決着?悪魔ラスプーチンと破壊神ゼロ!!
ゼロに意識を乗っ取られたバサラとファーストの身体を乗っ取ったラスプーチンとの激闘の中、遺跡からの脱出に成功した三蔵達はただ、見ている事しか出来ないのか?
俺は三蔵だ!
今、俺達は遺跡の上空で行われている現実離れした戦いを目の当たりにしていた。
空を飛ぶ巨大なドラゴンに、青白いオーラに包まれたバサラが戦っている。
バサラ・・・いや?
今はゼロに意識を奪われているようだからゼロと呼べば良いのか?
何にしても・・・
「ファンタジーだぜ!」
しかし、この戦いの最中、今の俺達にはなす術がなかった。遺跡での壮絶なる戦いの連続で、体力も霊力も底を尽き、身体も限界に等しい状態だったから。
三千院は地下遺跡からの脱出のために使った明王合わせ術の反動で足に来ているみたいだし、大徳に蛇塚も俺と同じくダウン中。
つまり、見ているしかなかった。
「おい!あれを見ろ!」
その時、空中での戦いに動きがあった。
上空が真っ赤に染まり、辺り一帯の温度が異常に上がる?
ドラゴンの口から広範囲で凄まじい炎を吐き出したのだ。
ゼロは炎に飲み込まれるが、その青白いオーラが身を守るように炎を消し去る。
「何なんだ?あの青白いオーラは?」
「うむ。俺にもよくは解らぬが・・・あれも妖精の力なのであろうな?」
俺の問いに大徳はそれ以上は答えは出ないと首を振る。
それは当然の事だ。
「妖精の力とは一体何なんでしょうか?」
「それを知る人物は・・・」
三千院は倒れているホーエンハイムを見た。
「バサラを元に戻すためにも、ホーエンハイムを今死なす訳にはいかないようだな」
俺達はホーエンハイムに治癒の術をかけるが、カミシニの持つ神の力を拒む能力が邪魔をして、治癒が思うように行えないでいた。
「くっ!どっちもこっちも!」
俺は再びゼロとラスプーチン(ドラゴン)の戦場を見上げる。
するとドラゴンの身体の鱗が変化し人間の上半身へと変わっていく。それは上半身は白い人間の姿をしているが、下半身はドラゴンに繋がって伸びていく。
あれはサードの妖精の魑魅魍魎か?
鱗から変化した百体のサード達はドラゴンの身体からゼロに向かって襲い掛かって来たのだ。
ゼロは掴みかかる魍魎達に、両掌から青白い閃光を放って消し去っていく。
左右から、上下から、ゼロに恐れなく掴みかかる白き魍魎達は分裂し、数でゼロを圧倒しながら津波の如く飲み込んでいった。
『ふふふ・・・あはははは!何が世界を消滅させる者だぁ?世界を消滅支配するのは、この私!ラスプーチン様なのだぁー!あはははは!』
が、ラスプーチンの馬鹿みたいな笑い声は一瞬で止まる事になる。
ゼロを飲み込んだはずの魍魎達が、逆に青白い渦に飲み込まれ消滅していったからだ。
その渦の中心でゼロが何もなかったかのように、青白いオーラに包まれながら浮いていた。
そして、その手をラスプーチンに向けると一瞬、眩しいくらいの青い閃光が放たれた。
『ウッ・・・ガガガガガガ??』
一瞬だった。
目の前にいたはずのドラゴンが半身を失うくらい消滅していた。
『馬鹿な!?・・・何だ・・・この力は??何なんだぁー!!』
発狂したと同時にラスプーチンの身体が再び再生していく。
そして、冷静さを取り戻す。
『がははは!お前がどんだけの力があろうと、私は何度でも幾度でも何回でも再生し、復活出来るのだぞ!そして、お前のその力も私の一部にしてやるぞ!私は無敵だ!私は王だ!私は支配者!私は神なのだぁー!』
が、ラスプーチンは気付く。
自分自身の身体が完全に再生しきれていない事に?
『!?』
その瞬間、ラスプーチンの身体がボロボロと崩れ落ち始めたのだ?
『何だ!何だ?何なんだ・・・この身体は?私の身体が再生しない!再生が間に合わない?再生しろ!再生しろ!しろ!私の身体ぁーー!』
だが、さらに崩れ落ちる身体に、
『うぎゃ!うぎゃ!うぎゃ!うぎゃ!うぎゃ!うぎゃ!うぎゃ!何なんじゃー???』
次第にドラゴンへのメタモルフォーゼを維持出来なくなったラスプーチンは、己のサイズの人型へと戻したのだ。
『ハァ・・・ハァ、ハァ』
メタモルフォーゼを解いた事で、身体の崩壊を免れたラスプーチンの姿は全身真っ白の銀髪の髪に左右の瞳の違う妖精の姿だった。
その身体はひび割れ枯木のようになっていた。
『ハァハァハァ・・・奴は何なんだ?奴は?あの化け物は??』
『あっ!』
パニック状態のラスプーチンが正気に戻ったのは目の前・・・いや?眼前に現れたゼロの顔を改めて見て今頃気付いたのだ。
ゼロの正体に・・・
『この男・・・似ていないか?昔、最初に見た妖精のガキに?確か・・・あのガキの名は??
