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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
神を導きし救世主!
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鬼の王?剣崎徳子、その呪われし運命!

大徳は一人、己の神である大威徳明王の転生者である子供に会いに来た。


しかし、彼女は大徳がかつて愛した女性の忘れ形見であった。


俺は大徳力也…

俺は今は亡き菜々子さんの旦那に連れられて、大威徳明王の転生者と思われる子供のいる離れの別荘に向かっていた。


(それにしても、まさか明王の転生者が『女の子』とは思わなかったが…)



俺は向かう最中、旦那からより詳しい内容を聞いていた。



「実は、まだあるのです。私の娘に起きた恐ろしい出来事が…」


「恐ろしい?」


「信じて貰えるか解らないですが…」


「構わん。話すが良い?こう見えても俺は僧侶だからな?」



旦那は自分と娘の間に起きた恐ろしい体験を思い出すと、その身体は恐怖で震えていた。

それは菜々子さんが亡くなった後の話…


娘さんは野性の動物みたいに生肉を喰らう日々。

次第に娘は買ったモノではなく、解体したばかりの生々しい肉を要求してきたのだ。

旦那はただ娘に言われるがまま、医院の手術室で生きた動物を解体し運んでいた。

当然、医院は閉めた。

立派な手術代は動物を解体するために使われていた。

その日も旦那はいつもの如く生肉を運ぶために、娘のいる部屋に入ろうとした時だった。


「?」


娘の部屋の中から話し声が聞こえてきたのだ?


(おかしい…中には娘しかいないはずだ!?)


旦那は中にいる娘に気付かれないように、部屋を開けると中は暗闇であった。

雨戸を閉めているといっても、こんなに暗いはずはない?部屋の電気を点けようとしても、全く明るくならない?それに何だか異常に寒気がしたのである。


旦那は恐怖に怯えながらも、娘が心配で部屋の中に入っていき、恐る恐る暗闇の中を目を凝らしながら娘のいる方向を探すと…


(!!)


そこには娘の身体を覆い隠す程の黒い何かが、幾つか見え隠れしていたのだ。

それは、まさしく…

本やテレビ等で知る事が出来る、素人でも解るような異形の『鬼』の存在。

が、その後旦那は金縛りにあったかのように動けなくなったのである。


そこでは娘の周りを囲むように鬼達が、娘に頭を垂れていた。


「何だ…あれは!?」


旦那の気配を感じた鬼達の一匹が近付いて来て襲い掛かろうとした。

旦那は死を覚悟したが、それを娘が止めたのだ。

腰を抜かしへたりこむ旦那の前に、他の鬼の一匹が旦那のそばに近寄り言った。



《この娘は鬼神と人間との間に産まれた呪われし落とし子。

いずれ我達が鬼神を統べる王になるのが定め!今より三年後、我達はこの娘を迎えに来よう。お前はそれまで、この娘に供物を捧げるがよい!》



そう言って、目の前から消えたのだと言う。


鬼神の王だと?


いや、その前に…

鬼神と人間との間に産まれたとはどういう事だ?


すると、旦那は言った。



「あの娘は、私の実の娘ではないのです。そう、娘は妻の連れ子…父親の存在は解らなかった…それが、まさか鬼だったなんて…」


「!!」



その時、俺は全て察した。


俺は愕然とした。


俺はもしかしたら…この事実を無意識下で認めていなかっただけなのでは?

いや、考えないようにしていたのでは?


あの日、俺の過ちで明王鬼神が孤児院を襲った時…

子供達は皆襲われたのに、どうして菜々子さんだけは殺されずに無事だったのか?


いや、実際…


菜々子さんは襲われていたのだ…


明王鬼神は菜々子さんに種を植え付けていたのだ。


その結果、鬼の子は産まれたのだ。


菜々子さんはその記憶を失い、誰の子供か解らないまま育てていたのか…?



クッ!


全て俺のせいじゃないか!


あの日の悲劇は、まだ終わってはいなかったのだ…



「そして、今日…娘の誕生日が…鬼との約束の日なのです」


「今日!?」



この日、俺が訪れたのは因縁なのか?

それとも決められた運命の中に…あの日の続きの再来なのだと俺は思った。



俺と旦那は、娘のいる離れの別荘の中へと入って行く。


俺がやらねばならない…


そして、俺と旦那は娘のいる部屋の前にまで来た。

旦那は案内だけでなく自分も一緒も娘の所に行くと言ってきた。

当然、俺は止めたのだが、旦那は「父親として見ているだけなんて出来ません!」と、強い意思を見せられ、俺は折れた。


実の娘ではないというのに、この男は…


見ると、旦那がゴルフバックの中から何かを抜き出していた?



