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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
唯我蓮華~破壊神と呼ばれた少年~
305/424

唯我蓮華!遮那の花?

捲簾の客神であった二郎神君と楊善。


三神は謎めいた会話から何かを調べているようだった。


そして物語は再び捲簾と遮那の物語へ


前書き編集



遮那は今、捲簾に連れられて神界の最下層の民が住む村に来ていた。


この天界には幾つかの層に分かれていて、最高神[天]が住む最上界と下の層につれて下級の神や仙人・平民が住んでいるのだ。



「遮那?ちゃんと仕事しなさい!」



捲簾は天災で崩壊した村を回りつつ、その修繕の手伝いをしていたのだ。


と言っても、この村を崩壊させたのは遮那本人なのだが…


「面倒臭いらよ?早く帰って飯を食うらよ?」



働きもしないで木の傍で座り込む遮那に捲簾は溜息をついた後、遮那を放って一人で怪我をした者達の治癒へと向かう。


捲簾は村の治癒術を行える者達と一緒に、怪我をして動けずに寝かされている民の前にしゃがみ込むと己の掌に力が集めていく。


それは暖かく優しい治癒の光となって怪我人達を癒していった。



「あれは治癒の術らか?オラには不必要な力らな…」



遮那には生れつきの得意体質らしく怪我が瞬時に治る強力な再生力を持っていたのだ。

だから治癒の術とは無縁だったのである。

遮那は仕方なく捲簾の治療が終わるのを離れた場所から眺める事にした。


その時!


《コン!》


突然遮那に向かって石が投げられ頭に当たったのだ。


「イタァ!なんら??」



石の飛んできた先には、遮那よりも幼い村の少年が睨んでいた。


「あのガキが犯人らか?」



遮那は少年の近くまで向かって行くと、その胸倉を掴み上げる。


「何をするらぁ!痛かったらよ!」



そう言って殴りつけようとするが、遮那の振り上げた拳は、いつの間にか背後に現れた捲簾によって掴まれ止められた。


「捲簾?」


「行きなさい!」


捲簾に言われて逃げる子供を見送った後、捲簾は遮那に言った。



「貴方はさっきの少年をどうするつもりだったのですか?」



その目は厳しく、遮那を責めていた。


「さっきのガキが突然オラに石を投げたら!だから仕返しするのが悪いらか?」


「遮那!貴方のその拳で殴ったら、さっきの少年は間違いなく死んでしまいますよ?」


「そんなの当たり前じゃないらか?何か変らか?オラに石を投げつけたガキが悪いらよ?殺すつもりらったらよ」



すると、捲簾は遮那の頬を強く叩いた音が響いた。


(えっ?)



「オラは仕返しをしようとしたらけ…ら?何故?オラが叩かれなきゃいけないら…か?」



遮那は理解出来ない捲簾のピンタに涙目になりながら捲簾を睨みつける。

すると逃げた少年は離れた場所から叫んだのだ。



『父さんの仇だぁ!お前なんか村に来るな!消えていなくなれぇーー!死んじまえぇーーー!!』



そう言って走り去る。


「ナヌ?オラが仇らと?」


すると捲簾は遮那に告げた。


「あの少年は、貴方が殺してしまった武神の子供なのですよ?」


「だから何ら?あのガキがオラが殺した武神の息子だから何らと言うのら?それで何故オラが石を投げつけられなきゃいけないらか?オラはやられたからやり返すらけらよ?それに村の連中も、オラを見ると敵意剥き出しの目じゃないらか?せっかく手伝いに来てやってるらにムカつく話らよ!」


「遮那…本当に解らないのですか?」


「解らないらよ!解らないら!捲簾が何を言ってるらか解らないらよ!」




すると遮那は捲簾に逆に説明したのだ。



「教えてやるら!この世界の神や人間は例え死んでも、直ぐに生き返るのら!えっとらな!オラ達には魂ってのがあって、一度死んでも転生とか言うので、また生き返るのら!オラは博識なのら!」


