小角の賭け!
人間達の前に現れた強い味方は神の転生者だけではなかった。
それは、頭上に黒い角を二本ある鬼の少年だった。
俺は鷹仁…
至る場所で天使達の脅威が迫る。
残存、二割程度…
いつ全滅してもおかしくない状況下だった。
そんな中、聖獣族のいる地区に現れた少年がいた。
その少年は炎天使[ケルビエル]の前に立ちはだかったのだ。
「なんだお前?もしかして僕を相手にしようとしているんじゃない?アハハ…嫌だなぁ~力の差が分からない人種は~」
ケルビエルは呆れた顔で少年を見ていた。
「現れて早々悪いんだけど死んじゃって良いよ?」
ケルビエルの掌から、辺り一帯を消し去る程の業火が少年に向かって放たれる。
大地が焦げ蒸発する中で、少年は包まれていく。
「全く隠れていれば良かったのにね。そもそも、この世界にいる全ての生き物はそのうち消えて無くなる運命だったから早いか遅いかだったんだけどさ!」
が、ケルビエルはその後の状況に目を見開いたまま唖然として動けないでいた。
何故なら、ケルビエルの放った炎が見る見るうちに消えていったから。
吸い込まれるように?
飲み込まれるかのように?
いや?実際飲み込まれたのである。
あの少年によって。
少年はケルビエルの炎を自らの口の中に吸い込み、食べてしまったのだ。
「ぷはぁ~!これが天使の炎かぁ~?まぁまぁご馳走だったぜ!」
「なっ?まさか!お前は僕の炎を?」
「ゴッチだ!じゃあよ?次は俺様の番だな?」
少年は両手を開くと翼のように炎が燃え盛り、炎の弾丸が少年の前に出現した。
『炎弾覇気翼!』
※エンダンハキヨク!
少年が翼を羽ばたかせるように扇ぐと、炎弾がケルビエルに向かっていく。
「ナメるなよ!雑魚がぁ!」
ケルビエルが炎の盾を造ったが、間に合わずにケルビエルは炎弾の的になった。
「うぐわぁああ!」
しかしケルビエルは全身傷ついたが、自らの炎が傷痕を燃やし再生していく。
炎はケルビエルにとって無限の力と再生力を与えているのだ。
「き…キサマ!汚らわしい炎で僕の身体に傷を?許さない!」
今度はケルビエルは背中の炎翼を羽ばたかせ、少年に向かって突進する。
ケルビエルは少年の寸前で舞い上がり、空高くから少年の一帯に炎弾を撒き散らしたのだ。
「うわあああ!」
流石に少年も頭を抱えて躱しつつ…
「こりゃ…たまらん!ピィちゃん頼むぞ?」
すると少年の肩に先程の小鳥が現れて頷くと、輝き始める。
『四霊変化唯我独尊!』
少年の身体が発光し光の中に包まれていく。
『煌めけ!鳳凰!』
直後、凄まじい光の中から怪鳥・鳳凰が舞い上がったのだ。
「なっ?なんだ?お前は!」
ケルビエルの視線の前には、燃える翼を羽ばたかせ鳳凰の神衣を纏った少年が浮いていた。
「さぁ~て!俺様の本気を見せてやるぜ」
「こいつ!ムカつくぞ!それに、お前からは悪魔フェニックスの力を感じる!お前は悪魔ゆかりの者か?」
「フェチっ靴?ふざけるな!誰が靴の匂いを嗅いで喜んでいるって?俺様にそんな趣味はないぞ!」
「………」
「………」
二人の間に一瞬時が止まった。
そして各々相手に対して怒りの感情が膨れ上がる。
「このバァカー!」
「馬鹿と言った方が馬鹿なんだ!バァカー!バァカー!」
お互い炎を纏いながら空中で激突した。
その様子を呆然と見ている白虎達…
「あの少年は仲間なのか?」
「解らない。だが…」
玄武と青龍は戸惑うしかなかった。
そして守るように結解を張る朱雀は三人に対して言った。
『あの方は味方だよ!だから安心して!』
三人はただ空中戦を見ているしか出来なかった。
場所は変わる。
俺の目の前で力無く落下していく小角…
(ま…まだじゃ…)
落下する小角は寸前で体勢を整え、力天使に向かって攻撃の手を止めない。
(諦めぬ!諦められぬ!儂にはまだ…まだ生きなければならぬ!あの方の未来を残さねばならぬ!じゃから儂は負けられぬのじゃ!)
