激突!!大蛇の王!!
謎の男、霧谷に振り回されたが、大蛇の王との対決が迫っていた。
俺は蛇塚軍斗!
『オン・ソンバ・ニソンバ・ウン・バザラ・ウン・パッタ!』
『オン・シュチリ・キャラロハ・ウン・ケン・ソワカ!』
『オン・バザラ・ヤキシャ・ウン!』
今、俺の目の前では真言を唱えて明王と化した三人の僧侶と、大蛇神と化した光児とが想像を絶する凄まじい戦いを繰り広げていた。
「すげぇ…」
何かぶつかり合う度に火花がバチバチして、閃光が放たれて、衝撃がスゲェ!
三人は人とも思えぬ動きで大蛇の王と化した光児と交戦し翻弄していた。
『生意気な人間がぁ!』
大蛇の王の両肩に乗っている二匹の蛇の口が開かれると、炎と冷凍の攻撃が放たれる。
炎の渦が三人の逃げ場所を塞ぎ少しずつ距離を縮めていき、今度は氷の刃が襲う。
三人は後退りながら印を結び瞼を綴じる。
『喝!』
三人は刃が直撃する寸前に瞳を見開き気合いを放つと、氷の刃は目の前で粉砕した。
俺はただ茫然と見ているしかなかった。
攻撃が通じない事に苛立つ大蛇の王は、己の胸に両手を突き刺したかと思うと、何を血迷ったか引き裂き始める?すると、引き裂かれた胸の隙間から大蛇の頭が巨大化しながら飛び出して来て、銀髪の変化した金剛夜叉明王に襲いかかった。
大蛇が銀髪を飲み込もうと口を広げて迫った時、割り込むように大男が大蛇を腕で押さえ、そのまま力任せに絞め潰した。
『うぎゃあああ!』
痛みにたじろぐ大蛇の王にすかさず銀髪が飛び出し攻撃を仕掛ける。
『小癪な!』
大蛇の王も負けじと両手を開き向けると十本の指が蛇と変化して伸びて行き、向かって来る銀髪の身体に巻き付こうと襲い掛かる。
「バサラ!そのまま突っ込め!援護する!」
そう言ったのは赤髪の男だった。
赤髪は左手に神気を集中させると気で構成された弓が現れる。
同時に構成した十本の赤い矢を弓にかけると、一度に射った。
矢は大蛇の王の指からなる十匹の大蛇を見事に貫通し消滅させ、その合間を潜るかのように銀髪が大蛇の王の額に短刀を突き刺したのだ。
『うぎゃあああ!』
更に銀髪は間髪容れずに短刀を引き抜き、大蛇の王の身体中を斬り刻む!!
断末魔の如き大蛇の王の叫びが、こだました。
大蛇の王…
いや、光児…
神の転生者に産まれて来たばかりに、すまねぇ…
俺にはお前を救ってやる事が出来なかった。
本当にすまねぇ…
だが、大蛇の王の目がギョロリと動くと、
『うっひゃ!ひゃ!ひゃあ!ひゃはははは!』
狂ったような笑い声をあげたのだ?
『身体中が痛いよ…切り刻まれた…血が止まらない…ひゃははは!』
その後、無言になったかと思うと、今度は?
『フザケルナヨ…フザケルナヨ…フザケルナヨ…フザケルナアアアアアア!』
大蛇の王は狂乱しつつ、三人の男達に向かって凄まじい形相で睨み付ける。
『おまえ達!人間のくせに神に逆らうな!神に傷を負わせるなんて何て事しやがるんだよぉー!たかが弱っちぃ人間の分際でぇー!』
すると今度は落ち着き直して、
『正直、驚いたよ…まさか、人間にここまで傷をつけられるなんて…いや、身体だけじゃない…この…大蛇の王のプライドに傷をつけやがってぇー!』
同時に、大蛇の王の身体から凄まじい妖気が噴き出したかと思うと、突如目の前から消えたのだ。次に現れた場所は、俺が最も恐れていた詩織の寝かされている祭壇の上だった。
俺は…
「詩織から離れろ!光児!さまないと…」
『ん?まだ、いたのか?軍斗!さまないと何だよ?お前なんかに何が出来るんだ?ふふふ…詩織は使えるんだよ…この儀式で詩織にはもう一つの使い道がある事を教えてやるよ!』
もう一つの使い道だと?
