恐怖!霊感大王の魔手!
三蔵一行は霊感大王の屋敷へと殴り込みに入った。
そこで、沙悟浄が霊感大王の魔手で倒れたのだ。
三蔵が動けない今、孫悟空と八戒が霊感大王と戦闘を開始する!
おう!孫悟空だ!
今ちょっと見れば解ると思うが、戦闘中だ!
「うおりゃぁあ!」
俺様は如意棒を振り回しながら、霊感大王に殴りかかっていく!
振り下ろし、横!
突き!突き!蹴り!
俺様の息もつかせぬ連打が霊感大王を襲う。
「セイリャア!」
俺様の如意棒が霊感大王を貫いた!
「!?」
と、思った俺様の如意棒は空を切ったのだ?
俺様が貫いたと思った霊感大王は、残像を残し消えていく。
「ふふふ…もう終わりですか?お猿さん?」
「テメェが猿と言うなぁ!」
俺様は如意棒を横に振り払ったのだった。
霊感大王は軽やかにバック転をして躱す。
「なんだ?こいつ?やけにすばしっこいぞ!」
「うらあああ!」
すると今度は八戒が霊感大王を後ろから殴り掛かる。
が、それも軽々避けられたのである!
「どうなっているらか?こちらを見ないで躱しているらよ!」
「ふふふ…」
確かにそうだ?
俺様の攻撃も仕掛ける前に見ないで躱されたぞ?
「ふふふ、気付きましたか?私はお前達の妖気を見ているのだよ!お前達の妖気の微妙な流れから、次の動きを予知して攻撃を躱しているのです。私にはお前達の次の動きが丸わかりなんですよ!」
気の流れを見て動いているだと?
そんなの有りか?
奴が霊感大王と呼ばれる所以なのか?
「どうするらか?」
「とにかく当たるまで、やるしかないだろ!」
「なら、連携攻撃で行くら!」
「おぅ!」
今度は二人がかりで攻撃を仕掛ける。
が、やはり動きを読まれて躱されてしまった。
「こうなったら…ほにゃらら…」
印を結び仙術の気を込める。
『毛根分身!』
俺様の毛が飛び散り百体の分身が現れる。
「さぁ!お手を拝借!」
百体の俺様の分身達が一斉に拍手をしだしたのだ!
「何をするつもりですか?」
「これからが本番だぜぇ!」
百体の俺様達が両手に妖気を集中させながら拍手させると、
擦らせ、その摩擦熱で発火する。
「妖仙猿技!百人一手・火流手!」
※ヒャクニンイッシュカルタ
燃え盛る拳で、百体の俺様達が一斉に霊感大王に向かって襲い掛かる。
「避けられるもんなら避けてみやがぁれぇ!」
「下手な鉄砲数撃てば当たるとでも?ふふふ…そんな猿知恵で私を倒せるなんて思わないでください!」
霊感大王が両手を前に突き出すと、突然引っ張られた感覚になり百体の俺様達の妖気が吸い取られていくではないか?次第に妖気を失った分身達が力を失っていく。
「総慈気吸引!」
※ソウジキキュウイン
百体の俺様達は妖気を吸い取られ、元の毛へと戻っていく。
「クソオ!」
ん?あれは?
「肉体強化!両手!」
巨大化した八戒の手が霊感大王の背後から掴み抑えたのだ!
「やった!でかした八戒!」
ん?
「やれやれ…私に直接触れたらどうなるか解らないのですか?」
霊感大王は自分を抑えつける八戒の手に掌を乗せると、沙悟浄の時と同じく、
「はぁ…アアア…」
見る見るうちに八戒の身体が痩せ細くなっていったのだ。
「ヤベー!」
俺様は咄嗟に如意棒を霊感大王に投げつけたのだ!
