表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
唯我蓮華~破壊神と呼ばれた少年~
306/424

遮那の守るもの!

遮那は命の大切さと己の罪を知った。


そして、遮那は捲簾に誓ったのだ。


捲簾との誓い…


遮那は命の尊さを学び自分が奪って来た命の重さを理解した。

そして、遮那は己の魂に誓ったのである。



『自分が奪った命以上の命を救うら!』



それからと言うもの、遮那は捲簾の慈善活動に対して懸命になって働くようになった。

だが、そんな遮那の姿を村人達は敵意や怒り、激しい恨みの目で見ていた。

遮那もその視線に気付きつつも、己への罰として耐え忍んでいたのだ。


そんな、ある日…


その日は捲簾が一人で出掛けていたので、遮那は留守番をしていた。


そこに…


「!!」


(血の臭いがするら!?)



遮那は直ぐに部屋から飛び出し、その臭いの先へと向かう。

そこには…以前立ち寄った村で、自分に石をぶつけた少年が血だらけになって倒れていたのだ。


「何があったら!?」



遮那は直ぐさま、少年に治癒の術を施す。正直、治癒術は得意とは言えないけれど、誰かを救うためには必要だと感じて捲簾に学んでいたのである。いや、あの花を咲かせるために行った気を送る行為が治癒術の基礎練習になっていたのだ。


まるで捲簾はそうなる事を既に見通していたかのように…



「思い出すら!花を労るように、優しく…少しずつ少しずつ…イメージするら!傷よ治るらぁ!」



遮那の掌から温かい気が少年を包み込み、少しずつ傷が塞がっていく。

そして、少年は命を取り留めたのだ。


目を覚ました少年は、


「捲簾様を…捲簾様を呼ばないと…」



だが、少年の前にいたのは遮那だと気付き…


「お前は!?」



少年は逃げるようにその場から動こうとしたが、まだそこまで回復してはいなかった。


「まだ動くな!オラの治癒術は未熟ら!死にたくなかったら、静かに寝てるらよ?」



だが、少年は無理に立ち上がろうとする。

その目からは必死さが伝わって来た。



「捲簾様にお願いするんだ!村を救って…救ってください…って…」


「!?」



すると遮那は少年を片腕で抱き抱えたのだ。



「捲簾は今いないら!何があったらか知らんらが、村はオラが守ってやるらよ!」


「なっ!?ふざけるな!お前なんかに誰が頼むかよ!お前も村を襲っている妖怪達と同じだ!」


「…………」


(つまり、村が妖怪に襲われていると言う事らか…)



天界の下層には人間界と同じく妖怪が跋扈していて、力のない天界の住民を襲っていた。

遮那も捲簾と共に生活をする間に、幾度と妖怪討伐に出向く事があったのだ。


すると遮那は…



「オラを嫌っていても良いらが、オラを村に連れて行くら!さもないとオメェの村がなくなっちまうらぞ?今はオラしかオメェの村を救えないのらからな!躊躇している暇はないらよ!」


「……!!」


「少なくともオラには力がある!お前も知っているらろ?オラの強さを?オラの力を?」



少年は渋々と頷くと、遮那は空から呼び寄せた空飛ぶ雲に少年を乗せ、一緒に飛び立ったのだ。



「悪いらが、オラは方向音痴ら!村まで連れて行って欲しいらよ…」


「あ…う…うん」




そして二人は村に向かって飛んで行く。

その途中、遮那は少年を雲に乗せて、村で起きた経緯を聞く。

少年の村には今、妖怪盗賊が占領しているのだと言うのだ。



「なら、オラがその妖怪盗賊をやっつけてやれば良いらな?」



だが、少年は遮那に返事をしない…

親の仇である遮那が自分の村を守ろうとしている事が複雑で仕方なかったのである。

遮那もまた、返事をしない少年の気持ちを汲んで、それ以上は何も聞かずに黙っていた。


(仕方ないら…オラは自分の出来る事をするらけら)




遮那は村の上空まで来ると村人達を縄で締め上げている妖怪盗賊達を確認した。

同時に、直ぐさま雲から飛び降り急降下した。


上空より盗賊妖怪達の集まる中央に降り立った遮那は、無言で視野に入る妖怪盗賊達を一人一人数えて確認する。


「十五人らな…」



一瞬にして一撃の下、薙ぎ倒していく。

余りの唐突な遮那の出現に、妖怪盗賊達は成す術なく倒されていった。

いや?出し抜いた事を差し引いても遮那の強さは桁違いだった。

それを見ていたサイ頭の妖怪盗賊のボスは、


「奴は何者だ!?」


「俺知ってますぜ!あの野郎は以前この辺りの村や界層を壊滅させ、天界の武神達をも手をやかせた魔神のガキですぜ!」


「あの噂のか?それが何故俺達の邪魔をする?」


「噂だと…捲簾大将に捕われて、飼い馴らされているとか…」


「はっ?何だそりゃ?なら奴は飼い犬に成り下がった訳か?だが…」


(あの力は惜しい…)



するとボスは遮那の前に現れる。


「おぃ?魔神族の小僧!お前の噂は聞いているぞ!どうだ?俺と組まないか?俺と一緒に来れば、この天界でも好き放題出来るぜ?」


その申し出に、


「お前?何を言ってるらか?オラはこの村を守るために、お前達をぶん殴りに来たのらよ?どうしてお前なんかと組まなきゃいけないらか?痛い目にあいたくないなら大人しくするらよ!」


