波乱を呼ぶ救世主?修羅姫!!
三千院により語られる西暦2000年の歴史に残らなかった聖戦?
それは…
『ロスト・ラグナロク』と、呼ばれた。
俺は、三蔵だ!
三千院により語られる西暦2000年の歴史に残らなかった聖戦。
それは『ロスト・ラグナロク』と、呼ばれた。
だが、話はその十年前へと遡る…
世界の終わりを早くより予知した『力』ある者達は、世界中の能力者を導く者。
つまり指導者を求めたのである。
そして、選ばれた者が…
日本にて霊能者達を束ねる『座主』と呼ばれる存在であった。
座主の正体を知る者は数少なく、その正体は日本を中心に影で魔物の脅威から守り続けている一族。また、その一族が女主である事もまた一部の者達しか知られてはいなかった。
そして、現当主であった座主。
卑弥呼一族の末裔を知る者達はこぞってこう呼んだ…
『史上最強の卑弥呼』
『緑髪の修羅姫』と・・・
元来、卑弥呼一族は特別な力を持って産まれ、人間の領域を超越していると言う。
修羅姫と異名を持ち、そう呼ばれるこの卑弥呼は、神にも匹敵する過去の卑弥呼一族の中でも類をみない力を持っていたのだ。
だが、それだけではない…
修羅姫は産まれた時から緑髪で、その容姿端麗な顔立ちからは想像出来ぬくらいの問題女。
その異名の如く好戦的で傍若無人。
狂暴かつ…傲慢…
欲しいものは必ず手に入れるというのだ。
それが広まったのが、当時から噂になっていたヤオヨローズと呼ばれる神の転生者の集団とのいきさつもその一つだった。
修羅姫は何の前触れもなくヤオヨローズ達の集会所に現れ、言った。
『あんた達!なかなか腕っ節があるみたいじゃないの?気に入ったから私の舎弟になりな!』
一瞬、耳をうたぐるヤオヨローズのメンバー…
『アハハハハ!ふざけた女だぁ!』
そこに笑いながら現れたのが、スサノオと呼ばれるヤオヨローズのリーダーだった。
(…って!?スサノオだって??)
スサノオは修羅姫に近付くと、威圧して見下ろす。
凄まじい神圧でナメた口をきいた修羅姫を押し潰そうとしたが、夜叉姫は平然とスサノオに向かって手を差し出したのだ。
握手?
スサノオは無意識に反応して、手を出してしまった。
その瞬間!!スサノオの呼吸が止まった。
スサノオは訳が解らぬまま、頭を整理する。
ミゾウチ?
スサノオの腹部に、修羅姫の拳が突かれていた。
『アガガガ!』
凄まじい衝撃に堪らず息も出来ないくらい苦しむスサノオだったが、口を開いたまま呼吸を整える。そして突然の宣戦布告に顔を真っ赤にしながら頭にきて、修羅姫の顔を殴りつけたのだ。
が、修羅姫は拳を受けたにもかかわらず、耐え凌ぎ、再びスサノオの顔面を殴りつける。
二人共よろめくが、互いに負けず嫌い。
意地になった二人は一端呼吸を整えた後、凄まじい連打で殴り合いを始めた。
唇が切れて口から血が…
全身に痣が…広がっていく。
(何だ!こいつは?人間だろ?女だろ?何なんだ!マジにこいつは!?)
見ると、修羅姫は楽しそうに笑っているじゃないか?
スサノオは背筋に寒気が走った…
が、自分もヤオヨローズを仕切るリーダー。
何処の馬の骨だか解らない来訪者に負ける訳にはいかなかった。
殴り合いは一時間程度で終わった…
勝敗は引き分けだった。
二人とも息を切らせながら、最後は大笑いをし、その場にぶっ倒れて…
『楽しかった~!』
と、握手をし友情の契りを交わした。
『人間の女よ!気に入ったぞ!俺は貴様のような人間…いや、女は初めてだ!もし、お前に何かあったら俺達ヤオヨローズが力を貸そう!』
『ふっ!お前もなかなかの男ぶりだったぞ?私の名前は卑弥呼!まぁ、周りの連中からは、修羅姫とも呼ばれているがな!』
(この女が噂の修羅姫か?)
既に修羅姫の噂は出回っていた。
お互いは顔を腫らせながら握手をし、再び大笑いをしたのであった。
その後、裏世界でヤオヨローズの知名度が上がれば上がるほど、座主(修羅姫)の知名度も上がっていく。修羅姫の武勇伝と呼ばれる幾つかが、そういったものだった。
人間が神の転生者であるスサノオと拳で語り合うような化け物?
