二つの化け物の混戦!遺跡からの強行突破!
妲己の力を借り、クローリーを倒し、晴明をも取り戻した三蔵だったが、
まだ遺跡の中では恐るべき戦いが繰り広げられていた。
バサラの意識は次第にゼロに奪われていく?
バサラがゼロと同一人物?
バサラの身体は青白く輝き出して不思議な力が漲っていた?
この力は一体?
バサラは目の前のファースト!
いや、ファーストと同化したラスプーチンに向かって近づいていく。
そして次にバサラの口から出た言葉は、バサラの意図していない台詞だった。
『僕の名前はゼロ。世界をゼロにさせる者』
バサラの異変に大徳も三千院も困惑していた。
「バサラの奴!どうしたと言うのだ?様子がおかしいなんてレベルじゃないぞ!」
「解らないが、ホーエンハイムが傷付いた事でバサラの中の何かが覚醒したようだ」
するとファーストの胸の辺りから人面が現れ、ラスプーチンの顔が浮き出したのだ。
近付いて来るバサラにラスプーチンは余裕を見せ、
『セカンドの分際で生意気なゴミがよくも私を殺してくれたな?だが、残念だったな?私は過去の肉体を脱ぎ捨て魂の錬金術でファーストの身体を乗っ取ったのだ!』
ラスプーチンの人面は喋りだす。
『だが、それもお前達のお陰なのだぞ?お前達がファーストの核を破壊してくれたからこそ、私の魂はファーストの失われた核の代わりに寄生出来たのだからな!これが完全融合体・ラスプーチン様の再誕だぁー!!』
ラスプーチンはバサラ達を指差し、
『この場所にいる生きとし生けるモノは、全て私の餌だ!贄だ!供物だー!ご褒美なのだぁ~餌こらサッサなのだぁ~!!ぎゃはは!』
ラスプーチンの両手がバサラに向かって伸びて来ると、その腕は巨大な恐竜の頭へとメタモルフォーゼし大顎を開き喰らいつく。
バサラは微動だにせずに、ただ向かって来るラスプーチンの攻撃を見ていた。
「バサラー!」
助けに入ろうとする大徳を三千院が引き止める。
「待て!近付くな!」
三千院は直ぐ様傷付いたホーエンハイムを抱き抱え、その場から離脱するように大徳に指示したのだ。その理由は直ぐに分かった。
ラスプーチンの恐竜化した頭が迫った時、バサラは添えるように掌を前に出して恐竜に触れた。その瞬間、青い閃光がラスプーチンのメタモルフォーゼした恐竜の頭を包み込んだ。
同時に青い閃光はラスプーチンの腕を跡形もなく『消滅』させたのだ!
青白い光はバサラを中心に更に膨れ上がり、ラスプーチンの本体をも侵食していく。その不可思議な力にラスプーチンは、たまらず消滅していく両手を切り離し逃れる。
『な・・・なんだ?なんだ・・・あのセカンドの力は??』
ラスプーチンの両手は、何もなかったかのように再生していく。
『あの力・・・欲しい!何がなんだか解らないが、お前の力は私が貰うぞ!その方が有効かつ便利というもの!そして、更に私は進化するのだぁ~!』
ラスプーチンの身体は膨れ上がり、巨大化し、新たなメタモルフォーゼを始める。
それを見ていた三千院達は、
「くっ!何て化け物だぁ!奴達の力は底無しかぁ!」
「我達の想像を遥かに越えている。まるで、あれでは!!」
ラスプーチンが新たにメタモルフォーゼした姿は、想像上のモンスター?
西洋のドラゴンだったのだ!!
「ドラゴン・・・初めて見た!少し感動だ・・・」
「何を呑気な事を言っているんだ?天井が崩れ落ちて来てるんだ!直ぐにこの場所から離れるぞ!三千院!」
三千院と大徳は意識のないホーエンハイムを抱えながら部屋から脱出を試みる。
「くっ!道が塞がってこれ以上は行けないぞ!」
「・・・」
どこもかしこも道が塞がって、生き埋めを待つしかなかった。
その時だ!
「まさか諦めたんじゃないだろうなぁー?」
突如、声のした方向にあった壁が勢いよく外側から破壊された?
そこから、傷付き意識のない晴明を抱きかかえ、俺、三蔵と蛇塚が壁をぶち抜き、抜け出て来たのだ。
「二人とも無事だったようだな?」
「ただいま戻りました!三千院さん!それより、あのバサラさんはどうしてしまったのですか?」
「その話は後で説明する」
三千院は蛇塚に抱えられている晴明を見て、
「晴明も無事だったようだな?」
「あぁ・・・今はまだ目覚めてはいないが、無事だ!悪かったな?勝手な行動をして!だけど・・・」
「説教は後だ!それよりも今は!」
「こっちも立て込んでいるみたいだな!」
崩れ落ちる壁や天井。
崩壊していく遺跡。
暴れ出したラスプーチンの変化したドラゴンに、異様な力で暴走するバサラ!
