八戒と沙悟浄!その過去?
車遅国での戦いも終わり、三蔵一行達は一息ついていた。
その時、八戒と沙悟浄はと言うと??
どうもです!沙悟浄です!ハイ!
実は今、私と八戒兄貴は村に買い出しに来ております。
えっ?三蔵様と孫悟空兄貴ですか?
えっと…話して良いのかな?
二人は旅館で寝てますけど・・・
「まったく…豚と河童使いの荒い奴ららよ!」
八戒兄貴は、ずっと不満を垂れております。
まぁ、確かに・・・
雑用全般は私と八戒兄貴が担当ですからね~
えっ?不満はありませんよ!私は!
(ちょっとしか…)
私達はいろいろ店を回りながら、旅に必要な道具や食料を調達していたのです。
そうそう!八戒兄貴は意外に旅の事に詳しくて勉強になるのですよ?
「八戒兄貴は旅は長いのですか?」
八戒兄貴は知らぬ間に買って来た饅頭を食べながら私に応えてくれたのです。
「あん?そうらな~オラは物心ついた時には一人らったからなぁ~。旅は生まれついてから生きて行くために必要らったらけら?」
「えっ?」
「そう言えば、お前には話してなかったらか?」
すると八戒兄貴は、歩きながら私に自分の生い立ちを話してくれたのでした。
物心ついた時、八戒兄貴は豚小屋に一匹取り残された子豚だったらしいのです。
ずっと、何かに向かって泣いていたのを記憶していたそうですが、何に対して泣いていたのかは覚えていなかったそうです。
最初、八戒兄貴は自分自身をただの豚だと思っていました。
時が経つにつれて、他の豚と違う自分に気がついていく・・・
だって人語を話し、二足歩行する豚ですからねぇ~
それは『妖怪』である事に間違いなく・・・
一緒に育てられた豚達にも気味悪がられ、いつも一匹でいたのだそうです。
その後、自分が他の豚仲間と違う『妖怪』だと気付いてからは、八戒兄貴は一人旅に出たのでした。
それは困難な旅だったそうです・・・
人間達には不気味がられ、恐れられ、命を狙われる事も度々あったそうです。
また妖怪達にも邪魔物扱いされ、何度も騙され、裏切られ、
ここでも身の危険と隣り合わせの中で一人、今まで生きてきたのでした。
「ウルウル…ウッウッウッウッ…」
私は八戒兄貴の生い立ちに涙が止まりませんでした。
「泣くなや?苦労こそしたらが、別にそれで死にたいとは思わなかったらよ!」
「えっ?」
八戒兄貴は真剣な眼差しになり、私に言ったのです。
「オラには生きる目的があったかららよ!」
「生きる目的ですか?」
「そうらよ!オラには失われた記憶があるらよ!それは妖怪に生まれ変わる前の転生前の記憶ら。そう!天界でのオラの記憶!オラはそれを思い出す事を生き甲斐に、今まで生きて来たらよ!」
「そう言えば八戒兄貴は、神堕ちで妖怪になったのですよね?」
「そうらよ!オラが記憶しているのは、オラが『天蓬元帥』であった事らけら。オラは思い出さなきゃいけないらよ。絶対に!何故らか解らないらが、オラにとっての唯一の生きる目的だと、オラは信じているらよ!」
「そう言えば、どうして八戒兄貴は三蔵様の弟子になったのですか?」
「ん?それはらな…」
八戒兄貴は思い出していました。
それは、八戒兄貴が三蔵様と孫悟空兄貴と出会った時の話。
一緒に旅をしていた八戒兄貴が、同行を抜けると言い張ったのです。
そして三蔵様と孫悟空兄貴に別れを告げに来た時の話。
「何度も言うらが、オラは絶対にお前達の仲間にはならねぇらよ!」
「そう言うなって!もう仲間みたいなもんだろ?」
「何か理由があるのか?」
「ふっ…オラにはオラの目的があるら…」
「目的?」
「そうら!オラはオラの失われた記憶を取り戻すための旅をしなければならないのら!」
「失われた記憶だと?」
「オラが…オラであるために…」
それは八戒兄貴が他の妖怪と組んで、盗賊紛いの事をしていた時だそうです。
八戒兄貴は仲間の妖怪達と盗賊に入り、そこで山分けの際に裏切られ、崖から突き落とされて頭を強打したのでした。それは生死を左右する程の致命的な怪我を・・・
しかし、それと同時に八戒兄貴の脳裏に何か大切な記憶が蘇ったのです。
それは己が『天蓬元帥』であった記憶・・・
そして、絶対に忘れてはいけない何かが自分の過去にあった事?
しかし、それ以上の記憶は蘇らなかった。
記憶は霧のモヤに消され・・・
消えかける微かな熱い思いを残しつつ・・・
もう一度その記憶を取り戻したくて、旅に目的を持ったのでした。
三蔵様は八戒兄貴の話を聞いた後、
「そうか…」
「だからオラはお前達の仲間にはならないらよ!他をあたって欲しいらよ!」
「八戒よ…お前の失われた記憶を俺が必ず蘇らせてやる!だから俺とともに来い!」
「はっ?お前に何が出来るらよ!いい加減な事を抜かすんじゃないら!」
「俺を信じろ!」
そう言うと、三蔵様は八戒兄貴の額に手をかざし目を綴じたのです。
そして何やら真言を唱え始めたかと思うと?
