表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
神を導きし救世主!
252/424

不動鷹仁が残したモノ?

三蔵の義兄である三千院一真は、天才であるが、よく解らない人物だった。


それは西暦2000年の戦いが終わった後の話…


私の名は不動鷹仁…


私はあの絶対的境地の戦場の中、奇跡的に生き抜いた。



それから後の私の人生は、一人修業の道だった。

妻[修羅姫]や娘[卑弥呼]とは、それっきりになった。

私は一人になりたかった…


一人に…



「何故に私は生き残ったのだ?何故?」



あの戦いが、私にとっての全てだった。

私はあの日のために生きていたに違いない。

では、何故私は今こうして生き残っているのだ?


解らない…


あの戦いの中、明王は再び同じような…いや!もしかしたらもっと過酷な戦いが待っていると俺達に告げた。もし再びあのような戦場が起きて、俺に何が出来る?


何も出来やしない…


そんな情けない自分を追い込み、恐怖から目を背けて、私は自分自身を痛めつけるかのように鍛練の日々に身を通していたのだ。

今の私の実力は、あの日の自分を遥かに越えていた。


だが、私は知っている。

この程度では、再び生き残る事なんか出来ないと…


それだけの戦場だった。


あの日…私は無力で、妻が命を張って救ってくれた世界。


無力感しかない。


行き場のない怒りで、自分を追い詰める毎日…


「こんなんではダメだ…もっと、神懸かりな力がないと!」



そんな時、私の脳裏に浮かんだのは不動明王の魂が封じられている箱[パンドラの箱]の存在であった。あの力さえ、あれば…私は次第に、その力に惹かれていった。


だが、明王はこうとも言っていた…



『明王の魂に相応しくない者には、命がない…』



私に出来るのか?

私は明王に相応しい存在なのか?

自信がなかった。



私は臆病だ…

私は山に篭りながら、滝に打たれ、ひたすら考える日々が続いた…



そんな時、心の隅に浮かぶのは修羅姫と卑弥呼…

そして、一人残した息子の存在だった。


馬鹿か私は?

捨てた者に執着しているのか?


情けない…


そんな私の元に友人であった三千院当主[当時の]から手紙が届いた。


その手紙には…


「パンドラの箱が開かれるだと?」



三千院家にも私の不動寺院と同じく『パンドラの箱』が置かれているのだ。

その箱が、近いうちに開かれるとお告げがあったのだと言う。

だが、三千院家の主は不治の病にかかっており、その命は長くなかった。


代わりにパンドラの箱を開く事を任されたのが、次期当主の一真…

私の血の繋がった息子なのだと…


三千院は私に息子を返す事は断固と拒否した事もあり、こんな事を頼むのも抵抗があったのだが、私にしか頼めないと。友であり、息子の本当の父である私にしか頼めないと手紙には記されていた。


一真を任せたいと…


それは、パンドラの箱を開く運命にある一真の安否が心配で、意地やプライドを捨て去り頭を下げている父親のようであった。



(まったく…本当の父親よりも、父親じゃないか…)


息子を任せるか…


そこで私は二つ返事で了解した。




一つ…


『今より一年の間、息子と二人きりにさせる事』


三千院の奴は病は一年はもたないだろう…

それは、死に際に息子(一真)には会えない事を意味していた。

三千院はそれでも構わないと言った。


本当、父親だよ…

別に私は、嫌がらせをしようとしている訳じゃない…


この一年の間に、私は息子に自分の持つ有りったけの技術を叩きこもうと考えていたからだ。


そして、もう一つ…



『息子には私が本当の父親とは知らせない事…』だった。






そして、私は数年ぶりに息子に会いに行ったのだ。


数年ぶりに見た息子は…

歳は14歳か15歳くらいだったか?


私と同じ赤い髪に…

人を見下ろすような生意気そうな顔付きをしていた。


『…………』


それから、息子と私との二人だけの修業の日々が始まった。

息子は最初は私に対して無関心だったが、私の使う様々な術には興味を持ったらしく、意外と真面目に取り組んでいた。


二人の時間は、私にとって居心地の悪い感じがした…

何を話せば良いのだ?普通の親子は何を話すものなのだ?