「遮那…」



転生とは死後に別の存在として生まれ変わる事…


しかし、その転生とは復活ではないのである。


転生には肉体・記憶・人格の同一性が保たれないのだから…


捲簾がどれだけ説明しようと、遮那は…



「姿形が変わっても、また生まれ変わるのだから良いじゃないらか?また、一から始めれば良いらよ!」



と、言い放ったのだ。

捲簾はそれ以上何も言わずに、その日は終えたのだった。


次の日…


遮那は目覚めると同時にテーブルに付き、捲簾の用意する朝ごはんを待っていた。



「捲簾~飯ら!飯はまだらか?飯・飯・飯!」



皿を叩き鳴らしながらウキウキとニヤケル遮那は、本当に純粋無垢な少年のようであった。


命に対しての価値観さえ除けば…


すると捲簾が現れて、遮那の前に何かを置く。


「何ら?こりゃ?」



そこに置かれたのは、土の入った鉢植えであった。



「遮那?貴方は今日から日課として、その鉢植えの中の花を育ててください」


「ハッ?何を意味解らない事を言ってるら?そんなのどうでも良いから飯を出すらよ!面倒臭いら!」



そう言って鉢植えを放り投げようとした時…



「その日課を放棄した日は、食事抜きに致しますね?」


「ナヌ~~?お前は鬼か!悪魔か!外道か!?」


「い~え?私は神様です!エヘン」


「あ、そっかぁ…じゃないらよ!どういう意味らよ?どうしてオラが花なんかを咲かせなきゃいけないらよ?」



抗議する遮那を無視して、捲簾は一人食事を始めた。


「オラにもよこすらぁ~!」




飛び掛かる遮那を足蹴りし、鉢植えを指差す捲簾。


「早くしないと食事が冷めてしまいますよ?」


「うらぁ~!!め~し~!!」



仕方なく遮那は鉢植えに向けて、『気』を送った。

人間界の植物と違い天界の花は水や肥料をやったりするのではなく『気』を送るのだ。


「うらぁーー!」



遮那の掌から放たれた気は、一瞬にして鉢植えを消滅させ…たった。


「……………」


「……………」



「終わったらよ!どうしようもないくらい完全に終わったから、飯にするらよ?」


「はい!ご心配なく?鉢植えならまだまだ沢山ありますからね?」




捲簾は隣の部屋に幾つもの鉢植えを用意していた。


「ノォーーー!」



この日から、遮那の鉢植え日記が始まる。



一日目…割れた


二日目…割れた


三日目…消えた


四日目…粉砕


五日目…見事に粉砕


六日目…紛れもなく粉砕


七日目…オラはダメな子ら…




「うぎゃりゃあ~!」



ストレスと苛立ちで鉢植えを持ち上げ、割ろうとする遮那に…



「コラコラ!貴方まで壊れてどうするのですか?」


「らって!らって!鉢植えが!鉢植えが!」



遮那は涙目になって捲簾の胸倉を掴み、すがる。



「あら?可愛い…」


「ウルウル…」


「仕方ないですね?では、私が少し指導して差し上げますね?」



捲簾は背後から遮那の両手を支えつつ、鉢植えに向かって二人で一緒に『気』を送る。

すると鉢植えの土が少し盛り上がる。


「あ、咲くら!」


「いけません!集中してください」


「うら!」



遮那は捲簾の指示するように、気を送り続ける。



「もう少し優しく…力が強すぎです!そうそう…慌てないで?

まだ強いかも…イメージしてください?土から芽が出る姿を…

芽が成長する姿を…その成長を導くように、気を送り続けるのです…」




遮那は言われるがまま一生懸命気を送り続ける。

それは力任せに気を解放するよりも、何十倍も難しく洗練な技術が必要だった。


「あっ!捲簾!」


すると鉢植えの土の中から、芽が出て来たのだ?

そして、見る見る育ち、美しい朱色の花を咲かせた。


「す…凄いら…」



遮那は今まで感じた事のないような胸躍る感動を味わった。


そして…


今度は一人でやって見せると捲簾に宣言し、再び毎日のように励み始めた。


それからと言うもの遮那は毎日、毎日…それは熱心に努めた。


そして一週間した後、ついに遮那は自力で鉢植えから美しい花を咲かせられるようになった。


目を輝かせながら、遮那は思った。


(捲簾に見せてやろう!)




