もう二度と離れない!血の絆?命の錬金術?私はお前とともにある!
三蔵がむちゃぶりに苦しんでいる時、
バサラの遺体を運ぶ蛇塚の前に現れたのは?
俺は三蔵・・・
え~ なんだかな?
皆が言うんだよ~
俺に太陽神・大日如来の力を使って化け物を倒せって!
でもよ?無茶ぶりで倒せたら苦労しないよな?
てか、マジにどうやんの?
大日如来って、気合いか何かでなれるもんなのか?
そんな俺を他所に、
バサラの遺体を安全な場所へと移動させて、戦場に赴こうとした蛇塚の前に現れた人物がいた。
蛇塚の前には赤い液体が集まり、人の姿へと変わっていく?
「お・・・お前は!」
それは蛇塚の知る男だった。
『ホーエンハイム!』
そこには、赤い液体(血)姿のホーエンハイムが立っていたのだ。
《蛇塚君だったな?ゼロを安全な場所まで移動させてくれてありがとう》
「ホーエンハイム・・・あんた!生きてたのか?」
《・・・・・・》
「驚いたぜ・・・カミシニってのは、そんな状態になっても生きてられんのかよ?」
ホーエンハイムは・・・
《残念だが、カミシニも万能ではない。この姿を維持出来るのも長くはないだろう。今は残った魂の力で、この姿を維持しているに過ぎない。直に私も消えてしまうだろう。だが、その前に私には、やるべき事があるのだ!》
「やるべき事?」
ホーエンハイムは倒れているバサラに近付く。
「残念だけど・・・バサラさんは、もう」
バサラの胸には化け物に串刺しにされた穴があり、心臓がえぐり取られていた。
間違いなく死んでいるのは確かであった。
しかしホーエンハイムはバサラの亡骸に向かって、
《私のゼロ・・・よくぞ今まで生きていてくれたな?
最後の最期に、お前に巡り会えた事は・・・
神を狩ってきたカミシニの私が言うのは皮肉な話だが、神に感謝せねばなるまいな?
ゼロ・・・愛するゼロよ・・・私は!!
私の目の前で、二度もお前を死なせたりはしない!
もう二度と・・・離れたりはしないぞ!》
「ホーエンハイム?あんた何を言っているんだよ?気持ちは痛いほど分かるが、バサラさんはもう・・・」
するとホーエンハイムは蛇塚に向かって衝撃的な言葉を言った。
《今から私のゼロを!君達の友のバサラを蘇らせる》
「なっ?そんな事が出来るのかよ!」
ホーエンハイムは蛇塚に振り向く事はなかった。
そして、
《これが私に出来る最後の錬金術》
ホーエンハイムの身体が光り輝き、その姿形が、血の塊へと収縮していく。
「そ・・・それは!?」
鼓動が聞こえる?
ホーエンハイムの姿は、脈打つ心臓の姿になっていたのだ。
心臓は鼓動を続けながら宙に浮いていた。
《私が・・・最後の力で、ゼロの一部と・・・なろう・・・私の命を対価に、ゼロの命を取り戻すのだ!蛇塚君・・・私を・・・ゼロのもとに・・・》
蛇塚は言葉が出なかった。
ただ頷き、元はホーエンハイムだった心臓を、ゼロの開いた胸の上に置く。
すると心臓はゼロの中に入っていき、ゼロの身体が震え出したのだ。
「一体・・・どうなるんだ?本当にバサラさんが助かるのかよ?」
するとバサラの身体は震えを止め、その指が動く。
そして蛇塚の目の前で起き上がり、バサラが立ち上がったのだ。
「・・・・・・」
バサラは蛇塚を残し、ゆっくりと歩き出す。
我に戻った蛇塚は、
「ちょっと待てよ!」
バサラは蛇塚に呼び止められ立ち止まった。
「聞いて良いか?今のあんたは誰だ?俺の知っているバサラさんで良いのかよ?」
バサラは答えた。
「俺が誰なのか・・・俺自身もう解らない。今の俺には、ゼロだった記憶もナンバー6だった記憶も、お前の知るバサラの記憶も残っている。そして、カミシニであったホーエンハイムの記憶すらも・・・」
「えっ?それじゃあ・・・えっ?」
困惑する蛇塚にバサラは答えた。
「蛇塚、俺達も戦場に向かうぞ!仲間が!友が待っているからな!」
蛇塚は全てを理解し、笑みを見せた。
(その言葉だけで、あんたが誰なのか関係ねぇ・・・だよな?『友』が待っているからな!)
「で、何て呼べば良いんすか?」
「お前達が良ければ、今まで通りバサラで構わない」
「ウッス!でも、病み上がりに無理はしないでくださいよ?」
「心配ない!」
「じゃあ、行きますよ!バサラさん!」
二人は印を結び真言を唱える。
『オン・アミリテイ・ウン・ハッタ!』
『オン・バザラ・ヤキシャ・ウン!』
二人の姿が明王へと変わっていく!!
