三蔵一行、娘を助けておもてなし?
これは遥か遠い昔の物語。
何百年もの間、五行山の頂上に置かれた石に封印されていた俺様の前に現れた謎の僧侶三蔵。
俺様は三蔵と旅を続けていくうちに、豚の妖怪の八戒と、河童の妖怪の沙悟浄が新たに仲間に加わった。
俺様達は襲い掛かる様々な妖怪相手にバトル三昧の冒険をしているのだ。
よぉ!俺様、孫悟空だぜぇ!
俺様達三蔵一行は天竺を目指し旅を続けている訳だが、実は天竺についての手懸かりがまったくと言って良いほど無かったのだ。
天竺・・・
とにかく凄くて、綺麗で、目茶苦茶なんか言葉に出せないような所らしい。
「なぁ!三蔵?天竺って何処なんだ?後、どのくらい歩けば着くんだ?」
「・・・」
「なぁ~三蔵の旦那よ?天竺って美味い物や綺麗なおべべ着たお姉ちゃんが沢山いるって本当らか?」
「・・・」
「だ~か~ら!皆さん!聞いてくださいよ~!天竺ってのは神様がですね~」
「てめぇら…少しは黙っとれ!これでは見付かる物も見付からんわぁ!」
三蔵に問い質す俺様達にいつもの三蔵のゲンコツが落ちた。
言い掛かりだ…
仕方なく小声で他愛もない話を続けた。
「なぁ、豚?なんか三蔵おかしくないか?」
「きっと…あの日らよ!」
「八怪兄貴!お師匠様は女の子じゃないですよ~!」
「なんか、ぴりぴりしているよな?」
「オラはピリ辛料理は好きらぞ!」
「だから!話反れてますよ~!」
「何を言ってるんだ?俺様も好きだぞ?」
「孫悟空兄貴まで!」
話は脱線して、まとまらなくなっていく。
そしてようやく本題に戻ると、
「沙悟浄?お前は天界にいたのだよな?何か天竺についての情報はないのか?」
「そうですね~昔天界にいた時に書物でチラッと見たくらいなんですが…」
そこに三蔵が食いついてきたのだ。
「言ってみろ?」
「あ、はい!実は天界の書物でも正確な位置はもちろん、行って帰って来た者の話事態皆無なんですよ。ただ不思議な事に天竺と言う名前だけは誰もが記憶し耳にして知っていると言うのに、その実態を詳しく知る方が一人もいないとか?噂が独り歩きして、正確な情報が全くないのです。ただ、天竺は神様でも辿り着く事が難しく、そこは禁断の聖地だとか悟りし者のみ辿り着ける極楽浄土とか言われていました。実際…本当にあるのかないのか?作り話?いや!夢物語みたいな感じで、実は存在すらしない作り話とも言われているみたいなんです!」
「天竺までの道は、まさに未知なる聖地だな…」
「・・・・?」
えっ?
俺様達は沈黙していた。
三蔵も沈黙していた。全員沈黙した。
・・・・・・!!
未知と道かぁー!!
しまった!
まさかあのタイミングで駄洒落を入れて来るなんて!
しかも特別上手くもない親父ギャグを!
だが、完全にタイミングを逃したぜ・・・
本当なら間髪を容れずに突っ込むか、誉めごろすかして、やり過ごしてやれれば良かったのに!
このままでは三蔵が寒い奴になっちまう?
しかし間が空いた今、どう返すよ?
八戒も沙悟浄も困惑しながら俺様に視線で助け船を求めてやがるし!
お前達がやれよ!
てか、三蔵も三蔵だ!
俺様は声を大にして言いたい!
駄洒落言うなら先に駄洒落を言うと何故言わなかった?
て、意味ないか・・・
だが、三蔵の奴も無言って事は俺様達のリアクション待ちか?
いや!このままスルーして無かった事にしたいのか?
それとも言った手前、引き返せないで困っているのか?
とにかくこの場の空気を変える何かを言わねば先に進まん!
