己を信じて友を救え！不動明王浄火炎！！
突如、倶利伽羅の力に覚醒した光明は仲間達が変化した倶利伽羅竜王を圧倒し、
トドメを討とうとした時、光明を止める声が？
僕は光明…
僕は突如目覚めた倶利伽羅の力で、クローリーにより倶利伽羅竜王へと変わり果てた兄弟達にトドメを刺そうとしていた。
それが、友達を救う唯一の手段と信じて…
だけどその寸前であの男が現れたんだ！
あのオッサン！三蔵！
三蔵はゆっくりと、僕のいる方へ向かって近づく。
「ふぅ～どうやら間に合ったようだな？」
すると、再び倶利伽羅龍王が立ち上がたったのだ。
「しまった！あいつに気がいって、油断した！」
あいつのせいで、せっかくのチャンスを！
チャンス？友達を殺す？
僕は邪念を振り払い、再び剣に力を籠めた。
「僕がやらなきゃいけないんだぁー！」
すると三蔵が僕の前に立ち塞がり、見下ろした。
「単純なガキだな？ガキなら、ガキらしく！もう少し夢と希望を持って考えやがれ！」
そう言って、倶利伽羅龍王と対峙する。
何なんだ！？この男は！
そこにクローリーが三蔵に話し掛けて来たのだ。
「あらあら？お邪魔な人が現れましたね？せっかくのクライマックスシーンが台無しですよ～」
すると三蔵はクローリーに言った。
「お前、誰？」
「はっ？」
「お前、俺を知らないのか？知らないよな？それは、お前が本物のクローリーじゃないからだよ！」
「はい？何を言っているんですか？貴方は？」
「俺は以前、本物のクローリーと中国遺跡で戦ったんだぜ？お前は少なくとも俺の知っているクローリーじゃねぇ！それにクローリーなら、アルカナを使うはずだ！お前にアルカナはあるかな？」
この三蔵って奴！
この状況で親父ギャグか！
「恐らく、お前も出来そこないのコピーかなんかか？」
「何ですって？？この私が出来そこないですって？？お前は一体何者だ？お前は！許しませんよ～！！」
すると、三蔵の姿が僕達の前から消えた。
「ヘッ？」
（嘘？？速い！躱せられませ～ん！？）
現れた三蔵は一瞬にして手にした炎の剣でクローリーの身体を頭上から一刀両断にした。
その動きはまるで神憑りだった。
「うぎゃあああああ！」
「それに蛇塚の話じゃ、中国遺跡でクローリーの奴は赤子の姿になっていたと言うからな…」
断末魔の中でクローリーの身体は消滅していく。
が、消える間際に…
「おのれぇ…ならば、貴様達も道連れにしてやりましょう…この出来損ないの倶利伽羅龍王と一緒にねぇ～！ぎゃはははは！」
クローリーの合図で、倶利伽羅龍王の身体に異変がおこる。
心臓の鼓動が早くなり、黒いオーラが高まっていく…
それは、自爆だった。
倶利伽羅龍王は自らの力を暴走させて、自爆しようとしているのか？
すると、三蔵は僕に言った。
「後は任せたぞ？そこのガキ！」 と…
なっ？この糞大人！！
最後まで責任取れってぇの！
僕は再び剣に力を籠める…
あの男のせいで調子狂ったけど、今度こそ…
僕は手にした剣に倶利伽羅の力を集中させて、倶利伽羅龍王に向けて振りあげる。
(後で必ず後を追うからな…皆…)
「それで良いのか？」
えっ？また、三蔵か？
気が散る！気が散る！
僕は三蔵の言葉を無視しようとした。
が、三蔵は暴走する倶利伽羅龍王を指差し、付け加えて言った。
「あの姿を見て、本当にお前に奴達を斬れるのか？」
あの姿？
僕は恐る恐る倶利伽羅龍王を見た。
「あっ！」
そこには、暴走し今にも爆発しようとしている倶利伽羅龍王の周りに白いモヤ？
いや、魂…八つの魂？
孤児院の皆の魂が、暴走する倶利伽羅龍王の力を抑え込んでいたんだ。
(みんな…)
三蔵は再び言った。
「お前の決意が間違っているとは言えない…だがな、もう少し足掻いてみろよ？最初から不可能だと諦め不幸な結末しか見れない奴には、掴められるかもしれねぇ僅かな可能性も見えやしねぇんだぞ」