小角にはまだ勝算があった。
(かつて、金角と銀角には特別な能力を持っておったのじゃ…。この妖怪は天より落ちて来た神を喰らい、その力を得て己の力をも上げたと言う。これは金角・銀角当人ですら知らぬ事じゃったらしいのじゃが、この二匹の妖怪には神を封じる能力を持っていたのじゃよ…今こそ、その力を使わせて貰うぞよ!)
再び天使と戦う小角は力天使の攻撃を寸前の所で躱し、少しずつ後ずさっていく。
それは誰からにも追い込まれているように見えた。
だが、それも小角にとっては、計算尽くされた策だった。
しかし、力天使の攻撃をまともにくらえば、小角もただでは済まない。
先に与えられた攻撃の傷も癒えてはいなかった。
小角の身体は当然の如く立っているのも奇跡的な状態だったのだ。
全身の骨にヒビが入り、肉に突き出し刺さる。
それを冷気で凍結し、応急処置をして戦っていた。
痛みはハンパないはずなのに…
俺は小角の勇姿を、ただ見ているしか出来なかった。
俺は…俺は何のためにここにいるのだ?
何のために生き残っているのだ?
そして、ついに小角が動いた。
小角は力天使の攻撃を躱しながら、少しずつ…少しずつと…
『今じゃあーーー!』
小角は戦ながらミカエルに近づいていたのだ。
リーダーであるミカエルを己の中に封じ、その力を奪うための作戦。
小角はミカエルへと迫っていた。
後、少し!上手くいってくれ!
小角がミカエルの手前まで来た時、その技は発動した。
『一体完!』
※イッタイカン!
小角の身体から吹雪が吹き荒れ、氷の柩がミカエルを覆い隠していく。
ミカエルの方は身動き一つしていなかった…
やれる!
ミカエルの姿を氷の柩が全て覆い隠した時、その技は完成を見せた。
後は、その柩の神を自らに取り込むだけのはずだったのだが、小角は目の前の出来事に驚愕していた。
「そんな馬鹿な!?」
小角の目の前にある柩が開かれた時、そこにはミカエルではなく、先程まで小角が戦っていた力天使が入っていたのだ。
「い…いつの間に?」
すると、小角の目の前にミカエルが何もなかったかのように現れて口を開く。
『つまらん策だ…人間がどれだけ神に対して足掻くか見て見たかったのだが、やはり無駄なようだな?』
「クッ!じゃが、諦めはせぬ!」
小角が印を結ぶと、柩の中の力天使をその身に取り入れたのだ。
同時に小角から凄まじい神力が沸き上がる。
「力天使の力を上乗せしたのじゃ!せめて、一矢報いてやろうぞ!」
力天使を取り込んだ小角はミカエルに向かって行く。
ミカエルを守るように二体の力天使が道を阻むが、小角はすり抜けるように躱した。同時に二体の力天使は身体に衝撃を受けて木っ端微塵になって消えた。すれ違い様に小角が拳を放ったのだ。先程とは比べ物にはならない力を小角は手に入れたのだ。
そして狙うはミカエルだけであった。
小角はミカエルに近付き!
『絶対零度!』
強烈な冷気がミカエルを包み込んでいく。
が、それまでだった。
小角の放った絶対零度の冷気はミカエルの身体より放たれた光の前に打ち消され、無数の光は小角の身体を突き刺したのだ。
「ぐっはぁー!」
流石の小角もそこまでだった。
力なく落下する小角を残った力天使が頭を掴み持ち上げると、ミカエルの前に曝す。
小角…俺には何も出来ない…
見殺しにしてしまう俺を誰が咎められようか?
圧倒的な戦力に傷付き身動き出来ない俺では無力!
それに相手は神なのだから…
次回予告
三蔵「小角ぅうううううう!!まさか、小角はミカエルに殺されて?そんな・・・馬鹿な!!」
蛇塚「馬鹿はお前だ!!」
三蔵「冗談だよ!しかし半端ないよな?この状況で人間達はどうやって生き残れたんだ?」
三千院「それは、次の話までお預けだ」