そこに沙悟浄の奴が、
「さ…三蔵様?すみません…私!三蔵様の駄洒落にどう返したら良いのか分からない役立たずです!気の聞いた台詞も思い付きませんでした!すみません!すみません!ごめんなさいです!」
すっ!素直かぁー!
三蔵は顔を赤らめ、沙悟浄にゲンコツをすると、
「とにかく唯一の手懸かりは西!これだけだ!なら目指すは西しかない!西に行くぞー!」
「おぅ~!」
俺様と八戒は勇気ある馬鹿な言動で目を回している沙悟浄を背負い、はや歩きして先を急ぐ三蔵に付いて行く。そんな訳で俺様達は他にアテもなく、ただ西に向かって旅を続けるのだった。
そんな旅の中、
俺様達は右も左も解らないような深い森に迷い込んでしまった。
既に辺りは暗く、靄が覆ってきて視界が全く見えね~
「!!」
そこで気付いた事があった。
もしかして?
いや!そんなはずねぇ!
しかし間違いない!
俺様達は・・・
道に迷ったのか!
「三蔵!これじゃ先が見えねーよ!」
「そらな…今日はここまでにするらよ!引き返すにも、もう道が解らねえらよ?」
「もう私…足が棒になってますよ~!」
「てめぇ達!だらしねーぞ!まったく…」
すると何かにぶつかる鈍い音がした?
あっ…三蔵の奴?
目の前に突き出ていた木の枝に顔をぶつけやがった!
「・・・・・・」
皆、見て見ぬフリだ!
何か言ったら間違いなく八つ当たりされるぞ!
俺様達は三蔵から目を逸らしながら沈黙を続けた。
「ごほっ!今日はここまでにしよう」
(スルーしたぞ!)
これで良い。
触らぬ三蔵に祟り無しなのだ。
これも俺様達が旅の中で学んだ教訓である。
「ん?ん?ん?」
「どうしたのですか?」
すると八戒が何かに気付いたのだ。
同時に俺様もその何かに気付く。
「おっ?おっ?おっ?」
「どうした?猿に八戒!」
俺様と八戒は何処からか漂って来た御馳走の匂いに気付いたのだ。
「三蔵!近くから何か美味そうな匂いがするぞ?」
「間違いないらよ!オラ行ってくるら!」
「待て!俺様も行くぜ!」
先走る俺様と八戒はもう腹ペコで限界だったのだ。
これは地獄に仏ってやつか?
「お師匠様?私達も行きましょ!もしかしたら寝泊まり出来る場所があるかもしれませんよ?」
「仕方ねーな…」
俺様達は何処からか漂う美味そうな匂いに誘われ、匂いのする方向に向かい霧の中を突き抜けて行ったのだ。暫く進んで行くと、そこには豪華絢爛な宿屋があった。
「何故、こんな辺鄙な場所に?」
確かにここは人が立ち寄れないような場所で、人間の住む都から遠く離れた森の中?
そんな場所に宿屋なんて胡散臭くないか?
「いゃあああああ!」
うん。本当に『いゃあああ!』な予感がするって、おぃ!
突然、霧の中から女の叫び声が聞こえて来たのだ。
一体何事だ!?
俺様達は悲鳴の聞こえる方向に向かって走ったのだ。
するとそこには大木のような見上げるほどの巨大なムカデの妖怪に若い人間の娘が追われていた。
そしてお約束の如く足を躓き転んだのだった。
「お前達!」
「おぅ!やってやるぜぇ!」
「任せるら!」
ムカデの妖怪が倒れている娘を捕まえ、喰らおうと口を広げた瞬間、飛び出して来た八戒が娘を抱き抱えて躱し、そのムカデの顔面目掛けて俺様が如意棒を叩き付けたのだ。
「うぐわぁ~!何じゃお前達は!?」
「へん!俺様達か?俺様はただの強い妖怪様よ!」
突然現れた俺様達に獲物を奪われたムカデは、
「お前達?妖怪か?獲物を横取りとはふざけた真似を!」
逆上し俺様に向かって襲い掛かってきやがったのだ。
俺様は直ぐさま呪文を唱える。
呪文を唱えている俺様の身体に巻き付いて来たムカデ妖怪は、身動きの出来ない俺様を喰らおうと噛み付いた途端、逆に悲鳴をあげたのだ。
何故かって?
