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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
神を導きし救世主!
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ゼロの記憶!

ホーエンハイムがファーストの身体を奪ったラスプーチンによって傷つけられた時、バサラの身に異変が!?今、バサラの過去が!真実がひもとかれる。


俺は・・・バサラ・・・


バサラ?


この名は、あの日、俺が明王として仕えた時に、卑弥呼様に与えられた名・・・


それ以前は、妖精部隊のNo.6と呼ばれていた。



その前は?


いや、その前の記憶なんてない。

ないはずだ!

何故なら俺達妖精達は戦災孤児、またはラスプーチンの配下によって世界中から拉致されて来た子供達の一人。

俺達は妖精前の記憶はない。

必要のない記憶は全て消されていたから。


戦う事だけの暗殺機械に仕立てるために・・・


だから俺にも過去の記憶なんかなかった。



なのに・・・


今、俺の頭の中で廻る記憶は何なんだ?


俺は深い闇の中に吸い込まれるように沈んでいく。


記憶の迷宮へと・・・



これは誰の記憶なのだ?


わからない・・・


そこには、一人の少年が崖から落下して怪我を負っていた。


そこに現れた未確認生物。


後に妖精と呼ばれる『それ』に、少年の命は助けられた。


それから少年は妖精と共に暮らすようになる。

少年は孤児で、村の山奥で一人で暮らしていた。


その後、病にかかった少年は村の医師にも見放され、少年は死を覚悟した。


が、そこに奇跡が起きたのだ!


少年が連れて来た妖精が少年の中へと同化し少年は助かる。

が、少年は命を取り戻しただけでなく、妖精の力をも手にしていたのだ。

その少年の名を『ゼロ』と呼んだ。



俺バサラの意識は、ゼロの記憶と重なり合っていく・・・




妖精の力を得た僕は村の人間達から気味がらわれ、恐れられていく。

次第に孤立する僕の前に現れたのが、ホーエンハイムと呼ばれる男だった。


最初は怖いイメージがあった。

だって、この人からは血の匂いがしたから!!

妖精の感覚が僕にそう伝えてくる。


怖い・・・この人は何者?

何のために僕の前に現れたんだろう?



ホーエンハイムは僕を引き取り、自分の息子として育てる事になった。

僕は最初、ホーエンハイムに近寄る事なく遠くから覗いてばかりいた。

ホーエンハイムが食事の支度をしても、ホーエンハイムが食べ終えてから一人で食べていた。

ホーエンハイムもまた、そんな僕に無理強いする事はなかった。

僕は無口なホーエンハイムを観察していくうちに、

気付いた事があった・・・それは・・・


「この人からは、寂しい気を感じる?」



僕は勇気を出して、一人で食事をしていたホーエンハイムに近付き隣で黙って食事をし始めた。

ホーエンハイムはそんな僕を見て、


「お代わりはあるぞ?」



僕は軽く頷き、初めてホーエンハイムに笑顔を見せたんだ。


それから僕達二人の、本当の共同生活が始まった。


楽しかった・・・


嬉しかった・・・


僕は・・・孤独じゃない・・・



僕は、この人が好きだ!


だって、この人は僕を必要としてくれたから・・・


僕もこの人と一緒にいたいと思えるようになった。



いつまでも・・・


一緒に・・・


この人と家族になりたい!


本当の親子に・・・


な・・・り・・・た・・・い・・・




しかし、いつまでも続くと思っていた生活は、そう長くは続かなかった。


僕が原因不明の病で倒れてから、ホーエンハイムは僕の身体を調べ、食事も取らずに寝る間も惜しんで治療薬の研究を続けてくれた。


僕は日に日に弱っていく。


動く事はもちろん、喋る事もままならなくなって来た頃、僕はもう自分が助からないと覚悟した。そして僕を助けるための研究の資金が尽きて来た時、ホーエンハイムは寝たきりの僕の手を掴み、言ってくれた言葉がある。


僕に『生きたい』って思える気持ちをくれた言葉・・・



身体中の細胞分解が僕を苦しめ、激しい激痛が身体中を走る中、僕は死を覚悟してホーエンハイムに答えた。


「ねぇ?ホーエンハイム・・・頼みたい事が・・・お願いしたい事が・・・あるんだ」


「ゼロ!何だ?何でも聞いてやるぞ?何か食べたいのか?欲しい物があるなら何でも言ってくれ?」



僕は少し恥ずかしくなりながら・・・振り絞って告げる。


今を逃したら・・・もう、言えなくなる!