「おぅ!」
霊感大王の手に俺様が投げた如意棒が当たりに八戒を離して痛がる。
「八戒!」
俺様は倒れて動かない八戒に駆け寄ると、八戒はまるでミイラのような姿になっていた。
「イタタ…無理ですねぇ…もう助かりませんよ?妖気の90%を戴きましたからね!」
「ふざけるなぁ!」
「手遅れだと教えてさしあげただけなのに、怒らないでくださいよ!」
マジかよ?本当に八戒の奴はくたばったのか?
「キサマ!」
俺様の妖気が怒りで膨れ上がっていく。
「これは素晴らしい!その妖気、全て戴いてさしあげましょう!」
そして無数の妖気弾を投げつけたのだ。
「ハアアア!うおりゃああああ!」
「お馬鹿な猿だ!何度言えば解るのですか?お前の妖気…全て戴いてあげましょう!」
霊感大王は俺様の投げた無数の妖気弾を全て、意図も簡単に両手を広げながら吸収していく。
「あははは!馬鹿馬鹿ですね?学習しないので…ん?」
霊感大王は何者かに足首を掴まれたのだ?
「えっ?」
油断したその時、俺様の放った妖気弾の一つが、霊感大王の顔面にヒットしたのである。
「ハギャア!」
確実な隙が霊感大王にはあった。
「何が起きたのですか??」
霊感大王は直撃した顔面を押さえつつ、下を向くと・・・
「うぎゃあああ!」
突き上げるように顎に衝撃を受けたのだ。
「うらぁあ!」
飛び上がるようなアッパーで、霊感大王を吹っ飛ばしたのは八戒だった!
「決まったら!」
天井に頭をぶつける霊感大王。
「でかした!」
「いや、まだら!」
八戒は膝をつき息をきらしていた。
「大丈夫か?八戒?お前大丈夫なのか?」
「ああ…油断するなや!」
すると天井から霊感大王が宙に浮かびながら、ゆっくりと降りて来たのだ。
その顔は信じられないような表情だった。
「ど?どうなっている?あの黒豚は確かにさっき私の手で妖気を奪い、干からびさせたはずなのに!?」
俺様と八戒は霊感大王を警戒しながら距離を取る。
「クソオ!クソオ!クソオ!この私の顔に傷を付けるなんて!」
霊感大王は怒り形相で俺様達に向かって来たのだ。
クッ!
俺様の蹴りをすり抜けるように躱した後、霊感大王は一直線に八戒へと向かって行き、顔面を掴む。
「ぬああ…離すらああ…力が…あぁぁ…」
「このまま死んでしまいなさい!」
霊感大王は再び八戒から妖気を吸収する。
八戒は見る見る身体が萎んでいき、もがく力さえ無くなった。
(おかしいですねぇ…この豚の妖力?確かに並みの妖怪よりは高いみたいですけど?怖れる程じゃないはずなんですが…??さっきは、どうやって復活したのでしょうか?しかし!今度は二度と甦れないように全ての妖気を吸い出して差し上げましょう!)
「はっかーい!」
俺様の救援も虚しく、八戒は枯れ木の様に干からびミイラ化してしまったのだ。霊感大王は八戒をゴミのように放り投げると、次は俺様に狙いをつけたのだ。
「今度は貴方の番ですよ!」
「よくも八戒を!許さねぇ!!」
霊感大王が俺様に向かって来る。
恐ろしい力を使う霊感大王の魔の手が、俺様を掴もうと幾度と突き出される。
俺様もスピードをMAXにして躱しながら攻撃をする。
お互いの攻撃と防御が交差する中、
「一度でも掴まれたら貴方の終わりですよ?」
「掴まるものか!それより油断していると!」
「油断?私は貴方に油断なんか…」
その時、霊感大王の背後から何者かが忍び寄り、
「うぎゃああ!」
突然後頭部を殴り飛ばされたのだ。
しかも俺様の方に吹っ飛んで来た所を・・・
「うらあああ!」
ノートラップで蹴り返してやったのだ!
「うぎゃあ!」
顔面から壁に衝突する霊感大王。
「ど?ど?どうなっているのですかぁ~?」
顔面から血を流してパニックする霊感大王。
突然背後から自分を殴り飛ばした者を確認するため後方を見ると、視線の先には?