『軍荼利明王・軍斗!』
『金剛夜叉明王・バサラ!』
明王へと変化した二人は俺達のいる戦場へと向かったのだ。
《ゼロ・・・これでお前と私は二度と離れる事はない・・・
お前の中で、私の魂はやがて消えるだろう・・・だが、忘れるな?
私は・・・いつまでも・・・お前を・・・・・・みまもっ・・・て・・・ぃ・・・》
ホーエンハイムの魂は消えていく。
バサラの目から涙が一粒こぼれ落ちたのを、蛇塚は見逃さなかった。
「三蔵!今、行くからなぁー!」
その頃、俺達の戦場では蚩尤の相手を三千院と大徳に引き受けて貰い、俺と晴明は俺の大日如来変化に試行錯誤していた。
「くそ!確か・・・大日如来真言は・・・えっと・・・」
『オン・バザラ・ダド・バン!』
俺は印を結びながら大日如来真言を何度と唱え念じているが、
「ダメだ・・・まったく変化ねぇよ」
「三蔵!大日如来の真言には二つあるぞ?今のは金剛真言!胎蔵真言を試してみたらどうだ?」
「そうか?よし!」
『ナウマク・サマンダ・ボダナン・アビラウンケン!』
今度は大日如来の胎蔵真言を唱えてみるが、やはり変わりなかった。
ダメだ・・・
「マグレだったんだ・・・あの時のはマグレだったんだ!今の俺の気持ちはまな板の上のマグロだ!」
「はっ?」
「もう、どうにでもしてくれって意味・・・無理なもんは無理!時間の無駄・・・俺はダメな奴なんだ・・・」
「馬鹿を言っていないで真面目にやれ!それにまな板の上は鯉だ!馬鹿者」
「無理なもんは~無理ぃ~!」
「以前はどうやったのだ?」
「はっ?え~確か・・・無意識に・・・確か・・・あっ!」
無我夢中だったから思い出せない・・・
ただ、スサノオやクシナダを助けたいと言う思いしかなかった。
「それにしても・・・お前には不動明王の他に迦楼羅王、それに大日如来まで?いつ契約したんだ?」
「契約?不動明王以外は俺も契約した記憶ないのだが勝手にと言うか?俺が聞きたいくらいだぜ!」
「ふっ・・・」
(昔から本当に出鱈目な奴だと思っていたが、これが救世主の力なのだな・・・)
「?」
すると、蚩尤の攻撃を引き受けていてくれた三千院と大徳の叫び声が響き渡る。
二人は蚩尤の触手に身体を縛られていた。
「くっ!二人が危ない!ダメなもんはダメだ!俺は加勢に行くぞ!」
「あっ!馬鹿!」
飛び出した俺に気付いた蚩尤が、
『そこに隠れていたか!三蔵!お前の首をもぎ取り美猴王にたたき付けてやるぞ!』
そう言うと、一瞬で俺の間合いに入って来たのだ。
「コイツ・・・こんなデカイ身体で、何てスピードだぁ!」
蚩尤は右手に出現させた血の斧を持ち、俺に向けて振り下ろす。
あの武器・・・カミシニの武器か?
コイツ?カミシニの血の錬成武器を使えるのか?
「三蔵!」
俺は蚩尤の振り下ろす斧から渦巻く勢いに飲み込まれていく。
蚩尤の斧は凄まじい衝撃音で地面を陥没させ巨大な穴を作った。
まるで隕石でも落ちたような威力だった。
「何て破壊力だ!三蔵は何処だ?」
晴明は俺の気を探り、感じた方向を見上げる。そこには戦場に駆け付けて間一髪俺を救い、抱えた蛇塚がいたのだ。
更に蚩尤の触手を斬り裂き、捕まっていた三千院と大徳をバサラが救出していた。
バサラが・・・
バサラ?あれ?バサラ?
うん?ん?あれ、バサラ・・・!?
「うぎゃああ!バサラが化けて出たぁー!!」
俺だけでなく、三千院、大徳に晴明までもが目を丸くして現れたバサラを見ていた。
「・・・・・・」
「だよな・・・普通。当然の反応だよなぁ・・・」
蛇塚は一人納得しながら頷いていた。
次回予告
三蔵「まさかのバサラの復活に俺は感激だぜ!」
晴明「おい!忘れてないか?お前は早く大日如来に変化に集中しろ!」
三蔵「それにしても、ホーエンハイムとバサラが一つになる事で、バサラはカミシニにもなったんだよな?これで身体の崩壊も自我を失いゼロになる事もないのだよな?これにて一件落着!良かった!良かった!」
晴明「確かにバサラさんの件は良かった。だが、現実逃避していないか?お前は昔から集中力がなく、やる事なす事を投げ出して!行き当たりばったり!今の状況を解っているのか?お前が今やらねばならない事をもう少し考えて・・・くどくど」
三蔵「お前は俺の保護者か?母親か!?」




