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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
神を導きし救世主!
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勇気を振り絞れ蛇塚の覚悟!?甦れ蛇神の血よ!

総本山を襲ったのは蚩尤率いるカミシニの力を持った妖怪の大群だった。


駆け付けた三蔵の前には、傷付き、倒れる蛇塚の姿だった。



俺は蛇塚軍斗…


こんなに怒りが込み上げた事は産まれて初めてだ…


空海師匠…


詩織…


仇は必ず取ってやるからなぁ!


俺の姿が軍荼利明王の姿へと変わっていく。



「殺してやる!」



俺は疾風の如き動きで空海さんと詩織を手にかけた魔物共を八つ裂きにした。

そんな俺の前には蚩尤の右腕と名乗る魔物・風伯が立っていた。

風伯は名前からして、恐らくは風を操る魔物だろう…

蚩尤のような白い身体に、中国の古い衣を纏った鬼の姿であった。



「凄まじい神力を感じますよ?しかし、我輩には無力!何故なら神の力が通用しないのだから!」


(それはどうかな…)


俺は己の明王の力を額に籠めると、その額が光り輝く。


『明王天地眼!』


俺は拳に力を集中させると、風伯に向かって突進した。


「やれやれ~」



油断していた風伯は次の瞬間、後悔する事になる。

俺の放った渾身の一撃が風伯のどてっ腹に風穴を空けたのだから。


「うっ…嘘?」



驚いた矢先に、風伯は悲鳴をあげた。


『ふぃぎゃああああ!』



俺はトドメを刺すために飛び上がり、風伯にもう一撃を放とうとした瞬間だった。


「ナンテネ!」


…エッ?


風伯から凄まじいカマイタチが吹き起こり、俺は逆に弾き飛ばされてしまったのだ。

俺は壁に衝突して倒れこそしたが、直ぐに頭を振り立ち上がる。


「ナッ?」


目の前には、風伯が新たに呼び寄せた白い魔物が二体いた。

が、本当に驚いた事は風伯の奴は仲間の魔物の頭を掴み上げると、そのまま丸飲みして喰らいやがったのだ。すると俺が最初に与えた風穴が閉じ始めていく。

更に妖気が異常に高まっているではないか?



「魔物を喰らって再生しやがったのか?この化け物め!」


風伯はニヤニヤしながら言った。


「便利でしょ?使い捨ての部下がいれば私は再生出来るのですから!それに比べ、貴方はどうですかな?」



えっ?

その時、俺は気付いたのだ。

振り上げようとした腕の肘から先が先程の奴の放ったカマイタチで切断され、失っている事に……それを認識した途端、激痛が走った。


『うがああああああ!』



「う~ん!心地好い響きですね~!どうですかな?カミシニと呼ばれる不思議な血を混ぜた我輩のカマイタチの切れ味は?」



神を殺すカミシニの血を混ぜた奴の風は、明王である俺の腕をもたやすく切断したのだ。


くっ…くそぉ…


俺は体勢を整えるために蹴り足で床を崩し、その場から逃れる。


ハァ…ハァ…


俺はその後、やみくもに迷宮のような本殿の中を走り回っていた。


いつもいる本殿の中だってのに、右も左も解らねぇ…


後ろから風伯が追って来ているのが解る。


くそぉ…


仇を取るとか抜かしておいて、逃げる事しか出来ないのかよ!


だが、今の俺には抗う手段がなかった。

何故なら、カミシニの能力を持つ奴達を倒すためには『天地眼』の力が必要不可欠なのだが、そのためにはとてつもない集中力が必要なのだ。が、今の俺は痛みでその集中力が足りずに『天地眼』が発動出来ないでいたから。


そもそも俺はまだ修行不足で天地眼を長時間発動の維持が出来ない・・・


くそぉ!くそぉ!


俺は逃げながら、その足が震えている事に気付いた。


恐怖?死への恐怖なのか?


俺はまた逃げる事しか出来ないのかよ…


蛇神島から逃げ出した時と同じじゃないか!

何も出来ない無力な俺と…

しかも、今度は詩織を失い、師である空海さんをも失った。





その時、俺の脳裏に浮かんだのは詩織の出産の日の事だった。

あの日、空海師匠と俺は詩織の出産に立ち合っていた。


オタオタする空海師匠を横目に、俺はまだ複雑な心境だった…


まさか空海師匠と詩織がくっつくなんて…

未だに信じられねぇよ!


その直ぐ後、赤子の泣き声が聞こえたかと思うと、俺と空海師匠は顔を見合わせ詩織のいる病室に駆け寄ったのだ。


そこには詩織に抱かれた赤子が?


「しぉ!しぉ!詩織君!男の子か?女の子か?」


「ふふ…男の子ですよ!空海さん」



俺も感激しながら詩織に問う。


「男の子か!名前はもう決めたのか?なぁ?詩織?」



オロオロしながら喜ぶ空海師匠と俺に、詩織は笑いながら言った。



「名前はもう決めてます。この子の名前は『勇斗』お兄ちゃんみたいに勇気ある男の子に育って欲しい!そして、お兄ちゃんの名前から一文字戴いのよ?」


「俺から?」


空海師匠も頷きながら、喜んでくれていた。


俺のように勇気のある男の子に育って欲しいか…


(俺のように…)


俺は残った拳を握ると呼吸を整える。


考えろ!考えろ!


