お前となら・・・
明王鬼神に追い込まれた若き日の大徳と三千院は?
俺は大徳力也…
俺と小角殿、三千院は明王鬼神と呼ばれる化け物を相手にしていた。
俺は三千院のアドバイスを受け、その力を更に上げていく。
俺と三千院は明王鬼神を囲みながら、この化け物を倒す策を考えていたのだ。
急がねば、小角殿の身が心配だ…
何せ二体の明王鬼神を相手しているのだからな?
「で、当然何か策があるのだろうな?天才さんよ?」
「当然だ!私は天才だからな!だが、それにはお前の力が必要だ!」
「俺の?フム。良いだろう!俺は何をすれば良いのだ?」
すると三千院は俺にテレパシーを送りながら、策を伝えて来たのである。
「任したぞ?」
「あっ?あぁ…だが、それは…まだ完成していないって、おい!」
「自信を持て!期待しているからな!大徳よ!」
「チッ!解った!お前も時間稼ぎ頼むぞ?三千院!」
三千院は一人明王鬼神に向かって行き、俺はその場に残り、腰を下げながら空手の構えを取りつつ全身の気を集中させる。
全く…あの野郎…俺が一人隠れて、技の鍛練をしていた事を知っていたのかよ?
だが、まだこの技は完成してはいない…本当に大丈夫なのか?
その時、三千院の言葉が頭の中をかすめる。
(期待しているからな…)
期待か…良いだろう!
天才さんに俺の底力を見せてやるよ!
その技とは三千院に助言を与えられて修得出来た技を、独自に改良した奥義。
だが、少し技を発動させるのに時間がかかるのだ。
三千院は明王鬼神と対峙した後、軽快なフットワークで明王鬼神の凄まじい攻撃を躱していく。三千院は相手の動きのパターンを戦いながら分析しているのだ。
その中で、幾度と攻撃を繰り出してはみたが、明王鬼神にはびくともしなかった。
「やはり無駄か!」
三千院は術札を懐から取り出すと、凄まじい攻撃をくぐり抜けながら明王鬼神に投げつけた術札が爆発して明王鬼神は爆風によろめくが、その腕が三千院に迫って来たのだ。
「クソ!」
その直後!
『三千院!頭を下げろ!』
俺の声に反応して、三千院が身を下げると強烈な一撃が明王鬼神に向けて放たれた。
それは巨大な『拳』
俺から放たれた拳の突きが、明王の覇気となって明王鬼神に強烈な一撃をくらわしたのだ。
『明王の鉄拳!』
だが、明王鬼神は傷付きながらも、再び立ち上がろうとして来た。
(やはり、一撃では無理か?)
だが、既にもう一発の準備は出来ている!
俺は飛び上がり、明王鬼神に向けて落下しながら新たな技を繰り出したのだ。
『明王の鉄槌!』
明王の力を得て俺から放たれた一撃は、その神懸かりな破壊力をうむ。
振り下ろされた拳は神の拳と化し、明王鬼神を木っ端みじんに潰したのだった。
「やったぞぉ!どうだ三千院?俺の必殺奥義を見たか!」
「…………」
俺の喜びを無視して、不満そうな三千院…
一体どうしたのだ?
「三千院?」
「ふん!この私に頭を下げさせた事は許さんからな?」
「はい?」
頭を下げさせたって?攻撃の際に避けさせたアレか?
その後も三千院は無愛想な顔をしていた。
って、子供かぁー!
俺達は倒した明王鬼神を手にした勾玉に封じると、直ぐさま小角殿のいる場所に向かった。
そこには小角殿が力尽き傷付きながら倒れていた。
「小角殿!」
しかし俺が駆け寄ろうとした時、三千院が制した。
「何故、止めるのだ?」
「明王鬼神が他に二体いるはずだ!迂闊に近寄るのは危険だ!」
「確かに…」
俺と三千院は辺りに気を張り巡らせ、明王鬼神の居場所を探ったのである。
何処だ?何処にいる?
緊張が走る。
が、そいつ達は俺達の背後から音もなく現れたのである。
俺達は転げるように背後から現れた明王鬼神から距離を取ったのだ。
「相手は二体…こちらも二人か…」
「馬鹿を言うな!先程のように二対一じゃないのだ!隙をつく策は出来ぬのだぞ!」
「で、天才さんは策はあるのだよな?」
「解って来たな?天才である私にぬかりはない!」
マジか?冗談で聞いたのだが、この状況下でマジに策があるのか?
すると三千院は言った。
「先程の小角殿の使った変化の術を見ていたよな?あれを試す!いや、むしろ試してみたい!いや、もう、あれしかない!」
こいつ…
興味持った事を直ぐに試してみたくなる好奇心かよ!
天才って奴は解らん…
だが、小角殿が使った変化とは鬼を自らの魂に取り込み一体化するあれか?
すると俺達は明王とか?
「無理だ!あのような大技!それにぶっつけ本番で出来る訳がなかろう!」
「臆するな!お前なら出来る!お前は私と同じく明王に認められし者なのだからな。己を信じて、後は己の弱さに打ち勝つ事のみ考えるのだ!」
全く…歳下のくせに…
エラソーな!!