始末したはずの八戒が息を切らせながら立っていたのだ。
正直、俺様も八戒が立ち上がり霊感大王の背後に現れた時は驚いたぜ。
そして目配せで合図をしながら、今の連携が成功したのである。
「オラを忘れるなや!ゼェ…ゼェ…」
「お前、本当に大丈夫なのか?」
「オラはオラでもびっくりするくらいタフなんらよ!ギリギリらけどよ…」
そんな八戒に驚きを隠せないでいた霊感大王は、
「また、あの豚か!どうして?どうして?どうして立ち上がって来られるのだぁ??確かにお前の妖気は全て奪ったはずだ!」
その時、霊感大王は八戒の妖気の流れから、その身体の異常体質に気付いたのだ。
(あの豚不死身か??いや!奴の体内で異常なまでの力を感じるぞ?何なんだ?あの不可思議な力は?あの力が異常なまでの回復力を奴に与えているのか?)
霊感大王は冷静になって思考を転らせていた。
(だったら戦略を変えれば良いだけの話です。妖気を奪うのではなく、物理的に首でも切り落として殺してしまえば良いのですよ!流石に首を落とされれば復活なんか出来ないでしょ?あいにく奴は回復力以外は大した強さじゃないみたいですからね!)
「八戒、お前まだ行けるか?」
「何とからな」
八戒の異常な回復力に気付いた俺様は、一か八かの戦法を思い付いたのだ。
俺様は八戒の耳元に近付き、ヒソヒソと作戦を伝えた。
「何をやっているのですか?二人まとめて殺してさしあげますよ!」
霊感大王が俺様達に向かって、再び突進して来たのだ。
「糞殺牙屍!」
八戒が糞弾を床に散らばせると、霊感大王の間近で爆発させる。
「クッ?目眩ましのつもりですか?だけど妖気の流れでお前達の居場所は見え見えですよ!そこです!」
『ウグッ!』
霊感大王の手が俺様の顔を捕え、妖気を吸い出していく。
見る見る干からびてミイラ化する俺様の身体・・・
「豚と違いお前は甦れないですよね?先ずは一匹ですよ!」
そこに助けに入るために突っ込んで来た八戒目掛けて、霊感大王は破壊の妖気を籠めたナイフを投げつけたのだ。ナイフが八戒の額に突き刺さる。
「物理的な攻撃なら、貴方も終わりですよね?」
「終わらねぇよ!うらあああ!唸れ如意棒!」
「えええ!?」
いつの間にか手にしていた如意棒で、八戒が霊感大王の頭を殴りつけたのだ。
「なっ?何で?うぎゃあ!」
霊感大王の胴体から頭がもげ転げ落ちた。
さらに足元には転がる先端の砕けたナイフ?
「石猿の俺様にナイフなんか効かねぇよ!」
そう言った八戒の姿が俺様の姿へと変わっていく。
更に干からびたはずの俺様孫悟空の姿が、八戒の姿へと変わっていったのである。
「へへへ。上手くいったようだな!」
「オラが損した気分らがな?」
「しょうがないだろ?後で何か奢るから許せよ?」
「絶対らぞ?忘れるなや?」
そうさ!
これは俺様の策・・・
八戒の糞爆弾の目眩ましを合図に、俺様達は姿を入れ変わっていたのだ。
どうやら、うまくいったようだな?
だが、安心したのも束の間、そう甘くはなかったのだ。
「さ!猿!後ろらぁ!」
えっ?
俺様の顔前に霊感大王の手が迫っていたのだ!?
俺様は避ける事に一瞬遅れ、その魔手は俺様の顔面を捕らえた。
俺様の身体から妖気が吸い取られていく!
「うぎゃあああ!」
身体中の力が抜けていき抵抗出来なくなっていた。
俺様は薄れる意識の中で先程如意棒で殴り飛ばしたはずの霊感大王を見ると、その姿が消えたのだ!
まさか奴も分身を使っていたのか?