ゼロと言った!ゼロだと?まっ・・・まさか!!目の前のコイツが!?あのガキの本体だと言うのか?そもそも妖精のガキ連中はクローンにしても、似たり寄ったりだから、今まで全然気付きもせんかった・・・』
ゼロの掌がラスプーチンの額に置かれた時、
ン『い・・・生きていた・・・のか?嘘だ!お前は・・・確かに死んだは・・・はず!お前が・・・あの・・・ゼロだと言うかぁー・・・・・・・・・・・・っ!』
だが、最後の言葉を言い終える前に、ラスプーチンはゼロの青白い閃光によって跡形もなく消滅したのだ。その一部始終を見ていた俺達は、
「や・・・やったのか?」
「これで終わりなのか?本当に?」
「・・・」
ラスプーチンを倒し再び宙に浮かび上がるゼロは俺達の存在に気付くと、
「皆!この場から直ぐに離れるんだぁー!」
「!!」
三千院の言葉で俺達はその危機に気付き、
反射的にその場から翔けるように離脱する。
その直後!俺達のいた場所が、一瞬で消し飛んだのだ。
「なっ!何ぃー??」
俺は衝撃波の来た方向を見上げたのである。
一体、誰が!?
それは疑いもなく・・・
バサラ!
いや?ゼロからの攻撃だったのだ!
さらにゼロからの破壊光線が俺達に向けて放たれたのだ。
「くっ!皆!躱すんだ!」
「ぐっ!バサラの奴!見境なしかよ!」
「正気じゃないのだ!何としてもバサラの意識を戻すぞ!」
「でも、どうやってっすか?」
「とにかく!奴の身動きを止めるぞ!」
俺達はゼロからの攻撃を躱しながら、残りの力(気)を掌に籠めて金の錫杖を構成する。
更に錫杖を縄のように伸ばすと、宙に浮かぶゼロに向けて投げつける。
錫杖の縄は一直線上に伸びてゼロの身体に絡み付き巻き付くと、四方から四人がかりで身動きを止めたのだ。
「これで、どうだぁー?」
だが、俺達の錫杖の縄はゼロの青いオーラによって打ち消された。
俺達の神の気を練り込んだ縄が、いとも簡単に消されるなんて・・・
神の力が通用しない?
これでは、まるでカミシニの力と同じじゃないか?
妖精の力とは、まさか?
まさか!!
と、俺が困惑しているとゼロが再び俺達に向けて手を翳す。
それと同時に大地が揺れ、青い閃光が俺達に向けて雨のように降って来たのだ。
「ぐゎあああ!いい加減にしろ!バサラ!」
「バサラさん!しっかりして下さい!」
三千院が印を結ぶ?
「やむを得ない!」
って、まさか!
「三千院!お前、まさかバサラを殺るつもりじゃないだろうな?」
「・・・」
三千院の代わりに大徳が答える。
「三蔵・・・気持ちは解るが今のバサラを放って置けば、どのような事が起きるか解らんのだぞ?あいつが世界を滅ぼす現況になりかねん。俺達はそれだけは許せぬ」
「ふざけるな!見損なったぜ!バサラは仲間だろ?俺は何があろうと仲間に手は出させねぇぞ!」
「ならば、どうするつもりだ?三蔵!お前ならどうする!」
・・・えっ?
「俺なら・・・」
「ふっ安心しろ!残念だが、今の俺達が束になろうと、あの変わり果てたバサラを止められはしないだろう!だが、唯一可能性が・・・バサラを救える手段があるとしたら、それは!」
「それは?」
三千院は俺を指差して言った。
「お前の救世主の力だけだ!」
俺の救世主の力だと?
なっ!?そりゃあ~むちゃぶりだろ!!
てか・・・何でもかんでも救世主が救うって解釈止めようぜ?
たくぅ~都合よく使うなよ!
誰が救世主だって?
誰が?
すると三千院は俺の手を握って来たのだ?
「えっ?」
握られた手を通して、俺の中に三千院の残り少ない力が注ぎ込まれてくる。
何を?その時、蛇塚が俺の肩に手を置いて言ったのだ。
「三蔵!お前なら、出来るはずだ!」
「あっ?」
「お前は!不可能かと思われた・・・いや!クローリーによって、百鬼夜行にされた晴明を救ったじゃないか!」
蛇塚もまた、俺に自分の力を注ぎ込む。
「自分を信じろ!少なくとも、俺はお前を信じているのだぞ?」
大徳の力が底をついていた俺の魂に、皆の魂の力が注ぎ込まれて来るのが解る。
三人は俺に残りわずかの力を託すと、膝をつき、バタバタと倒れていった。
お前達!?
俺に何が出来るって?
俺なんかに・・・
俺は倒れている晴明を見て、
そうだよな・・・諦めたら・・・
手に入るもんも!取り戻せるものも!手には入らねぇぜ!
俺は拳を握り宙に浮かぶゼロを見上げていた。
『ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!』
俺の身体に炎がほとばしり、俺の姿が再び不動明王の姿へと変わっていく。
更に、
『オン・ギャロダヤ・ソワカ!』
俺の背後から炎の翼が羽ばたく。
炎の翼(カルラ炎)を背負いし不動明王と化した俺が再び舞い上がり、上空にて見下ろしているゼロに向かって飛び上がったのだ。
次回予告
三蔵「ゼロと化したバサラを救うために、今度は俺が立ち向かうぜ!
むちゃぶりオッケー!
ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!
最後は俺が美味しい所を持っていく!」




