表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
神を導きし救世主!
222/424

陀羅尼炸裂!救世の巫女・卑弥呼の光!

軍茶利明王と契約を果たした蛇塚は、いざ!最終決戦に挑む。


俺は蛇塚軍斗!


俺が軍茶利明王の試練を乗り越え、闇の空間より脱出を試みていた時、外界では大蛇の王アジ・ダハーカと化した光児と、座主である卑弥呼さん達との戦いが繰り広げられていた。



アジ・ダハーカは島を覆う程のトグロを巻いた巨大で醜悪凶悪な化け大蛇。

その身体を傷つければ、毒を持った化け物達がうようよと這い出して襲って来る。

更に、その口から吐き出される瘴気は毒ガスとなり、その身体から滲み出る毒は海を汚しながら命ある魚や生き物達を腐らせた。

闇の浸蝕は次第に増していき、死臭が覆う。

そこに生命は存在出来ない有様であった。



これほどの化け物を相手にして、怯まずに戦いを挑むのは座主こと卑弥呼様と、付き従う四人の仲間達!エメラルドグリーンのオーラに包まれ、孔雀の翼が開かれるかのように空を覆い、その中心に美しく凛々しいお姿は、まさしく『孔雀明王』と、呼ばれる神の姿だった。




その姿を見た降三世明王と化した赤髪の男は…


「卑弥呼様!何て無謀な真似を!その神は呼び起こしてはならぬ禁断の神!見た目と裏腹に、その神は邪神なのですよ!」


「どういう事だ?」


金剛夜叉明王と化した銀髪の問いに、答えたのは大威徳明王と化した大男の方だった。


「ウム。かつて明王でありながら、同じく明王である神を滅っした裏切りの神!あれを呼び覚ませば再び我々の持つ神に仇なす事は間違いなかろう!だが、あの凶悪な蛇神を相手にするために毒を持って、毒を制そうとお考えなのか?」


「お聞きください!それだけではないのです!あの禁断の力は解放させた者の命をも奪う両刃の剣なのですよ!」



空海さんは自らの命を使い呼び覚ますはずが、

ましてや守護するはずの卑弥呼様が使われた事に衝撃をうけていた。



「しかし、あの明王を封じていた巻物は霧谷によって奪われ消滅させられたはず?それがなぜ?」


(まさか…時の魔眼を使われたのか!?卑弥呼様!)



そんな心配をよそに…



『心配なさらないでください。私は死んだりは致しません!だから、貴方達の力を私に貸してください!』



その声の主は上空に浮かぶ卑弥呼様であった。

男達は卑弥呼様の言葉に従い、アジ・ダハーカを囲むように四方に分かれる。




『今から大蛇の王を滅っします!』


「おおおおおお!」



卑弥呼様を上空に、四人は四方に散りながら結界を張ると、印を結び真言を唱える。

卑弥呼様と四人の高めた神気が結び付き、まるでピラミッドのような形となってアジ・ダハーカを囲み、浄化の光が包み込む。

そして同時に孔雀明王の秘奥義を叫んだのだ。



『仏母大孔雀明王経・陀羅尼(ダラニ)!』




陀羅尼とは全ての毒や災いを取り除き、天変地異すら止める秘奥義である。



『こしゃくな虫けらが!この大蛇の王アジ・ダハーカに何をしようとも無駄だ!消えろ!消えてしまえ!』




アジ・ダハーカの身体から凄まじい瘴気が噴き出して四人と卑弥呼様を襲った。

五人は印を結びながら堪えるも、一人…


「クゥゥ…グゥウウ!」



蛇神から発せられる漆黒の瘴気に耐えられずに膝をつき、その力に飲み込まれようとしていた者がいた。


「空海殿!」



空海さんは傷付いた身体に鞭を打ち再び立ち上がるが、闇の浸蝕が空海さん身体に絡み付き、皮膚が毒に汚され変色していく。


「うぐおおお!」



いくら凄腕の空海さんでも、唯一、人の身。空海さんは急激に力を奪われ、結解が消えて闇に飲み込まれ引き摺られようとした時、頭上より孔雀の羽が舞い降りて来て空海さんの周りの闇を消し去ったのだ。


「座主様…申し訳ございませぬ…」



だが、空海さんは立ち上がろうとするが足に力が入らない。



「空海!貴方は退きなさい!後は私達に任せるのです!」


「しかし!それでは結解が完成致しません!私はまだやれます!座主様にばかり負担かけられませぬ…」


「大丈夫です」


「大丈夫とは?」




すると卑弥呼様は微笑みながら瞳を綴じて、何かを思い出すかのように…



「私には見えたのです。希望の光が…闇を消し去る程の熱い希望の光が!」




そして卑弥呼様が再び瞳を開いた先で、異変が起きた。


アジ・ダハーカの闇の中から、凄まじい力が…


いや、これはアジ・ダハーカの力ではなく別の異なる力?