「や…やめ…あああああ???」
八戒兄貴の意識が遠退き、視界が消えてボヤけていく。
そして霧の中にいるような感覚になったかと思うと、突然霧がパッと晴れて何かが見えて来たのだそうです!
(これは過去の記憶らか?)
(誰かが、オラの前を歩いている?)
(誰ら?)
(緑色の長い髪…)
(優しくオラに微笑むのが解る…)
(らが、顔が霧に隠れ見えないら…)
(あっ…!!)
(その者は、オラの頭を優しく撫でてくれた…)
(温かい…ずっと…)
(このまま…いたい…)
(お前は…誰ら?)
(思い出したい!)
(忘れたくなかった)
(いや!忘れてはいけなかったら!)
(オラは!!)
八戒兄貴がその者に手を伸ばすと、八戒兄貴は光の中へ吸い込まれるかのように現実へと引き戻されたのでした。
八戒兄貴が我に返ると、目の前には三蔵様が息を切らして膝をついていたのです。
「な?何があったら?」
「ハァ…ハァ…ハァ…どうやら…お前の記憶には…何者かが施した強い封印がかけられているようだ…」
「ふ…封印?一体誰が?何のためにらか?」
「そ…それ…は…わからん…」
三蔵様は力尽き倒れたのでした。
八戒兄貴に施された封印を解こうとして、その力を使い果たしたのだそうです。
それほど強力な封印だった事が解ります。
「三蔵!」
孫悟空兄貴が三蔵様を抱き寄せると、
「心配するな…少し疲れただけだ!しかし何て強力な封印なのだ」
そんな三蔵様の姿を立ちすくみながら見ていた八戒兄貴は、
「三蔵の…旦那…」
「しかし八戒よ!俺がいつか必ずお前に施された封印を解いてやる!だから…俺と来い!」
「な…なな…なんらって…いうらよ…」
八戒兄貴にとって・・・
始めての事だったそうです。
始めて・・・
誰かに必要とされた。
始めて感じる・・・
『繋がり!』
それが…今…手を伸ばせばある。
しかし・・・
(また裏切られるかもしれないらよ?いや…何故ら?不思議と信じられる。
らって、今までオラのために…ここまでしてくれた奴がいたらか?)
八戒兄貴の目から自然に涙がこぼれ落ちたそうです。
八戒兄貴は涙を見せまいと、後ろを向き三蔵様に向かって、
「仕方ないらな!お前達は何かと頼りなさ過ぎるら!だか…だから…オラがついて行ってやるらよ!だからオラの記憶を蘇させる約束を守るらよ!」
八戒兄貴の姿に気付き、顔を合わせて微笑む三蔵様と孫悟空兄貴。
「そんな事があったのですね…」
「まぁ、三蔵はんしかオラの記憶の封印が解けないなら、一緒にいた方がオラの目的に一番の近道らしな?」
「何か…解ります…解ります…共感持てます…」
「共感って…大袈裟らな?」
「私も…一人でしたから…生まれてから…ずっと…」
「ん?どういう事ら?」
沙悟浄「私…実は…河童なんです…」
《ズコッ!》
「知っているらよ!」
「でも、半分は人間なんです…」
「なぬ?」
「私…半人半妖なんですよ…だから…」
私もまた…
孤独を生きて来たのです。
半人半妖の河童…
人間と妖怪との間に産まれた異形種。
それだけで、周りの河童達からも人間達からも迫害され、
誰からも相手にされなかった幼少時代。
両親は河童の父と人間の女・・・
二人は私を産むと間もなく命を落としたそうです。
それは、人間からの虐待・・・
河童の父は人間達に殺され、母は生まれたばかりの私を抱いて河童の里の長老に託したのです。
その代償として自分自身の魂と引き換えにして・・・
人間世界で生きていけない私を生かす。
他に方法がなかったのだそうです。
母の命と引き換えに生きる事を許された河童・・・
沙悟浄
それが、私・・・
だから私もまた孤独の中、誰に頼る事もなく、唯一与えられた小さい小屋という空間で、ただ一人生きて来たのです。
「なんか…お前も苦労して来たんらな?」
「八戒兄貴だって…」
私達はその後、
暫く何も語らずに三蔵様達のいる宿屋に帰って行ったのでした。
そして、戻ると、
「おい!お前達!いつまで時間かかっていやがる!待ち侘びて腹が減ったじゃねぇかぁー!」
三蔵様の怒りが頂点に達していたのでした~
「うきゃああ~!」
「ごめんなさ~い!」
「何故、俺様まで殴られるんだよ~??」
「貴様達全員頭を冷やして来やがれぇ~!」
三蔵様に追い掛け回される私達でした。
追伸・・・
「オラ…いる場所間違ってないらか?」
「だ…大丈夫だと…思いますよ…多分…」
「おっ?何の話だ?俺様にも聞かせろよ!」
そんな一日でした。
私達の旅は続く!
次回予告
後書き編集
八戒「今回はしみじみする話らったらな?」
沙悟浄「そうでしたね~」
孫悟空「馬鹿野郎!次話から、いよいよ霊感大王のいる館に攻め込むぜ!気を引き締めやがれ!」
三蔵「猿!分かっているようだな?お前ら!俺達に喧嘩を売った馬鹿者達を一人残らずシメに行くぜ!あはは…あはははははははは!」
孫悟空・八戒・沙悟浄「貴方が一番恐いっす・・・」




