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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
神を導きし救世主!
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おばちゃん

崖から落下した蛇塚は謎の者達に救われたが、その後恐ろしいモノを見た。


村人達が蛇の頭をした化け物へと変化したのだ!


妹の詩織を探す蛇塚はそこで予想外の人物に助けられる。


俺は蛇塚軍斗!


俺は妹と生まれ里に帰郷したのだったが、その里は俺の知っている里とは変わり果てていた。


ダチも…里の連中も…


だってよ?里の連中、口が裂けて蛇頭の化け物になっちまったんだぜ。


俺は妹の詩織を救うべく化け物に見付からないように里の中を探していく。

その時、化け物達に見付かりそうになって入りこんだ小屋で俺をかくまってくれたのは?


『おばちゃん!』



そこには、俺の見知ったおばちゃんがいた。

安堵と半分、俺は警戒もしていた。

まさか、おばちゃんも化け物なんじゃ?


俺は…


「おばちゃん…聞いてくれよ!里の皆が!化け物になっちまったんだよ!」



すると、おばちゃんは涙目になって俺に近付いて来たのである。

そして俺を優しく抱きしめた。



「軍斗君!軍斗君よね?大丈夫?大丈夫だった?怪我はない?怖かったよね?大丈夫?大丈夫だった?」



俺はおばちゃんに抱きしめられて、緊張の糸が解けたかのように泣いてしまった。

この人は俺や詩織が子供の頃に世話をやいてくれていたおばちゃん。

中年の少し小太りしてはいる温厚で優しい人…

俺と詩織の母さんは、俺が五歳の頃に突然の病で病院から出られなくなった。

それから母親代わりになって、俺と詩織に食事や身の回りの世話をしてくれたのだ。


俺にとっては…二番目の母さんみたいな人だった。


「おばちゃん!どうなっているんだよ?この里はどうなってしまったんだよ!」



おばちゃんの肩を掴み問う俺に、おばちゃんは言った。



「この里は変わったのよ…何もかも…」


変わった?何もかも?


そして、おばちゃんは優しく俺に言ってくれた。



「本当に良かった…他の何処でもなく…直ぐに私のもとに来てくれて…」



本当にそう思う。

俺は運が良かったのかもしれないな?



「長話になると思うから・・・」



俺は小屋の窓から外の様子を警戒しつつ覗いていた。

詩織の事が気になりつつも、おばちゃんに里の状況を聞くべく小屋で落ち着く事にしたのだ。

その間、おばちゃんは奥で俺のために食事を作ってくれていた。

そう言えば、ここに来て何も食べてないよな?


それにしても詩織は何処にいるんだよ?

俺は外を覗いていると、後ろから食事を作り終えたおばちゃんが近寄り…俺に言った。



「本当に運が良かったわ……私…」


「えっ?」


「こんなめでたい日に…こんな御馳走が迷い込むなんてねぇ!」



ゾクッ…


俺は寒気がして、ゆっくりと振り返る。


「うわぁああああ!」



その俺の眼前に口を開いた蛇の頭が迫って来たのだ!

俺はほとんど反射的に身体を反らし、床に滑り込み躱した。

俺は再び見るとそいつは、蛇頭に胴体が小太りの女の身体であった。


まさか!?

考える余地はなかった。


「おばちゃん!」



俺を睨みつけている蛇の化け物は、



「ほんの少し味見をしようとしたのに…どうして逃げるの?軍斗君?おばさん…昔から思っていたのよ?軍斗君って本当に美味しそう…」


『食べちゃいたいくらいに・シャアアアアアア!』




間違いない…

この化け物は!間違いなく、おばちゃんだ!

再び襲い掛かって向かって来る化け物と化したおばちゃんに、俺は慌てて入口を塞いでいた突っかけ棒を盾にして受け止める。



「止めろ!止めてくれぇ!おばちゃん!何なんだよ?どうしちまったんだよ!本当に…本当に!」


俺は泣き叫んでいた。

次第におばちゃんの力が強まり、俺は押し潰されようとしていた時…


「ゴメン!おばちゃん!」


俺は持っていた突っかけ棒を手離したと同時におばちゃんを蹴り飛ばして、テーブルの近くにあった木製の椅子を持ち上げ、おばちゃんの顔面目掛けて殴り付けたのだ。

椅子はおばちゃんに直撃し、ぶっ壊れた。



ゴメン…おばちゃん…


が…目の前のおばちゃんは一瞬怯んだものの、何事もなかったかのように、俺に向かって襲い掛かる。嘘だろ?オィ!

しかも、おばちゃんのその手には料理に使っていた包丁が握られていたのだ。

懐に隠していたのか?いや、それよりどうする?

おばちゃんから振り下ろされた包丁が俺の腕を掠る。

血が垂れて、俺は腕を押さえながら隣の部屋へと逃げるように走った。

台所から寝床へと!


痛ぇ…痛ぇよ…


俺は食器棚や箪笥を倒して壁にして身を伏せる。

おばちゃんは俺の垂れ流した血を追って、ゆっくりと俺に近付いて来た。



『おばさん…軍斗君が小さい時によく飴玉あげたよね?今度は、おばさんにくれないかな?』



おばさんは隠れている俺を見つけ叫んだのだ。



『軍斗君の目玉~!』


「うわあああ!」



俺は恐怖にかられながらも辺りを見回し、辺りから武器になる物を探す。

手にしたのは台所にあった別の包丁が一つ。


やるしかないのか?生き残るために?