それは闇の中から脱け出すかのように、光が飛び出して来たのだ。



『あの光こそ、希望の光!』



そこから現れた希望とは?



「詩織!外が見えたぞぉー!」



妹、詩織を抱えて闇の中より生還し脱け出した俺…蛇塚軍斗だぁー!!


その姿を見た空海さんは…


「あの少年…生きていたのか?いや、それよりあの姿は間違いない!あれは軍荼利明王!」



俺は外界に出た途端に重力を感じ、そのまま詩織と一緒に落下する。



「うわあああああ!」

「きゃあああああ!」



が、俺と詩織の目の前に孔雀の羽が降ってきて、その光が俺達の身体を包み込む。

そして光り輝いたかと思うと、落下は止まり宙に浮かんだのだ。


「これは?俺、宙に浮いてるのか?」




そこで俺は周りの状況から今起きている事を把握した。島を闇に覆い隠す程の巨大な大蛇の化け物と、空に輝く巨大な孔雀の化身。

それに三人の明王の姿をした男達に、傷付いた空海さんの姿。


あの人達はあんな化け物を相手に戦っていたのか?


そして、何かをしようとしていたのか?詳しくは解らないが、もしかしたら…これで全てが決まるって状況なんだよな?



そこに、あの綺麗なお姉さん…卑弥呼様の声テレパシーが俺の頭の中に入って来たのだ。




《お願いします…貴方の力を貸してください!》



俺の力を貸す?

俺なんかの力が役に立つか解らないが、ここで決めなきゃ男じゃねぇよな?

俺は宙を浮きながら近付いて来た空海さんに詩織を頼むと、そのまま空海さんが造っていた結解の位置に移動する。


これから俺が何をするのかは卑弥呼様がテレパシーで教えてくれた。


とにかく、俺に出来る事を今やらなきゃ!


俺には今…それをやる力があるのだから!


俺は大蛇の化け物を睨み付けると指差し叫んだ。



『上等ぉーー!!』



俺は結解の中で、導かれるがまま呪文を唱える。

そして、その術は輝きを増して再び発動したのだ。

赤髪と銀髪に大男の神気が伸びて結ばれ、更に俺の身体から発せられる光と結ばれる。



(これが、気?)


その神気は大蛇の王を囲みながら渦を巻き、

空中にて神気を高めていた卑弥呼様の神気と結ばれた。


卑弥呼様は指を頭上に挙げると、


『皆さん?行きますよ!』



卑弥呼様の声に応えるように俺達の神気が膨れ上がり、大蛇の王の闇の障気を閉じ込めていく。

卑弥呼様の降ろした指が大蛇の王を指差すと、再び最大奥義が発動したのだ!



『陀羅尼』



五体の明王の聖なる光が強烈な閃光となって闇を打ち消していく。

清浄なる光が汚れた大地と海を浄化していく。

巨大にて邪悪の元凶であるアジ・ダハーカも光を浴びて苦しみもがいていた。



『ウギャアア!熱い!熱い!何だぁ?この忌まわしい光はぁあああ!』



それは先程の陀羅尼とは比べ物にならない浄化の光だった。アジ・ダハーカの身体を覆う闇が打ち消され、その身が光に照らされ現れると同時に身体がひび割れ崩れ落ちていく。



『ば…馬鹿な…人間ごとき蛆虫が、この大蛇の王を…滅っせられると思うな!』



アジ・ダハーカは上空にいる卑弥呼様を標的に絞り、その身体を伸ばして襲い掛かったのだ。

その身体は枝分かれし、三本の頭を持った蛇竜と化し突進する。


邪悪な牙が卑弥呼様に迫る。

咄嗟に陀羅尼の結解を解いた赤髪達が守りに向かおうとするが、二本の頭部が邪魔をする。


「クッ!邪魔を!」


「一本、卑弥呼様に向かったぞ!」


「卑弥呼様ぁー!!」



卑弥呼様に向かった蛇竜の頭部に光治の顔が浮き出ると、



『お前を始末すれば、この邪魔な結解も消えよう。先にお前を喰らってやろう!』




もう、止めろよ…光治…


同じ島の人間として…


いや?ダチとしてお前は俺が止めてやる!




