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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
神を導きし救世主!
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悲しきかな?八百比兵尼の伝説!?

全ての現況はクローリーであった。


孤児院の子供達が化け物と化し、光明がクローリーの手にかかろうとした時に現れたのは、マザーだった。


今、八百比兵尼と呼ばれたマザーの過去が語られる。


私はマザー…


かつて、八百比丘尼と呼ばれた女…


それはまだ、私が人間だった昔の話…


私の父は村の長者でした。

そんな父のもとに、外国からやって来たと言う男がやって来ました。

父はその異国の男から自分の屋敷へと招待されたのです。

誘いを受けた父は見た事も食べた事のないような様々な料理に大いに満足し、その招待した男に感謝しながら屋敷を後にしました。


そこで父は、その異国の男から土産『何かの肉』を貰った。

父は「これは何の肉ですか?」との問いに、異国の男は答えたのです。



『これは人魚の肉です』


と…


父は珍しい物が好きな方だったので、その肉を奇怪に感じつつも捨てずに持ち帰ったのでした。


その夜…


私はとてつもなくお腹が空いていたのです。

それは尋常じゃないくらいに…


(変…夕食は食べたはずなのに?どうしてこんなにお腹が空くの?)


そこで私は見付けてしまったのです。

父が持って来た血のしたたるような肉が置いてあったのを。


私はその肉に…


いえ、その肉から香る血の匂いに誘われ、その『人魚の肉』と呼ばれる肉に食らい付いてしまったのでした。まるで肉の方が私を惹き付けるかのように…


美味しかった…


私は自らの欲求に耐えられずに、その肉を生で平らげてしまったのです。


それが、後の私の人生を狂わすとは思わずに…



それから私の身体に異変が起きていく。

怪我した傷が瞬時に消えたり、いつになっても若いまま…


一年経っても…十年経っても…


村人達は人魚の肉を食べた呪いだと、私を化け物と怖れ避けるようになりました。

両親でさえも・・・


しかし別に構わなかった。

私は一人じゃなかったのです。

私には既に新しい仲間がいたのです。


私と同じく不老不死の選ばれた者達…


カミシニの仲間達が!


私の直属のリーダーは異国の男、クローリーと呼ばれる男でした。


私はクローリー博士に命じられるがまま神を狩っていました。


神を狩る?


その行為に戸惑いを感じつつも、まるで自分の細胞が血が求めるのです。


殺戮を!


その頃の私はその忌まわしき行為を楽しんでいたのです。

何か特別な存在になった優劣感に、私の心は踊っていたのでした。




その日は…


単独で神狩りを命じられ一人海を見ていました。

そして、身を投げるように海に飛び込む。


海に飛び込んだ後、私の身体から流れる血が身体を覆い包んでいく…


不思議だ…

深海でも呼吸が楽に出来るなんて…


それは私がかつて食した肉が理由らしい。

それは魚神と呼ばれる神の肉と、錬魂の雫と呼ばれるカミシニの血に特別な術を施したものだと、クローリー博士から聞いた。

そもそも、私の父に肉を渡した張本人こそ、クローリー博士だったのです。


そのおかげで私はカミシニの力だけでなく、魚神の力をも手に入れた。

神の持つ特殊な力と、カミシニの相反する力の融合…

それがクローリー博士の研究であり、私は実験に使われたのだと気付いた。


別に構わない…


こんな素晴らしい力を手に入れたのだから!


私は強力な結界に閉ざされた魚神達が住む深海の楽園へと楽々と入り込んで行く。

突然の来訪者に驚く魚神達…


(見た目は人間と変わりないけど…)



私はとりあえず目の前にいる魚神の男に向かって、自分の血で造った弾丸を放ったのです。

魚神の男は簡単に死んだ…

それを見ていた女の魚神達の悲鳴に、集まって来た武装した男達。

そして私を見付けるなりその姿が半魚神へと変わっていく。


(やっぱし化け物だ…)


半魚神と化した化け物が私に襲い掛かって来る。


が、その後は私の遊び場だった。


神を狩るのが私の役目…

私の生き甲斐!

ほんの数時間で、この半魚神達の楽園は壊滅した。


他愛もないわ…


物音がした?

と、そこに隠れていた魚神を見つける。


(…子供?子供の魚神?)


