扇も苛立つ。
「逃がさないわよ?まったく…男っていつも群れて…弱いから仕方ないけど、本当情けないわよね?目障りだから早々に二人まとめて死になさい!」
更に追い討ちをかけるかのように、真上から何枚も鉄の板が落下して来たのだ。
「うぐあああ!」
防御壁を作っていた八戒は俺様を庇いながら落下して来る鉄板を受け止めていた。
が、ついに力尽きて二人まとめて押し潰されてしまったのだ。
「クソォ…まだまだら!ん?」
八戒は潰されながらも、そこで落ちていた何かに気付き、腕を伸ばし拾う。
それは?
「沙悟浄の皿じゃないらか?何故こんな所に?ん?後ろに何か貼付けてあるら?これは!!」
そして俺様もまだ戦おうとしていた。
だが、力が全く入らない・・・
両腕、両足は潰され、胸から大量の出血が流れ、更に身体中の骨が何本かイカれちまったようだな。
自分の身体じゃないみたいだ・・・
くそぉ!
力が入らねぇ!
意識が薄らぐぜぇ
だが、三蔵…待ってろよ!
今…助けて…やる…
あれ?なんだ?
もう痛みも何も感じないぞ?
なんか・・・
急激に眠く…眠く…なってきやがった??
眠い…眠い…
その時、俺様の耳に声が聞こえて来たのである。
《この糞猿起きやがれ!》
俺様は反射的にビクッとした!
そして声の主に顔を向けたのである。
そこには、三蔵が立っていたのだ?
「あれ?三蔵?無事だったのか?アハハ…俺様やられちまったよ…格好悪いな?」
「ふん!猿!早く起きやがれ!貴様はまだ力を出し切ってないだろうが!」
「無茶言うなよ!そんな事言ったってよ!あの女妖怪めちゃくちゃ強いんだぜ?」
「そんな事はどうでも良い!俺は、まだやる気があるかないかを聞いてるんだ。負け惜しみや、言い訳など聞く耳持たん!」
「アハハ…相変わらず厳しいな…三蔵は…」
だが、マジにどうしようもない状況だってあるんだ・・・
しかし三蔵は容赦なく俺様を叱咤した。
「猿!いや…聖天大聖・孫悟空よ!やるかやらないか今すぐ決めろ!やらないなら早くくたばれ!」
「くそったれ…俺様を見くびるな!当然だろ?俺様はまだ…やるに決まってるだろうがぁー!例え這いつくばったって戦ってやらぁー!!」
「ふっ…」
三蔵は俺様に向けて笑みを見せると、
「ならば、お前に力を与えてやろう」
聞き慣れない真言が耳に入ってくる?
『ナウマク・サマンダ・ボダナン・バク…ナウマク・サマンダ・ボダナン・バク』
天井に吊された檻の中。
そこに三蔵は気を失って横たわっていた。
俺様の前に現れたのは幻覚だったのか?
だが、三蔵の唇は微かに動いていたのだ。
「ナウマク・サマンダ・ボダナン・バク…あまねく諸仏に帰命したてまつる」
俺様の心音が急激に速くなる?
同時に俺様の身体にも異変が起きていたのだ。
『転生変化…唯我独尊!』
次回予告
沙悟浄「あの・・・読者様?短い間でしたけど、本当にありがとうございました・・・私・・・私・・・」
孫悟空「そんな事より!次話は俺様が暴れるぜ!」
沙悟浄「そんな事よりって・・・」
八戒「そうらよ!酷いら!」
沙悟浄「はっ!八戒兄貴!兄貴は私の・・」
八戒「次話はオラも活躍するらよ!全く!」
沙悟浄「・・・・・・」




