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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
転生記~始まりの伝説編~
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私が河童執事です!

女拉蜘蛛の妖怪である女福を倒し、娘達を救った三蔵一行

これにて一件落着かと思いきや、まさか三蔵が何者かに捕らわれたのだ。

その相手は助けたはずの四鈴だった。

いや?その正体は女拉蜘蛛などよりとんでもない化け物だった。


その妖怪は女妖怪のボス・鉄扇と名乗った。



そこは天空に浮かぶ妖怪城。

深紅に染まりし美しき外壁に守られたその城は、雷雲に覆い隠されるかのように囲まれ、外敵からの侵入から守られているのです。

一度でも踏み込む者あれば、乱気流に妨害され雷で身を焦がされるのです。

そもそも天空の城なんて並大抵の妖怪が所有出来る物じゃない。

それだけ難攻不落の要塞とも言えた。


この城の主が『鉄扇』と呼ばれる女妖怪なのですが、

鉄扇は様々な女妖怪達のボスとして君臨しているのでした。


さて鉄扇の城内ですが、それはそれは豪華絢爛な外装で、人間達から奪い取った金銀財宝が至る場所に置かれているのでした。


今、その城の中では、


「ほら!ぐずぐずしないで働く働く!ほら河童ちゃん!だらし無いわよ!」


少女の声と、廊下を雑巾で拭き掃除している私がいたのでした。


「はっはいはい!」


私は一通り床を拭き終わると一息つく。


「ふぅ~綺麗になったなぁ~!やっぱり、綺麗になると気持ちも良いものですね~!」


労働の汗を拭いながら満足感に浸る私・・・


あっ?

皆さんお久しぶりです!

私、沙悟浄です!


えっ?

私が何をしているかですか?

見れば解る通り掃除ですよ?


えっ?何故掃除なんかしているかですか?


実は・・・



三蔵様が鉄扇様に連れ去られた時に、私は飛び去る扇の端にちゃっかりと、しがみついたのでした。


その後、鉄扇様の城に着いてからは、私はその城の散らかり様に我慢出来ずに・・・

つい自ら掃除を始めてしまったのでした。

そこを鉄扇様に見付かり、当然の如く捕われたのです。

が、私の見事な掃除の腕を見込まれて、雑用係として働かせて貰っているのでした。


今は忠実なふりはしていますが、本心は三蔵様を救出するための作戦ですからね?


「本当~!河童ちゃんが来てくれて嬉しいわ!だって、私一人じゃ直ぐに散らかって大変だったのよ~」


「喜んで戴き光栄でございます。私、沙悟浄!誠心誠意頑張らせていただきます!」



ふふふ…今に見てろよ!

油断した時に三蔵様を助け出して、ここから逃げ出してやるからな!



「あっ!河童ちゃん~そういえば、捕まえてある坊主をむやみやたらに動かしちゃダメよ?だって、下手に動かしたら坊主に貼付けた妖気札が爆発するようになってるからね?」



えっ?

瞬間私の喉元に、鉄扇様が鉄の扇の端を押し突き付けたのです。


生唾を飲み込むも、身動き出来ない私に・・・


「だ・か・ら?オイタしたらダメだからね?」


「えっ?あ…はい!当たり前じゃないですか!私は鉄扇様の忠実な下僕ですから!」


私は天井を見上げる。

その天井に吊された鳥かごの様な檻の中に、三蔵様は囚われているのです。



孫悟空兄貴・・・


八戒兄貴・・・


早く助けに来てくださ~い!




「そうだ!河童ちゃんお風呂の支度してちょうだいよ?あんまり下界で遊んでいたから気持ち悪いのよ~!目茶苦茶!分かった?」


「あっ、はい!今直ぐに用意致します!」



私は鉄扇様が風呂に入ったのを確かめた後、天井に吊されている三蔵様の檻に飛び乗ったのです。



「三蔵様!ご無事ですか?」

「お…お前か?」


私は鍵を開けようと試みたが頑丈で無理でした。


「クッ!やっぱし開かないです!」


「檻に封印が施されているのだろう?俺の身体にも力を封じる札が貼り付けられているみたいだ。まったく力が入らん…ふざけた小娘の癖に、何処までも用意周到な妖怪だ」


確かに三蔵様の身体は両手両足を拘束されて身動き取れない上に、霊力を抑える札が何枚も貼り付けられていたのです。


「私、どうしたら?」


「この檻を開くための『開封』の札を探すか、お前が作れ!」


「えっ?私がですか?」


「任せたぞ…」



その時、鉄扇様の呼ぶ声が風呂場から聞こえて来たのです。



「河童ちゃーん!何処?何処行ったのよー?」


「あっ!三蔵様!私行きますねぇ!また何かありましたら来ますから!待っていてくださいねぇ!」



私は急いで鉄扇様の所に向かったのです。


ご主人様を待たせるのは執事として失格!