「！！」
「お前が一番望む結末は何だ？」
「僕が一番望む結末？」
それは…そんなの決まっているじゃないか…
「皆と一緒に生きたい…」
すると三蔵は僕の後ろに移動し立つと、背後から僕の持つ剣を僕の手を包むように掴んだのだ。
「何を？」
「お前には不可能を可能にする力がある！信じろ！掴める未来を！信じろ！自分自身の可能性を！信じろ！お前の望む結末を！そうすれば、0.0001％の1は０じゃない事を証明させられる」
『自分の未来[運命]は自力でこじ開けろぉー！』
なぁ…？
背中越しに伝わるこの熱さは何だ？
熱い…熱いけど…何て、心地好いんだぁ…
「しかし、僕にそんな事出来るの…ですか？」
三蔵…さんは…
「あぁ…お前は出来る…何故なら、お前は！」
『俺が信じて疑わぬ神であり、最も知っている神…不動明王の化身[転生者]なのだからなぁ！』
僕が、不動明王？
良くは解らないけど今は信じるしかない…
三蔵さんを…
僕自身の力を！
「良いか？良く聞けぇ！不動明王の炎は両刃の剣！その刃には二種類の炎があるのだ。
一つは全ての邪悪な魔を屈服させ、その炎で退魔させる退魔炎」
それと…
「もう一つは、邪悪な意思[魂]のみを消し去り、悪意ある魂のみを浄火させる浄火炎だ！」
すると、僕の持っていた炎の剣から倶利伽羅の力が消えていき…
新たな炎が剣に燈る…
それは白い炎だった？
僕と三蔵様はその炎を纏った剣を振り上げると、苦しみもがく倶利伽羅龍王に向かって、思いを乗せて振り下ろしたのだ。
『不動明王浄火炎！』
白い炎は倶利伽羅龍王の身体を燃やしていく…
少しずつ、その身体が崩れ落ち…
その中から気を失いながらも、竜治君の身体が五体満足の姿で現れる。
邪悪の根源であった倶利伽羅龍王の姿のみが消えていき、
そして、そこから八つの魂が浮かび上がった。
それは、皆の魂…
「皆、死んでしまったのですか？」
「いや、良く見るが良い！」
すると、その魂は本来の姿を現したのだ。
恵喜童子・矜羯羅童子・恵光童子・阿耨達菩薩、指徳菩薩・制咤迦童子・烏倶婆誐童子
「あれは…？」
「多分だが、あいつ達は八大童子だろう！」
「八大童子？」
「不動明王に付き従う眷属だ…つまり、お前にとっては切っても切れない魂の契りで繋がれた仲間！紛れも無い兄弟だよ」
すると、その神々は魂の抜けた皆の肉体の中に戻っていった。
それを確かめた後、マザーが涙を流して喜ぶ。
「子供達！皆、無事よ！意識を失っているだけ！」
僕も涙が止まらなかった…
「さ…三蔵様…」
三蔵様は僕に言った。
「足掻いて足掻いて足掻いていれば、不可能を可能にする力となるのだ！そして、お前の友を思う気持ちが奇跡を呼び寄せたのだ」
そう言って、安心して泣きじゃくる僕を抱き寄せてくれた。
さ…三蔵様…
しかし安堵したのもつかの間だった。
突然、騒がしい騒音がこちらに近付いて来た。
「何？何が！？」
僕達が騒音のする方角を見た時、そこには数台のバイクがけたましい音を立てて、止まった。
それは、暴走族？何故、こんな所に？
すると、そのリーダーらしき男がヘルメットを脱ぎ捨て、僕達に向かって叫んだ。
「ヤオヨローズだ！てめぇら！そこを動くんじゃねぇぜ！」
次回予告
三蔵「この日からだよな？お前が俺に様を付けるようになったのは・・・」
光明「そうですか？僕は最初から三蔵様を敬い、尊敬していましたよ？」
三蔵「・・・・・・」
光明「それにしても、この後の展開は僕には驚く事ばかりですよ！ヤオヨローズでしたっけ？何者なんですか？」
三蔵「俺の過去話を読まないと難しいかもな？」
光明「解りました！今から、一話から読み直しますね！師匠！」
三蔵「し・・師匠？？」