ふふふ…俺様が唱えた呪文は
『猿硬』
俺様の身体は岩石のように硬直していたのである。
「伊達に石猿じゃねーぞ!」
俺様は自分に噛みついたムカデの化け物の顔面をぶん殴ってやったのだ。
「うぎゃああああ」
ムカデ妖怪は俺様の渾身の一撃で息堪えたのであった。
哀れ…弱小妖怪よ!
俺様に出会った事を後悔して成仏しな!
「南無阿弥陀仏ですね!」
戦闘になると必ず出番が全くない沙悟浄は放っておくか・・・
すると三蔵が震えて怯えている娘に近付いて行く。
「大丈夫か?娘」
「はい!あの…貴方達はいったい?」
娘は震えながら恐る恐る三蔵に尋ねる。
三蔵が見た目怖そうなのもあるが、妖怪を連れた坊さんなんて、怪しく見えて当然だからな。
「俺達は旅の修業僧だ…訳あって…ウグッ…」
《バタン…》
えっ?えっ?えーー?
さ…三蔵が突然白目を向いてぶっ倒れたぁー??
何故にこのタイミングで?
どうしたんだ?三蔵!
そうかぁ~!
以前の金蝉子との闘いでの傷が開いたんだな?
てか、三蔵今回は何もしてないじゃん!
まったく・・・
怪我しているのに荷車は嫌だとか、自分の足で歩く!
と、無茶言って我が儘言うから!
まったくもって、負けず嫌いなんだからよ!
あっ?
三蔵、顔色がめちゃくちゃ悪いし!
三蔵~死ぬなぁー!
アタフタ!アタフタ!
どうする?どうする?
俺様はもちろん、八戒と沙悟浄も慌ててパニックを起こしていたのだった。
「あの…もし宜しければ、助けて戴いたお礼に…私のいる宿屋に招待しても宜しいでしょうか?」
「なに?そりゃ~ありがてぇぜ!」
俺様達は三蔵を担ぐと、助けた娘に連れられて宿屋へと招かれたのだ。
しかも、その宿屋ってのは、例の怪しい宿屋だったとは。
大丈夫なのか?
どうもこの娘は、この宿屋の主の娘らしいな?
うむむ・・・
しかし今は、選り好みしている場合じゃないな?
その後、俺様達は倒れた三蔵を看病するために、この宿屋に世話になる事になったのだ。
そんで三蔵が目を覚ました後は、助けた娘に連れられて歓迎のおもてなしを受ける事になったのである。
ヘヘヘ!
こりゃあ~美味いもんを食べられるかも!
暫くすると、助けてやった娘は俺様達の前に宿屋の女主人を連れて来たのである。
「この度は私の娘の四鈴を助けて戴き本当にありがとうございます。私はこの屋敷の主の女福と申します」
「いや、気にするな!俺達は当然の事をしたまでだ…」
「大したもてなしは出来ませんが、今夜は皆様方のために宴のご用意いたしましたので、どうぞお楽しみくださいませ。ほら!貴女達もおもてなししなさい」
「は~いお母様!」
すると奥からから七人の美しい娘達が現れ、自分達の自己紹介を始めたのである。
「一鈴でございます!」
「二鈴でございます!」
「三鈴でございます!」
「四鈴でございます!」
「五鈴でございます!」
「六鈴でございます!」
「七鈴でございますなのら!」
七人の娘達は人間の女で言う所の?
美女!美女!美女だらけの七姉妹だった。
八戒なんか大喜びで、はしゃぎまくっていた。
「おおお!オラは見たらぁ~!こりゃ~絶景らぁ~!一鈴ちゃんはナイスバディーなお姉さん!髪がカールかかった感じで、片目を髪で隠した感じが色っぽい姉ちゃんらよ!二鈴ちゃんはロングストレートで、これまたナイスバディーなお姉ちゃん!エロ気ムンムンらよ!三鈴ちゃんは髪を二つにオダンゴにしたスレンダーボディーのお姉ちゃん!四鈴ちゃんは化け物に追われていた時から目を付けていたらが、大人しい感じの守ってあげたい清楚系お姉ちゃん!五鈴ちゃんと六鈴ちゃんは妹系ブリブリお譲ちゃん!オラをお兄ちゃんと呼ばせたいらよ~!七鈴ちゃんは…オラの射程外…お子ちゃまらな…」
八戒は鼻息を荒くさせながら目をハートにして、今にも女達に飛び付きそな勢いでハァハァしていた。
てか、説明有難うな?