「策は二つも三つも…あればあるだけ賢いのですよ?」
「く…くそったれぇ~!」
「さぁ…妖気を全て吸い取らせて戴きますよ!お猿さん!」
更に俺様から妖気を吸い上げる霊感大王。
さ…猿と…言うな…
俺様を・・・
猿と言って良いのは!
「三蔵だけぇだぁー!うぐおおおお!」
瞬間!俺様の身体から妖気が爆発するように膨れ上がったのだ。
「おおお!!これは凄い!よ…妖気が…猿の妖気が私の身体を溢れさせていく!」
霊感大王は俺様の妖気を吸い、今までの戦いで付いた傷痕が消えていく。
「今までの戦いが水の泡のようですね?」
ナメるなよ・・・
「俺様の…妖気は貴様なんかには手に負えないほど無限大ダァーッ!」
急激な俺様の妖気の流れが、霊感大王へと押し寄せた。
「えっ?ええ?ちょっと待て!待った…待ったぁー!」
霊感大王の左腕が突然膨張し破裂したのだ!
「うぎゃああ!」
知らず知らずに霊感大王は、己の妖気吸収限界値を越えていたのだ。
それは俺様の妖気は勿論、重ね重ね八戒の妖気を取り込んでいたからでもあった。
「や…ヤバいです…このままでは逆に私の身体がもちません!こうなれば奪った妖気を己の再生に使うまでです!」
霊感大王が慌てて俺様の顔から手を離そうとした時、
逆に俺様が霊感大王の手を掴んだのだ!
「遠慮すんなよ?まだまだあるぜぇ?」
「い…嫌…止めて…」
さらに!
「オラのもプレゼントするらよ!休んでる間に体力満タンら!」
八戒が霊感大王の背中から妖気を送り込んだのだ。
「ううう…だ…だめ…げ…限界…嫌…うぎゃあああ!」
霊感大王の身体は風船のように膨らんだ後、音を立てて破裂した。
ゼェ…ゼェ…
俺様と八戒は互いに肩を支えながら立っていたのだ。
「俺様達の勝ちだぜ!」
そこに、
「よくやったぞ!猿に八戒!」
「へへへ…猿って呼ぶな…三蔵!」
治癒術を行っていた三蔵と、回復した沙悟浄が現れたのだ。
どうやら沙悟浄は無事のようだな?
その時、
アッ!
俺様達は気付いたのだ。
「ウググ…」
満身創痍の身体を引きずりながら、その場から逃げようとしている霊感大王がいた。
(聞いてない…話が違う…こんな化け物相手に…勝てる訳…)
「逃がすか!」
「待て!猿!」
霊感大王が逃げようとしている目の前に、何者かがゆっくりと近付き現れたのだ?
「全く…使えない妖怪だな…」
そいつは霊感大王の前で立ち止まる。
「誰だ!?」
「察するに、どうやら奴が本当の黒幕のようだ…」
霊感大王が逃げる先に現れた者は、助けを請う霊感大王を見下ろしながら言った。
「た…助け…」
「貴様はもう用済みだ…消えろ!」
「そ…そんな!私は貴方に言われて…く…クソォー!」
霊感大王はその者に噛み付こうと飛びかかったのだ。
「邪魔だ…平伏せぇ!」
「ウガガガ!」
霊感大王は、現れた男の霊圧に押し潰されて床に埋もれたのだ。
そして霊感大王の身体を光り輝く巻物が輪になって包み込み…
「緊操の縛!」
霊感大王は巻物の中に吸い込まれて消えていった??
「面倒だが、私が直々にお前達の相手をしてやろう」
こ、こいつは何者だ?
一体全体どうなってるのだ??
その話は次話でな!
次回予告
孫悟空「なんだよ!霊感大王を倒して一件落着じゃなかったのかよ!」
八戒「どうやら…これからが本当の戦いのようらな?」
孫悟空「腕がなるぜ!て・・・ん?三蔵どうした?」
三蔵「・・・・なんか・・やばい展開が・・・」
孫悟空「三蔵?」