俺は目を見開くと明王変化を解いていた。


それと同時に風伯の奴は現れた。



「あれ?そんな所にいたのですか?しかも、また人間の姿になってしまったのですか?」



風伯は俺に近付いて来た。

既に戦意喪失だと思っているのだろう…

確かに右腕を失い、出血多量の他、明王変化まで解いた俺に出来る事なんて…


「では、我輩が貴方を美味しく喰らって差し上げましょうかぁ」



口を広げ迫る風伯に俺はゆっくりと左手を差し出し、奴の鼻を掴む…


「へっ?」


風伯は自分自身に何が起きたか解らなかったであろう。

突如、視界が回ったかと思うと、床に叩き付けられたのだから。


『合気!』



立ち上がろうとする風伯に俺は再び投げ付ける。

何度も!何度も!


「ふぅぎゃまぁ!(キサマ!)」



何度も頭部から叩き付けられた風伯は、脳みそを揺らされて目を回していた。


「思った通りだ!化け物であろうと、カミシニであろうと、直接頭部に攻撃を与えれば脳が揺さぶられるだろうよ!」


「ナメくさらないでくださいよ~!人間がぁ!」


『風波動!』



風伯の口から気流弾が幾つも放たれるが、目を回しているため俺には当たらなかった。

それでも一発でも当たれば俺も一たまりもあるまい…


俺は更に考える。


もう一つの秘策を…


カミシニに通用する俺だけの秘策がある。

俺の中にある忌まわしき蛇神の血を呼び起こし、この野郎に打ち噛ます!



中国遺跡にて、クローリーに奪われた蛇神の力よ!


もし、ほんの僅かでも残っているなら…


今一度、現れてくれ!


この一撃に力を…


見返りは俺の血肉、いや…


魂を捧げてやる!!



そんな中、風伯はやみくもに気流弾を放っていた。

その攻撃は次第に俺に照準が定まっていき、次第に俺の身体を霞めていく。


(一撃を俺に…)



俺は奴の攻撃を躱さずに、ただ集中していた。



「俺の中の蛇神よ!目覚めろぉー!うおおおおお!」



ドクン


その時、俺の心臓が突如速まり血流に異変が起きる。

失った右腕から大量の血が噴き出し、その血が蛇の姿へと変わっていったのだ。



「なぁ?何なんだ!その力は??何らかの神の力か?しかし、神の力は我輩には通用しな………」



が、俺の右腕から現れた血の蛇が、風伯に向かって行くと風伯の左腕を消し去ったのだ。


「ふぎゃああああ!」


風伯は再び失った左腕を補うために、他の魔物を摂取しようとしたが…


「ハッ?いない?」



それもそのはず、風伯が放った気流弾が仲間の魔物達をも消し去っていたのだから。


「観念しやがれ!お前はもう終わりだぁーー!」


「人間風情が蚩尤様より力を戴いた我輩に勝てると思うなぁーー!!」




風伯のカマイタチが再び俺に向けて放たれた…が、その真空の刃は俺の身体より現れたオーラにより打ち消される。


「!!」


俺の身体を覆う蛇神のオーラが、風伯の身動きを止め、その時…


「まさか…その力は??あの忌まわしき…」



だが、風伯が言い終える前に、



『ヘビメタルインパクト!』



凄まじい衝撃とともに…俺の放った蛇神の力が風伯を飲み込んだのだ。

俺もまた、その衝撃によって本殿の外にまで飛ばされた。


そして俺が目覚めた時、俺は腕だけでなく、着地の際に潰れ、左足すら失っていた。


「うがあぁあああ!」



激痛が走り、俺は立つ事も出来ないまま、再び本殿へと向かう。


詩織…空海師匠…


仇は取ったぜぇ…


そして、卑弥呼様…


今、向かいます…


向かい…ま…す…


力尽き、倒れた俺を支えたのは、三蔵だった。



「蛇塚!もう良い!今、安全な場所に連れて行くからな!」


(何を言っているんだよ?)


俺は首を振り、力の入らない指を本殿に向けた。



「い…行ってくれ…俺の代わりに…卑弥呼様を…法子様を…守ってくれ…」


「蛇塚!お前!」



三蔵は俺を大木に寄り掛からせた後、


「必ず迎えに来るからな?だから死ぬんじゃねぇぞ!」


「あぁ…たりめぇよ…」


走り行く三蔵の背中を見ながら、俺は涙を流し笑みを見せて呟いた。



「やはり卑弥呼様を守れるのは、お前だよ・・・


後は頼むぜ…救世主、三蔵・・・」



俺の瞼はゆっくりと綴じていった。


次回予告


三蔵「蛇塚が戦っていたその時、アータルもまた一人戦っていた。


相手はカミシニの力を持っているだけでなく、炎の神であるアータルには天敵の妖怪だった!


死ぬな?アータル!俺が行くまで待っているんだ!!」

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