すると俺様達の前に女主人の女福が歓迎の開始を告げたのだ。
「さぁ~娘達、歓迎の舞を!宴を開きましょう!」
すると七人の娘達は俺様達の前で美しい舞を披露し始めたのである。
それは見事な舞だった。
舞だけでなく楽器や歌まで披露する。
この娘達は楽士か?
それはまるで・・・
夢で見た天女の舞のようであった。
娘達は舞を終わらせると俺様達の周りに集まって来て、お酒や料理のおもてなしをしてくれたのである。
「三蔵様どうぞ!」
「う…うむ」
三蔵にお酒を注ぐ一鈴の所に次女の二鈴が割り込む。
「あら~!お姉様だけずるいわ!三蔵様?私のお酒も飲んでくださいませ!」
と、モテモテの三蔵は酒を飲み満足げでいた。
俺様の所には五鈴がもてなす。
「は~い?お猿様!あ~ん!」
「ありがとうよ!オッ?こりゃ美味いぞ!あ~ん…ムシャムシャ…うめぇー!」
上手い飯に満足の俺様。
八戒には三鈴と六鈴に挟まれ幸せモードだった。
「いや~ん!」
「ほれ!良いではないか
「お触りはいけませんよ~お豚様!あら?お豚様は逞しい胸元ですね?」
「そうらか?」
「それにポッチャリお腹もセクシーですわ」
「セクシーらか?三鈴ちゃんも六鈴ちゃんも可愛いら~!オラの嫁にならないらか?セクハラ万歳らぁ~」
八戒は調子にのって足を触ろうとする。
「もぅ!お触りは、あ・と・で!」
「あっ?あ…ちょ~らか?燃えるらぁ~!」
と、有り得ないモテ方の八戒。
マジで??
沙悟浄はと言うと?
「いやぁ~皆さん楽しんでますね?なのですが…」
見ると、末娘の七鈴が河童の頭に乗り、頭の上の皿を引っ張っているのである。
「アハハ!何これ?おもしろ~い!河童!河童!」
「やめてくださ~い!お皿はダメなんですよ~!」
そんな俺様達の様子を見て満足げの四鈴と女福であった。
「お母様?どうやら皆様に喜んで戴けたみたいですね?」
「そのようね!ふふふ…」
そんなかんなで宴は続いた。
嗅いだ事のない甘いお香の匂いが漂う煙りに包まれた屋敷の中で・・・
俺様達は旅の途中の息抜きを楽しんでいるのであった。
たまには良いよな?
こういう息抜きも?
そんな訳で、
続話も、おもてなされてやるぜ~!!
次回予告
沙悟浄「なんか、今までにない展開ですね?」
孫悟空「いや、それより~見た?見たよな?」
八戒「女子がいっぱいおっぱいらぁ~」
孫悟空「お前は黙れ!それより~」
沙悟浄「孫悟空兄貴?さっきから何ですか?」
孫悟空「だから~?今話から転生記第二部が始まったわけだよな?」
沙悟浄「はい。そうですけど?」
孫悟空「だから!見ただろ?見たよな?前書きの俺様だよ!」
沙悟浄「まさか本編以外の話題をもってくるとは・・・」
孫悟空「そうだよ!第二部にして、いよいよ俺様が!」
沙悟浄「真っ二つになると?」
孫悟空「違うわ!あれは真っ二つじゃなくてだな~」
八戒「真っ二つ!お姉さんの尻らぁあああ!」
孫悟空「もう、しりません。続き読んでくれれば良いや・・・」
沙悟浄「あ、いじけた!」