言わなきゃ・・・僕の願いを!



「ホーエンハイムの事を・・・お父さんって呼んで良い?」


「あぁ??そんな事!あぁ!呼んでくれ・・・呼んでおくれ?私は・・・ずっとお前を・・・実の息子のように思っていた・・・いや!例え血が繋がっていなくても、お前は俺の息子だ!」


「ありがとう・・・お・・・父さん・・・」




その言葉を最後に、僕は会話すら出来ないくらい衰弱していった。


そんな時だった。

奴が・・・あの悪魔が来た。

あの…ラスプーチンがホーエンハイムの前に現れたのは!!


ホーエンハイムは僕を治療するために必要な多額の研究資金を得る代わりに、その悪魔に魂を売った。ラスプーチンの条件は戦争や己の軍事力のためにホーエンハイムの知識と、僕の遺伝子を要求して来たのだ。

僕は生命維持のため、ラスプーチンの研究施設の奥にある人が一人入るくらいの水槽の中に入れられた。この中にある液体は僕の細胞分解を抑制させ、ほんの少し寿命を延ばした。


僕はその中で・・・


ずっと見ていたんだ・・・



ホーエンハイムはその後も研究を続けていた。

最初に僕の身体の一部からクローンを作り、その病の原因を調べつつ、ラスプーチンの要求する妖精の力を引き出していく実験を繰り返していた。


何百体と造ったクローンは、直ぐに細胞崩壊し、精神障害を起こしながら暴れ、幾度と廃棄されていく。


その中で、唯一細胞崩壊を起こさなかったクローンが、三体生み出された。


実験は完成かと思われた。


そんな時・・・ホーエンハイムは実験の途中で、暫くの間研究所を後にしたのだ。


ホーエンハイムは水槽の前で言った。



「・・・ゼロよ?すまん!私の所に昔の仲間からの通達が来た。再び私に戦士として戦うように・・・カミシニとしての義務が・・・」



ホーエンハイムは水槽の中の僕を見ながらガラス越しに手を置き、



「必ず帰る!だから・・・待っていてくれ!私の息子・・・ゼロよ!」



そう言って、ホーエンハイムは出て行った。


僕は・・・水槽の中で思った。


嫌だ・・・


行かないで・・・


僕を一人にしないで・・・


お・・・願・・・い・・・



そこで僕の意識は再び眠りについた。


次に目覚めた時、そこにはラスプーチンと数人の科学者が僕を見ていた。


声が聞こえてくる?



「あのホーエンハイムめ!いつになっても戻っては来ないではないか!」


「ラスプーチン様。クローンも完成間近です!後は我々が実験を成功させましょう!」


「出来るのか?」


「私達も科学者の端くれです。それに、個々には奴の残した実験データがありますし、あの男がいなくても必ず実験を成功させますよ!」



そして科学者達は、水槽の中の僕を見て・・・



「それに、まだまだ実験に使えるモルモットは目の前にあるのだから!」


僕は・・・



「父さん・・・もう一度・・・父さんに会いたかった・・・」








俺はバサラ?

俺は今、ゼロの記憶と同調していた。

俺はゼロの目を通して、ゼロの記憶を見ていた。


俺がゼロと一つになっていく?


ホーエンハイムがカミシニとして研究所を留守にしている間、研究所ではラスプーチン率いる研究者達が、僕の身体を使った実験を繰り返していた。

実験には僕からではなくクローンのファーストを使うのがホーエンハイムとの約束だった。


だけど、ホーエンハイムがいない事を良い事に・・・


『やはり・・・実験体から引き出すのではなく、オリジナルを使うべきだな!』



僕の身体を実験に使う?


僕を・・・僕を殺す?


僕が僕でなくなる?



