光明と呼ばれた少年!
マザーの過去、それは・・・
僕は光明…
僕を庇って、マザーがクローリーと名乗る男の前に立ち塞がる。
「マザー…?」
「光明君は下がっていなさい!あの男は私が相手します!」
するとクローリーがマザーに言ったんだ。
「八百比丘尼さん?貴女、カミシニの力を取り戻したと言っても昔の半分以下ですよね~?そんなんでは私を倒すどころか止める事なんて出来ませんよ~?」
「それは、どうかしら」
するとマザーは自分自身の身体中に傷を付けると血が噴き出す。
その血がクローリーに向かってロープのように伸びて行く。
しかしクローリーは余裕の動きでその血のロープを全て躱していた。
「ムダムダですよ~!そんなんでどうしますか~?」
『!!』
するとクローリーの顔が強張る。
目の前に立っていたマザーが血の塊となって崩れたからだ。
そして躱したはずの血の縄がクローリーの足下一帯を囲んでいた。
「あちゃ…」
マザーの放った血の縄は全て囮…
本当の攻撃は!!
すると一本の血の縄がクローリーの目の前に浮かび上がり、その形がマザーの姿へと変わる。
「余裕が油断でしたわね?クローリー!」
マザーは息を吸い込むと、クローリーに向かってボイスを放ったのだ。
『人魚の破壊歌!』
その歌は振動波のようにクローリーに放たれるとクローリーの身体が見る見るうちに崩れていく!!
「たとえカミシニの貴方でも、私のカミシニの血でその力を無効化させた後に、もう一つの私の力…超音波で立て続け様に攻撃すれば傷付ける事が出来るのです」
それは、カミシニと神の力を両方持つマザーだからこそ出来る合体技。
更に先程伸ばした血のロープが、クローリーの身体を拘束して動きを止める。
「貴方を倒す事は無理でも、二度と動けないように拘束する事は出来るわ!私にこの力を与えた事がアダになったようね?クローリー博士!」
すると何処からか拍手が?
「パチパチ!いやぁ~参りましたよ~!驚きました!」
それはクローリー?
「えっ!?」
マザーは拘束したはずのクローリーを見ると、それはテレス先生の姿へと変わっていく。
そして新たに現れたクローリーは、多分アリスさんの身体。
「クローリー!貴方はテレスとアリスの身体に自分の分身を移植したのね?」
「は~い!その通りですよ!テレスさんの身体は今貴女が壊してしまいましたからね。しかし、アリスさんもあんまり長くはもちませんね?そういう事なので…」
いつの間に?
クローリーの腕の中には倒れていた子供達の一人の竜二が捕まっていた。
「竜二君!」
僕と一緒に孤児院にいる仲間で、一番年長の竜二…
何故、あいつが?
「ふふふ…貴女と同じように、この子供達もカミシニと神の力を両方持っている事を忘れないでくださいね」
「どういう事?」
するとクローリーは竜二の身体を持ち上げ、その背中越しに自分の力を注ぎ込む。
「アギャアア!」
悲鳴をあげる竜二君を救おうと、マザーと僕が駆け出すが…
「邪魔はさせませんよ~!」
クローリーの掌から血の刃が放たれ僕達を妨害したのだ。
「うわああああああ!」
弾き飛ばされる僕達は全身に傷を負い動けなくなる。
地面に這いつくばる僕達が見上げた先では他の孤児院の皆もまた苦しみ出して、皆の魂が抜け出したのだ。そして皆の魂は竜治君の身体の中に向かって集まっていく。
一体、何をするつもりなんだ?
「クローリー!子供達に何を!?」
「ふふふ…貴女の時と同じですよ?最強のカミシニを造る研究は、あの子供達へと引き継がれたのです!」
すると竜治君の身体が再び鬼神化?
いや、あれは?
竜神化していったのだ!
「この少年は他のカミシニ達の力を自分の魂に取り入れ、己の力とする事が出来る特殊な能力者なのですよ。そして、神とカミシニの能力を持った他の七人の力を吸収して…」
「最強のカミシニ…」
『倶利伽羅龍王へと変わるので~す!』
倶梨伽羅龍王だって?
竜治君は真っ黒な身体の半人半竜の化け物へと姿を変えて僕とマザーを見ていた。
「竜治君!」
マザーの呼ぶ声に、竜治君は涙を流して腕を伸ばしていた。
『マ…マザー…?』
「そうよ!マザーよ!大丈夫!例え姿は変わろうと、貴方は竜治君!気をしっかりもって!大丈夫!大丈夫だから!私が必ず貴方を元に戻してあげます!」
マザーは立ち上がり、両手を広げて竜治君に歩み寄って行く…
『アガ?アガガ!マ…ザー…マザー』
「竜治君…」
二人が近付いた時、マザーは竜治君の突き出した腕で胸を貫かれた。
そして竜治君はマザーの喉元に喰らいつこうと、口を広げる。
『させるかぁーーー!』
僕の身体から炎が立ち込め、竜治君…いや、化け物と化した倶利伽羅龍王を炎で包みこんだ!