「わ…私も戦いますよ!」


それは日本刀であった。


「それは?」


「私の実家は古い剣術をやっていまして、この日本刀は祖父から受け継がれている宝刀なのです!」


「宝刀ですか?少し貸しては貰えぬか?」



俺はその日本刀を手に取ると、その柄には『鬼龍院』と彫られていた。


(まぁ、何もないよりはマシか…)



俺は手にした日本刀に自分自身の『気』を送った。


「うむ。中々の名刀だな?この日本刀に俺の力を注ぎこんだ!少しはあんたを護ってくれるだろう?だが、あんたは素人だ!決して無理はするのではないぞ?」


「解りました…」


「では、参ろう!」



俺と旦那は娘のいる部屋の中へと入って行く。


俺が見た部屋の中には…


腰まで伸びた黒髪の女の子が、人形を抱いてこちらを見ていた。

そして…


「お父さん…お肉持って来てくれた?」


あの子が菜々子さんの娘?


彼女の名前は、


『剣崎徳子』



紛れも無い大威徳明王の転生者!


旦那は娘に近付くと、何やら娘に説明する。



「徳子?今日は肉はないんだよ?今日はね、このお坊さんが、お前の中の鬼を退治しに来てくれたんだよ?」



すると、娘の様子に異変が生じたのだ。

娘は旦那の首を掴み、そのまま絞めはじめたのだ。


「ウグゥ…ッ…」



俺は直ぐさま二人の間に入り二人を引き離した。


「止せ!お前の父親が死んでしまうぞ?」



すると、娘は俺を睨みつける。


「あんた誰?邪魔する奴は嫌い!あんたなんか嫌い!大嫌ぃいーー!」



その瞬間、俺に向かって強い気が放たれ、

俺は弾き飛ばされ、壁際にまで叩き付けられた。


「うぐぅああ!」


「大徳さーん!」


娘は無感情だった。


「お父さんが、関係ない人連れて来るからいけないの…」


「徳子!もう、止めてくれ!」


「止める?大丈夫…直ぐに終わるよ…」


「?」


「私、もうすぐいなくなるから…お父さんと、サヨウナラするから…」


「お前…何を言ってるんだ?徳子?」


「私、もうじき迎えに来るんだって…」




それは、俺達が来るほんの少し前の事だった。

娘が一人部屋にいた時、部屋の中が闇に包まれていき、その中から再び現れたのである。


鬼達が!!

鬼達は娘の前に現れると彼女に言った。



《今宵、お前を連れていく!それまでに、人であった事に終止符を付けておくが良い!さすれば、お前は我等が鬼神の王となるであろう!》と…



娘はその事を直ぐに理解して静かに頷いた。


(人であった事に終止符を付けるとは?)



「私ね…鬼の王様になるんだって…」


「…何を言っているんだ?徳子?」


「私、人間じゃないから…私…人間なんかじゃ…ないから…」


(だから…)



すると、娘の身体から黒い腕が伸びて来て、父親の首を絞めながら吊るし上げる。



「ウグググ…や…やめ…徳…子…」


「私ね?お父さん殺したら本当の鬼になれるんだって…鬼達が言ってた。私…人間じゃないし…居場所なかったけど、鬼達がお父さん殺したら、鬼として迎えてくれるって…居場所が出来るんだって…」


(だから…)


「お父さん死んで?」



娘からの衝撃的な告白に旦那は身体を震わせていた。

その父親の震える身体に娘は過去の記憶を思い出す。



(私を見る…今のお父さんの怯える目…あの日もそうだった。

私の前に初めて鬼達がやって来た時…それを目撃したお父さんが私を見た時と…同じ…)



「あの時のお父さんの震える姿…」



(どうせ私は本当の子供でも、人間でもないのだから…)



「お父さんが死んでくれたら、私…居場所が出来るの…お母さん死んじゃって、一人じゃなくなるの…」



すると、旦那は懇願しながら答えたのだ。



「嫌だ…止めてくれ…お願いだから…徳子…」



震え、涙を流しながら。

だが、旦那が娘に言った台詞は思いがけない言葉であった。



「お願いだから…人を捨てないでくれ…

もし、お前が人でいてくれるなら、お父さんは死んでも構わないから…」


「!!」



その言葉は僅かに父親の首を締める力を弱めた。

次回予告


剣崎徳子の力に大徳は身動き出来ないでいた。


その時、父親は娘のために・・・


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