その夜、


「嫌だ!消えたくない・・・」



死ぬ事が恐いんじゃない。


もうホーエンハイムに、お父さんに会えなくなる事が恐いんだ!


お父さんに会いたいよ・・・


もう、二度と会えないなんて嫌だ!


助けて!助けて!誰か・・・僕は・・・お父さんに会いたいだけ・・・な・・・の・・・に・・・



ラスプーチンは本体である僕を実験に使い始めた。

血を抜かれ、細胞組織を摘出され、どんどん身体を蝕まれていく。

次第に細胞組織だけでなく、ごっそりとメスで身体を切られる事もあった。

再生力のある僕の身体が追いつかなくなるくらいに。

だけど、ホーエンハイム無しでの研究は失敗を繰り返し、ついに痺れをきらしたラスプーチンは、研究者達に命令をくだす。



「こいつの身体を全て分解しても構わん!必ず実験を成功させるのだ!」




ホーエンハイムに隠れて進められていたラスプーチンが行っている研究。

それは、妖精の力を、自分に取り込むという事だった。

ラスプーチン自身に妖精の力を移植しようと言うのだ。だけどそれはラスプーチン本人が危険を伴うため、数えきれないくらいの人間達が実験体にされたんだ。


老若男女・・・


それは適合も無視し、百パーセントの成功を叶えるために幾度と幾度と・・・


私利私欲のためだけに!


それは行われた。


水槽の中で現実逃避するかのように、僕は再び眠りにつこうとした。



「もう・・・眠りたい・・・もう、痛いのは嫌だ・・・今度、目覚めたら・・・僕は、僕でなくなっているのかな?僕が・・・消えちゃう・・・お父さん・・・助け・・・て・・・」



再び、僕は眠りについた。


同時に、僕の水槽の前には?


静かに人影が立っていた?


その者の声が僕の中に入ってくる?


それはテレパシー?



『生きたい・・・よね?』



次の日、僕の身体は切り刻まれた。


研究者達の手で!


残ったのは頭部と脊椎のみだった。


僕は消えた・・・



だけど遅れてホーエンハイムが帰って来たのだ。

ホーエンハイムはホルマリン漬けの僕を見て怒りに狂い研究所を破壊していく。


「ラスプーチン!許さん!俺のゼロを!俺のゼロを!絶対に許さんぞ!」



狂気の鬼と化したホーエンハイムは、誰にも止める事が出来なかった。

ラスプーチンは、そんなホーエンハイムに恐怖し、僕のクローンであるファーストを目覚めさせた。暴走し、破壊神となったファーストに、ホーエンハイムは傷付く。

最後はファーストの脳に埋め込まれた核爆弾を起動させ止める事に成功し、ホーエンハイムは、ラスプーチンにトドメをさして、全てが終わったかに思えた。


しかし、ラスプーチンは生きていたんだ!

殺されたのは影武者?

自分自身のクローンだった。


ラスプーチンは残ったゼロの頭部と脊椎を持ち去り、今までの研究資料とともに消え去った。


それから数年後・・・再び悪夢の研究が始まる。

それが妖精のセカンドの研究であった。

各地から拉致された少年少女達に、ゼロの遺伝子を組み込み、新たなゼロの代わりを作り出そうと言うのだ。


この実験もまた失敗を繰り返したが、やがて百体のセカンドが完成した。

ファースト程の力は得られなかったが、その能力は人間のそれを遥かに凌駕している暗殺部隊だった。


妖精部隊・・・彼達は名前を番号で呼ばれていた。

実力事にナンバーの命名。


しかしラスプーチンは、ファースト程の力のないセカンド達にはあんまり興味を示さなかった。

そんな時、セカンドの管理をしていた上官の一人が気付く。


「なぁ?資料にはセカンドは99体だとなっているが?」


「ん?あっ?確かに・・・百体いるな?多分資料の間違いかなんかじゃないのか?」



そこには百体のセカンドが並んでいた。


「・・・・・・・」


「百体いるものは仕方ないしな?間違って子供が混ざるにも、髪や目の色が通常と違うのだから有り得ないだろう?資料には百体と書き直しておくよ!」



これが、事の始まり・・・


確かにセカンドは99体だったのだから!