『アガッ?』
僕は倶利伽羅竜王に掴まれたマザーを救いだし抱えていた。
そして、マザーを降ろした後、掌に炎を燈した。
「これから先は僕が戦う!マザーにはこれ以上手を出させない!涙を流させない!これ以上…心に傷を負わせやしない!」
僕の掌から炎が噴き出し剣へと変化する。
僕は炎の剣を手に倶利伽羅龍王に向かって飛び出していた。
「光…明君…!」
(みつ…あき…君…私は知っている…あの子が今まで、どれだけの罪を…辛い苦しみを…私に代わって背負って来たのかを…あの子は…今まで鬼神化してしまった子供達を…今まで兄弟のように仲良くしていた…友達を…魂までも鬼神化して暴走し、他の兄弟達を危めさせないために…
その幼い身で…その手を血で染めてきたのだから…それは、マザーである私がやらなければいけなかったのに…ごめんなさい…)
「今度こそは、わ…私が、行かなきゃ…」
だけど、マザーの身体は限界にきていた。
マザーありがとう。
後は僕に任せてよ?
死んでいった皆は誰もマザーを恨んなんかいないよ?
むしろ感謝している!
クローリーの実験材料として集められた玩具…
生きている意味も喜びも知らない僕達に、マザーは愛情をくれた。
いずれ僕も化け物となってしまうかもしれない…
いつ死ぬかも解らない…
だけど、今僕には出来る事がある!
戦う力がある!
仲間を!友達を!
せめて、その魂だけは救ってあげられる力を!
「うおおおお!」
しかし僕の振り下ろした炎の剣は倶利伽羅龍王の肩に直撃するが傷一つ付かなかった。
「そんな!?」
それでも僕は攻撃の手を緩めずに何度と斬りつける。
だが、倶利伽羅龍王は僕の振り下す剣を掴み僕を地面に叩きつけたのだ。
血を吐き、悶える僕…
だけど、負けられない!
それを見ていたクローリーは不思議そうに見ていた。
(やはり…あの少年、見覚えがありませんねぇ~?だけど、間違いなく何らかの神とカミシニの力を持っている?八百比丘尼さんが何処からか連れて来たのでしょうか?一体、何処から?何者なんですか?あの少年は?それに…あの少年の魂…誰かに似ている?)
倶利伽羅龍王は…
『フギャアアアアア!』
雄叫びをあげて僕に襲い掛かる。
凄まじい勢いの猛襲を炎の剣で受け続けるが、次第に身体中が傷だらけになっていく。
目が霞む…
集中力を高めなきゃ!
もっと…
もっと!もっと!
(力が欲しい!)
『うおおおおおおお!』
僕は炎に包まれながら再び倶利伽羅龍王に斬り掛かる。
その斬撃の猛攻に微動だにしない倶利伽羅龍王を見ているクローリーは…
「無理無理ですよ~!確かに子供の割に凄まじい力を持っているようですが、その倶利伽羅龍王は最強クラス!何をしようと無駄なのです!」
が、僕は攻撃の手を緩めなかった。
次第に剣を掴む手から血が流れ落ち、斬り掛かった斬撃の余波が自らの身体をも傷付けていく。
「無駄だと言うのが解らないのでしょうか?だったら、教えてあげなさい!倶利伽羅龍王!本当の力を見せ付けてあげなさ~い!」
すると、倶利伽羅龍王の身体から凄まじい覇気が放たれ、その身体から黒いオーラが立ち込めていく。それはまさにカミシニの最高クラスにのみ与えられる
『倶利伽羅の力!』
「ふふふ!やりましたよ~私は!人工倶利伽羅に成功したのです!」
膨れ上がる黒い倶利伽羅のオーラ。
それは、次第に二つの黒い玉へとして目の前に現れた。
「ヘッ?」
それにはクローリーも理解出来ずにいた。
『うおおおおおおお!』
それは、僕の中から現れた黒い闇のオーラ。
その力は倶利伽羅龍王の倶利伽羅の力に共鳴するかのように、僕の魂を揺さぶり、その力を呼び覚ましたのだ。
「まっ!まっ!まさかぁ~!?あの少年が自力で倶利伽羅の力を出したとでも??しかも黒い倶利伽羅の力を?何者なんですかぁー??あの子供はぁー!」
さすがのクローリーも、僕の身体から噴き出す黒い倶利伽羅のオーラに目を丸くして驚愕した。
ぶつかり合う倶利伽羅の力!
『みんなぁーー!』
その均衡していたオーラのぶつかり合いに、先に耐えられなくなったのは倶利伽羅龍王の方であった。身体中にヒビが、亀裂が入っていき、次第に膝をつく。
僕は膝をついた倶利伽羅龍王の前に近付き、黒いオーラに包まれた剣を振り上げる…
「クッ!やはり模造品では本当の倶利伽羅の力に身体が耐えられなかったと言うのですか!?」
違う…聞こえていたんだ僕には…
あの倶利伽羅龍王の中で苦しむ八人の皆の魂が!
「今、終わらせてあげるよ…この忌まわしい運命から今直ぐに解き放ってあげるから…
君達の魂を救った後、僕もこの力で君達の後を追うから…寂しくなんてないから…」
僕は黒い炎の剣を握りしめ、倶利伽羅龍王に向かって振り下ろす。
『それがお前の望みか?』
えっ?
何者かの声に僕の降り下ろした降魔の剣が倶利伽羅竜王の眼前で止まった。
『それがお前の本当に望む事なのか?』
僕は声のする方を見た。
『どうせ望むなら、もっとハッピーエンドを望まなくてどうする?』
そこには?
『所詮、ガキのオツムじゃそれが限界なのか?』
そこには…?
あの、おじさん…
三蔵が立っていたんだ!
次回予告
三蔵「ようやく俺の登場だ!出番がなかった分、暴れるぜ!」