襲い掛かる光治の前を塞ぐように現れたのは、



『やらせねぇーよ!光治!お前は俺が止めてやる!』



すると、光治の顔が浮き出た蛇竜の頭が俺の目の前で動きを止めたのだ。


「こ…光治?」


『軍斗!軍斗!軍斗!邪魔をするなぁー!お前はそうやって昔から正義面して、虐められている僕を助けて自慢気に浸っていたんだろ?僕を見下げるな!僕を憐れむなぁー!』



それは、姿形は違えど、間違いなく光治の反応だった。



「光治?お前、光治だよな?馬鹿野郎!俺はお前を助けたからって、憐れんでもいなければ自慢気になんてなってないぞ?」


『嘘を吐くな!皆、僕を僕を馬鹿にして…こんな世界は僕が壊してやる!僕が終わらせてやるんだ!』


「馬鹿な真似は止せ!光治だよな?だったらまだやり直せる!引き返せられる!だろ?」


『引き返すだって?僕が世界を壊すのを?ふざけるな!僕には世界を壊す事も終わらせる事も出来る力があるんだ!見てろよ?消してやる!破壊してやる!何もかも全てだぁー!!』


「俺はお前をダチだと思っているんだよ!」


『何を今更?今の今まで忘れていたくせに…僕が闇に落ちている間、安全な場所で何もかも忘れて平和な生活を送っていたくせに!』


「!!」


『僕は意味も解らないまま大蛇の王として蘇った…僕は…この世界を闇に落とすために宿命付けられ生まれた化け物なんだよ!』




…言い返せなかった。


たとえ記憶が消されていたとしても、光治はその間も地獄を歩いていたのだから…



「それでも…俺はお前を救いたい…」


『救うだと?』


「あぁ!俺はお前をダチだと思っている。それは嘘じゃない!そこに上下関係なんかないんだ!俺だってお前を羨ましく思っていたんだぜ?」


『・・・』


「お前は賢く、物知りで、俺の知らない事を沢山知っていたし、色んな事を教えてくれた!そんなお前とダチである事は俺にとって自慢だったんだ。俺って馬鹿だろ?だから、お前には相応しくないとか劣等感だって感じてたんだぜ?子供心によ?」


『相応しくないなんて!違う!!軍斗は…軍斗君は僕にとってのヒーローだったんだ!憧れだったんだ!』


「光治?」


『だけど…もう駄目だ…もう何も変えられない…もう引き返せないんだ…』



「何を言っているんだよ?お前にその気があれば何度でもやり直せる!俺が手伝うよ?やり直そう!大丈夫だ!俺を信じろ!」


『信じろ…か?だったら信じて良いかい?』


「勿論だ!ダチだもんな?」


『だったら、ダチだったら…軍斗…お願いだ…』


「?」


『僕を殺してくれぇ!!』


「!!」


『僕はアジダ・ハーカの転生者……アジダ・ハーカの邪悪な魂が僕の弱い心を蝕み、破壊衝動がもう…抑えられ…ないんだ!もうお願いだ…軍斗君が僕の…友達なら、僕を…この呪縛から…解き放って…よ…』




それが願いだと?他に手段はないのか?

ダチとして俺に出来る事が、ダチのお前を殺す事だけなのか?


俺は拳を握った。



「本当に…それしかないのか?」


『お…願い…僕を…殺…して…』



その言葉が俺にのし掛かったと同時に、声がした。


『どうしたのですか!』


我に返ると、その声は卑弥呼さんだった。

俺は突然意識を無くしたかのように動かなくなったのだ。


今のやり取りは夢?


いや?違う…


俺が…俺がヤるしかないんだ!俺が…アイツのダチなら!!



「軍斗…僕の…『儂の邪魔をする虫けらは全て消し去ってやろう!』」



突然、光治の口調が変わった。

いや?声質も違う?