しかし、その張本人が女であったとは誰も信じまい…
そんな人格に問題のある修羅姫が統率者として相応しいのか?
だが、誰もが…
『この方なら…世界を救える…』
と感じさせるような…
修羅姫には、そんなカリスマ性をも備えていた。
そして今、座主である卑弥呼(修羅姫)を筆頭に、世界の終末に向けて様々な猛者達が集い始めている。その傍らには参謀として、修験者達を纏めて来た大物がついていた。
その者とは役行者こと小角であった。
「座主殿、何を笑っていられるのかな?」
「小角?いや?何ね…」
「?」
「これだけの男達に囲まれ、敬われる私は…」
「………」
「まさに女王様気分だわ!」
胸を張り、高笑いをする修羅姫に小角も溜息をつき呆れる。
「はぁ~やれやれですぞ…」
「しかしのう~」
「今度は何でしょうか?」
「私を濡らす男が、いまだに見当たらないのが不毛だわ!」
「貴女って人は…」
「だって、そうじゃないか?私みたいな最高の美貌と力を兼ね備えて、いまだ男の一人も出来ないなんて絶対おかしいわ!世の中おかしい!こんな世の中壊してやりたいわ!私の手で…ふふふ…」
「って、オイ!世界を救う筆頭が世界を壊してどうするんじゃい!」
「アハハハハ!冗談よ!冗談!まだ男を諦めた訳じゃないわ!アハハハハ!」
(て、そっちかよ!)
「話は変わりますが、世界中にいる神々の転生者への助力を空海に行かせていますが、まだその腰をあげない者達もいるようですな…」
「う~ん…あんまり言う事きかないようなら、私直々にケツを蹴ってでも…」
「止めてください!世界の終末より先に、神の転生者を相手に戦争になりかねませんから!」
「つまんないなぁ~!私自身、動いていた方が性にあっているのになぁ~!せっかくの有り余る力が惜しいわ!前に殴り合ったスサノオみたいに私相手に喧嘩を売る奴いないかなぁ~」
「マジに危険分子ですな…貴女は…」
「そのくらいじゃなきゃ、『神を導く救世主』なんかやってらんないわ!」
神を導く救世主とは、古より伝わる預言に出てくる救世主の事である。
その者は人でありながら世界の終末の時、人類だけでなく神をも従え、先導する救世主が現れるという伝承。この修羅姫こそ、まさに神を導く救世主なのではないか?
誰もがそう信じていた…
そんな中…
「座主め…全くもって、忌ま忌ましい…」
それはある寺院…
高僧の姿をした男が、渋々と座主に対して敵意を抱いていた。
「奴をこのまま野放しにしていたら、今まで築いてきた私の地位が危ういではないか?そもそも、日本でも指折りの名家である我が寺院こそが、日本の…いや!世界の君主であるはずではないか!悔しい…」
すると、そこに一人の男が入って来た。
見た目25歳くらいだろうか?黒いコートに、サングラスをかけた男…
「待っていたぞ!お前に殺ってもらいたい者がおるのだ!」
高僧は男に一枚の写真を見せる。顔は写ってはいなかったが、噂に聞く座主である事は男にも直ぐに分かった。男もまた、裏世界に生きる者であったからだ。
しかも、裏の闇…暗殺を生業としている者。
高僧は男に命じる。
「任せたぞ?その者さえ消えれば、次に世界を導く者に選ばれるのは儂に間違いない!その座主は噂が一人歩きし、名高いほどの実力者なのだと噂されているが、多分…恐らくは作り話に違いない。なにせ神の転生者とやり合える人間がいるはずがない!そんなホラ話を信じた信者が増えていて、目障りで仕方ないのだ。まさに邪教集団の親玉なのだからな!」
男は…
「誰であろうと関係ない…俺は与えられた仕事をするだけだからな…」
「ふふふ…頼もしい。流石は私の息子だ!任せたぞ?」
男は頷くと、そのまま襖を開けて部屋を出ていく。
そして長い廊下を歩きながら思う。
(何が息子だ…今まで息子として見た事があるか?まぁ、あんなゲス野郎に息子扱いされるのも虫ずが走るがな…)
男はサングラスを軽く上げると、その瞳は紅く輝いていた。
次回予告
三蔵「まさか、あのスサノオとガチにバトれるなんて?
マジにどんだけって感じだよな?」
卑弥呼「まだお母様の武勇は序の口ですわ?」
三蔵「マジか??」
三千院「母上は変わり者だったからな・・・」
卑弥呼「本当に・・・」
三蔵「・・・・・・」
(お前ら兄妹もな?)




