卑弥呼と星見の鏡!?
三蔵の過去。そこには卑弥呼との忘れていた出会いがあった。
記憶が蘇る三蔵
そして、卑弥呼もまた・・・
この世界には人知の及ばない者達が暗躍し、世界を脅かしている。
魔物、悪霊、悪魔、悪神
人知れずに闇に誘う者達…
だけど、それだけじゃない。
悪意のある転生者や、特異な能力の持っている特殊体(特種体)と呼ばれる人間側の者達…
更には敬うべき神までもが災いを起こしえない。
そのような者達から私達の生きる世界を守るためのに人間達により結成された密教組織…
それが私達。
私はこの裏組織を任され『座主の位』を持つ最高責任者…
卑弥呼
卑弥呼の名は、先代の遥か昔より引き継がれて来た名。
私の一族は、古くから闇の者達と戦う事を義務付けられているのです。
そのためか卑弥呼一族には特殊な力をも引き継いでいたのです。
それが『救世の魔眼』と呼ばれる救世主の力!
救世の魔眼とは…
この星(地球)の未来を見通す力であり、世界の滅亡を救う唯一最後の希望。私が組織の座主としてだけでなく、世界中の密教組織からシャーマン(星の巫女)として、救世主として崇められている由縁でもあるのです。
私は幼少期より先代の卑弥呼(母)より、生涯、魔物との果てなき戦いを義務付けられていました。そのため人としての生活は出来ないと教えられて来ました。
不思議と、母と同じ道を歩む事に疑念はなかった…
多分、これも卑弥呼一族の血のせいでしょうか?
宿命の血…
だけど、そんな私にも一つ。
秘密にしていた楽しみがあったのです。
それは卑弥呼一族に伝わる『星見の鏡』と呼ばれる神具を覗き見る事。
これは私の持つ『魔眼』を持つ者にだけ扱える品で、世界(地球)に起きている全てのビジョンだけでなく、数年先の未来や、世の真実を映し出す事が出来るのでした。
本当なら、まだ力が安定していない子供の私[12歳]には扱えるはずはなかったのですが、幾度と母が使う様を見ているうちに…
(私にも見えるかも…)
と、思えるようになったのです。
私にも好奇心があったのでしょう。
夜分遅くに、私は儀式の行われる祭壇に置かれている鏡のもとにまで一人で忍び込んだのでした。私は鏡を目の前にして掌を翳し、私の中にある魔眼を発動させたのでした。
(何が見える?)
本当に好奇心…
それだけの気持ちでした。
その好奇心が後に私の運命を…あの方の運命をも変えてしまうとは思わずに…
そして鏡に映し出され、私が目にしたのは?
『!!』
鏡に映ったのは一人の少年でした。
(この子は?)
私と同い年?いや、少し年下かも…
その時、背後から声が聞こえたのでした。
『勝手に触ってはいけないと言わなかったか?』
それは先代の卑弥呼こと母上でした。
『まったく…誰に似たのか?でも、この鏡を扱えるなんて、将来が楽しみだ…ふふふ…』
私は母上に…
「お母様…申し訳ございません!それより…」
私は鏡に映った少年を母に見せたのでした。
すると母は言ったのです。
『ふふっ…もしかしたら、その少年はお前にとって掛け替えのない運命の相手なのかもしれないな?』
「掛け替えのない運命の相手?」
その頃の私には、母の言った意味がよく解らなかったのでしたが…
この鏡に映った少年の事が頭から離れず…
それからも人の目を盗んでは、
毎晩祭壇に忍び込んでは少年の姿を覗き見ていたのでした。
「どうしてこんなに気になるのかしら?」
本当に解らない…
だけど、この少年を見ていると胸が熱くなる?
魂が揺さぶられ、締め付けられるような…
苦しい…
だけど、嫌な苦しみじゃない…
気付くと私は会った事のないこの少年に、惹かれつつあったのでした。
だけど、この少年は今地獄の日々を過ごしていたのです。
多分、この少年は能力者なのでしょうか?
その余りにも強い霊力が悪霊を呼び、まだ力のない少年には払う力もなく、悪夢や肉体に幾度と霊障を生じていたのです。
そればかりか、その悪霊達は少年のご両親にまで影響を及ぼし、狂わせたのでした。
それからと言うもの少年に対して、親からの虐待が始まったのでした。
少年は何度も死にかけました。
(助けないと!でも…どうしたら?)