『我が名はアジダ・ハーカ!この世界を闇に落とす暗黒世界の王なり!』



まさか?光治の意識が完全にアジダ・ハーカに奪われたのか?



『退きなさい!これから先は私が相手をします!』


「それは出来ないッスよ!」


『えっ?』


「俺はダチと約束しちまったから!」




俺は自らの手首を噛み切ると血が垂れ流れる。

すると血は異様な動きを見せ、二匹の紅いオーラの蛇へと変わっていく。

そして、俺はアジダ・ハーカに向かって飛び出し突っ込んだのだ。



『無駄な事じゃ!お前も多少なり蛇神の力を持っているようだな?ならば教えてやろう!蛇神は高血統の血には抗う事は出来ぬ…お前の蛇神の血は儂には無害じゃ!』


「無駄かどうか試してやろうじゃないかぁ!」




俺は蛇神の血を籠めた拳を放った。



『ヘビメタルインパクトー!』



俺の拳から放たれた二匹の紅蛇が吸い込まれるようにアジダ・ハーカに消えていった…



『無駄だと言うのが…わ…わか…』



その途端、アジダ・ハーカの様子がおかしくなった。

突然苦しみ出して、その強大だった蛇気が弱まっていく。



(馬鹿な…馬鹿な!?儂の力が…抑制されているだと?儂の高血統の血が…弱小の血に?いや?違う!まさか…この血は!あの?)


『覇蛇の血』


『ありえんぞ!お前のような人間が蛇神の王の中の王!覇蛇の血を持つなんてぇー!』



アジダ・ハーカの破壊の波動が俺に直撃する。


「うがあああああああ!」



俺はもろに衝撃を受けて、明王の変化が解けて落下したのだ。


だが、そこに!


アジダ・ハーカの蛇神の力が弱まり、その衰えに追い討ちをかけるように!



『蛇神の王アジダ・ハーカ!お前に引導を与えます!』



落下する俺は、赤髪の男に抱き抱えられ助けられていた。


「よく頑張ったな?」


「俺は、がむしゃらになっていただけです」


「あれは?」



卑弥呼様は印を結び、唱えていた。



『のうもぼたや・のうもたらまや・のうもそうきゃ・たにやた ・ごごごごごご・のうがれいれい・だばれいれい・ごやごや ・びじややびじやや・とそとそ・ろーろ・ひいらめら ・ちりめら・いりみたり・ちりみたり・いずちりみたり ・だめ・そだめ・とそてい・くらべいら・さばら ・びばら・いちり・びちりりちり・びちり・のうもそとはぼたなん ・そくりきし・くどきやうか・のうもらかたん・ごらだら ・ばらしやとにば・さんまんていのう・なしやそにしやそ ・のうまくはたなん・そわか!』



「あの人[卑弥呼]は何を?」


「よく見ているがよい!今、お前の因縁が終わる」


えっ?


「あの人は何者なのですか?」


「あのお方こそ、救世の巫女!神を導きし救世主なのだ!」



神を、導きし?救世主?


真言を唱え終えた卑弥呼様の瞳が突然金色に光り輝いたかと思うと、その身体から凄まじいエメラルドグリーンの閃光が放たれたのだ。

しかも、その手には神々しく輝く神剣が握られていた。


それは一切の魔を滅ぼす破邪の剣…



『陀羅尼の剣!』


卑弥呼様の降り下ろした陀羅尼の剣は、




『ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』





アジダ・ハーカの身体から噴き出していた障気を全て浄化し、その醜悪な本体をも完全に消滅させた。俺は、その最期の瞬間を目の当たりにして、



さよならだ…


光治…

次回予告


三蔵「はて?卑弥呼の姉ちゃんが神を導きし救世主だと?あれ?俺は?俺、いらないじゃん?」


蛇塚「いや、その理由は後々話すから待ってろよ?てか、本当はお前が知っていて良い話なんだがな?」


三蔵「何の話だよ?知らねえよ!」


蛇塚「いずれにせよ、その話は語る事にはなるから、今はお預けだ!」


三蔵「意味深だな?」


蛇塚「ついに俺の過去編も次の話でラストだぜ!」


三蔵「はて?まだ何かあったかな?」


蛇塚「忘れるなよ!まだあるんだよ!力の代償が・・・」


三蔵「はっ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