セカンドは幾度と繰り返し洗脳されていく。


妖精になる前の記憶は全て消されていった。


消されて・・・


(忘れ・・・たく・・・ない・・・)



セカンドの中に混ざっていたのは何者?








俺はバサラ!


何なんだ・・・この記憶は?


知らない・・・知らない・・・


ゼロの記憶が俺に流れ込んでいるのか?


何故?


俺にゼロの遺伝子が混ざっているからか?


分からない・・・


「!!」


そして新たなビジョンが浮かぶ。

それは水槽の中にいるゼロに話し掛ける少年の姿?

それはゼロにそっくりな妖精の少年だった。


少年は言った。



(生きて・・・ゼロ・・・そしてお父さんに会うんだ・・・僕達のお父さん・・・ホーエンハイムに!)



それはゼロより生み出されたファーストの一体だった。

心を持たないはずのファーストが、ゼロの悲しみ、苦しみ、怒り、それらの感情を感知して同調し、ゼロの前に現れたのだ。

そしてファーストは、水槽の中にいるゼロを引っ張り出すと、奥から残りの二体のファーストが近寄り弱り切ったゼロに掌を翳していく。

三体のファースト達は、己の生命力をゼロに注ぎ込む。



その後、一体はゼロの代わりに水槽の中へと身代わりとして入り、残りの二体はゼロを連れていき、ゼロをファーストとして同じ水槽の中に入れた。


ゼロが再び目覚めた時、そこには何もなかった。

そこは、暴走したファーストにより滅んだ研究所!!


ゼロは・・・弱り切った身体を引きずりながら、その地を離れた。


何年経ったのか?

戦場にさ迷っていたゼロは、自分に似た者達?


セカンド・・・


ゼロは、そのセカンドの中に混ざったのだ。



ゼロ・・・


ゼロが生きている?


じゃあ、ゼロは何処にいるんだ?


いや、セカンドは俺を残して皆・・・死んだはずだ!


じゃあ、ゼロも?


死んだに違いない・・・



ゼロはセカンドとして生きていた。

だが、洗脳を繰り返し次第に記憶も消されたに違いない・・・


自分が誰なのかもホーエンハイムの事も忘れて・・・



(俺達の中にゼロが混ざっていたなんて・・・)




そして新たなビジョンがバサラに映し出されていく。


それは!?


セカンドとなったゼロの姿であった。

研究者達はゼロであるセカンドにこう名付けたのだ。



『今日からお前は、No.6だ!』



なっ!?今、何て言った?


No.6って言わなかったか?


No.6は俺の名前じゃないか!?


まさか?


俺が・・・ゼロ?


俺がゼロなのか!!




そんな馬鹿な・・・俺は・・・ゼロ・・・バサラ・・・No.6・・・ゼロ・・・バサラ・・・No.6・・・ゼロ・・・



「うっ・・・うう・・・うわああああああああ!」



俺は・・・誰なんだぁー!!


俺は・・・



俺の目の前で、三千院と大徳が何かを叫んでいる?


聞こえない?


俺は無心で、倒れているその者に近付いていく・・・


まるで自分の身体じゃないみたいだ?


無意識に身体が動き出し・・・勝手に涙を流し・・・勝手に言葉を発した。


倒れているホーエンハイムに向かって、




『お父さーん!』 と・・・!!







その瞬間、俺の中で何かが弾けた。

俺の身体は青白く光り輝き、不思議な力が漲っていく?俺は目の前のファーストに・・・否!ファーストと同化したラスプーチンに向かって近づいていく。



『うぐわああああああああああああああああ!』



そして口に出た言葉は、俺の意識外の台詞だった。




『僕の名前はゼロ。世界をゼロにさせる者』




次回予告


バサラの過去が!ゼロの過去が一つとなった時、


この遺跡にて悲しみを運命を乗り越え戦う男がいた。




物語は再び、この遺跡で起きている戦いへと遡る。


晴明の変わり果てた姿である百鬼夜行と、三蔵が今!


友として、命をかけた戦いが行われようとしていた。


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