いやいや、そもそも親子である必要がないのだ…


私は一真に対して、師匠として厳しく接した。

が…正直、驚いた。


何て吸収力だ…

私が幾年もかけて得た秘術を、この子供は数日で会得していったのだ!?


まさに天才だ!!


そうだった…余りにも娘である卑弥呼の存在感が強くて忘れていたが、この子もまた修羅姫の子供なのだ。天才じゃないはずがない特別な子供だった。



(ふっ…私だけが凡人なのだな…)



そして、もう一つ解った事がある。

こいつは天才と褒めてやると、気合いが違うのだ。


褒めて伸ばすか?


一真は、半年そこらで私の持つ技術を全て会得したため、私は一真を連れて三千院寺院へと一時戻る事にした。それは、友である三千院の奴が危篤だと知ったから。


三千院は床に伏せていたが、死ぬ間際に一真に会えて涙を流していた。

そして私に何度も何度も感謝をしていた。


その日、三千院は安心した顔で息を引き取った…

一真は無言で三千院[義父親]を看届けると、黙って部屋を出て行った。



(あいつは何を考えているのだ?奴の考えている事が未だに解らない…せめて涙の一つでも見せていれば、可愛げもあろうものを…)



その晩…私は三千院寺院に泊まり、これからの事を考えていた。



(一真に明王を手に入れさせる…)



それが死んだ友人でもある三千院に誓った私のケジメであった。

それに一真を死なせる訳にはいかなかった。

私にも僅かながら父親としての何かがあったのかもしれない…


その時だった!

突然、強力な魔力の波動を感じたのだ!?



「何だ!?何が起きているのだ!?」



私は直ぐさま身仕度をし魔力の波動のする方へと向かった。


そこは、道場?

道場は幾重にも強力な結界が施されていた。

しかも、私が一真に教えた結界だと?

その時、私は感ずいた。


「あの、馬鹿が!」



私は道場の結解を僅かに解いて中へと入って行く。


障気で前が見えない…

私は印を結び、浄化の気を放って突き進んだ。


(間違いない!)


この中にいるのは、一真!

あいつは一人でパンドラの箱を開いたのだ!


何て無茶を!!


そして私がそこで見たのは…


パンドラの箱から現れた魔物をたった一人で撃退し、傷付きながらも、道場の真ん中で立ち尽くしていた一真の姿であった。


私は駆け寄り、一真の肩を掴み叫んだ。


「馬鹿者!何て無茶な事をしているのだ!」


一真は黙っていた。


「何故このような真似を?どうして私を待たなかったのだ!」


すると、一真は肩を震わせながらも無表情に口を開いた。



「自分でも愚かな真似だと解っているはずなのに…だけど、あの世に逝かれた父上が心配しないように…少しでも早く安心して成仏してくださるように…」



私は知った。

この子は感情を表すのが不器用なだけで、本当は父親が亡くなった事に心が痛く動揺していたのだ。この子は父親を愛していたのだ…


私は嫉妬もあったが、今まで見えなかった一真の心を知って嬉しい気持ちになった。


私は数珠を手に握りしめ…



「一真!明王をお前のモノとせよ!そして、父親の墓前で報告し安心させてやるのだ!」


「はい!師匠!」



私と一真は、目の前に現れた明王の激しい試練を勝ち得て、見事に一真は降三世明王との契約に成功した。そして、これが親子としての最後の共同作業になったのである。




それから数年後…

私は不動明王との契約に失敗し、命を失った…


だが、意外と心残りはなかった。


やるだけの事はした…

無理だと解っていても、何もせずに生きるくらいなら、生きた屍になるくらいなら…

私は命を懸けてでも己の信念を貫き通したかった。

所詮は自己満足と言われようが、私は私の道を歩んだのだ!



馬鹿な父親だが、もしお前がこんな私の願いを叶えてくれるなら…


頼みたい…


私と修羅姫が生きたこの世界を…


卑弥呼…


そして、一真…


お前達に託したいと…




それから…


不思議とあの少年の姿が心に残る。


私の死に際、小角と共にいた少年よ…


君にも託して良いか?


この星の未来を…

次回予告


三蔵「託されたぜ!任せろ・・・次からはようやく俺が主役の物語だ!」


三千院「何を戯けた事を?次は私と大徳との話だぞ?」


三蔵「何だと??最近、マジに出番なくないか?俺?


ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!


俺が主役です・・・」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