私のプライドが許さなかったのです!


「河童ちゃん!」


「遅れてすみません!いかがなさいましたでしょうか?」


鉄扇様はバスタオル一枚で私が来るのを待っていたのです。

まさか三蔵様と連絡しあっているのがバレたのでしょうか?


「お風呂良い気持ちだったわよ~!ナイスな温度具合だったわ!」


「ズコッ!あはは…そうですか?それは良かったでございます!」


えっ?それだけ?

もう、いやん!


「河童ちゃん?」


「えっ?あっ!何でしょうか?」


「エッチ」


「きゃああ~」


私は直ぐ様両手を顔で隠して土下座をしたのでした。

そんなこんなで、私の執事生活が幕を開けたのでした。

料理の仕度から後片付け、洗濯、部屋の掃除、些細な事から、ありとあらゆる完璧な執事仕事をこなす私。誰が見てもケチがつけられない仕事ぶり。

当然です!

何故なら私は河童執事ですから!



「河童ちゃんお腹すいたぁ!お腹すいたぁ!」


「お待たせ致しました鉄扇様!今ご用意致します!」


直ぐさま料理を並べ、鉄扇様にお手拭きをお渡しする・・・。


「ありがとう!河童ちゃん!あら?これ美味しいわ?何かしら?」


「ハイ、私の故郷の珍味…しば漬けでございます!」


「本当、沙悟浄ちゃんは珍しい料理をいっぱい知っているわね?」



「喜んで戴き幸せでございます!ちなみに今日のメインディッシュは美味しいデザートで閉めさせて戴きます」



軽くお辞儀をする私。

あぁ…完璧!

完璧過ぎる!!


ご主人様の喜ぶお顔

それが執事にとって最高の見返りなのですから!


ですから・・・ですから?


あれ?


大切な事忘れてないかい?


私は・・・?


しまったぁー!


三蔵様に頼まれていた札を作らないと~!


私は夜中になって鉄扇様が寝付いたのを確かめた後、屋敷の蔵に忍び込み、術札の道具を揃えたのです。

でも、術札なんかどうやって作るのでしょう?

私は夜な夜な三蔵様の檻に忍び込み、食べ物を運びながら術札の作り方を教わったのでした。


そこで驚く事があったのです。

術札作り?これって私向きかも!

術札の種類にはいろいろあるみたいなのです。

決められた法式に従い念をこめた気で文字を印していく・・・


札の種類には『爆札』から『炎札』『水札』『風札』『土札』『雷札』『氷札』『光札』『闇札』

これは使い方次第で防御にも使えます。


その他に特殊な札として、身体の自由を縛る『拘束札』『封印札』『結解札』

他にもイロイロあるみたいですが、今必要なのは『解除札』

私は札に念をこめていく。



はぁ…はぁ…

思ったより難しい~

頭では理解出来てるのに、念気が札に定着しない?

妖気が強すぎる?

足りない?

物凄い繊細な作業です。


旅の途中、よく三蔵様が簡単に作っているのを見ていましたが、実際自分で作るとなると、こんなに難しかったなんて。今更ながら三蔵様を尊敬したのでした。



「慌てないで良い…俺は大丈夫だ…だから、お前は術札作りに集中するのだ…」


「は…はい!」


この日は残念ながら術札は作れませんでした。


そんなかんなで三日目のある日、

私は朝食を作りながら、鉄扇様の起きるのを待っていたのです。


無理に起こすと機嫌が悪くなるので、いつも自分から起きて来るまで待っているのですが、

しかし、今日は遅いですね?


私は仕方なく鉄扇様の部屋にまで行く事にしたのです。


音を立てずにゆっくりと部屋の扉を開けて、中を除き混む私。

そこで私が見たのは!