俺は包丁を構え向かって来るおばちゃんの振り回す包丁を受け流す。

強い衝撃に、火花が散った。

しかも、おばちゃんの力も動きは半端じゃない!

おばちゃんの振り払った腕に俺は壁際まで弾き飛ばされ、倒れたまま踞る。

身体が震え腕から流れる血が、俺に更なる感情を与える。



恐怖!恐怖!恐怖!

死ぬ事への恐れ…

俺は…死にたくない!


『俺は絶対に死にたくないんだぁー!』



俺は俯せになっている自分の真上にまで迫っていたおばちゃんの身体に、振り向き様に勢いに任せ持っていた包丁を突き付けたが、俺の包丁はおばちゃんの蛇の皮に阻まれ、突き刺さる所か包丁の先端が欠けてしまったのだ。



「終わりだ…こんなの…どうしたら良いんだよ!」



もう、逃げるしかない?

逃げなきゃ殺られるが、俺が駆け出し逃げようとした先に、おばちゃんは素早い動きで先回りしたのだ。動きが蛇のように人間離れしている!逃げる事も出来ないのか?


けど、俺は諦めない!


俺は再び向かって来たおばちゃんの顔に向けて、自分の腕から流れる血を振りかけた。


せめて…目隠しに!


俺はヤミクモに包丁を振り回しながら、その場から出ようとした。


『うぎゃあああああ!』



えっ?おばちゃんの悲鳴?

振り返ると、おばちゃんの蛇の皮が切り裂かれ血を流していた?


どうして?


確かに俺が今傷付けた切り傷だった。

しかし、さっきは傷一つつかなかったはずなのに?

その時、俺は気付いたのだ。

おばちゃんが傷ついてる箇所に……?


そうかぁ!!


確証はなかった。

だけど、やらなきゃやられる!

俺は手にした包丁を握りしめて、呼吸を整える。

生きるために集中力を高める。

可能性があるなら?今出来る全ての策を用いて突破口を切り開かなければ!




「ごめん…おばちゃん…俺、死ねないんだよ…詩織が…詩織が…詩織が待っているんだぁからー!」



俺は狙いを定めておばちゃんに向けて、包丁を力強く振り払った。



『うぎゃあああああ!』



おばちゃんの断末魔とともに、人間の胴体から蛇の頭がはねられた!

胴体から血が噴き出し倒れていくその首は、胴体から切り離されてしばらく動いていたが、次第にその動きを止めたのだった。


やった…のか?


そう…俺が狙った先は?理由は解らないが、俺が目隠しにと振り掛けた俺の血のかかった場所だった。俺の血が付いた場所なら、この化け物に傷を?いや!殺せるのか?


俺は倒れているおばちゃんに目をやる。



「…ごめん…おばちゃん…言い訳はしないよ?俺は生きたいんだよ…ごめん…ごめんよ…うっ」


俺は嗚咽しながら、嘔吐した。

手に残る生ぬるい血の温もりが俺の心を締め付ける。

自分が生き残るために、俺は自らの手を血に染め、恩人であったおばちゃんを殺してしまったんだぁーー!!


だけど・・・俺は涙を堪え立ち上がると、小屋にあった布を二枚持って来て、一枚を倒れているおばちゃんの顔に被せた。

残った布は切り裂き自分自身の血止めをし、余った布を額に巻き付ける。

更に武器になるようなモノを探した後、再び詩織を探すために外に出たのだ。


戦う決意をして!



「詩織を助け出すまで、俺は死なない!」



外に出ると蛇頭の里人達が行列をつくり、儀式の行われる場所?俺が来た蛇神島に向かって歩いて行くのが見えた。


儀式は明日のはずじゃ?まさか早まったのか?


俺は隠れながら様子を窺っていると、奴達は里に唯一ある病院から出て来た事に気付く。


「あの病院に何かあるのか?」



俺が再び顔を出そうとした時、何処からか大地を擦る音が聞こえて来たのだ?


う…嘘だろ?


俺は再び息を止めて硬直するかのように隠れた。


だって…


俺の目の前には…


頭だけでも二メートル近くある大蛇が身体を擦りながら、里の連中と同じく移動していたのだから…嘘だよな?こんな化け物!

ふざけんなよ!こんなのが立ち上がったら、どれだけになるんだよ!せっかく戦う手段を見付けたのに、こんなのにかかったら俺なんか丸呑みじゃんかよ!


俺は里の連中と大蛇が見えなくなるまで、震えて身を潜めていた。

しばらくして誰もいなくなった事を確認した後、俺が表に出ると突然、空が暗くなったように感じたのだ?月が雲に隠れたのかと思い、空を見上げると…


「あわわ…」



俺は口を広げて目を見開き硬直してしまった。

そこには、蛇神山を囲むように先程とは別の巨大な五体の大蛇が地上を見下ろしていた。


俺は動けなかった…


蛇に睨まれた何とかって?


こんな感じなのか?


やがて五体の大蛇は見上げる俺の視界から消えた。


安心…安堵?



だが、先にやり過ごしたはずの大蛇が戻って来たのだ。

そいつは俺の臭いを嗅ぎつけ、まんまと外に出て硬直していた俺を獲物と判断して襲い掛かって来たのだ。



『うわああああああ!』


次回予告


蛇塚「俺はこのまま大蛇に飲まれてしまうのか?詩織は何処に?そして蛇神島に何が起きているのか?謎に謎で、謎すぎで俺はいっぱいいっぱいだ~」


三蔵「話が気になる!早く続けろ!」


蛇塚「まだまだ話は長くなるから、茶と菓子でもつまむか?」

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