姿は人間の子供と変わりなかった。

私が手を出そうとすると、その子供は「フギィイイ」と声をあげて魚神化する。


「やっぱし化け物か」



私は無慈悲に目の前の魚神の子供の首をはねたのでした。

すると、それを見ていた別の魚神が悲鳴をあげたの。


「いゃああああああ!」



そいつは女の魚神だった。

私は「煩い!黙れ!」と、その女の魚神に向けて血の刃を投げつけ黙らせる。



「これで終わりね…思ったより簡単だったわ…」



私が地上に戻ろうとすると、先程斬り裂いたはずの瀕死の女魚神が私に向かって叫んでいた。



『恨めしい~よくも私の可愛い子供を…許さない…絶対に!私達が化け物だって?ふざけるな!貴様こそ本当の化け物だよ!恨めしい~…呪ってやる!必ずお前に与えてや………』



言い終える前に、私はトドメを刺した。



「ふぅ~化け物が化け物の子供可愛がっても、気持ち悪いだけだし、死のうが生きようが何の同情もないのよ」




この日より私は、カミシニの仲間達から『人魚喰らい』と、呼ばれるようになる。


それが、若い頃の私…


後に八百比丘尼と呼ばれたカミシニの女…




私はその後も神を狩り続け、次第に力も付けていく。

並のカミシニよりも優れていたのは、私がクローリーの実験により生み出された特殊なカミシニだから。やがて、私はカミシニの中でも選りすぐりの七賢者の一人に数えられた。


至福のひと時…


誰もが私に怯え平伏す…


だけど、その栄光は長くは続かなかったのです。

私の力がある日を境に急激に衰え始めたから?

私はクローリー博士に理由を問い詰めると、



「どうやら、君は失敗作だったようだねぇ~?いや、残念!君は私の造りだそうとしているソレの適合者じゃなかったんだなぁ~」


「…それは…どういう事なの?」



クローリーが造りだそうとしているのは最強のカミシニ。

私はただの試作品に過ぎなかったのだと…

カミシニには七賢者の更に上に、選ばれしカミシニの王が存在する。

その王達には最強に相応しい力が出現すると言われていました。


それが…


『倶利伽羅の力!』



が、その大いなる力は私を選ばなかっただけでなく、

私の中のカミシニの力はどんどん弱まる。

やがて弱肉強食の世界であるがため、七賢者の地位も新しいメンバー達に奪われたのでした。


私の居場所はなくなっていった…


「私…どうしたら…」



そんな私にクローリー博士が再び現れたのです。


「クローリー?」


クローリー博士はその姿が私の見知った顔ではなかった。しかし私達にとって見た目は気にならない。私達カミシニは血で相手を判別するのです。それは神や力を持つ人間が己から発する気や魂で相手を判別するに似ている。私達カミシニは相手の気を探れない代わりに血の匂いで居場所や能力を探れるのです。


「その姿は?」


クローリー博士は己の姿をよく別の身体へと交換したりする。

己の作った肉体に己の血を移して転生を行うのです。

そもそも不死である私達には不要な行為なのですが、クローリーが周りから変人と思われる所以でもあった。



「少し特別な実験をしたくてね?」


クローリーの姿は痩せた異国の男の姿でした。


そして…


「君に居場所をあげよう…」



突然、クローリー博士は私を押し倒したのです。

自暴自棄になっていた私は抵抗もせずに、その行為を受け止めたのでした…


クローリー博士は言った。

カミシニの女は身篭る事は出来ない…


しかし、クローリー博士の場合は別だと?

その肉体は少し特別な身体なのだと?

もし私が身篭った場合、その子供はきっと素晴らしい力を持つカミシニになるだろう…

そしたら、最強のカミシニの母として私に居場所が出来ると…

その時の私にはどうでも良かった。


間もなく私は身篭った。


だけど…


その赤子はカミシニの力を持たない普通の人間の赤子だったのです。


クローリー博士はそんな私と赤子に対して…



「また、失敗作ですか?無駄な時間でしたね…そんな失敗作はいりませんから、早く処分しておいてくださいね~」


と…


私は…その夜…

クローリー博士から逃げるように、赤子を連れてカミシニのアジトから消えたのでした。



カミシニから脱退する事は御法度…当然、刺客が幾度と襲って来た。

そんな逃亡生活に、私は身も心も疲れ果てていったのです…


でも、私には一つだけ助かる手段を持っていた…


クローリー博士が極秘に造り出していた薬…

カミシニを再び人間に戻す薬を盗み持っていたから。

だけど、それはまだ試作品。

どんな副作用があるか解らない…

私は縋るつもりで、その薬を飲み込んだのでした。


もし上手くいけば?

カミシニ達はカミシニでなくなった私を見付ける事が出来ないはず!


強烈な身体の激痛と、嘔吐の連続…身体中の至る場所から血が流れ、繰り返す私の泣き叫ぶ声…


死にたい…

いや、死ねない…


私には…

生きる理由がある…


私は眠っている赤子を抱きしめて歌を歌ったのです。


(大丈夫よ…大丈夫だからね…)


(坊や…)





そして、目が覚めた時…


私からカミシニの力は一切消えていました。

追ってきていたカミシニ達も、私のカミシニの反応が突然消えた事で私が何らかの理由で死んだと思い、追って来るのを中断した。


助かった?


だけど、カミシニの力を失うと同時に…

私は自分が誰なのかも解らなくなっていたのです。



記憶喪失…



私は私が誰か解らないまま、我が子と共にこの世界に取り残されたのでした。


次回予告


三蔵「まさか、このマザーの過去が、あの話と・・・」

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