「てっ…鉄扇様!?」


鉄扇様はベッドから落ちた状態で、胸を抑えながら苦しんでいたのでした。


「あ…河童ちゃん?ハァ…ハァ…」


「いかがなさいましたか!?鉄扇様!」



こ、これは?一体全体??


私は倒れている鉄扇様を抱き起こすと、鉄扇様の身体が物凄い高熱を発していたのです。


これって、まさか!?


『妖怪万死風邪?』


妖怪に病気なんてない?

なんて事はない!

人間と同じく病にかかる事もあるのです。

しかも、放っておくと死に至る病!


それが何故?


「ふっ…ばれてしまったようね…もう…隠していたのになぁ~」


話はこうです。


鉄扇様は妖怪風邪にかかり、体力を戻すために三蔵様を食べて回復しようと考えたのです。だけど、あまりにも三蔵様の力が強いがために、三蔵様の体力を弱らせてから食べる必要があったのです。



「ど…どうしよう!どうしよう~!」



アタフタアタフタ!

このままでは鉄扇様が死んでしまう!

だからと言って、三蔵様を食べさせる訳にはいかないですし~

ご主人さぁ~まぁ~!


ご主人様?

あれ?

そうだ・・・


私は!!

私と鉄扇様は敵同士だったんだぁ~!!

すっかり忘れていましたぁ~


その時、弱り切った鉄扇様が私に言ったのです。


「今なら殺せるわよ?」


えっ?

私が振り向くと、鉄扇様が苦しみながら私を妖しい目で見ていたのです。



「解っていたわ…あんたが、あの坊主を助けるためにここにいる事は…夜な夜な…何かをやっているのも知っているわ…」


て…鉄扇様?


「でも、あんたみたいな…弱小妖怪が…私相手に何が出来るかって、面白そうだったから…放置していたけど…今が…ビッグチャンスみたいね?良いわよ?…殺せるもんならやってみなさい!」



鉄扇様はフラフラしながら起き上がろうとする。


確かに・・・


今の彼女なら!

私でも倒せるかも?


・・・かも?


こんな大妖怪を私一人で倒したと知ったら、三蔵様や孫悟空兄貴、八戒兄貴が驚くだろうなぁ~


出来る河童扱い間違いない!


今しかない!


「ふっ…どうやらやる気になった…ようね!」



鉄扇様・・・

いや、鉄扇が私に向かって!


「ぅわ!まだ、心の準備が!」


倒れて来たぁー!?



もう限界なのか?

よっしゃあ~!大チャンス!!


「あんた…何をしているの?」


えっ?


私は・・・


いえ、私には・・・


無理ですよ。


だって、


私は倒れる鉄扇様を抱き抱えたのでした。


私に出来る事?


私に出来る事なんて、こんな事しか!



「あの~良かったら…私を食べてください?」


「ハッ?何を言ってるの?って、あんた…その姿!?」



私の姿は人間の姿へと変わっていたのです。

そう。私は半分人間の、半人半妖・・・


「私の身体は半分人間ですから…少しくらいなら鉄扇様の身体を治すくらいのお役に立てると思います…」


私は鉄扇様に向かって微笑んだのです。



「だ~か~ら!あんた何を馬鹿な事言ってるか分かってる訳?」


「だって…私…執事ですから…ご主人様のお役に立てれば幸せです。でも、そのかわり三蔵様だけは助けてあげてくださいね?」



私は目を綴じたのでした。


「あ…あんた…馬鹿なの?本当の本当に…馬鹿なの?良いわ!そんなに死にたいなら…」



鉄扇様は牙を向き、私の喉元に向かって来たのでした!



鈍い音がした。


消えゆく私の意識の中で、

物心付くか付かないかの私に、母様が言った言葉が脳裏をかすめたのでした。



『優しい子になって…』



多分…これが母様の最後の言葉だったんじゃないかと思う。


そして、これが私の・・・


最期



な…んで…すね……


次回予告


孫悟空「どう言う事だよ?三蔵捕らわれるし、異常に強い変な妖怪現れるし!今話出番が全くないし!踏んだり蹴ったりだぜ!」


八戒「まさか沙悟浄の奴が先にいるなんて、思ってもいなかったらよ!」


孫悟空「しかも・・・出番総取りだろ?次話で会ったら一発ぶん殴る!」



鉄扇の妖怪城


「へっくしょん!」



沙悟浄「あれ?まさか私も風邪ですか?薬飲まないと!」

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