解ったよ!
「やってやるぜぇ!」
俺と三千院はお互いの明王の真言を唱える。
『オン・ソンバ・ニソンバ・ウン・バザラ・ウン・パッタ!』
『オン・シュチリ・キャラロハ・ウン・ケン・ソワカ!』
俺達の身体から明王が抜け出していくのは、
降三世明王!
大威徳明王!
俺達が命懸けで手に入れた明王なのだ。
(大丈夫…出来る!)
そして、再び明王が俺達を包み込むように吸収されていったのだ。
「意識を保ち、魂を一つとするのだぁー!」
「わかっている!!」
明王の魂と一つに!
『ウオオオオオオ!』
そこには、三千院が見事に明王として後臨したのだ。
『明王合神!』
『降三世明王・一真!』
だが、俺の方は?
明王の凄まじい魂の力に飲み込まれようとしていたのである。
次第に俺の姿は鬼神へと変化していく…
ダメだ…意識が飲み込まれる?
「アガガガガガ!」
その時、再び三千院が俺に叫んだのだ!
「大徳!その程度か?お前は生きて、私の隣に並び立て!」
なに?俺がお前と並び立つだと?
ふふふ…
天才と並び立つ事が、どんだけキツイか解っているのか?
だが、お前となら俺は…
何処までも強くなってやるよ!
今ここに、新たな明王が後臨したのだ。
『明王合神!』
『大威徳明王・力也!』
その後、明王と化した俺達は見事に二体の明王鬼神を封じる事に成功したのだ。
俺と三千院は倒した三体の明王鬼神を、勾玉の中に厳重に封印したのである。
「全く、お主達には本当に驚かされたわい!」
「小角殿もご無事で何より!」
「で、この勾玉はいかがなさるのですか?小角殿?」
「この勾玉の中にはお主達と同様に明王の魂が眠っておる。いずれお主達と同様に選ばれし者達の手で封印が解かれ、我々の新たな力になろうて!」
新たな力…
俺達と同じ仲間か…
その時、俺が持っていた勾玉が光り輝き、突然強い力で宙に浮かび飛んで行ったのだ。
「なに!?」
「あそこに誰かいるぞ!」
三千院が指差した先には人影があり、その方向に勾玉が飛んで行ったのだ。
「させぬ!」
咄嗟に小角殿は数珠に気を籠めて、飛んで行く勾玉に放ったのである。
数珠は勾玉の一つに当たり、その弾かれた勾玉をいつの間にか駆け出していた三千院がキャッチしたのだ。
だが、もう二つの勾玉は隠れていた人影が手にしたのである。
すると、その人影は俺達の前に現れたのだ。
『あんた達の戦いを見せてもろうたが、ほんまに驚かされたや!あんたら達のような、か弱い人間が明王鬼神を封じるんやさかい!』
関西弁??
俺と三千院は再び明王に変化し、その人影に向かって行く。
「何者だぁー!その勾玉を返しやがれぇー!」
「くせ者!参る!」
が、俺達二人はその人影から放たれた波動により弾き飛ばされたのだ。
そして人影の男はその姿を俺達の前で変化させて見せたのだ。
緑色のオーラに包まれた東洋人?
だがその姿は、俺達と同じく明王の姿をしていた。
そして、そいつは言った…
『ワテは明王を集めし者や!いずれ、やんはん達の持つ明王も戴きに参るさかい!それまでぇ充分に力を付けて置くんやな!』
な、何だと??
『ワテの名は孔雀明王・孔宣!』
すると、そいつは俺達が苦労して手に入れた明王の魂を奪い、五色の光を放って飛び上がり、孔雀のような翼を羽ばたかせ飛んで行ったのだ。
そして、俺達の戦いは謎の男の出現と同時に幕を閉じたのだった。
場所は現代、総本山の稽古場。
「ふぅ~」
俺は今、三蔵と蛇塚、それに晴明に修業をつけていた。
こいつ達を見ていると、昔の俺と三千院の姿が被って見えてくる。
互いが認め合い、刺激しあって、共に成長しながら逞しくなっていく…
ライバルか…
俺は感じていた。
俺達は皆、更に高みへと昇っていくだろうと。
次回予告
三千院「不満だ・・・」
三蔵「どうした?三千院?」
三千院「大徳やバサラ、それに蛇塚の過去話がやけにドラマがあったのに、どうして私のは短編扱いなのだ?」
三蔵「・・・・・・」
三千院「どうしてなのだ?」
三蔵「・・・・・・」
三千院「どうしてなのだ?」
三蔵「・・・・・・」
三千院「どうしてなのだ?」
三蔵「・・・・・・」
三千院「どうしてなのだ?」
三蔵「・・・・・・」
三千院「どうしてなのだ?」
三蔵「・・・・・・」
三千院「どうしてなのだ?」
三蔵「次回予告だ!次回はそんな三千院の・・・な話だ!」