詩織をどうするつもりなんだ!
大蛇の王は詩織の手を掴むと、何を思ったのか?
そのまま祭壇の下にある暗闇の異空間へと放り落としたのだ。
「しぃおりー!」
俺は詩織の落下した方向に向かって駆け出す。
『邪魔はさせないよ!』
大蛇の王の口から蛇が伸びて俺に向かって来た!
「うわぁあああ!」
だが、
「させるかぁー!!」
横から飛び出して来た何者かが、大蛇の王から飛び出して来た大蛇を殴り付けて粉砕したのだ。
「えっ?お前?」
俺を庇ったのは健司だった。
「軍斗はヤらせねぇよ!光治!」
『お前?健司!雑魚の分際でこの大蛇王様に楯突くつもりか?』
「光治?雑魚呼ばわりは酷いな?弱虫なお前に言われるのは心外だぜ?大蛇王様!」
『この大蛇王様をコケにするつもりかぁー!』
その途端、大蛇王の瞳が妖しく光ると、健司が苦しみ始める。
「うぎゃああああ!」
あれは念力?
『私に逆らう罰を与えよう!大蛇の一族は格上の蛇神の前にはその力を失うのだ!そのまま消え失せろ!』
このままでは健司が死んでしまう?って、健司は何故俺を庇った?
理解が出来ないぞ?意味わかんねぇよ…だけど、助けなきゃ!
しかし俺に何が出来る?
何も…出来ない…
『させません!!』
その時、あの座主さんが俺と健司の前に出て、大蛇王の念力を念返しで相殺し消し去る。
『オンナァー!!』
邪魔をされて怒り狂う大蛇王の前に、
「お前の相手は私達だ!」
赤髪と銀髪と大男が立ち塞がる。
だが、俺はそんな状況に目もくれずに詩織が落下した方に駆け出していた。
「待ちなさい!」
そんな俺を止める座主さんに、
「俺が!詩織を守らないといけないんです!」
「………」
しかし俺の背中を押したのは、
「行かせてやってくれよ?お嬢さん?生きるも死ぬも軍斗次第なんだ!」
「健司?お前?」
「勘違いすんな?お前は俺の獲物だって言っているだろ!」
すると健司が座主さんが俺を止めようとするのを塞ぎ、俺を行かせようとしてくれた。
「ありがとよ!」
そして俺は座主さんをふりきり、詩織の落下した闇に向かって飛び降りたのだ。
「ぅうわああああああ!」
落下して行く俺を、
「!!」
「行っちまったようだな?悪いが邪魔はさせねぇよ!」
すると座主さんは健司を見つめる。
「んな?身体が動かねぇ?金縛りか?」
「心配しないでください。邪魔はしませんわ?私は彼を助けたいだけですから…」
「!!」
そして座主さんは健司の横を静かに通り過ぎると、俺と同じく闇に向かって飛び降りたのだ。
それを見届けた健司は通り過ぎる座主が言い残した台詞を思い出していた。
「貴方は蛇に意識を奪われてませんね?」
と…?
それは、どういう?
いや!今は俺の成すべき事をしなければ!!
次回予告
三蔵「何?何?もう話の展開があっちこっち行ったり来たりで解らない事ばかりだぜ!」
蛇塚「そう言うなよ?俺もあの時は訳ワカメだったんだぜ?」
三蔵「ワカメ?」
蛇塚「さて、クライマックスも迫り、詩織は?俺はどうなるのか?
目覚めた大蛇の王は倒せるのか?まだまだ目が離せないな?」
三蔵「zzzzzz]
蛇塚「寝るな!!」




