最低と罵るが良い!三蔵の決断!?
三蔵と卑弥呼
その宿命の出会いと結末は?
俺は三蔵だ!
当然、飛び出した俺に座主[卑弥呼]は慌てる事なく返した。
「お待ちしておりました」
驚く事なく動じない座主に対し、俺はと言うと逆に動揺を隠せないでいた。
「あっ!えっと…えええ?すまねぇ!すまねぇ!って、何で謝る俺?いや、謝るべきか?いやいや…とにかく!」
そこで俺が意を決して言った台詞は…
『お前には悪いが…俺はお前と所帯を…夫婦になるつもりはねぇ!』
最低な別れ台詞だった。
そうだ…俺には…無理なんだよ…
たとえ過去に命を助けられた恩人だろうと、そんなんは関係ない!
「最低と罵るが良い!殴る蹴る…受けて立つ!簀巻きにして太平洋に流す?う…受け…て…立つ…。慰謝料?いくらかかるか解らんが、一生働いてでも…何とか用意してやる!だから…
すまねぇ!」
そんな自暴自棄的な?まるで一人コントをしているような情けない俺に対して、卑弥呼は何も言い返さなかった。俺はいてもたってもいられずに…
「じゃあな…もう二度と顔を見せねぇから…」
卑弥呼から顔を背けた。
この後、俺には追っ手から逃げる生活が始まるわけだな…
いやいや?そんな事を考えてしまう俺は余裕あるのか?
違う…ダメなんだよ!
こんな時の女の顔なんか見てられねぇよ…
それにさっきも言ったが、この女は俺にとっての恩人?いや!今の俺がピンピン生きていられるのも、この女のお陰なんだ。
それは、幾度と死の淵を歩いて来た俺がこの世に再び生還して来た理由?不死身?
そんなもんじゃねぇ…
確かに俺には並外れた治癒力があるんだが、そんな域を越えるギリギリ線の戦いの中に俺はいた。そんな中、俺は死にかける度に不思議な感覚に陥っていたのだ。
そう…まるで誰かに抱き包まれているような感覚に…
幼少期…
小角が死んだ時…
カミシニとの戦いでアライヴに胸を斬られた時。
そして、中国遺跡での蚩尤との激闘の後…
俺とは別の力によって死の淵から引っ張られるかのように、この世に戻って来れたんだ。
それも全て…お前、お前だったんだな?
この優しさに満ちた力の主はいったい何者なんだ?
気のせい?
違う…
俺は無意識に気付いていのかもしれない。
初めてこの女と出会った時にも同じような感覚に陥った。
俺はそれを認めたくなくて、飛び出したんだ。
そうだ…俺は気付いていた。
この女との因縁に…
この卑弥呼って女が俺が探し求めていた相手なのだと!
その時、俺は昔小角との会話を思い出す。
俺はまだガキで、色恋沙汰なんか分からないでいた。
「なぁ?何で小角はそんなに女好きなんだ?」
俺はキャバクラ帰りにエロ本を眺めている小角に問い掛ける。
「ぬ?玄三にはまだ早いかのう?女の素晴らしさを知るには?」
ちなみに俺の幼少期の名前は玄三だ。
「なに?そんな事ないぞ!女ってのは…」
(何が良いんだ?弱いし、直ぐに泣くし、うるさいだけの足手まとい…)
それが、幼少期の俺の感想だった。
まぁ、ガキには解らなくて当然だろう。
てか、間近に女なんかよりも綺麗な奴いるし…
俺は旅の途中で厄介になっている寺に残してきた晴明の事を思い出した。
ん?
ポカポカ!俺は自分の頭を叩き、冷静になる。
この地点で俺の女に対しての価値観が脱線している事に気付き…
女!女?女…ヤバい…
その時の俺には女の友達どころか、知り合いすらいないじゃんか?
いや!キャバの姉ちゃん達がいた!
それに男だか女だか解らない姉ちゃん達?