その時の私は無力で、この少年に対して何も出来なかった。
ただ、祈る事しか…
そして決意して私は付き人の空海に事情を話し、少年を保護して欲しいとお願いした。
空海は鏡に近付いた私に軽い説教はしましたが、直ぐに少年の家を捜索し向かってくれたのです。これで大丈夫…もう少し待っていて!
そんなある日、恐るべき事態が起きてしまったのです。父親の振りかざした金属バットが少年の頭を強打し、少年がまったく動かなくなってしまったのです。
大量の血が流れ、少年の魂は次第に弱まっていくのが解る…
いや!ダメ…いやいやいや!
私は鏡の前で少年を呼び涙が止まらなくなりました。
そして…
次第に身体が冷たくなっていく鏡の中に映る少年に向かって、私は…
『絶対に死なせないー!』
私の身体が金色に光り輝き鏡に向かって放たれたのです。
それから、どうなったのか解らない…
気付くと、私は鏡の前で倒れていたそうです。
目覚めた時、母は私に言いました。
『お前は死にかけていたのだよ?』
…死にかけていた?
『お前は自分の命を削り何者かに送っていたのだ。そして死神の呪いを受けたのだよ』
そうか…
私はあの子に自分の命を…
私は鏡の中に映った少年が負った苦痛を、半分引き受けた事により、少年は死なずにすんだのです。しかし、私もまた危険だったのも本当…
私はあの一件から一年近くも死の淵から目覚めずにいたのです。
身体中に目には見えない傷が残って…
そんな事があったにも拘わらず、次の夜にも私は祭壇に向かったのでした。
鏡には、あの少年が無事に映りました。
(あの子が生きている…)
涙が出た…嬉しかった…
たとえ知られる事のない行為だったかもしれない…
だけど…あの子が生きている事が私の全てになっていたから!
自分自身が一生負う死神の呪い[一日に一度襲う刃で斬り裂かれるような激痛]を受けた事よりも、あの少年と見えない繋がり[魂の共有]が出来た事に嬉しくなった。
それからも私はあの子を見続けていく…
それから数年が経った後…
あの子は、逞しく生きていた。
心許せる師や友を得て…
私は自分の事のように嬉しかった事を覚えている。
しかしそれも長くは続かなかった。
少年は最愛なる師と死に別れ初めての友ともすれ違い、再び少年は絶望と孤独の中を生きていたから…心は病み、閉ざし、未来を信じられないくらいに…
それでも彼は…
最愛なる師の言葉より、自ら命を断つような事はしなかった…
その魂は汚れていき、茨の道を歩みつつも…
その魂は熱い炎の如く生きる事に対して強欲に、燃え上がっていたから…
私は…
(生きていてくれさえいれば…)
そんな彼に私は何も出来なかった。
既に母は他界し、私もまた座主としての役目があったから…
都会の闇の中、新聞に包まれ、雨に打たれながら師の死を引きずりつつ涙を堪え、震えながら眠っているあの方を見ている事しか出来なかった。
私は…無力…
せめて私に出来る事は、遠く離れたこの地より、彼に魂の灯を送る事だけ…
いつか、必ず出会えると信じて…
それから後に、私は蛇神島での戦いの後に孔雀明王の呪いで視力を失った。
だけど、その時…私は見たのです!
近い未来…
あの方が宿命の星の下、私達の前に現れ、心の底から笑っている姿を!
あのビジョンが本当に起きる事なら、
たとえ自らの命を失おうとも悔いはないと思ったのでした。
視力を失った今、私は彼の今の姿を見る事は出来ません。
私の光(視力)は失われようとも…
私にとっての光はあの方なのだから!
そして数年後…
彼は私の前に現れたのでした。
私は今、過去を振り返りながら祭壇の前にいる。
そこにはあの懐かしき鏡がある。
今となっては、視力で見る事が出来なくなった鏡…
その時…
私は背後に気配を感じたのでした。
息を切らしながら…
熱い視線を向けているその者に私は直感しました。
『お待ちしておりました…』
三蔵様…
次回予告
三蔵「ストーカーじゃねえか!!」
卑弥呼「えっ?」