遮那は鉢植えを抱えて捲簾に見せるために走って行く。



「捲簾見るら!花が咲いたらよ?オラの花ら!」




捲簾は鉢植えの中の花を見てニコリと微笑むと、それに釣られて遮那も微笑んだその時、捲簾はその鉢植えの花に炎の気を集め、一瞬にして燃やし消し去った。


「………え?」



一瞬、放心状態になって状況が理解出来なかった遮那が、目の前の現実に気付いた時、怒りに任せて捲簾に飛び掛かったのだ。



「何をするらぁー!」



が、捲簾は平然と言ったのだ。



「また、やり直せば良いじゃないですか?まだ鉢植えは沢山ありますよ?」


「今のは特別なんら!同じのはないんら!」


「姿形が変わっても同じですよ?」


「なぁ?何を言ってるらか?ふざけるな!今の花は!今の花はオラが初めて一人で咲かせた花なんら!育てた花なんら!特別な花なんらよ!代わりなんてないらよ!」


「花なんて皆、同じでしょ?」


「何て酷い事を言うらよ!オラはあの花をいっぱいいっぱい頑張って、いっぱいいっぱい愛情持って育てたらよ!やり直しなんか出来ないら!代わりなんてないらよ!あの花はオラにとって……一つ…」




(…え?こんな会話…以前にも?)




その時、遮那は気付いた。

そして力なく落胆し棒立ちになった。



「気付いてくれましたか?」


「オラ…」


「今、どんな気持ちですか?どんな気分ですか?」



遮那は止まらない涙を流しながら答えた。



「オラ…花が燃えて…消えて…胸が締め付けられるように…苦しくて、涙が止まらなくて…何かがオラの胸の辺りから消えていくようで…寂しくて、悲しくて、悔しくて…」




遮那の育てた花が燃えて消えていく姿が、次第に自分が今まで殺した者達の姿と被っていく。

そして自分の今感じてる感情が、村の者達や、石をぶつけた少年が抱くものと同じなのだと…

いや、もっと悔しくて、激しい悲しみを自分が与えていたのだと気付いたのだ。


「うあああああ!」



遮那は叫びだし溢れんばかりの涙が流れていた。



「遮那…貴方はとても純粋なのです。純粋がゆえに気付かなかった事…それは知らず知らずに大きな罪を背負っていたのです…」



遮那は捲簾の言葉を泣きながら聞いていた。



「先ずは、その罪を理解する事。罪の痛みを知り、その重さを感じる事。その罪を忘れずに逃げずに背負い続け、貴方にしか出来ない償いの道を探すのです…」


「…オラに…オラに出来るらか?その償いって奴を?」



すると捲簾は遮那の頭を撫でながら言った。



「貴方に償いの気持ちがあるのなら、きっと出来ますよ?しかし、一度その道を歩んだのなら、決してその道から反れてはいけない…きっと辛く険しい道だとしても後悔はしてはいけない茨の道!」


「………」



「出来ますか?遮那?」



遮那は泣きながら頷き、



「オラは…この胸の痛みにかけて誓うら…オラは…オラは…例え償え切れるなんて思えない大罪らろうと、この命尽きるまで!オラはその道を歩んで行くらよ!」



その瞳は決意を持っていた。


後悔…からの決意!


そして魂への誓いを胸に刻んだ。


捲簾は優しく微笑み、涙する遮那の頭を撫で続けたのだった。



捲簾の池の回りには今、美しい蓮の華が開いていた。




唯我蓮華…


たとえ、その身が穢れ忌み嫌われようとも


その心だけは、


光絶やす事なく生きよう。


たとえ、誰にも信じられず、忌み嫌われようとも


自分の信じる心を信じて・・・


泥の中に根を張りながら、泥にまみれることなく美しい花を咲かせる蓮華の如く!



次回予告


遮那は変わった。


遮那は誓いを胸に、新たな生き方を始めた。


例え、それが茨の道であろうとも・・・

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