ダメだ…このままでは、俺はどんどん間違った方向に行ってしまう。
考えろ…考え…
その時、俺の脳裏に夢の中で見た少女の姿が浮かぶ。
俺が昔、父親からの虐待で瀕死の状態の時に現れた少女の…
幽霊!!
その少女の幽霊は、俺が生死をさ迷っている時に現れ、泣きながら俺を抱きしめたのだ。
幽霊なんか見えるのは、霊媒体質だった自分にとって不思議じゃなかった。
俺は…
もう助からないよ…君が誰らか知らないけど…
僕のために…そんな悲しそうな顔で、泣かないで…
その少女の幽霊は白装束姿で、肌は色白、黒髪の長くて綺麗な日本人形みたいな娘だった。
もしかしたら、この娘は天使なのかな?
天使が僕を迎えに来たのかも?
そして俺は生きる事を諦め目を綴じた時、
『いやぁー!ダメー!』
少女の声が響いた。
その時、温かい光が俺を包み込んでいく。
痛みが消えていくようだった。
次の朝…
俺は生きている事に気付いたのである。
そうだった…考えてみたら、多分…あの髪の長い少女が…俺の初恋だったのかも…
そうかぁ!
だから、無意識に色白で黒い髪の面影が似てる少女の霊に晴明を重ねてしまい、変に心が惹かれていたのか??
つまり!俺はノーマルだったのだ!
いや、初恋が幽霊じゃ…ノーマルじゃないか??
その後、小角は言った。
『いずれ、オヌシの前に運命の相手が必ず現れるであろう。その相手がオヌシの前に現れた時…自ずと解るもんじゃよ…ビビビィ…とな?』
そう言って小角は笑っていた。
そう言えば…
『そうじゃなければ、あの女神も儂の前に現れぬであろうしのう?フォッフォッフォッ…運命、運命じゃよ~』
そんな意味不明な事も言っていたが、まったくもって理解不能だった。
ビビビィ…か…
俺は今、座主を目の前にして身体中を電気が走るような感じがしていた.
これが、ビビビィ??
小角…
俺はどうしたら良いのかなぁ…
解らねぇよ…
俺には誰かの運命を背負う勇気も根性もねぇ…
情けないが…
自信がないんだ!恐いんだ!!
そして、最後に小角が言っていた台詞を思い出した。
『玄三…心が…魂が本当に求める相手が現れた時、頭ではなく…身体が答えを教え導いてくれるのじゃ』
「う~ん??」
『魂が離れたくない!離れたくない!と、繋ぎ求めようと身体を支配するのじゃ!まぁ、その時になれば解るもんじゃよ?』
「そんなもんか?」
『恐らく…』
「恐らくかよ!」
だが、あの小角の言葉が俺をこの場所から離れさせてくれねぇ…
魂が求めれば?身体が答えを?
その時、俺は気付いた!!
俺は…
目の前にいる座主を…
卑弥呼を!
無意識に力強く抱きしめていた。
そして…
『こんな…こんな情けない俺なんかで、本当に良いのか?』
卑弥呼は見えない瞳で俺を見詰めながら頷いた。
追伸…
部屋の隅で俺と卑弥呼の会話を隠れて聞いていた蛇塚とバサラは…
「三蔵、頼んだぜ!卑弥呼様を泣かしたら、次こそマジにぶん殴るからな!」
「その時は手を貸そう」
「バサラさん?今日はやけ酒行きますか?」
「俺は下戸だ…」
そう言って、二人は俺達を残し出て行ったのだった。
そして、俺は…
この日…妻と子供と…
世界の命運を背負う決意をしたのだった。
次回予告?後談?
三蔵「それにしても、卑弥呼?」
卑弥呼「はい?」
三蔵「どうして、あんな情けない俺の告白を受け入れてくれたよな?」
卑弥呼「当然ですわ?だって・・・」
三蔵「ん?」
卑弥呼「都合の悪い話は聞き流していましたから?ほほほ!」
三蔵「ゾゾゾゾゾッ!!」
次話!三蔵の結婚生活に早速陰りが??