この逃げ場のない状況に俺達のするべき事は?
「さてと、どうすっか?」
「心配するな?明王の守護者が四人もいれば手段はある!」
「お前達がタイミング良く戻って来たおかげで助かる道が出来たのだ!」
「あん?」
三千院と大徳には確信があった。
「アレですね?じゃあ、俺が!」
「いや、カミシニが相手ではないのだ!私がやろう!それにお前にばかり負担をかけられぬからな?」
「俺の身体の心配なんか!」
三千院は首を振り蛇塚を制止する。
「任しておくのだ!それに三蔵にも見せておきたいからな」
「?」
俺にはチンプンカンプンだが、何をするつもりだ?
この崩壊寸前の地下遺跡から脱出する三千院の策とは?
「我々の明王の力を合わせ、遺跡の天井をぶち抜き脱出する!」
「って、やっぱり力任せかよ?でも、ここは地下の遺跡だぜ?どんだけ深くにあると思ってるんだよ?ここから遺跡の天井をぶち抜いて地上にまでって?マジに出られるのか?」
「私達に出来ない事はないぞ?」
俺は言われるがまま三千院、大徳、蛇塚と四方に陣形をつくり、己の真言を唱え始める。
降三世明王真言
「オン・ソンバ・ニソンバ・ウン・バザラ・ウン・パッタ!」
大威徳明王真言
「オン・シュチリ・キャラロハ・ウン・ケン・ソワカ!」
軍荼利明王真言
「オン・アミリティ・ウン・ハッタ!」
不動明王真言
「ナウマク・サマンダ・バサラ・ダン・カン!」
俺達の背後から四体の明王が出現し両手に力を集め一カ所に融合させていく。
すると四体の明王の力は三千院の身体の中に取り込まれていったのだ。
『ヌオオオオ!四大明王合身術!』
三千院の姿が明王へと変化し、その手には光り輝く弓が握られる。
『三降魔天聖弓!』
三千院は光り輝く矢を天井に向けて狙いを定め、
「明王四体分の力を籠めた矢を解き放つ!」
三千院の矢は凄まじい波動の気を帯ながら天井に向かって射られた。
その瞬間!
天井が轟音と閃光とともに消し飛んだのだ。
突然起きた出来事にラスプーチンは、
『残っていたゴミ達が何かをしたのかぁ?まぁ・・・良かろう!私のこの力があれば問題はないのだからな』
崩れ落ちる天井に開かれた隙間に向かって、ラスプーチンは飛び上がったのである。
その背中には巨大な竜の翼を羽ばたかせながら・・・
それを逃がさぬと追うバサラ!
俺達もまた開いた天井に向かって駆け上がっていた。
「遺跡が崩れ落ちる前に地上まで駆け抜けるぞ!」
「おぉ!」
大徳はホーエンハイム、蛇塚は晴明を背負いながら、俺達四人は崩れて来る瓦礫を踏み台にして地上を目差す。
「くそぉ!地上の光は見えるのに、どんだけ地下にいたんだよ?俺達は!」
「足を止めるなよ!」
「うっす!」
「くっ!」
すると、三千院が足をふらつかせた。
明王合身の術の後遺症で体力を全て失っているのだ。
「!!」
俺は反射的に腕を伸ばして落下しそうになる三千院の腕を掴んでいた。
「三千院!」
「すまん!」
「気にするな!俺達は、な・・・」
「どうした?」
何かを言いかけた俺は言葉を飲み込み、
「いや、何でもない!後、少しだ!いけるか?」
「心配無用!もう大丈夫だ!」
地上を目差す四人。
俺は再び駆け上がりながら、今、俺は何を言おうとしたんだ?
俺は・・・今・・・『仲間』だからって言おうとしたのか?
「チッ!俺も焼きが回ったぜ!」
俺達はなんとか崩れる遺跡から無事に地上まで脱出すると、その上空ではラスプーチンがメタモルフォーゼしたドラゴンと、ゼロに意識を乗っ取られたバサラが上空にて対峙していた。
バサラは身体中に青いオーラを纏い、その不思議な力で宙に浮かんでいる。
「あれが・・・本当にバサラなのか?」
「で、あっちの化け物がファースト?いや、ラスプーチンなのか?」
俺と蛇塚は事の次第を大徳から聞いていた。
「・・・・・・」
俺は何やらとてつもない恐怖に身震いをする。
何だ・・・この感じ?
何故らか俺には、本能的にラスプーチンよりもバサラの方が恐ろしく感じるのは?
次回予告
三蔵「一難去ってまた一難!!
ゼロとラスプーチンの因縁バトル!
ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!
俺はバサラを・・・取り戻す!!」