「はぁ~?俺達をぶん殴る?大人しくしろだど?ふざけるなよ!お前、天界の奴達に唆されて良い子ちゃん気取りか?だがな?俺は知っているのだぞ!お前が俺達なんかよりも根っからの悪党だって事をな!」


「!!」


「どれだけ殺した?どれだけ滅ぼした?あ~?お前が周りから何と言われているか知らないのか?破壊神だぞ!破壊するしか出来ない忌まわしき存在なんだぞ!」



遮那はボスの言葉を黙って聞いていた。



「だから俺達と来い!悪いようにはしないぜ?俺達と好き勝手に自由に生きようぜ?なぁ、相棒!」


(好き勝手に自由らか…)



遮那はボスの誘いに対して、


「嫌らよ!」


迷いなく断った。


「はぁ???」


「オラはもう無駄な殺生はしないら!捲簾と約束したらよ!だからお前達も無駄な抵抗は止すら!さまなければ、オラはお前達を許さないらよ?」


「ふん!手なずけられた腑抜けの破壊神か?つまらない奴だ!」


「何とでも言うらよ!」



説得が無理だと感じたボスは、子分達に遮那の周りを囲むように指示をする。しかも、その子分達は村の者達を盾にしていたのだ。



「お前達!村の者達は放すら!」


「そいつ達を助けたいのだろ?だったら手を出すなよ!」


「汚い奴達ら!」




すると背後から現れた子分が、遮那の頭をこん棒で殴りつけたのだ。

頭から出血する遮那。続けて他の子分達が斬りかかる。


「うぎゃあああ!」


血が噴き出し膝をつく遮那を見て、


「馬鹿な奴だ!言う通りにしていれば良いものを!破壊神と言えど、無抵抗なら楽なもんだぜ!」


「ボス!あれを!」



そこで盗賊達はその目の前の出来事に目を奪われる。

なぜなら遮那の傷付いた身体が、見る見るうちに消えているからだ。


「何て馬鹿げた再生力だ!」


(これが破壊神と呼ばれる理由か?)



ボスは子分に無抵抗の遮那の身体を抑えつけるように命令すると、子分達は恐る恐る抑えつける。そしてボスは背中に背負った大型の大剣を手に取り、遮那に近付いて行く。



「どんなに化け物じみた再生力があろうと、その首を斬り落としてしまえば終わりだろうよ」


(くっ!どうするら?あんな奴達、オラが本気になれば簡単に倒せるというらに!しかしオラが暴れたら、村の奴達が…オラ、どうしたら良いら?・・・なぁ?捲簾…)



答えが出ない遮那の首筋に向けて、ボスが大剣を振り上げる。

そして首を落とすために狙いを込めて一気に振り下ろした、その時だった。



「うゎああああああ!」



空高くから突っ込んで来た何かが、ボスの大剣から遮那を抱えあげ救った。

しかし、それは勢いあまりそのまま地面に転げ落ちたのだ。


「お前は!」



それは雲に残して来ていた少年であった。


「お前どうしてオラを助けたら?」



少年は雲から飛び降りて遮那を救ったのだ。

すると少年は傷付きながら起き上がりつつ…



「見ちゃいられなかったからだ!お前は僕の父さんの仇だ!いつか僕がお前を殺してやるのだから、それまで死ぬな!」




遮那は呆気に取られながらも…


「そうらな…オラはお前の仇らったな…だから!」



遮那は立ち上がり少年の前に立ち上がる。



「らったら、いつかお前がオラを殺しに来るが良いら!そのためにお前は強くなるらよ?オラを殺すくらいにな!オラが殺したお前の父親の分まで強くなって、立派な武神になるら!それまでオラが…」



『この世界を守ってやるらから!』




そう言って少年を後にして、再び盗賊達に挑む。

少年は遮那の勇ましく立つ背中を見て、まるで自分の父親の背中と被って見えた。

背格好も見た目も違う遮那の何処が父親と被って見えたのか?


それは、何かを守ろうと覚悟した男の背中。


「さ~てと!」



だが、状況は何も変わらない…

子分達に捕われた村人、人質を盾にされていたら…



(考えろ!考えるら!どうするら?今までこんなに悩んだ事ないらよ。今まで自分のためらけに戦って来たら…力任せに戦っていたらけらからな。誰かを守って戦う事が、こんなに難しいらなんて…)



その時、遮那は捲簾の台詞を思い出す。



《力の使い方を知らないだけ…力の意味を…力の使い所を知らないだけですから…貴方はもっともっと強くなれるって意味ですよ!》



力の使い所?


力の意味?


力の使い方!



そうらか、解ったらよ!

すると何を思ったのか?遮那は地面に向けて拳を放っていた。

それは地割れの如く大地を揺らしたのだ。



「ナッ?何を!」


「ボス!あれを!」



突然の揺れに驚き、油断した子分達は気付いた。

今、掴まえていたはずの村人が消えた事に。

辺りを見回すと、遮那の後ろに村人達が移動していた。

遮那は地面が揺れて油断した盗賊達が気付かぬ程のスピードで、村人達を救い出したのだ。



「これで人質はいないらよ?」


(考えた結果、力任せになったらが…これは格下だから出来たのらな?ただ、無謀に戦うだけじゃダメなんら…時には考え、守る者のために死力を尽くし最善策を導き出す事…それが大事なんらな?)



遮那は深呼吸をした後、



「お前ら?お仕置きの時間らぁ!」


次回予告


盗賊達から村を守る遮那!


遮那にとってはたやすい事・・・


かに思われたが??

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